昨夜のサンドイッチは全く消化されず、きれいさっぱり排出されてしまった。水以外出るものが出きったのと睡眠不足と、ちょっとばかり下っ腹が痛い他には、特別変わった症状はない。アザーンのうなり声が乗り移ったんじゃないかと思うほど、不気味に鈍い音をたてていた腸も小休止?? しかし砂漠での下痢→脱水→熱中症ほど怖いものはないので、飲みたくなくても水分補給はしておく。そんなにノドが渇いた感じがしないのがまた不気味・・・。
8時、3階レセプション横の食堂で朝食。降りてくと大助おじさんが気づいて、従業員の女の子に用意させる。食堂からもナイル川と西岸が一望できるが、ガラスは汚れてたりヒビ入ってたりで大変汚い。砂漠の砂が飛んでくるから仕方ないのだろうが、飛行機の窓より曇ってたりするほどで、ガラス越しには写真も撮れない。でもエジプトだと、あんまり窓ガラスがきれいなのもそれはそれで害があるかな。紫外線はもちろん、冷房がきかないとか?(と書きながら、窓ガラスの具合で効きが左右されるようなデリケートなエアコンなんてなさそうな気もします。)
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◆ BREAKFAST ◆
小学校の給食そっくりなパン
ゆで卵、クリームチーズ
バター、ジャム、紅茶
★★
ホテルの朝食はだいたいどこもこんな感じ |
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下痢は続くが腹痛はおさまったかに思え、普通に食べる。この先旅はまだ長いのだ。そして食える時に食っておかないと、次いつ食事にありつけるかわからないタフでなかなか忙しい行程なのだ。
食べ終える頃、昨日空港で、アブシンベルで、そしてスークのレストランで見かけた例の日本人カップルが登場するもんだから、お互いびっくりする。
「あら、おはよーございます。」(苦笑)
吸い込まれたホテルも同じかぁ。
ここで、その後団体ツアーでやたら目についたハネムーンとおぼしき連中の話をしましょう。エジプトで私が見た新婚旅行の日本人は、なぜかこれまで他国で見かけた多くの人たちとはまるで違っていました。ハワイやオーストラリアやヨーロッパなどの無難な王道コースを選ばないあたり、個人的に共感できるかも?と思いきや、それは恐ろしく間違った先入観(?)で、結局のところ「ハワイやアジアは行ったことあるからかわったところがいいな〜」「親が出してくれるから遠いところに行っちゃおうよ〜」「ピラミッドとか見たいし〜」って感じでなんとなくエジプト、どこでも良かったが旅行会社に勧められるまま来ちゃった、みたいな、余計なお世話ながらエジプトに来るキャラじゃありませんわよ、場違いですわよ的お世辞にも頭良さそうには見えない恐るべきバカップルだらけだったのです!!(ハネムーンならしょうがないんでしょうか?にしても異様に目立って浮いてた・・・)。詳しく申しますと・・・ハシャぎたいならリゾートにしときなさい、と思わず説教したくなるような言動仕草、あるいはビジュアル系のライブ帰り?!ヴェネチアのカーニバルじゃないし?!と目を疑うような格好(ほんとにびっくり!!)、かと思えば数年海外放浪してるようなヨーロピアン・アウトローでもそんなにだらしなくないぞ、とそばにいる方がこっぱずかしくなってしまう品のなさ、はたまたブランドでキメたいならヨーロッパにしときなさい、と言いたくなるような奴らばかり。さらに言わせてもらうと、どいつもこいつもびっくりするほど不似合いかつ不細工な組み合わせ、凸凹カップル大集合状態な上(これは見ていて面白かったけど。笑)、キメてるつもり?がどこかズレてる、着崩してるつもり?がだらしないだけの、ピーコが見たら声を裏返して一蹴されるどころかムせて終わりにされそうな、開いた口がふさがらない、かしげた首が戻らなくなりそう、眉間によせたシワまで取れなくなりそうなあまりに不思議でおかしすぎるセンス。この国に来て強烈なものを目にしすぎた私の方がおかしくなってしまったのだろうか?? いやいや、同じツアーの他の人たち(友人同士や年配夫婦など)はいたって普通か普通以上、やっぱりタフで頼もしい旅好きって感じに見えたのだから、幻覚ではないはず。にしても同じツアーの人等が気の毒になってしまうほど、頭か顔か、さもなくば品かセンスくらい良くってよ?!どうしてまたこんな変わり者ばかりが来ちゃったの??あくまで、たまたま私と同時期に来ていた数十組だけと思いたい(にしては例外とは思えないサンプル数だよなぁ・・・)などと謎を深めながら勝手にがっかりしていた私であるが(と前置きが非常に長くなりましたが)、今、すぐ隣のテーブルで朝食をとっている2人の日本人はなかなかイイ感じ。チャラチャラしたところもなく、聞こえてくる会話もマイペースでいてしっかりしてそう、もちろん服装も普通で、またしても勝手にほっとする。行動が同じっていう点をさし置いてもね。
「おさきに〜」
軽く挨拶して部屋に戻る。
スタッフも眺めも経済的にも良かったけれど、病室みたいなアスワンのイッサラームホテルで
ほんとに病人になっちゃいました
欠けたキーがせつなく虚しく見えるのも、食事にあたったせい??
