CAIRO 14 / NOV / 2003 *FRI*



このままカイロ市内に戻るよりは、一気にサッカラやメンフィスまで行っておきたい。声をかけてくるタクシーを無視して‘営業活動してないタクシー’を探すが、そういうタクシーは車が停まっていてもドライバーがどこか行っていなかったり、いてもヤバそうな・怖そうな顔だったりしてなかなか交渉に入れない。顔だけで判断するのもどうかとは思うが、考えようによっては一種のナンパ?!だから重要なポイント。やっと、いくぶんソフトな顔つき、ホンジャマカ石塚を30kgくらい痩せさせたような、暇そうにただ客を待っている能なしドライバー発見。窓越しに、
「サッカラ、メンフィス、ダフシュールまわって4時半にここ(ギザ)に戻ってきたいんだけど、間に合う?」
腕時計を持たない彼、逆に私に時刻を聞き、サッカラまで15分、観光30分、メンフィスは20分・・・とぶつぶつ言いながら頭で計算して、
「大丈夫だ、乗りなよ」
「いくら?」
「君が思う値段でいい」。
そう、これは本当。エジプトのタクシーはメーターがついていても壊れているか使われていない。マーケットでの買い物同様お互いの言い値と交渉次第なのだ。1km=1£E(20円)というだいたいの相場はあるが、観光客が価格を見極めるのは難しすぎる。ホテルで相場を教えてくれることもあるがそれも人によってまちまちだったり、ホテルが専属タクシーと手を結んでふっかけることもあるようで、これまた信用ならないのだ・・・! ここで今回身につけた、おかぽん流タクシーの乗り方 in エジプト指南。
近距離の場合:
 ・ちょっとした市内のピンポイント移動なら値段交渉しない。
 ・向こうから声をかけてきたり、ホテルや観光地で待機している車には乗らず
  できるだけ流しのタクシーを拾う。
 ・地元客が降りたすぐ後に乗るのも無難。
 ・ドライバーの斜め後ろの席に座り(現地人は1人でも助手席に座ることも多い)
  走行中もお金のことは言わず、降りるとき肩越しにさっと紙幣を握らせて降りる。
 ・お釣りをもらわなくてすむよう、小額紙幣はたくさん用意しておくこと。
 ・観光客だとたいてい怒ったふりをしたり、これっぽっちじゃダメだぁって感じで首を振ったり
  「10£E!」などと言われたり、とにかくボろうとするが
  これがあまり怖くないし強くも言わないので「これ以上はやらないよ!」と一喝シャットダウン。
  有無を言わせず思いっきりバタン!とドアを閉めて去る。

長距離の場合:
 ・これも客引きしてくる奴にはできるだけ乗らない。
 ・まず目的地、周遊ルートを告げて必要な時間を教えてもらう。
 ・遺跡めぐりの場合は入場ポイントを詳しく挙げ、待ち時間まで指定、その後料金交渉。
 ・空港やホテル前、観光地で数人のドライバーに囲まれてしまった場合は
  逆に利用する意気込みで全員と交渉する!!
  Ex.「50£Eで行く奴いないか?いたらそれに乗る!」(この手、けっこう使えます)
 ・納得したら乗車。
エジプトのタクシーはボロい。これまで訪問した国の中で最悪。でもこれは国の経済状態や生活水準のせいではなく、気候や環境の苛酷さのせいだろう。もちろんほとんどが中古車で、汚くはないがタコメーターがないのなんて当たり前、スピードメーターすら壊れている。もちろんAT車なんてあるわけがなく、傷だらけボコボコ、塗装は剥げてるし窓上げ下げハンドルまでぶっちぎれていたりするくせに(窓の開閉もできないなんて・・・雨降らない国だから直されないんだろうなぁ)ステレオだけはつけていて、エジプトの流行歌を大音量でかけたりする。石塚(彼も本名をモハメドと言ってた気がするが、ここは石塚のままで書きます)は今エジプトで一番人気というミュージシャンのカセットテープを数本見せてくれたが、どいつもこいつも大変イケてなかった。太めでパンチのないただのおやじ。しかもうるさくって単調でエコーがやたらきいている似た曲調ばっか。誰だっけ、昔流行った“Livin’la vida loca”のアラビア語バージョンを延々リピート再生されているような感じ。

