
2005年山耐の記録と各種分析
時は遡り、2004年秋、僕はあるコミットメントをした。それは、長年築き上げた信念を折り曲げられ、アイデンティティを剥奪されるような痛みを伴うもの
であった。それ以降、一端のアスリートとして生き残るためには、「時間」、それが僕にとっての至上命題となった。幾つかの選択肢の中から選んだのは、多く
の時間を消費する合宿や遠征(各種大会への参加)を切り捨てること。そして、残されたわずかな時間を、近場での有酸素トレーニングに費やすこと。有酸素能
力の維持、それが生命線だと結論付けた。時間的効率を追求する上で、中古で手に入れたロードレーサー(自転車)も大いに役立った。仲間やライバルが充実し
たトレーニングを積む中、休日返上で室内作業に明け暮れることも多かった(それは精神的苦痛・圧迫を伴うものであった)。競技から遠ざかったこの1年間、
その中でも570時間のトレーニング時間を確保できたこと。それが今回、自己ベストタイムを更新できた大きな理由であろう。9時間切りの目標は達成できな
かったものの、昨年の自分を越えることができた自分を誉めたい。これから先もいつになったら競技に戻れるか見えないが、とりあえず、本気のベンチマークを
済ませ、今は自分なりの新たなスタートを切ったところだ。
△▼△
まとまった休みを取ることは極力自粛したが、それでも様子を見て、1日(=24時間)程度の休みをスポット的なロングトレーニングに充てた。8月下旬、
TTR100km王者市岡さんに誘われて南アルプスのロングランに出掛けた。僕にとってこのようなロングランの練習(円井12時間、市岡さん17時間)は
ほぼ初めての経験であった。その翌週、残された宿題をこなすため僕は単独再び南アルプスに潜った(ここでは14時間)。他にもロードレーサーを組み合わせ
た10時間程度のトレーニングもこなした。順序は逆になるが、4月末にはTTR100kmで23時間の修羅場を越えていた。数少ない休日を有効にロングタ
フネスのトレーニングとしてピンポイント的に組み込んだことは、これまでになかった肉体への刺激であり、自身を成長させたと思う。
山耐での勝ちに拘るようになってから、毎年数回試走に行くのが慣例であった。今ではコースを走り慣れ、それほど試走の効用は減っただろうが、それでも今年
は、初の夜間試走に行くことを企画していた。三頭からゴールまでのランプ走を試し、特に夜間の下りに対しての自信を得ておきたかった。しかしながら、結
局、時間を作ることができず、見送り。今年の試走回数は異例の0回となった。特に夜間試走を逃したときは、「これで10分はタイムを損した」と悔しんだ。
今思っても、夜間試走が生む自信によって、やはり10分ほどタイムが変わった可能性はあると思っている。
△▼△
朝起きてからスタートまで、そこも一つの耐久レースである。今年は、まず家で、インスタントラーメン(餅・卵入り)、蜂蜜、次に八王子駅で立ち食い蕎麦、
会場に着いてから、バナナ5本、ナッツタルト、おにぎり1個、アミノバイタルゼリー1.5個、アミノバイタル粉末を胃に入れた。
外は冷たい雨が降っていた。迷ったが、当初の作戦通り、ロングタイツは穿かないことにした。下は水着のショートパンツ。上はノースリーブと迷ったが、厚手
でタイトな半袖シャツとした。悪天候の中での軽装のため、周りから危険視する声もあった。確かに「無謀な若者、軽装備でリタイア」、よくある話だ。しか
し、「完走より勝負」、これが今回僕の選んだ道だ。ウィンブレを携行するかも迷ったが、携行することとした。この部分は危ない判断を下すところだった。尾
根線での風は思ったより冷たく、体脂肪の少ない僕はブルブルと震え、第一CP(浅間峠)に着く前から早々とウィンブレを着込むことになったからだ。
スタート。毎年ゆっくり入るのが僕のスタイルだ。しかしいつかは頭から先頭集団に付かなければならないと考えている。今年も頭から突っ込むかどうか悩ん
だ。しかし練習不足からその決断はできなかった。序盤はOQ(奥)さん、その後は許田くんと一緒に進む。途中で杉山さんに追い付く。第一CPを想定タイム
より早く通過する。昨年より速い。しかし、順位は悪い。前に15人ほどいるらしい。ペースは良いが、順位が悪い、そんな感じだった。第一CP直前で許田く
んと離れざるを得なくなったのは残念だった。
第一CP(浅間峠)から第二CP(月夜見)までは毎年苦しむ部分である。特に三頭山の登りで股関節周りが悲鳴を上げるのが常である。今年こそは、今年こそ