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9時、チェックアウトして大助に昨日の借り、残りの10£Eを払う。荷物を預かってもらい、すぐ隣(といっても200mくらい向こう)の郵便局へ行こうとすると、
「手紙出すのかい? 切手ならあるから、そこのポストに入れておけばいいさ。」
とレセプションの目の前の赤い箱を指す。
「でも封書だから値段がわからなくて。郵便局行ってくるよ、すぐそこでしょ?」
「貸してごらん」
彼は私が持っていた手紙を手に取り、
「なんだか重いなあ・・・(笑)カード何枚入ってる?」
「こっちは2枚だけど、他のは1枚ずつ。」
しかし彼は重さをはかることもなくハガキと同じ1.25£E(25円)の切手を出して勝手に貼ったかと思うと、それをさし出しながら何食わぬ顔で当たり前のように命令した。
「そこのポストに入れておきなさい。」
「え〜〜?でもこれ、重いでしょ?!」
「ノープロブレム!」
「・・・・」
超アバウト。自信に満ちた“ノープロブレム”はどこから出てくんの?? いくらエジプトでも郵便料金にディスカウントはなかろう。が、これで届かなかったらあんたのせいだぞ、切手代どうしてくれる?!届かなかったら皆さんゴメンなさ〜い、などと思いながらいちかばちか投函してみる。(これがカイロ初日なら大助の言うことも全く信用せず郵便局に走っていただろう。やっぱり私、かわったのかな?) しかし、日数はかかったものの(後日投函したものの方が先に届いたので、ほんとに重量オーバーでアスワン郵便局で葬り去られたかと諦めかけました)間違いなく重量オーバーと思われる封書類、無事に届いた模様!! いやはやどこまでも謎だわ、エジプトって・・・。それはそうと大助が貼ってくれた切手は、ツタンカーメンの横に‘2010’とサッカーボールがデザインされたもの。
「これって、ワールドカップ?」
「そうだよ」
「2010年はエジプトなの?」
「ホープ!」(笑)
「・・・・」
まだ決まってないのに切手にしちゃうところもエジプシャンの気の早さや図太さを語ってるような。しかしこれもその後さらに、思いっきり‘2010サッカーワールドカップ・エジプト’の、知らずに見れば絶対公式商品だと思うようなTシャツ着てる人見かけたから、エジプトでは国をあげてかなり盛り上がってたトピックなのかもしれない。(開催地決まったのでしょうか?まだなら、いつ決まるんだろ??)
「空港へ行くの?タクシー呼ぼうか?」
「ううん、もうドライバーと約束してんの」
「そうか、彼は君のこと知ってるのかい?」
「うん」
すると9時20分の約束5分前に昨日の彼が登場! 3Fのこの場まで上がって呼びにきてくれた。
“Thank you for coming!”
