生体図鑑



通称 :サイアミーズフライングフォックス
分類 :コイ科
学名 :Crossocheilus siamensis
分布 :タイ
全長 :最大10cm

以前はややマニアックというか、マイナーなメンテナンスフィッシュでしたが、 最近はその実力が認知されたようで、あちこちのショップで普通に見かけるようになりました。 数少ない「黒ヒゲ(黒房)藻を食ってくれる魚」として有用だと思います。

写真の通り細長い体型で、身体の中心に黒いラインが入るだけの地味な魚です。 若いうちは黒いラインの上に金色〜銀色の細い線が入りますが、成長とともに 黒いラインが太くなり、写真のようになります。
実は、似た名前の別種がおり、そちらは単に「フライングフォックス」と呼ばれています。 下でも述べますが、これらは明確に区別する必要がありますので、混乱を避けるため、 このページでは、本種を「サイアミーズ」、別種の方は「フライングフォックス」と 表記することとします。

さて、この「サイアミーズ」、飼育に関しては、特に注意すべき事はなく、 水質、水温とも幅広い適応を見せます。 藻類を食べてもらうことを期待して導入することがほとんどと思いますが、 雑食性なのでエサは何でも食べます。底砂に落ちた残りエサはもちろん、 慣れてくれば水中を漂うエサまでキャッチするので、特別エサを与えなくても、 餓死するようなことはほぼないでしょう。当然のことながら、藻類などより 栄養豊富な人工飼料や生餌のほうを好みますが、かといって「味をしめてそれしか食べなくなる」 というような心配はそれほど要りません。行動を見ていると分かりますが、常にエサを求めて 水槽中を嘗めまわっていますから、1日1回程度のエサやりで美味しいエサが口に入る分には、 その行動にほとんど影響はないと考えてよいでしょう。
藻類に関しては、黒ヒゲ(黒房)藻を食べてくれる魚として、ほとんど唯一の存在です。 世間での評価は「黒ヒゲが消えた!効果大!」という一方、「大きくなると藻を食わない、 他魚に悪さをする」など賛否両論あり、評価は二分しています。ただ、私の飼育実績では、 黒ヒゲに対する効果は「大」で、すばらしい働きをしてくれます。敢えて清掃と言いますが、 清掃能力は高く、黒ヒゲがちらほらと目に付く程度の60cm水槽であれば、 1〜2匹で短期間で食べ尽くしてしまいます。緑の房状藻類にも効果があり、 同様に綺麗にしてくれますが、反面、珪藻やスポット状藻には全く役に立ちません。
ただ、オトシンなどと比べると、ずっと活発で運動量があるので、藻類除去だけでなく、 水草や石、流木に降り積もったゴミや残りエサを綺麗に掃除してくれる、 メンテナンスフィッシュとしては大変優秀な魚だと思います。

性質はやや荒っぽいところもありますが、他魚には概ね無関心で、トラブルになることは 少ないでしょう。ただし、大型個体は体長10cm以上にもなるので、あまりに小さな魚だと、 ストレスを与えたり、接触事故でダメージを与えたり、エサと間違えて嘗めまわされたりする 恐れもあるので、所謂「超小型魚」との混泳はお勧めしません。もう一点、草食性もあることから、 細くて柔らかい水草の葉を食べてしまう傾向もあります。水草自体が健康に育っていれば、 あまり心配は要らないのですが、弱っている水草などは止めを刺されることも珍しくありません。
以上に気をつければ、大抵の混泳水草水槽で穏当に飼育&活躍できると思います。

・・・と、ここまで良い面ばかりを紹介してきましたが、この魚の最大の問題があります。 それは「ニセモノと混じって売られている」という点です。
ニセモノの代表格は「ガラ属」に属する全く別種の魚で、最近話題の「ドクターフィッシュ」 などもガラの一種です。小さいうちはパッと見では同じ魚に見えますが、ガラはヒレが黄色い、 口の前方のヒゲがない、全体的に雰囲気が違う(おいっ!)など、よく見れば見分けはつきます。
かなり以前から指摘されていた問題なので、最近の専門ショップでは混同されていることは 少ないのですが、ホームセンターなどではまだまだ混同されていますので、注意が必要です。
ガラはかなり大きくなるらしく、また大きくなると肉食傾向が強くなって藻類を 食べなくなるばかりか、水槽中を荒らしまわる・・・らしいです(^^; 私も、最初に買った フライングフォックスがガラだったのですが、大きくなる前に死なせてしまったので、 このあたりは未確認情報です。

次に、ニセモノというより混同されて取り扱われている別種として、 前述の「フライングフォックス」が挙げられます。このフライングフォックス、 名前と姿こそサイアミーズに似てはいますが、大きくなると藻類を食べなくなる傾向があり、 役に立たないという評価が大半です。また、サイアミーズよりも大型化し、最大で15cmほどに なるようです。外見上の特徴は、成魚では各ヒレに黒い斑紋が入るのと、体側の黒いラインの 上の金色のラインが、大人になっても消えない点が、サイアミーズとの大きな違いと言えるでしょう。 ただし、これは幼魚の時に見分けるのは難しいかもしれません。

その他、稀にではありますが、アルジイーターやCrossocheilus属の近縁種と混同されることが あるようです(現場は押さえていませんが)。いずれもサイアミーズのような働きをしないため、 メンテナンスフィッシュとしての評価は低いです。
このように、別種と混同して取り扱われることが、本種サイアミーズの評価を二分している 一因と言えそうですね。
では、ショップ等で本物の「サイアミーズ」を選び出すためにはどうしたらよいか・・・ 集めた情報を総合すると・・・
  ・ガラス面などに吸い付いたりしない
  ・吻端(口の先っちょ)に短いひげが2本ある
  ・体側の黒いラインが尾ビレの縁まで届いている
  ・それ以外のヒレは無色無柄
  ・成魚であれば体側に金のラインが入らない(幼魚はこの限りではない)
という条件を全て満たすものを選べば、ニセモノを掴むリスクはかなり排除できると思います。

以上が「混同されている別種」に関する情報なのですが、実はまだ問題があります。
最近問題視されているのが、非常にそっくりなニセモノ・・・と言うより気性の荒い個体群。
ぱっと見はもちろん、よく見ても見分けはつきません。色々な情報を集めても、「ヒレに薄っすら 色が入っている」とか「黒いラインが尾ビレの途中で途切れている」とか、微妙すぎる相違点が 人づてに語られるだけですし、確認も取れていません。そもそも、別種なのか近縁・亜種なのか、 地域変異なのか個体差なのかもはっきりしません。
確からしいことは、「サイアミーズフライングフォックス」には「ハズレ」がある ということだけです。
コイツら、見た目と行動こそ本物のサイアミーズフライングフォックスに似ているのですが、 気性が荒いのか肉食傾向が強いのか、他魚のヒレやらを平気で食害するらしいです。 ディスカスやエンゼルフィッシュの被害を聞いたことがあります。 このタイプは私は飼育したことがないのですが、水槽に入れてみないと本性が分からないというのが 非常に厄介な点ですね。

以上、導入した時点で当たり外れのある、博打性の高い魚です。購入の際は隔離の準備とか 返品交渉とか、対策を準備してからのほうがいいかもしれません。

ちなみに、繁殖については全く不明です。殖やしても数を飼う魚ではないのでメリットは 無い気もしますが、おとなしいヤツだけ集めて殖やせば「安心・安全なフライングフォックス」 として売り出せるかもしれません(笑)



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