階段ピラミッドのあるサッカラはギザの南10kmのところ。郊外の交差点は信号がないかわり、こんもりと隆起が作られていて否応にも減速しなければならない仕掛けになっている。スピード落とさなければスタントみたく車ぶっ飛びます。小さな川沿いを走ること2、30分で階段ピラミッドが見えてくる。

面白い形だが
ギザ3大ピラミッドを見た後ではショボすぎ
周辺にある壁画は面白かった


団体客は各国から来ていたが
個人でここに足を伸ばす者は
そんなに多くないみたい

サッカラの遺跡もこのピラミッドを中心に数kmにわたってミニピラミッドや墓が点在しており、やたら広く坂も多く歩いて回るのは無理。そこで石塚に頼んでいくつかの墳墓を回ってもらう。サッカラ遺跡のチケットは共通で20£E。ところが、各墓にはバクシーシ目当ての番人おじさんたちが必ず数名いて
すっごく邪魔。これはこの先々、どこの墓や博物館でもそうで、見学者ににわかに近づいてきては、展示物に添えられているキャプション(説明書き)を見ればわかるようなことをいちいち言い(それも中1レベルの英単語のみ)、それで案内・ガイドしたんだからバクシーシ!とくるわけである。イライラして逆に見学する気が失せることもあって、とにかく1人で静かに見学させろ〜〜!!
ほっといてくれぇ〜〜〜!!! は〜、遺跡の中でまで逃げ回るなんて悲しい・・・。

見学を終えて駐車場に待たせていたタクシーに戻ると、石塚が「今はラマダンだから遺跡は全部3時で閉まるみたいだ」と言い出した。
なぬー?!コイツまで私を騙すのか?!と(もう100%人の言う事信じてない私)マジ切れ寸前
じゃぁこのあとダフシュールには行かないっつうわけ?!」
「行っても多分閉まっているよ」。
で、キレちゃいました・・・。
それ最初に言うべきことじゃないの?!!なんで黙ってたのよ!これからもうギザに帰るってか?!やってらんねぇよ、ヘボドライバー!!!
こんな暴言を吐く自分にも驚くが、さすがに彼も驚き慌てて
「僕も今、君を待ってる間に知り合いのタクシーの連中に聞いたんだ、
ホントだよ! こいつが教えてくれたんだ!」
と言いながら近くに停まっていたライトバンのところへ私を同行させ、バンのドライバーと2人して必死で言い訳?を始めた。
石塚   「僕は今年ラマダンに入ってから今日はじめてサッカラに来た、だから知らなかった。」
バンの彼 「今はどの遺跡も3時で閉まるよ、本当さ、ラマダンだから仕方ない。」
石塚   「ラマダン中はみんな3時に仕事終わって、家に帰って夕食の準備をするんだ。」
バンの彼 「昨日も3時で閉まったんだよ!」
完全に不信感は拭えないが、そんな必死の弁解も聞きたくなく、“ラマダンのせい”を20回くらい繰り返そうとするばかりなので
「わかったよ!ハラース!!!
(アラビア語で“終わり”の意味)
と手で耳を塞ぐ。ラマダンのせいとはいえひとことゴメンくらい言ってほしかったが、アラブの男にそんなことを期待しちゃいけないのか?

メンフィスはサッカラからの帰りということで立ち寄ってみるが、本当に閉まっている。15mのラムセス2世の巨像も、アラバスター(雪花石膏)製のスフィンクスも見られず。
ちくしょ〜! ガイドブックには“ラマダン中は遺跡や博物館の開館時間は不規則になる”とあるだけで、早く閉まるという情報はほとんどない。しかしこの‘繰り上げ閉館’はエジプト国内中で予想以上にシビアで、この後も数ヶ所、ラマダンのせいで見学できないという仕打ちを受けてしまいました。本来の閉館時間4時(夏は5時。でも何月から何月までが夏なのかは不明)で1時間しか違わないが、その1時間が大きい。ラマダンじたいもイスラムの暦に従って行われるので毎年2週間程度ずつずれていく(早まる)。どうか「予習しなかったあんたが悪い、情報収集が足りない」と責めないでくださいね・・・。