2日間お世話になったタクシーの兄ちゃん
フルーカは後味悪かったけど
お腹も壊したけれど
彼やホテルのスタッフや
レストランの気さくな大将らのお陰で
アスワンの印象は大幅UP |
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彼もまた空港までの道中90kmは出していたが、やはり20分はかかる。
「ノン・スモーキング・カー続けてね!」
9時半過ぎ、ルクソール行きにチェックインし、昨日と同じ、広くて明るい待合所で搭乗を待つ。と待合所の隅にきれいで信用できそうな公衆電話を見つけ、土産物屋でハガキとテレホンカードを買う。
「いちばん小額なテレホンカードちょうだい」
「どこにかけるの?」
「ルクソール」
「それなら大丈夫だ」
エジプシャンにしては珍しく、なりきれてないビジュアル系かなんちゃってロックミュージシャンみたいな長髪の、ほんのちょっとイケメンな兄ちゃん。以前NHKのスペイン語会話に出てた(今も出てる?)ホセ似。テレホンカードはいちばん安いもので20£E(400円)。公衆電話は黄色とピンクの2種類あり、ピンクの方に並んでいるとホセが黄色い方だと教えてくれる。前の男が電話を終え、私に順番が回ってくると電話のところまでやってきて、カードの入れ方やダイヤルの手順を教えてくれる。何のことはない、受話器を上げてカードを入れ番号を押すだけだったけど。
ルクソールのホテル予約を試みる。下痢の体を押してホテルを探したり歩き回るのは辛い。そうでなくてもルクソールは客引きが激しく、予約してないとタクシーや客引きたちはコミッションをもらえるホテルに無理矢理連れて行こうとするという。さらにルクソールのあまりに安いホテルは盗難が多いと悪評高いので、やや高め・中級のところ、なおかつアスワン同様少々うるさいかもしれないがロケーション重視でスークやルクソール神殿に近いところに的を絞る。それでも、
「朝食込み1泊40£E(800円)よ」。
電話に出たのは女性、こちらの名前を言ったのみで問題なく予約完了。電話が終わるとホセは、
「ホテルにかけてたの?」
「うん」
「このカードでヨーロッパ中どこでもかけられるんだよ、だいたい5分は話せるね」
「国内なら?」
「う〜ん、地域によるけど」
「例えばルクソールなら?」
「15分は大丈夫さ」。
バスに乗る直前のゲートで荷物検査があり、バスで飛行機まで移動してもタラップを上がる手前で再び荷物検査。昨日のアブシンベルよりかなり厳重。テロを警戒してであろう、中まで開けてかき回される。テロの多いご時世に加え、数年前のルクソール・観光客狙いの無差別テロの余波もあるんだろうな。昨日と変わらず搭乗時に写真を撮る人は多いが、今日は何も言われなかった。
10:40 エジプト航空136便ルクソール経由カイロ行き、座席は2−4−2列と昨日より大きい飛行機だがほぼ満席。後ろの方にカイロまで行くエジプト人ビジネスマンがぱらぱら乗ってくるくらいで95%が観光客、しかもそのほとんどが欧米人と日本人の団体。ルクソールまで、またほんの25分程度のフライト、数分の水平飛行の間にマンゴーかグアバかオレンジの3種類しかないらしいパックのジュースが配られる。しかしあまり眠っていないものだから、乗ったとたん疲れとだるさが押し寄せ、機上で急激に体調悪化。ヤバい雲行き・・・うげ〜〜、しんどいよー。
11時過ぎ、ルクソール空港。早くにチェックインしたせいか、なかなか荷物が出てこない。LOOK・JTBのタグがついた巨大なスーツケース40個以上をいくつものカートに積み分けたはいいが、ポーターだけで運びきれず、小柄な添乗員がロクに前も見えない状態で押している。わ〜、ツアコンって大変!!ホントすごいわ・・・結局旅行中‘何でも屋’にされるもんね。実は一時期憧れたこともあったが、単なる旅行好き・人の世話好き・体力自慢だけではやってけない職業ですね。私はツアコンなんて絶対向いてないし、仕事になると旅行嫌いになってしまうだろう。ちなみに私がエジプトで見かけた日本人コンダクターはなぜかみんな20代後半くらいの若い女性でした。そういえば昨日、アブシンベル神殿行きのエジプト航空のバスで隣になったツアコンは、その少しの時間も持参の自作ファイル‘エジプトについて’を真剣に読んでいました。
さて、ルクソールでも観光客のほとんどがツアー客。私の荷物が出てくるのが遅かったせいもあるが、タクシーに乗る人はほとんどいない様子・・・でまた少しドキドキしなくちゃいけない。唯一、欧米人ファミリーが、
「ヘイ、タクシー!!」