は、そう毎年言っているが、また今年も撃沈した。ペースが落ちないように、いや、むしろ上げるように努めて走る。しかし1、2分前にいるはずの選手の姿が
捉えられない。そして2度目の便意。3度目の便意。顔面が白くなる。どうしたこの体。見る見るペースダウン。一度は抜いた杉山さんに抜かれ、そして何と桜
井さん(女性)にまで抜かれる。おかしい。これから前の15人を猛追するはずが、こんなところで次々と順位を下げている。しかしここから踏ん張る。毎年苦
手としている三頭の登りで足が動く。ここまでのペースダウンが功を奏した感じだ。ここである選手の後ろに付き、良いペースで登りをこなす。この選手が、後
に御前まで併走した松永さんであった。ここの登りで再び杉山さんの前に出る。
三頭からの激下り、ここで前の選手(松永さん)が邪魔でスピードが上げられない。どうした、こんなところで守っている場合じゃないだろ。攻めろ、攻めろ。
抜くタイミングを伺う。しかしここの下りでも再び腹に異変が起きる。無念のペースダウン。下りで攻めないようでは上位には追い付けない。歯がゆい下りで
あった。
第二CP(月夜見)手前で前の選手(松永さん)のライトが木にぶつかり破損。旅は道連れで、しばらく修理のためライトで照らす。再び併走で第二CPへ。ド
キドキのラップを時計で確認する。第一CP後のペースダウンが響き、やはり予定タイムをオーバーしている。今年も9時間切りは赤信号へと変わろうとしてい
る。目の前の松永さんは給水をパス。「今年はパスする人が多いわね」と役員の人が言う。僕の水もまだ残っていたが、念のため給水を受けることとした。しか
しハイドレーションパックを取り出す時間を惜しみ、半分程減っていた500mlのペットボトルに給水をもらった(250ml程度)。すぐさま松永さんを追
う。何もタイムだけが相手じゃない。目の前にもその先にも多くのランナーが待っている。楽しいじゃないか。下ってすぐに追い付く。先方がライトに問題を抱
えているためだ。この後は僕が先導する形で引っ張る。御前の登りで桜井さんに追い付く。足は動く。下りではここぞとばかり果敢に攻める。松永さんと別れ、
そしてようやく樋山に会えた。追い付くべきもう一人の許田くんの情報を聞く。かなり先を行っているとのこと。ここでようやく10番目程度。まったく今年
は、落ちてくる選手が少ない。
第三CP(長尾平・御岳)が近づく。ようやく完走が見えてきてホッとする。緩やかな登りを走っている側から突如選手に抜かれる。軽快な走りだ。この位置で
こんな余力を残しているとはすごい。ついに第三CP着。7:52。9時間まで1:08。ふう〜、9時間切りはアウトだ。そう、昨年と同じ状況だ。いい
ね〜、燃えてきた。目標が叶わなくても諦めず走り切ること、それが今年のもう一つの宿題だ。日の出からの下りでさっき抜かれた選手を抜き返す。「粋だ
ね〜」と声を掛けられる。さあ、去年のオレよ、たんと見とけよ〜、この走りを。
速いのか遅いのかよく分からない。でもたぶん速くないような気がする。平地あるいは緩やかな登りでパワーがない。下りでも腰が引けているように感じる。そ
して後ろから足音が迫る。「マルヤマさ〜ん!」。御前で別れた松永さんであった。ライトが不調でよく見えないながら、それでも爆走しているらしい。軽やか
な走りである。しばらく付いて行こうとするも、敢え無く見えなくなる。下りだというのに体の動きが固く重い。毎年だけど、この長い金比羅は、飽きる。さあ
ようやく舗装道、ゴールまで1〜2kmというところで、突如として爆走の足音が降ってきた。ひー、すごい奴がやって来た、と思うと、三頭で別れた杉山さん
であった。声を掛ける間もなく音速で通り過ぎる。唖然。もちろん後を追うが、姿は小さくなるばかり。良いものを見ることができたと思う反面、何だ、この闘
争心の無さは。
結局、9時間12分(自己ベストを5分更新)、11位でゴール。第三CP(長尾平・御岳)
時点で8位の大内さんと2分差まで詰めていたのだが、金比羅で引き離された。そして松永・
杉山両氏の素晴らしい走りに順位を下げることとなった。
トップ鏑木さんの8時間14分、1分後に2位の横山さん。ゾクッと来るタイムである。4位に8時間47分で許田くん。こちらもすごい。いつの間にか山耐
も、僕の成長を上回る速度で成長しているようだ。
△▼△
○ ゴール直後の感想(自身の送信メールより転載)
・ レベル高すぎでした
・ あのコンディションであのタイムの上位陣は誇りであり、また悔しくもあります
・ 研究に軸足を置いたこの一年を考えると、九時間切りは叶わなかったものの、自己ベストには満足しています
