12時間たっぷり余裕の睡眠から7時にお目覚め(ってことは昨夜7時にはもう寝てたことになりますねぇ、笑)。今日は朝9時のフライトでアブシンベルに日帰りする。ホテルの朝食は8時からだが、時間がないので取らずに7時半、タクシーを呼んでもらう。
降りていくとレセプションには昨日の2段飛ばしハツラツ兄ちゃんとは違うおやじ。小柄で、顔もそんなにデカくない宮川大助みたいなお笑い系。
「ブレックファスト? コーヒー飲む?」
「ううん、これから飛行機でアブシンベルに行くから時間ないんだよね。ところで、空港までタクシーって値段どのくらい?」
相場を聞こうと思ったら、大助おやじはすぐ隣の食堂の奥へと歩いていき、窓を開けて下を覗き込むように見下ろした。そして、ちょうど下にいたらしいタクシーと3Fの窓から大声でやり取りする。戻ってきて、
「40£E(800円)だって言ってる」。
高いな・・・。歩き方には25£E(500円)が相場とあるのに。しかし彼はそれを高いと思っていないようだし、また別のタクシーと朝からガミガミ交渉する気にもなれず、時間もあまりないのでそれに乗ることにする。アスワンは空港へのバスがない。その前に、財布の中は100£E(2000円)札ばかり残って小銭がなくなってしまっているから、
「これ、崩してもらえませんか?」
大助はレセプションの中をいろいろさぐったり開けたり、宿泊簿にはさむことがあるのだろうか帳面をぺらぺらめくってみたりとしばらく小銭を探していたが100£Eを崩せるほどなかったようで、しばらく考えたかと思うとまた食堂の窓のところに行き、下のタクシーと何やら再び大声でやり取りを始めた。ホテルなのに100£Eの現金もないってどういうこと?エジプトではこれが普通なのかしら?? 大助は下との会話の途中、一度振り返って、
「タクシーは片道でいいのかい?空港からここまでの迎えも頼んでおくかい?」
「片道でいい」。
しばらくして話し合いを終えた彼の提案はこうだった。
「40£Eのタクシー代はあとでホテルからドライバーに支払う。君はこのホテルに2泊するから宿代は1泊35£E、2泊で70£Eだ。今その70£Eとタクシー40£Eの合計110£E分を前払いでまとめて受け取ってもいいか? もし10£E札がないならそれは明日でいいよ」。
とりあえずこの場はこれで解決だが、結局小銭をいっさい得られないままアブシンベルに向かうことになった。
タクシードライバーはMr.ビーンと石倉三郎をたして2で割ったような、苦労してるのか顔にシワの多い白髪まじりの髪モジャモジャな中年過ぎの男。車はサラリーマンの営業車みたいな白い普通車ワゴン。車はわりと交通量の多い、新しいマンションが建ち並ぶアスワン新市街を抜けると、一転して何もない郊外の砂漠をどんどん行く。空港は町からずいぶん離れた郊外にあって、80kmでぶっとばしても20分はかかる。途中アスワンダムを渡りながら、英語のできないドライバーが唯一、「フィラエ!」とダムでせき止められてできた人造湖の中に浮かぶ島を指して教えてくれる。アスワン郊外いちばんの見どころ、別名イシス神殿。アブシンベルからの帰りに寄るつもり。
空港手前で検問があり、車で入る際には1台につき2£Eの通行税が必要。ドライバーは私に払えと言うが、本当に小銭は一切持ってないからどうしようもない。でも、あんたに40£Eも払ってんだからそれくらい出してよ、とは言わず、
「小銭ぜ〜んぜんない」
と正直に財布の中身を見せるとおやじが払ってくれた。そしてあとになって、やっぱり40£Eは高すぎでボられたことが明確に。ギザ郊外3時間チャーターで50£Eだったことやこの後のアスワン郊外チャーターと比べても。さらに降りる時にも、小銭持ってないの知ってるくせにバクシーシをせびる始末で、
「だから悪いけど持ってないのよ!」
荷物もないんだぜ!