軽やかに片手を上げて1台を捕らえたかと思うとすぐさま荷物を積んで出て行った。その早さは、交渉しなかったか、ドライバーの言い値通りで承諾したとしか思えないあざやかさ。あんな風にスマートにかわせたら格好いいなぁ、と思うが私はここでも20£Eにまけさせるべく交渉してしまう。アスワンほど大勢かつバラエティ豊かな連中に取り囲まれはしないが、それでも4、5人と戦う。
「ホテルは決めてるのか?」
「30£E(600円)だ!」
「何ホテルだ?」
「30£Eがガバメントプライス(公定料金)だ!」
25£E(500円)までしか下がらない。またも私の頑張りが足りなかったのか、ドライバーたちがつるんでいるのか、20£Eでは誰1人イエスと言わない。しかしガバメントプライスだと言いながら5£Eは下がった。実はこの時、それどころじゃないほどに腹痛が炸裂しており、ディスカウントなんかで時間を食ってる場合じゃなく、とにかく早くホテルに駆け込みたかったのだが・・・。ピンチ!!! ルクソールの空港はアスワンに比べると町に近く、10〜15分くらい。結果、アスワンの方が物価が安いとはいえ、やっぱりドライバーの言い値30£Eは高いことが判明。
町に入るとアスワンより断然車も人も多く、スーク付近はよりホコリっぽく汚くて、ちょっと怖い感じもする。後部座席で腹抱えてうずくまりながら町の様子をうかがい、お札を数えているうちに、タクシーはちゃんと指示したホテルの前につけてくれる。ところがあいにく財布には10£E札しかなく、30£Eを支払い5£Eのお釣りをもらおうとすると、ドライバーは5£E(100円)のお釣りすら持っておらず、車を降りてそこらの人に両替してくれと聞いて歩き回らせるハメに。5£Eの小銭くらい持っておけ!と呆れる私がいる一方、たった5£Eをディスカウントさせたためにドライバーに労をかけ思わず時間を食ってしまうという事態に「もしかして悪いことした?」と悔しくも同情してしまいそうになる私がいる。さらに、25£Eの約束を守ってくれようとするところに驚いてしまったりもして複雑。そんなことより、自分で撒いたかも知れない種ってこともさておき、腹痛ぇンだからさっさと崩してお釣りおくれっ!!
ルクソールのホテルも汚くはなく、アスワンほど年季は入ってないし病院っぽさもないが雰囲気は似たり寄ったり。1Fのレセプションには、エジプシャンにしては大変珍しいことに、ヘガップで髪を隠していない茶色いスーツの若い女性がひとり。カイロでは時に見かけたが(それでもまだまだ少ない)、地方では女性がホテルや店頭やレストランで働いている様子をあまり見ない。加えて髪を隠していないという、我々の感覚からすると当たり前のことがいやに新鮮に映ってしまう。しかし、彼女は私が数時間前に電話で予約したことを告げてもニコリともしないどころかロクに返答もせず、顔に書いたたいくつの文字をめんどうに書き換えながらぶっきらぼうに一言、
「パスポート」。
中国の事務員以上に愛想も感じも悪い。瞳に曇りもないが輝きもなく、よっぽど人生面白くないのかと思う。今まさに非常に具合の悪い、洪水in腹部最高潮でのたうちまわりたい私の方が目は輝いてるぞ。それでも構わず言うべきことは言っておく。
「シャワーつきの静かな部屋にして」。
疲れた彼女は表情を変えることなく、相変わらずつまらなさそうに受話器をとる。
ほどなくして現れた、内線で呼ばれた‘小間使い兄ちゃん’は無言の女からキーを受け取ると、私のトランクをひょいと持ち上げ、アスワンの馬面ヒュー・グラントよりもさらに軽やかに?!同じく2段飛ばしで階段の上に消える。ちょっと待たれ!(なんとなく岡山弁) 若い男は階段を素早く軽やかに駆け上がるのが美徳なのか? 歩調を合わせて振り返りつつ先導してくれるような心遣いなんてまるでない。相手が女性だろうが子供だろうが?ペースを合わせるという言葉を知らない奴が多すぎる。一気に駆け上がり、部屋の前で「早く来い」という顔をしながら息をきらせるのがエジプト人。小柄で痩せてて気が弱そうで‘小間使い’役がぴったり、爆笑問題太田みたいな猫背の兄ちゃんは、階段で4Fまで上がり廊下つきあたりの部屋を開けて、青い顔の私がヨロヨロと上がってくるのを待っていた(もちろん顔が青いことにも、具合が悪いことにも気づくわけがない)。猫背は部屋の電気をつけ、バス・トイレを見せて「満足か?」と目で聞き、50pt(10円)のチップを渡すとそれ以上を要求することもなくまたどこかに消えていった。しかし、荷物を解いてトイレを使おうとしてそこではじめて、水洗が壊れていることに気づく。水が流れない!!