・
今年は上位陣のレベルの高さに驚きました。こちらがほぼ全力で走っているにも関わらず、追い付けないわ、抜かれるわで、ワクワク・ゾクゾクするレベルで
す。1位2位のタイムなんて、人間に限界はないかのような印象を受けます。また、各選手の自己ベスト更新も感動ものです。2位の横山さんなんて、9時間前
半→8:40→8:15とこの2年でものすごい縮め方です。年齢とかではなく、トレーニングと負けん気と良きライバルによるものでしょう。オリエンティア
の許田くんも、昨年より1時間近くタイムを縮めて、あっさり9時間切り。彼らを見ていると、意識の壁をうち破る何かが見えてきそうです。いつの日かしっか
りトレーニングを積み、再び彼らに勝負を挑みたいものです。
△▼△
○ ラップ
CP1(浅間峠) CP2(月夜見) CP3(御岳) ゴール 計
昨年のラップ 2:48 2:50 2:15 1:25 9:17
予定のラップ 2:48 2:41 2:15 1:13 8:57
実際のラップ 2:45 2:51 2:15 1:21 9:12
△▼△
○ 当日朝〜レース前の食事
・ インスタントラーメン(餅・卵入り)
・ 蜂蜜(30g程度)
・ かけそば(立ち食い蕎麦)
・ バナナ5本
・ アミノバイタルゼリー1.5個
・ ナッツタルト
・ おにぎり1個
・ アミノバイタル粉末1袋
・ 新ビオフェルミンS錠(整腸剤)3錠
・ ポカリスエット1L程度
○ ウェア・装備・携行食糧
・ 半袖シャツ(厚手・タイト)
・ ショートパンツ(水着)
・ 帽子(雨除け・ヘッドランプ用)
・ 靴下(2重)
・ トレイルランシューズ(ナイキ・エアズーム シールセン2・ゴアテックス)
・ 手足腹にワセリン塗布
・ ザック
(以下ザックの中身)
・ ハンドライト Gentos SuperFire SF-301
・ ヘッドライト National BF-198BP
・ 替え電池 CR123A 4個
・ ウィンドブレーカ(撥水スプレー塗布)
・ トイレットペーパ少々
・ 1000円札
・ 薄手の軍手
(以下携行食糧)
・ ポカリスエット1.2L(大岳で空になる)
・ カーボショッツ9袋分+水入りペットボトル500ml(レース中給水400ml)
・ ピーナッツチョコ100g
・ 黒酢飴7個
・ アミノバイタル粉末6袋
△▼△
○ 切り取られた風景と各種分析
<夜風が涼しく虫の音が響く頃>(レース1週間
前記)
週末も連休も休まず研究室に通っては集中力の低さ・効率の悪さと戦い、平日は朝の9時から日付が変わる手前まで詰め、さらにこの2日ほどは息つく暇なく追
い込まれました。久しぶりに家に帰る時間を惜しみ学校泊。3時間弱の睡眠でガンガン押す。そんでもってこの週末も学校です。いったいこんな生活を何年送っ
ているんだ、と振り返ると、実に8年くらいですね。大学で3本の指に入る忙しい学科で徹夜しまくり、所属した研究室も忙しい部類に入るとのこと。まあ一番
ひどかったのは卒業制作。人生最長に寝なかったなあ。修士論文締切前もやばかった。あれは顔の皮がやばかった。そういえば初めてハセツネに出たときもやば
かったなあ。コンペで徹夜の上レース前日にフットサルしてたし(ありえねー)。そして今のオレも、実はそろそろ、そういう時期に向かっているんじゃねえ
の、こわやこわや。まあ、そんな日々の生活の中でも一筋の光になるのは、やっぱり来週のハセツネですね。やっぱ特別なレースなんだなと改めて思う。でもこ
んなダメな生活を送っている人間が上位に入るのもどうかと思うし、それでもやっぱり勝てないと一丁前に悔しがるし。さて今年はというと、なんと1回も試走
に行っていないんですね、珍しい。9月の練習量も40時間と少ない(走行距離なんてわずか160km)。平日トレーニングしていないし、連休も研究室だ
し。去年な
んて、8-9月の2ヶ月間で120時間近くトレーニングをしていたんです、びっくり(去年の夏も鬼のように忙しかったはずなのに)。まあ、去年の秋に競技
に対する取り組みを変える決心をした以上、平日にトレーニングしなくなっても、オリエンテーリングの大会や合宿に行かなくなっても、クラブの運営をしなく
なっても、それは仕方のないことなのです。自分でそういう道を選んだのですから。でーすーが、悪いですが、来週はきっちり走らせてもらいます。どうきっち
りかと言うと、昨年の落とし物拾いです。「目標の9時間を切れなかったこと、そして、CP3以降気持ちが切れてスピードを上げられなかったこと」。って、
おい、今のお前で拾ってこられるのか、どうするオレ!