アスワンの空港は新しく、とてもきれいで明るい。空路でこの町にやってくればまた印象が違ったろうなあ。先に出るカイロやルクソール行きにチェックインする人たちが大きな荷物を持って列を作っている。
アスワン⇔アブシンベル間は、歩き方には“自由席なので、窓側の席をめぐって搭乗口に30分前から並ぶ”とあったが、今はもう指定席制になっていた。運良く、到着前にアブシンベル神殿が見えるという向かって左の窓側をゲット。ゲート前にはカフェスタンドやファストフード・ピザのチェーン店なども入っているが、軽い朝食として手頃なものがなさそうだし、そもそも小銭もないしで、今日もまたいつまで食べられないのか、血糖値も血圧も低いまま砂漠の観光にくり出さねばならない。
出発30分前になると欧米人と日本人の大型団体が数グループどっさり集まってくるが、搭乗はなかなか始まらない。始まっても飛行機まで50mのところをバス移動で、離陸は30分遅れる。ところでアスワン空港は軍事基地も一緒になっているのか、頻繁に、耳を突き裂く轟音をたてて戦闘機が飛んで行く。なんだかぶっそう。
でもって搭乗直前、飛行機の写真を撮っていると係員に「何事だ?!」と怒られてわけがわからない。What’s happen?!はこっちのせりふ。他の人達も数人写真を撮っていたのに、グループで来ていた日本人女性2人と私の3人だけが理由もわからず怒られ、
「写真撮ってたのがいけなかったんですかね?」
「たぶんそうでしょうね・・・」。
エジプト航空国内線
25分ほどのフライトだけど
エアバスで思ったより大きくきれい
前半分は日本人団体
後方は韓国人と欧米人団体
その中に私1人
地元人はほとんどいない |
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満席ではないが90%埋まっていて、予約しておいてよかった。隣はドイツ人の老夫婦。アブシンベルまで片道280km。ホテルで日帰りバスツアーも勧誘されたが、バスだと片道3時間半で早朝4時に出発するらしい。日帰り60£E(1200円)ととにかく安く(値段は空路の10分の1)、距離的には問題ないし、昨日のモハメドVも「砂漠の中を突っ走るんだ、幻想的ですごくいいよ」と言ってたけど、行き帰り7時間も砂漠はさすがにかなり退屈そう。それより、バスといっても冷房もきかない小さなバンで行くに違いなく、今の時期は決死の覚悟までは必要ないかもしれないが、それでもやっぱりこの記載にはぞっとする。
“夏は50℃の猛暑を疾走するので車内は想像を絶する灼熱地獄”
機はそんな灼熱地獄を見下ろしながら、高度3000mで快適に飛んでいく。
行けども行けども
赤茶けた砂漠とゴツゴツした巨石
そして濃紺の人造湖、ナセル湖
でもどこかで見たことあるような・・・
そうだ、米西部アリゾナの
モニュメントバレーや
レイクパウエルの景観とそっくり!