 
教訓:夕方までめいっぱい観光したい人は、ラマダン中は避けて行きましょう。

4時半にギザに戻れと石塚に条件を出していたのは、ピラミッドでの日没や暮れてからのライトアップショーを見ようと思っていたからだが、悔しさと疲れでそんな気力もすっかりなくし、そのままカイロに戻ることにする。夜のギザからまたタクシーでカイロ市内まで無事に帰る自信もなかった。
石塚がふと、食べないかとバナナを差し出す。小ぶりでところどころ皮が黒くなっている、いい具合に熟したバナナ。もちろん相当にお腹は減っていたし毒入りなんてことまでは考えないが、なんとなく食べる気になれなくて断る。と、彼は運転しながらそのまま剥いてバナナを口に。
「あんたムスリムじゃないの?!」
「3日前病院に行ったんだ、僕は病人だ」。
言っちゃ悪いが顔の色艶、まったく病人には見えない、どうも怪しい。実は人目をしのんで食ってるんじゃないか?! つばすら飲み込むまいと吐き捨てる人の立場は・・・? ラマダンってしょせんその程度のことなの?? ますますわからない。

ラマダン中は
皆3時頃仕事を終えて
夕食に備えるべく家に急ぐ
よって4時がラッシュ

車のボロさに加えてマナーの悪さと運転の荒さ、強引さはアジア諸国やイタリア以上だが、もう慣れた?ものであまりなんとも思わないし、乗ってて怖くもない。信号が少ないかわりにロータリーが多く、車線だってあったもんじゃない。

カイロ市内に入ると石塚が明日はどこに行くかと聞いてくる。また僕の車でまわらないかという次の言葉が顔に書いてあったので、
「今夜の列車でアスワンに行く」(嘘)
と先手を打つ。しまいには、
「僕は日本人が好きだ、日本人と結婚したい」
なんて言い出す始末だが、そこでちょうどホテル近くに戻ってきたから「無理だよ、バーカ」とは言わずに今度は私が
「そりゃよかった!グッド・ラック!」
と言って降りる。50£E(1000円)を渡すと彼は一瞬口をへの字に曲げながらも、まぁ仕方ないかという顔で頷いたから、妥当な金額だったのだろう。結局のところカイロのタクシードライバーにしては、いい奴でもないが、それほど悪い奴でもなかったのか。当たりでもハズレでもなしといったところ。

詐欺師があふれる
タラアト・ハルブ広場
「スチューデント・カード
(偽国際学生証)作らない?」
と声かけられることも茶飯事
遺跡はかなりの割引がきくが
バレたら人生おしまい?!

ホテルに戻る前に夕食調達。今日1日朝から、お菓子屋で買ったクッキー3枚しか食べてないんだよ!!
歩き方に載っていた‘タハリール’というクシャリ屋、エジプト版ファストフード。地元人にも人気とあって店の外にまで列ができている。レジのおっちゃんに「スモール、ミディアム、ラージ?」と聞かれて「スモール」。
「たった50pt(10円)でミディアムにできるよ」
「ううん、スモールでいい」
レシートをもらってカウンターに渡す。店内でも食べられるようになっているが、なぜか客は全員テイクアウト。店は大忙し、並んでいる間にも大鍋に山盛りの茹でたてマカロニやきざみ玉ねぎのフライなどが次々運ばれてきて補充される。‘スモール’でも吉野家の牛丼大盛以上、ずっしり重いそれをホテルに持ち帰り部屋で食べる。もしかしてウサマンがホテル周辺で張っている or ホテルで待ち伏せてるかも?!と不安がよぎるも、大丈夫でした〜。

◆ DINNER ◆

クシャリ ★★★
スモール 2£E(40円)