まあ何はともあれ、年に一度の頂上決戦の舞台です。どなた様も、「あの母なる森で、自分の吐息と足音と虫の音に包まれた森で、無になって風を切る」、その
体験を分かち合いましょう。
---
<strategy>(レース前日記)
9月中旬、ハードトレからの超回復で心身ともにリフレッシュな状態にあり、にわかにハセツネに向けての実感、闘志、自信が確立されつつあった。しかし、そ
の後、怒濤の生活に突入して、それらを失う。まあここ数年よくあることだ。勝つ自信があるときは、自分に関する情報は秘密にしろとリディアードは言ってい
るが、この状況下においては、むしろ公開することにより、モチベーションを上げ、また逃げ場をなくそう。以下に本レースの作戦を記す。予報は雨。タイムは
落ちるが、順位は上がる。この1年、背伸びをすることなく、多くの縛りのある中で、地道で堅実で日陰の道を選び続けてきた。その結果はすでに9割方決まっ
ているだろう。後は、最後まで諦めず、めいっぱい全力でレースを楽しむだけだ。

---
<last leg
lap 〜CP3(長尾平)- Goal>
CP3(長尾平)手前の緩やかな登りを走る。かつてはコース上すべての登りを歩くことが鉄則のように言われていたこの山耐も、今や耐久というよりスピード
レースと化した感がある。近年のマラソンと似ている。きつい傾斜の登り以外はすべて走り、下りに至っては落ちるように駆け下る。それが現在の山耐だ。御
前、大岳を良い感じで越え、ここに来てもまだ体は動く。この登りだってそれほど苦なく走れる。その好調さに反して、はっと、背後の足音に気付く。そして抜
かれる。これが今年のレベルの高さを象徴している。かつてこの終盤、この走りで、前の選手を抜き去ることはあっても、抜かれる場面はほぼ皆無であったから
だ。抜かれて悔しいというより、参加選手のポテンシャルの高さにうれしさを感じた。昨年の拾いものとして、最後のCP3からGoalまでがあった。やる気
をなくして失速しないこと。CP3通過時点で、今年も9時間切りの目標は潰えた。昨年と同じ条件だ。リベンジには好都合である。体もまだ動く。気持ちも押
せている。しかも得意とする下りである。が、しかし、後続の追撃を受ける。三頭の登りから御前まで一緒だった松永さん、CP1(浅間峠)手前から三頭の登
りまで抜きつ抜かれつだった杉山さんだ。下に、上位選手のCP3(長尾平)-
Goal間のラップを示す。案の定、二人のラップは素晴らしいものだ。円井のラップは昨年より6分速く、一昨年のものと比べても遜色ない。しかしだ、今や
時代は変わった。昨年、一昨年と優勝者はここを70分であったが、今年は杉山さんの66分を筆頭に、70分が普通のレベルになっている。円井の80分は遅
い部類だ。得意の下りでこれだけの差がつくことはにわかに信じがたいが、松永・杉山両氏の走りを目の当たりにすれば納得である。疲れがあったことは否めな
いが、やはり「気持ち」で負けていたのだろう。仮に杉山さんの66分を円井が出せたとすれば、9時間切りは達成可能であった。各選手の驚くべきポテンシャ
ルにワクワク・ゾクゾクの山耐であった。

---
<工夫点 〜軽量化・携行食>
今年のテーマは軽量化だった。Tokyo Trail
100kmで正人さんや駒井さん荷物の少なさに衝撃を受けたことによる。勝つためには軽量化は必須だと感じた。今回軽量化に取り組んだ点は、
・ ヘッドランプ(および予備電池)の軽量化(歩く登りと荷物を取り出すための予備ランプ的位置づけ)(使用電池をCR123Aに統一)
・ ロングタイツをショートパンツ(水着)へ(昨年の上位者は軒並みランパン、ハーフタイツであった)
・ ゼリー食(アミノバイタルゼリー)をカーボショッツへ(PowerGelは高くて手が出ない)
であった。また、携行食も新たなチャレンジをした。昨年の優勝者横山さんを参考とし以下を携行した。
・ カーボショッツ9つ(500mlのペットボトルに入れ水で少し薄める)
・ ピーナッツチョコ100g(空腹感を抑えるため)
・ アミノバイタル粉末6つ(プロは高いので普通のにした)
・ 黒酢飴7つ(気休めに)
(スタート前に目一杯食料を胃に詰め込んだ後、)スタートして2時間経過後から上記を、それぞれ時間をずらしながらほぼ1時間のサイクルで回した。数量に
関しては、ピーナッツチョコを1/3残した以外はほぼ完璧であった。結果として、今年は、例年終盤で受ける空腹感もなく走りきることができた。携行食につ
いてはかなり成功したと言える(ただし、下記の問題が未解決ではあるが)。
---
<特異点 〜大・小>
今回のレース中、汚い話だが、大を6回、小を10回ほどすることとなった。これまでこの山岳耐久レースに5回ほど出場しているが、レース中に大をすること