映画『猿の惑星』の世界 |
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ほんの5分ほどの水平飛行の間に、ホイホイって感じでパックのジュースが配られる。乗務員は全員男。隣のドイツ人が「オレンジじゃないのがいい」とワガママ言ったせいで私までグアバジュースにされる。今朝も飲んだのに。ちなみにエジプトの紙パック入りグアバジュースとマンゴージュースは、ともに果汁35%くらいだが、飲んでみるとけっこう濃厚でドロドロしている。
高度を下げ始め、神殿はいつ見えるのかと構えていたが、ほんとに着陸30秒前!!のほんの一瞬、それも遠くて小さい。とても写真など撮れるような状況ではない。パイロットが「左手に神殿が・・・・」と言った時にはもう後方。隣のドイツ人にも教えてあげたが見えたかしら???一応「あ〜〜!」とか言ってて感謝もされたけど。
10時過ぎ、アブシンベル空港に着陸すると、また建物までたった30mをバス移動。どこかの離島の空港を思わせる開放感と小ささ。そしてアブシンベルの町に宿泊する観光客はほとんどいないようで、預け荷物を受け取る人も見かけない。
空港から神殿までは、エジプト航空のバスがピストン輸送で無料送迎してくれる。飛行機の時間に合わせて何台も出るから座れないこともない。神殿まで10分くらい。
バスを降りると個人客は各自チケットを買う。36£E(720円)、ここでやっと100£E札を崩す。あとからワラワラやってくる団体客に越されまいと急いで中へ。チケット代にはガイド料も含まれていて、個人客もガイドツアーに参加できる(基本的にはツアーに参加しないといけない?)が、1人で見学したければ「英語がわからない」とか言えば問題ない。団体連中が遠くで記念撮影したり説明を受けたりしている間に内部を見られるし、好きなだけ写真も撮れる。チケット売り場から神殿へ、静かに水面を輝かせる広大なナセル湖を見ながら、アスワンよりさらに強い太陽の下を数百m歩くと・・・
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アブシンベル大神殿
ピラミッドに続いて
すこぶる感動
涙こそ出ませんでしたが
立ちすくんでしまいました |
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古代の繁栄とファラオの権力をそのままに映した、4人の巨大な座像。すっげ〜〜!! これを造らせたファラオも造った古代人ももちろんすごいが、もとあった場所から高台に移動させると言い出したユネスコも、そしてその発想じたい信じられない。40年前、アスワンハイダム建設にあたってこの神殿が水没の危機にさらされた時、ユネスコが神殿をブロックに切り分けそっくりそのまま移動させるという世紀の大プロジェクトを行ったのだ。移築には3000人がかりで5年もかかったそう。移築に際して修復もできたが、左から2人目の頭は、発見された当時のままということで今も足元に転がってる。千以上のブロックに切り分けられて解体されたようだが、その切り目も全くわからない。ついでにちょっとがっかりさせてしまうかもしれないことを言うと、座像の後ろの山は移築の際に造られたイミテーション、人工巨大ドームなんであります!思いっきりコンクリート。いえいえ、そんなことを知ったくらいで決してがっかりすることはないはず!!
実はピラミッドよりも見たかった
来たかったアブシンベル
ナマの威力は計り知れません
デカいところはでっかく
しかしレリーフは細密・繊細でまた泣ける?!
そのくせ余計なこと考えてしまう私
・えらくむくんだ大根足やなあ
・ひざの上に乗りたいなぁ
・膝枕してもらいたいなぁ(笑)
etc・・・ |
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発見されてまだ200年。発見者の言葉通り、‘とてつもない巨像’。
内部も予想以上の広さと奥行きで
圧倒されっぱなし
室内に並ぶラムセス2世像も高さ9m
側室も多く
緻密なレリーフが壁じゅう部屋中、天井までびっしり
ところで、成功したかにみえる移築も
唯一かつ重大な失敗が・・・ |
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年に2度、春分と秋分の日だけ
太陽の光が
神殿一番奥の‘至聖所’まで届き
ファラオの顔を照らし出すよう
計算されて建てられていたが
移転で1日ズレてしまったそう
古代人の方がはるかに高度な技術
もってたんですね〜 |
同じような壁画
各国の美術館でも見てきたけど
やっぱりココで見たのが
いちばん印象的でした