「!!!」
あまりのお腹痛さに階下に降りて行くより前に、ちょうど部屋を出たところ、廊下にもあったトイレに駆け込む。朝の食事とまだ腸のヒダの片隅に残っていたと思われる昨日の夕食もぜーんぶ出てしまい、なんとなく頭がフラつく熱っぽさも感じる始末で、認めたくないながら間違いなく体調は悪化している。下痢と発熱と脱力感・全身倦怠感・・・もしやA型肝炎?! 肝炎・肝臓病という言葉に超敏感、神経質なほどに大警戒する職業病のせいかそんな文字が頭をちらつくが、冷静に考えれば肝炎は潜伏期があるはず。食後数時間で速攻・強烈に症状が出るのは大腸菌っぽいなぁ、うん、肝炎じゃぁないと言い聞かせる。
教訓:体力を過信すべからず。エジプトには必ず下痢止め持って行きましょう。
レセプションに戻り、疲れた女に部屋のトイレが壊れていることを言う。と再び呼びつけられた猫背は、やはり私を待たず2段飛ばしで勢いよく部屋へ行く。エレベーターは壊れたままでもう長く使われていない様子で、大袈裟な南京錠がかけられている。猫背は水洗のノブを回し、タンクの蓋を上げて手を真っ黒にしながらしばらく中をいじっていたが、無言のまま両手のひらを上に向けて首をすぼめて‘手に負えないジェスチャー’をする。そしてペースは落とさず、手すりに腰かけて滑り降りんばかりの勢い、消火活動に出動する消防士以上の素早さで下に行ったかと思うと、別の部屋の鍵を手に、一度解いた荷物をまたゴソゴソまとめる私の前に戻ってくる。ところが、案内された別の部屋は思いっきりスークに面していて、昼間から明らかにうるさい。
「スークに面してるじゃない。うるさいのはイヤなの、静かな部屋にして」。
でも猫背のいいところはイヤな顔ひとつしないこと。またすごい早さでレセプションに、さらに違う部屋の鍵を取りに行く。
結局、トイレが壊れている最初の部屋の
隣の部屋に落ち着き
猫背にはもう50ptあげておく
出るものが出ても腹痛は続き気分も悪い
それでも、このまま部屋で寝こむわけにはいかない
今後旅を続けるにあたって
課題だらけなのだ |
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500mほど歩いてナイル川沿い、ウィンターパレスホテル内のエジプト航空のオフィスに行く。具合が悪く倒れそうな身にもおかまいなくタクシーやフルーカの客引きはアスワン以上に声をかけてきまくり、悪くなかった機嫌まで少し悪くなる。腹を抱えて私までも猫背になりながら、UVカットの黒くて重いガラス戸を押す。キャンセル待ちをしている明後日のシャルム・エル・シェイク行き。整理券の機械はあるが壊れていて、いくつかある窓口の後ろにつっ立っていると、いちばん奥のVIP用デスクみたいなところにどっかと腰かけていた中年男、オフィスでいちばん偉そうで貫禄のある支店長っぽいおじさんに呼ばれる。で、カウンター窓口ではなく、スチールの大きな机の前に置かれたフワフワすぎて落ち着かない革張りのソファに座り、例のチケットを出す。しかし支店長?はデスクトップのキーボードを叩き、
「マダム、明日か明後日また出直してみて」。
がっかり。ルクソール⇔シャルム・エル・シェイク間は週2本しかないが、1ヶ月近く前からキャンセル待ちをしているのだから取れるだろう、と甘くみるもの。しかし、直前には動きがあるだろうと託していた望みもここにきて無残に打ち砕かれ、それどころかエジプト航空国内線の予想を超える混雑ぶりがこの後のリサーチでいっそう明らかになるのである。
「もしこのフライトが取れなかったら、他にシナイ半島へ行く方法、何かありますか?」
「いったんカイロに戻るしかないかな。」
「じゃぁ明後日、ルクソールからカイロへはまだ空きある?」
「調べてみよう・・・(しばらくPCで検索)・・・・いっぱいだね、全便。・・・(さらに検索)・・・・翌日土曜も・・・夜遅い便、イーブニングしか空いてないな。君、明後日はカイロへも行けないよ。土曜の晩しかね」。