は1度もなかった(小も1レース中2〜3回程度)。いかに今年が異常な事態であったか分かるだろう(幸いにも腹痛はなく、走行スピードに大きな影響はな
かったの
だが、大1回で1分ロスタイムがあったとすると計6分ロスタイムがあったことなる)。では、今年、例年と違った点は何か。考えられるのは以下の3点。
・ スタート前に新ビオフェルミンS錠(整腸剤)を摂取
・ レース中カーボショッツ(9袋分)を摂取
・ レース中アミノバイタル粉末(6袋)を摂取
断定はできないが、恐らく、カーボショッツ、アミノバイタル粉末のどちらか、あるいは両方が、今回の異常な事態をもたらしたのではないだろうか。不気味な
問題なので、今後原因解明に努めたい。
---
<ち〜む野獣>
(一部敬称略) 今回の山耐を迎えるにあたって、若手オリエンティアを中心に構成されたトレイルランニングチーム「ち〜む野獣」を引っ張る許田・樋山両氏
の躍進を予感していた。そして山耐では先輩風を吹かせてきた僕も今回ついにどちらかには負けるのではないかと踏んでいた。2人は青梅高水、富士見、北丹
沢、SDAといった各種トレイルランレースで軒並み上位入賞を果たしていた。さらに許田は富士登山駅伝でハートブレイクの1軍の座を勝ち取り、山頂区で好
タイムを出している。そして樋山はその許田に勝る成績を残すこともあり、そして何より若さがある。さて、いよいよ山耐本番。序盤、変電所横の舗装路で許田
氏に抜かれ、その後今熊神社過ぎで追いつき、その後しばらくすぐ後ろに許田氏を付けての走りが続いた。激斜面を落ちるかのように駆け下る。足場の悪い下り
は僕が最も得意とする場所であり、いまだこの走りで引き離せない人はいなかった。しかし驚いたことに、許田氏は全く持ってピタリと後ろに付き、あわや追い
抜かれんばかりの肉薄であった。その度に僕は感激して「いやー、速いねー」と彼に声を掛けた。春に一度雲取へ一緒に行ったことがある。そのとき下りが得意
と聞いたが、体調が良くないらしく、登りも下りも弱く、まだまだのレベルに感じられた。しかし今その下りのうまさを目の当たりにし、当時の言葉が嘘でない
ことが分かった。途中で先頭を交代し、2人で下りをかっ飛ばし、次々と順位を上げた。その途中で、中込氏、杉山氏を抜いた。昨年の8位、5位であり、悪く
ないペースだった。第一CPの少し手前で僕は今レース1回目の便意を催し、不本意ながら彼と別れることとなった(そしてその後二度と彼に追い付くことはで
きなかった)。その頃もう一人の樋山氏は、僕らの8分先を進んでいた。後に驚愕のタイムを叩き出す鏑木氏、横山氏を含む3位集団の中にいたのだ。「膝を壊
しそうなくらい有り得ないスピードで下りを走っていた」、横山は併走した樋山の走りをそう振り返った。「鏑木さんの登りはさすがに速いが下りはそれほどで
もない。横山さんの走りはトータルにうまくて速い」と樋山は言う。さて、話をゴールへと急ごう。12年の歴史の中で、オリエンティア(OLer)の過去最
高記録は9時間8分であった。未だOLerは、山耐の9時間切り、富士登山競走の3時間切り、どちらも達成できていない。それらは長年に渡ってそびえ立つ
壁であった。そしてそんな壁はおかまいなしに、許田は8時間47分の記録を打ち立てた。今年でこそ1位2位のお化けタイムで目立たない感はあるが、同様に
雨だった昨年の横山の優勝タイムが8時間40分だったことを考えると、そのすごさが分かるだろう。僕は彼の歩んできた道を振り返る。大学1年の頃から学生
OL界で頭角を現していた。しかし当時は、足は決して速くなく、技術力とのバランスが良いために速い印象があった。その後、トレーニングパートナーとなる
宮内佐季子氏の登場もあり、豊富なトレーニング量を積み、学生OL界を引っ張る存在に成長するに至った。しかしそんな彼も挫折を味わうこととなった。世界
学生選手権ユニバーシアードの代表選考会での落選である。そして2004年春、2度目の挫折が彼を襲う。世界選手権代表選考会での落選である。それを最後
に彼はOL界から姿を消す。音信も途絶えた。しばらくして許田は、山岳区間を得意とする強豪ランナークラブ、ハートブレイクに籍を置いていた。そしてその
後の躍進は冒頭に紹介したとおりである。今年の山耐のゴール後、許田はこう言った。「山での走力はある程度ついたことが確認できた。ひとまず山から下り
て、これからしばらくロードに専念する。ロードは糞詰まらないが、さらに速くなるためには避けて通れない道だ」。「最終目標はトレイルランなの? それと
もマラソン?」と僕は聞いてみた。「一応、オリエン(テーリング)なんですけどね」と彼は笑って言った。彼はいつOL界に戻るのであろうか。「自分の強さ
に自信が持てるようになったら」と彼は言う。「今の自分を支えているものは、やっぱり一緒に走る仲間の存在や、鏑木さんやハートブレイクの方たちの強さへ