1冊くらいファラオ関係の本
読んで行けばよかったかな |
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エジプトの遺跡では各地で夜になると‘音と光のショー’が行われる。アブシンベル神殿でも4年前から毎晩行われていて、日本語を含む7ヵ国語の日替わりなんだそう。ピラミッドのショーは「ちょっと退屈」という噂を耳にしたが、ここアブシンベルのはなかなか良いらしい。ただし、見るには1泊もしくはクルーズで来なければならず、残念&やや心残り(時間があれば1泊しましたが、シャルム・エル・シェイクへの移動を考えると諦めざるをえませんでした)。
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小神殿のファラオは
歩行してる像
確かに内部は小さかったけど
こちらも圧巻
‘小’なんて言われるのかわいそう |
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アスワン⇔アブシンベル間の空の便は1日3〜5往復ほどあり、カイロからルクソールやアスワンを経由しながら一気に飛んでくることもできる(エジプト航空HPでは国内線のフライトスケジュールを検索できるので、自分で計画立てる場合参考になります)。日帰りの場合、ほとんどの人が来た飛行機に乗って戻るのだが、それだと神殿の見学時間は約2時間。当初はもの足りないかな?と思っていたが、そんなに慌ただしくもなく十分満足(時間もてあますこともなかったけど)。逆に、これ以上時間あっても暑さにバテるだけ。げんに、日陰があるなら座って何時間でもボーっとファラオ様を眺めていたいところだが、外はカメラ構えて歩くだけで、立ってるだけで耐え難く暑いのです!!(もちろん神殿内部はそこまで暑くないけど、涼しくもない。) 干上がる!! 神殿の前には果てしない、とても人造湖とは思えない規模の湖、ナセル湖が広がっているがそこにも涼は全くない。11月中旬でこの太陽、真夏の見学は間違いなく自殺行為だわ・・・。
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雲ひとつない空!
はいいけど実は暑くてヨレヨレ
干物になりかけながら
手早く写真撮りまくって避難
遺跡って何でこう暑いとこばっかで
しかも歩かされるんでしょうねぇ |
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帰りのフライトは昼1時。集合写真の撮影を終えた団体客に添乗員の一吠え、
「12時5分にバスを降りたところに集合です!!」
を参考に12時、チケット売り場付近に戻る。周辺には一服できるカフェがあり、暑さに参ったシニア達はさっさと戻ってきてフレッシュジュースを飲んだりしている。土産物屋の小さな売店もアスワンのスークほどではないが呼び込みは盛んで、片手に‘連結絵ハガキ20枚のアコーディオン折り’をびらびらさせながら、もう一方の手にはガラベイヤつるしたハンガーを持ってバスに乗る観光客について歩く商業マンもいる。エジプトに来てはじめて、質も写真もよいと思える絵ハガキを見つけて10枚購入、1枚1£E(20円)。再びエジプト航空のバスで空港へ。
荷物を預ける人がめったにいないのと90%が団体客のせいもあってか、チェックインカウンターは機能していない。ガラスで囲まれた小さなオフィスのブースに列ができている。どうやら個人客と添乗員だけが並んで搭乗券をもらわなければならない様子。座席番号はおっちゃん1人がコンピューターを見ながら手書きで書き込んでいる。前に50人分くらいのチケットを持った添乗員が並んでいて、待ってる間に、席なくなるんちゃうか?と不安になるほど待たされる。アスワンのフライトから一緒だった私の他唯一の日本人個人旅行者、20代半ばに見えるバックパッカーカップルも前で手続き。
13時過ぎ、エジプト航空250便でアスワンに戻る。今度は通路側の席でオレンジジュースをもらう。帰りの便はアスワンを経由してルクソールかカイロまで行くようだったが、ほとんどの人がアスワンで降りた。ってなわけで、アブシンベルはスーダンとの国境まで50kmのところ、上エジプトのどえらい場所にあるが、空路日帰りする価値は十分すぎるほどありました!!絶対行くべき、見るべき!! しかしそんな冷めやらぬ感動より、アスワンに戻ったとたんまたタクシーと喧嘩かいな・・・とアスワン郊外の見どころをチェックしながら気の重いおかぽんなのでした。
Continue... |
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