絶望的混み方。どうしよう。ルクソールで足止め?! 先への道が粉砕され、その場で頭の整理がつかず、
「もうちょっと考えて、また出直します」。
教訓:エジプト航空国内線は激混み!!スケジュール立てて予約は確保してから出発しましょう。
来た道を戻りながらトーマスクックの小さな事務所で$70を両替してみると、手数料もなく小銭も混ぜてくれてありがたい。ツーリストバザールという名のわりには寂れて活気のない、過疎に悩む田舎のアーケードみたいな一角の旅行会社、窓ガラスにでかでかと貼ってある‘HURGHADA → SHARM EL SHEIKH BOAT$32’の広告につられて、思考回路故障中で空っぽの頭のままドアを押す。
4畳半ほどの細長い部屋に長いカウンターといくつかの椅子、カウンターの中と両サイド・後ろ3方の棚にはびっしりファイルや書類が詰まり、収まりきらないものたちがデスクやカウンターに山積みにされている、エジプトに来て目にとまった中でいちばん仕事してそうなオフィス。カウンターの中にはこれまた貫禄のある、ヒゲ生やしているがうさん臭さのないどこか優しげで、スティービー・ワンダーの親戚みたいなおっさんが座っていた。
「ハルガダからシャルム・エル・シェイクのボートの時間、教えてください」。
「これだよ、コレ」と指された、デスクの横に貼ってある時刻表を見ると、ハルガダ発は金・日以外の毎日朝8時。つまり週5便。
「これだけ?」
「今はね。いつ行きたいんだ?」
「明後日」
「なら明日にはハルガダに行かにゃならんよ」
「ハルガダまで、外国人が乗れるバスってあるの?」
「どれだって大丈夫さ、毎日7便」
「時間はどのくらいかかる?」
「4、5時間だ。バスはいいが、明後日ボートに乗りたいなら、ボートのチケットは早く買わないとダメだぞ、混んでるからな。」
彼はそう言いながら受話器を上げ、どこかに電話をし、誰かと三言・四言会話したかと思うと、
「まだボートの席はあるってよ。」
今船会社に電話したの?ハルガダに?!それとも別の旅行会社?本社とか??そして、番号覚えてるの?! ちょっとびっくりしながら、
「わかった、でももうちょっと考えさせて」。
ついでにルクソールからハルガダへのバスの時間も聞いておく。これまた驚いたことにおっさんは記憶していて、宙でスラスラ言うので「ちょっと待って!ここに書いて」とマイ・ノートに書かせる。そうこうしているうちに何となくここルクソールの話になり、明日の西岸1日ツアーに勧誘される。彼はメモ用紙に“Valley of the Kings,・・・”と書きながら王家の谷、王妃の谷、ハトシェプスト(女王葬祭殿)、メムノンの巨像を回る約6時間のツアー、遺跡入場料込み・英語ガイド兼運転手(もちろん車も)つきで$20と説明する。朝8時半集合で午後2時半か3時には終わるから、その後夕方のバスでハルガダに向かうこともできる、十分間に合うと言う。ルクソール西岸は広大な砂漠、レンタサイクルで回ることもできるようだが相当な体力が必要とのことで、いくらなんでも今の私には無理。アスワン西岸の砂漠も自分の足での散策は1時間が限界。もちろんガイドとツアーの質はわからないが、その内容で$20は高いと思わないし、何よりおっさんが信用できそうなのですんなり申し込む。ここでも、早く札束をなんとかしたくて全て$1で支払う・・・。ふとお金を数え、引換券がわりの紙切れにサインをするおっさんの頭上に目をやると、私がこれのためにシナイ半島を目指すといってもいい世界遺産、聖カトリーナ修道院のポスターが貼ってあるじゃありませんか! 思わず期待をこめて聞いてしまう。
「もしかして、ルクソールから聖カトリーナへ行くツアーってある?!扱ってたりしない?」
しかしおっさんの答えはノー。なーんだ・・・。
「私ね、明後日シャルム・エル・シェイクに行きたいのは、土曜にセント・カトリーナに行きたいからなのよ。金・日は修道院閉まってるんでしょう?」