の憧れ、そして『強いやつ(外人)とぴりぴりする勝負がしたい』っていう思いです。そのためには、まだまだ強くならないといけない」。これからも、ち〜む
野獣から目が離せない。
---
<目から鱗 〜リディアード語録>

上のラップを見ても分かるように、毎年の僕のweak
pointは、CP1-2間とCP3-Goal間だ。Start-CP1間は、まあ、突っ込みすぎだと言えるかも知れないが、CP2-3間は比較的タイム
が良い。これは僕が、急峻な下り、足場の悪い下り(Start-CP1間、CP2-3間に多く存在)を得意としているのに対し、CP1-2間の三頭までの
緩やかな登り、CP3-Goal間の緩やかな下りを苦手としているものによると思う。これは単純に、僕が他の人と比べて平地のスピードが遅いだけの話なん
だけど。そしてそれは平地のトレーニング量の不
足によるものだと思っていた。しかし、下のリディアードの文章を読んで、また、その後実践してみて、目から鱗の事実が見えてきたように思う。それは足の動
かし方、フォームだ。僕は山を走りすぎたため、いつの間にか、すり足走法になっていたようだ。リディアードの言うように、膝を上げ、足をお尻に引きつける
走りを意識すると、驚くほど軽く足が回るのだ。足が速く回転しすぎて心肺機能が追い付かない程に。こういう部分でまだweak
pointを潰していくことが可能だし、さらなるスピードアップが予感されてワクワクしてくる。今の自分が置かれている状況下で取り得る選択肢は何か、少
し戦略的に考える必要がある。
「膝の位置が高いとストライドが伸びるだけでなく、振り出す脚のテコが短くなるので、より高い位置でより速く足を運べるようになる」
「膝を高く上げ、足をできるだけお尻の下に引きつけてから前に運ぶと、脚のテコの長さは膝から足までとなるので、足はより速く効率よく回転でき、ピッチは
速くなる」
アーサー・リディアード:ランニング・バイブル、小松美冬訳、大修館書店
---
<意識の壁>
今回のレース結果を振り返って、最も驚いたことのひとつは、横山選手がスタート前に自らに設定した想定ゴールタイムである(Kocci
のサイト参照)。それは、CP1=2:40,
CP2=5:15(CP1-2=2:35), CP3=7:00(CP2-3=1:45),
Goal=8:05(CP3-G=1:05)というもの。CP2-3のラップが速すぎるなど不可解な点は残るが、本当に8:05を狙っていたのなら、敬服
ものであ
る。というのも、8:05というタイムが、誰も到達したことのない未知のタイムであること、彼自身の自己ベストを35分縮めるもの、この2つの性質を持っ
ているからだ。ちょっとうまく説明できないが、要は、8:05というタイムを実現可能性のあるものとして捉え
た、その実力と自信が驚愕なのだ。僕が見据えていたタイムと1時間異なる。その目線の違いだけで敵うものでない。そして何より僕がひれ伏すのは意識の壁
だ。壁がないわけはない。乗り越えているのだ。横山選手は2年前、本レースに初参加したときのタイムが9:12。そこから8:40、8:15とわずか2年
間で驚異の成長
を遂げている。既成概念という意識の壁を打ち破ること。それを可能たらしめる自信。そしてその自信を裏付けたトレーニング。鬼である。(←誉め言葉です)
---
<日本山岳耐久レース13年間の記録・高速化の実態>
いかん、いよいよ山耐マニアになってきた。過去のデータを漁って、調べ上げてしまった。年々、参加者が増え、レベルが上がっているという噂。もはや耐久
レー
スではなくスピードレースの体を成してきたという声もある。さて、本当のところはどうなのか。全13回のデータ(優勝タイム、女子トップタイム、参加人
数、完走率等)をざっと洗ってみた。さらに、今の13時スタートになった第6回大会(1998年)から今年の第13回大会まで、優勝タイム、女子トップタ
イム、総合3・8・20・100位タイムの推移をグラフに示した。


一様に右肩下がり(タイムの短縮)の傾向を示している。ただ昨年(2004年)だけはイレギュラー的にタイムが悪い。タイムの落ち込みは雨・霧の悪天候に
よるものだと考えれるが、それが今年に当てはまらない理由は分からない。ここ5年間のタイムの推移を見ると、優勝タイムは8:53から8:14で約40分
縮んでいる。一時の入賞ラインであった8位のタイムは、10:08から9:05へ約1時間の短縮。女子トップタイムは、総合8位タイムと近い場所にあり、
確実に縮んでいる。今年の女子トップタイムは、1998年、1999年であれば総合優勝のタイムであった。総合20・100位のタイムは、この5年間でと
もに1時間半程度縮んでいる。今年の20位のタイムは、3年前以前であれば、軽く8位入賞のタイムであった。ざっと見てみただけではあるが、近年のレベル