見た目よりは美味い
たまらなく美味しくもないが
ファストフードとしては合格

下からごはん、マカロニ、細いスパゲティの
炭水化物3層攻撃、その上にレンズ豆ときざみ玉ねぎをカリカリに揚げたトッピング(店によって種類いろいろ)をのせてトマトソースとバルサミコ酢みたいなのをかけられる。別に添えられる辛いチリソースはかなり辛くてスプーン1杯で十分。ピビンバのように混ぜて食べる。量の多さもさることながら最後は飽きてきて、死ぬほど空腹だったにも関わらず完食ならず。

そして恐ろしいことに、食事でパワーと好奇心が復活したのか何が物足りないんだか、もう真っ暗というのにホテル周辺の散策に出かけてしまう。ラマダン日没後の街は、食料品はほとんど売り切れ、朝には山積みだったお菓子屋のクッキーもひとつとして残っていない。先ほど買ったクシャリの店の鍋もほとんど底をついており、人間の欲のすさまじさを目の当たりにする。

衣料品店のショーケース
天井まで立体的に並べられたマネキンを
立ち止まって真剣に見上げるエジプト人女性たち

99%の人がムスリムで
全身黒ずくめの女性も多いが
ガラベイヤにもオシャレはあるよう

シャワーを浴びていると部屋をノックする音がする。その後も何度かノックするが、ノックだけして無言。もしやウサマン?! しつこいし不気味なので
「起こすな!!今出らんないよ!」
と中から言ってみたらフロントのフロドだった。名前と用件くらい言えよ・・・。ドア越しに
「その部屋、エアコンの調子が悪いの忘れてた。部屋をかわってもらえないかな?」
「エアコンなんか要らないからこの部屋でいい」
「わかってる、でも今からみてもらうんだ。違う部屋を用意したから、出てきて見てみてくれ」
そして渋々見に行った部屋はトリプルのシングルユース、シャワーつき、もちろん値段も据え置き。フロドは、どうだい、文句ないだろう?!と言わんばかりの自信に満ちた態度をみせるが、大通りに面していて
ものすごくうるさい! しかし、もうそれ以上ダメ出しのために気力を消耗したくもなく、部屋を移動することに。思いっきり散らかしていた荷物をまたトランクに戻し、さっそく洗濯して部屋中に干していた衣類を集めて移動・・・鍵だけ渡してさっさといなくなるフロド、気がきかない男。トランク運ぶのくらい手伝えっ! アラブの男にゃこういうことも期待してはいけないのかしらん?? あまりの気のきかなさに思わずあっけにとられてしまった私でした。

これが同じホテルの部屋かと思ってしまうほど、それまでの部屋とはうってかわって騒々しい。すぐ下は大通り、夜中までひっきりなしに通るボロい車ゆえのエンジン、ブレーキ音にクラクション。興奮して叫ぶような人の話し声、夜半に響き渡るアザーン(イスラム教の礼拝のよびかけ)。アザーンは毎日夜明け、正午、午後(3時頃)、日没、夜半(8時頃)の1日5回、モスクの尖塔やそこらに据え付けられたスピーカーから街中に響き渡る大音量で
ローローと流されるお祈り。だと思っていたが、実は録音ではなく毎回人間のナマ声ナマ祈りナマ唸りであることがわかってびっくり。このアザーン、日中は「おお、流れてる流れてる」と異国情緒を感じさせてくれちゃったりするが、夜明けと夜半はムスリム以外にとっては快眠を妨げる騒音以外の何者でもない。狂言の節回しみたいな調子?に加えてダミ声のおやじの‘うなり’なことが多いもんだから特に朝は非常に不愉快で耳障り。明け方5時頃にいきなり
アッラ〜!!アクバッル〜〜!・・・・
と始まれば
うるせーー!!のひとこと。朝から血圧上がるしストレスもたまる。モスクの近くに住もうものなら首を絞めに行ってしまうかもしれない。
前置きが長くなったが、そんなことだろうと予想して持ってきた耳栓を思いっきり耳に詰め込み、ベッドに入って頭から布団をかぶる。と何とか眠れそうな騒音レベルに落ち着いた。
日記を書く元気もなく、頭の整理も
つかないままえらい1日だったわと8時就寝。毎日これじゃもたないぞ。

                                
      Continue...



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