すると彼は私の質問に答える前に、というより私が質問をし終える前にまた受話器をとり、どこかにかけ誰かと数言やりとりして、
「開いてるって」。
今どこに電話したの?!修道院?観光局?知人?別の旅行会社?本社?!そしてそこも番号覚えてるの?! 謎だらけであるが、ルクソールで足止めだけはどうしても避けたい私のよろず相談窓口みたいになってくる。
「実はね、ルクソールからシャルム・エル・シェイクへのフライトをキャンセル待ちしてて、さっきもそこのエジプト航空行ってきたんだけど・・・」
「どれ、チケット見せてみなさい」。
今行ってきたばかりという私の言葉を無視し、また番号を覚えているらしき彼は商売人が電卓を押す以上の早さでダイヤルを押す。ところが、先方(たぶんエジプト航空)はずっと話し中で、自動リダイヤルを10回続けてもつながらない。さっきオフィスに行ってきたんだし、つながらないのならいいって!と席を立とうとしても、
「まぁ座ってろ」。
船の席にしろこのチケットの件にしろセント・カトリーナにしろ、どこにかけてるのか知らないがすぐに電話して情報収集する勢いのすさまじさは、ちょっとひいてしまいそうになるほど。私の中でまた新しいエジプシャン像が増え、できつつあったエジプト人ってこんな奴、という定義もひっくり返されて再び闇に包まれる。頼もしいがあまりに他のエジプシャンとかけ離れているように見えるもんだから、いい意味で何?!このエジプト人!!なのである。結局リダイヤルはつながらず、あきらめて別の番号にかけ(エジプト航空の別の支店?)しかし私のチケットを見ながら誰かと話をし、満席であることを確認した様子。どうやら、自分で確かめないと気がすまない性格もあるようだ。その後私の宿泊ホテルを確認し、外貨が欲しいのだろうドルからポンドへの両替もすすめたりする。さっき両替したばっかですわ!
「王家の谷のツアーは明日8時半にこの場所から出発だ。このオフィスはほんとは9時に開くんだが、ワシではなくてコイツ(と誰もいない隣の席を指して)が8時半に来る。その時まだエアーが取れていなければ、ボートのチケットを買いなさい。(航空券をピラピラさせながら)これは明日の朝まで預からせてもらうよ」。
というわけで危うく足止めは食らわずにすみそうだが、空路か陸路+海路かは明日までお預け。ここでボートのチケットを確保してしまうのが安全なのかも知れないが、明日1日西岸ツアーのあと夕方のバスでハルガダに出発し、夜遅くハルガダに着いて1泊したら翌早朝紅海横断、2時間半の水中翼船はキツイよなぁ・・・などとはるか遠い道のりを想像すると、まだ空路への望みは捨てきれない。明日のツアーの領収書だけもらってオフィスを後にする。ツーリスト・バザール内、東岸観光案内所やAboudi Bazar Book Shopに近い‘NAWAS TRAVEL’のおっさんは頼りになる必殺電話人、皆さんも困った時はそちらへ。
こうしてあれやこれやと人と話していると、気分の悪さもややましに? するとまたすぐ自分の治癒力を過信して(この自信もどこから出てくるのやら)さすがおかぽん、今日も大腸菌なんかに負けず、半断食まで強行しながら体はスカスカでも遺跡めぐりに出かけるのだぁーー!!と豪語したくなるどうしようもない私。ホテルで自転車借りてカルナック神殿まで自転車で行っちゃおうか?!やっぱり無理かな、やめといた方がいいかなぁ、などと気力と体力に相談しながらアスワンより少しにぎやかなナイル川沿いをプラプラ歩くルクソールの昼下がり。回復の予感は気のせいで、後で再び瀕死の状態に陥ってから、自分の身のほど知らずと我ながら手に負えない懲りない面に呆れることになるのだが・・・。今日は朝から出会う人に恵まれているような、そしていろんな人に助けられてるような気はする。
Continue... |
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