アップの様子を確認できたと言えよう。男子7時間台、女子8時間台、その日も遠くないかもしれない
---
<走り方・フォーム 〜腰・背・頭・リラックス>
nikkansports.com
後藤新弥スポーツ&アドベンチャーよ
り横山さんの発言を引用。「問題はペース。自分の限界と相談して、むやみに走らないこと。僕は上りは大きく速く歩き、きつい個所ではヒザを手で押し下げる
などして、総合的なタイムアップを意識する。下りは上位陣の勝負ポイントなので、積極的に腰を前に出しながらつま先着地で下る。着地で意図して5ミリほど
靴底を滑らせる工夫をして、筋肉への衝撃を和らげている」と横山さん。腰つながりでリディアード語録を紹介。「ストライドを伸ばし、ピッチを上げるには、
膝の引き上げだけでなく、腰を前に運ぶことも忘れてはいけない」「腰を前にスムーズに運ぶには、まずは頭を上げまっすぐ前方を見つめることだ。頭がうなだ
れていると、腰が後ろに引け腰は高く上がらないので、足をお尻の近くを通過させることができない。さらに、これらすべての動きをひとつにまとめるために
は、腕も腰も首も、さらに顔の表情もリラックスしていなければならない」(アーサー・リディアード:ランニング・バイブル、小松美冬訳、大修館書店) さ
らには許田君の言葉へ繋がる。「下半身ではなく、背筋と骨盤を意識して、リラックスして走る」(秘密のブログより引用) みなさんの走り方・フォーム・考
え方、参考にさせてもらいます。
---
<峠の激走>

出典:日刊スポーツ(2005年10月16日)
WEB版:nikkansports.com後藤新弥スポーツ&アドベンチャー〜峠の激
走!! 悪天候真っ暗闇の中で逆転また逆転
---
<2005年山耐出走者ゴール時間割合>
山耐の目標でよく挙げられるのが、(時間内)完走、12時間切り、10時間切りあたりであろう(勝手な推測)。全出走者の中で、10時間を切る選手の人数
は、全体の何割程度であろうか。12時間、14時間以内に走る人は全体の中で、どのような位置にあるのか。そういう素朴な疑問を確かめるべく、過去最多の
2018名が出走した今大会を例に調査してみた(下図)。(最近のいったい何が僕をそうさせるのかが不思議だ。)

2018名中、10時間以内にゴールしたランナーは27名、割合ではわずかに1.3%となった(9時間切りに至っては0.35%)。これは思っていたより
かなり小さな数字であった。100人中1人強しか10時間切りを成し得ないことになる(9時間切りに至っては1000人で3.5人)。では次、12時間を
切った人は81名。全体の4%である。これもびっくりするほど小さな値だ。100人中4人のレベルだ。では全体の上位1割のレベルは、と言うと、おおよそ
14時間となる。そして、中間の5割で22時間台、おおよそ半分弱の45%が未完走という結果であった。仮に出走者を10人とすれば、時間内完走達成が
5〜6人(4〜5人が途中リタイアまたは失格)。完走者のうち14時間以内でゴールできるのはわずか1人で、その他の完走者は14時間以上掛かっているこ
とになる。今回の分析結果は個人的に意外なものであったが、これを大会趣旨や渋滞問題、日本のトレイルランのレベルなどの観点からどう読み取るかは、・・
難しいところである。
△▼△
○ その他雑感
・ 1年程前から、テレビの影響(持久力の向上に効果があるとか)で黒酢を日常的に飲み始める。効果があるのかは実感できていないが。
・ 許田、松永両氏はライトが壊れていたらしいが、それでもCP3-ゴール間のラップは速い
・
TTR100kmから愛用しているナイキエアズーム(100km走っても足裏が痛くならないのが良い)。重たいのとグリップが強すぎるのが難だが、今回の
滑りやすい路面に対して、登りも下りも不安なく進めた。転けることも一度もなかった(下りの攻めが甘い証拠かも知れないが)。またゴアテックス使用のた
め、靴中は快適だった(あんまり関係ないか)。
・ 大岳の登りでハイドレーションパックが空になった(僕にとっては珍しい)(ペットボトルに200mlほど残っていたが)
・ 御岳手前の水場でペットボトルに200mlほど給水
・
ペットボトルは、ザックの横のポケットにしまうことも可能だったが、今回敢えてザックの中にしまった(それは今回、ペットボトルの中身(カーボショッツ)
がメインのエネルギー源であり、ペットボトルを不用意に落としてしまうと、即リタイアに直結しかねない状況だったからだ)。そのため、登りで歩きながら
ザックを外しペットボトル取り出さなければならず、体力的精神的タイム的損失が少なからずあった。なんとか改善したい点である。
・御前・大岳を越えても体は動いた。夏のロングランの成果か、はたまたアミノバイタルの効用か。その割に金比羅が遅いのはなぜか?
△▼△
○ 上位30位の結果
1 3472 鏑木 毅 8:14:09 男
2 3454 横山 峰弘 8:15:09 EASTWIND 男
3 1211 奥宮 俊祐 8:44:49 大宮自衛隊 男
4 1246 許田 重治 8:47:46 ち〜む野獣 男
5 1301 望月 将悟 8:49:16 メスカリート 男
6 3421 武田 光広 8:50:43 男
7 3081 駒井 研二 8:58:17 EASTWIND 男
8 3033 大内 直樹 9:05:47 NoExcuse! 男
9 1193 松永 紘明 9:08:55 男
10 4142 杉山 眞之 9:12:07 牛込自転車倶楽部 男
11 1309 円井 基史 9:12:49 大多摩オリエンテーリング 男
12 1213 中込 拓也 9:16:52 男
13 3576 渡辺 千春 9:17:12 男
14 1258 佐藤 浩 9:18:54 東京野歩路会A 男
15 3768 櫻井 教美 9:21:05 女
16 1141 番場 厚 9:22:31 男
17 3236 矢口 栄司 9:24:35 愛妻鉄人 男
18 1083 樋山 邦治 9:26:58 ち〜む野獣 男
19 3468 木下 宏純 9:34:35 男
20 1307 久保木 智 9:38:09 男
21 3797 間瀬 ちがや 9:47:14 チームA&Fバスク 女
22 3180 小河内 吉哉 9:50:13 大宮自衛隊 男
23 1086 瀬ノ尾 敬済 9:50:14 男
24 3014 阿南 徹 9:51:15 男
25 4343 古越 三幸 9:51:44 男
26 1167 山本 健一 9:53:17 男
27 3115 柳下 大 9:59:55 大多摩オリエンテーリング 男
28 4431 穴澤 孝博 10:04:01 男
29 3455 佐藤 英人 10:09:06 happytrails 男
30 3098 安達 裕司 10:11:59 愛妻鉄人 男
△▼△
○ リンク
公式サ
イト(都岳連)、昨年
の結果、掲示板
○ その他情報
・国
内最高峰のトレイルランニング・レース「日本山岳耐久レース(長谷川恒男CUP)」第13回大会ダイジェストレポート&リザルト(アドベンチャースポーツ
マガジンWEB):第三関門(58km地点)でスパートをかけた鏑木選手。30秒後に横山選手。関門手前で奥宮選手は転倒、右手小指を脱臼。息を
も飲むトップの駆け引きがそこにはあった。
・ハ
セツネで驚異的な記録! 鏑木毅 vs 横山峰弘のインタビュー(Kocci講師トレーニング日誌):トレーニングで鍛え上げた強靱な肉体をも破
壊する標高差2300mの激下り。帰
国後しばらく身動きがとれないほどの激しい筋肉痛と打ち身。1週間に続く筋肉痛と当日朝に引く痛み。鏑木さんの勝利の背景にあったもの。そして横山さんの
8時間05分のタイム設定。
△▼△
最後になりましたが、運営スタッフのみなさん、ありがとうございました。
△▼△
追記:
このままの生活(人生)では、とても8時間台前半(そして7時間台)を出せる気がしない。そこはフルタイムの仕事を持つ者では到達できない世界であるよう
な気がする(それとも単に意識の壁に過ぎないのか)。その越えられない(と感じられる)壁(そしてジレンマ)はオリエンテーリング競技にも通じる。彼らと
対等に走れるようになるためには圧倒的に時間(そして密度)が足りない気がする(これも単なる言い訳に過ぎないのか)。プロ(あるいはそれに近い立場)で
ない多くの社会人競技者は、時間的制約から、ある地点で妥協して、あるレベルでの停滞を許容するものであろうか。そしてそこにはどんな意味があるのだろう
か。僕が例え今の生活(人生)を維持し、多くのものを犠牲(?)にし続けても、これ以上の劇的な成長を得ることは難しく、そこで得られるものは、自分の置
かれた環境に対する言い訳を天秤にかけた自己満足だけではないのか。人生の100%いや50%だっていい、多くの時間を競技に投資できる環境、それはどん
な世界で、そこに飛躍的成長は存在するのだろうか。あるいは組成が組み替えられてしまった僕の体はそんな世界では血を吐いて生きながらえないかも知れな
い。人間は悩みに尽きない生き物であり、僕の時間に対するwant(欲求)はあるいは単に贅沢な悩みかも知れない。恐らく選択肢はいつでも2つあるはず
だ。長いトンネルの底を這うか、大海に飛び込むか。心の奥底にくすぶる炎(願望)はあっても、僕はかつての僕が選んだように「逃げ」の道を選び続けるだろ
う。そして悩み、言い訳し、自己満足に浸るか。
物事は如何様にも捉えることができる、悲観的にも、楽観的にも。思い返そう、こっち側の世界でも代表(補欠
だけど)の座を掴み、かつて神の領域と崇めたタイムを出せるまでになったのだ。(しかし同時に、周囲は僕以上の速度で成長していると認識していることもま
た事実である。だからこそのジレンマなのだ。)今僕が集中すべきこと、それは目の前のタスクを終わらすこと。何かにぶつかるまで、手応えを掴むまで、目の
前が開けるまで、もうしばらくトンネルを掘り続けよう。大丈夫、彼らに追い付きたいという気持ちはまだ死んではいない。
(・・筆が止まらない。悲しかった
のは、この気持ちを殺せと言われたことだったのだ。あるいはそちら側が正解なのかとも思った。「否」と言いたい。言えるだけの・・、そう言えるだけ
の・・、seeking a
way...)
(そもそも競技者たちは何を追い求めているのか。トップに立てる人間は限られている。そしてトップに立った人間ですら、心が満たされること
はないのではないだろうか。そしてそもそもこの世にトップという概念は存在しないのかも知れない。何を求めているのか、その答えはすぐそこにあるのかも知
れないし、永遠に掴めないものなのかも知れない。)