>>> DATONG 大同 15 / AUG / 2002 *THU*



列車はすれ違う度にお互い派手に警笛を鳴らすもんだからあまり眠れない。5時前頃、上の段の男が降りていった。
7時、車掌が起こしに来て、尾形夫婦も起き出す。パンとビスケットをかじり、ぶどうを食べ、顔を洗い歯を磨き、おぞましいトイレで用をたす。洗面所では中国人が
カーーーッ!!ペーーーーッ!!!とタンを吐き、顔を洗いながら手バナをかむので思わず後ずさりしてしまう。中国人はほんとによく道端にもタンを吐き捨てる。

車窓から見えるのは一面ひまわり畑
ブレてる写真で申し訳ございません

降りる準備をしていると、尾形夫婦は朝から昨日と同じカップ麺を作り始めた。で、日本でいう‘くんたま’みたいな、味付けゆで卵の真空パック、味付けうずら卵の真空パックを開け、私にもすすめてくれる。やはり主人の方が働き者で、奥さんのぶんまでせっせと殻を剥いて食べさせている。う〜ん
マメ! 缶入りスープも作って飲んでいる。それでもまだビニール袋は食料の山。とにかく私にもっと食料を分け与えたいらしく、ミネラルウォーターを2本もくれる。
車掌が「次が大同(ダートン)よ」と、荷物を出して降車口で待機しろ、というようなことを言うので、尾形夫婦に礼を言ってコンパートメントを後にする。

8:30 定刻より7〜8分遅れで(それでも十分時間通り)大同到着。尾形夫婦は見送りにホームまで降りてきてくれた。
「ほんとにありがとね!!
ホームにガイドらしき人は見当たらず、地下道を通って改札出口へ歩いて行くと、改札の外にカードを掲げた、大橋巨泉と林家こぶ平を足して2で割ったようなおじさんが待っていた。
「王(ワン)です。」
王さんはガイド歴15年らしいが、日本語はやや怪しい。彼は自分で自分の顔を「ジャガ芋みたい」と言うが、丸くてボコボコしているところはまさにその通り!
さて、本来は今日、雲崗石窟観光だが、行きの中華航空の機内誌で見て初めて知った‘懸空寺’というお寺にどうしても行きたくなっていたので、王さんに聞いてみる(出発前、日本で今回の旅に関してほとんど予習しておらず、行きの機内誌の写真でひかれた‘懸空寺’が、偶然にも大同近郊にあることを知って感動した次第)。懸空寺は大同市郊外60kmの山中にあって、片道1時間半。一方の雲崗石窟は市内から17kmと近く、明日昼の列車出発までの間に十分観光できるが、懸空寺は今日行っておいた方が良い、王さんも予定変更OKということで、急きょ今日、懸空寺観光に変更。自らタクシーと交渉してチャーターしようと思っていたが、王さんがホテル前に待機していた1台と交渉してくれ、往復200元(3000円)、王さんのガイドは無料サービス(!)ということで1時間後にロビー集合。ホテルは駅から車で20分の雲崗賓館、チェックインはできるが部屋はまだ掃除中で、掃除が終わるのを廊下で待つ。観光出発まで30分の間にシャワーを浴び、ホテル1Fの両替所で両替し、郵便局の出張所まであったので車内で書いたハガキを投函する。

懸空寺へ出発。道路があまり良くないので思ったより時間がかかる。ただ、道幅は広く、両側にポプラ並木が植えられていてとでものどか。

はじめは一面とうもろこしやひまわり畑の中を行く
平坦な道路だったが
徐々に山道になり
ガードレールのない崖っぷちの道をうねうねと走っていく

峠の頂上付近で少し休憩。ドライバーも王さんも車内では煙草を吸わないが、かなりのヘビースモーカーで、2人とも休憩の時にはたまりかねたように一服している。そして車を停めたほんの1、2分の間に、近くに住んでいるらしき貧しい農家の子供達が3人ほど、我々の周りに集まってきた。金をくれってこと? このあたりは夏の一番暑い時には(7月末頃)40℃、冬は−30℃(!!)にまで下がるという。そのため、農家は冬は全く仕事ができない。王さん曰く、
「冬はガイドも仕事ないです」。
農家の家といえば土かレンガで作ったような今にも崩れそうな家で、水道すらないらしい。
そして、私の住んでいるところの話になる。
「ああ、四つの国と書いて‘四国’ね! 知ってますよ。この間、‘愛’に、え〜っと、女と書いて・・・」
「愛媛?」
「そう!エヒメ、そこの人、大学の先生でした。学生さん何人か連れて来ましたよ」。
王さんはそう言ってポケットから一枚の名刺を出した。見ると、‘愛媛大学教授’のもの、住所は松山市になっている。
「ああ、私この人と同じ所に住んでます、松山市」。

峠を下り、しばし再び平坦な道を行く。懸空寺まで最後の1kmほどは、もともと川だったところにムリヤリ造られた凸凹道(もちろん舗装なし)を強引に行く。道中、大同市からの中距離バスらしきものを見かけたが、恐ろしく混んでいる上にエアコンなし。窓全開で
もうもうとホコリの舞う中を走っている!! バスの屋根にまで巨大な荷物がたくさん積まれていて、それに乗れば片道20元(300円、タクシーの10分の1)ほどで行けるらしいが、私にはとても無理!!

1時間半で懸空寺到着。大型バスが何台も停まっており、中国人の団体客が大勢来ている(中国もちょうど夏休みなので国内旅行客が多いらしい)。

切り立った崖の中腹に
まさに宙吊りされているかのように
建てられている奇観が面白い

断崖絶壁と一体化した
建築物といえば
ギリシャのメテオラも素晴らしかった

王さんによると、
「寺から下に伸びる木の柱は飾りのようなもので、建物の支点は岩の中です。空中に出ている柱は3分の1の長さ、残りの3分の2が岩の中に打ち込まれているんですよ」。
素晴らしい!

建物内の通路は幅50cmほどしかない
という狭さゆえ一方通行で
階段も頭打ちそうなほど急で狭く
よって、観光客の多い時には
お寺のずっと下まで行列ができるんだとか
(この日は幸い、全く混んでいませんでした)

廊下からは高所恐怖症の人だと足がすくみそうな眺めで
「さっきの日本の方
ここで立ちくらみおこしそうになったそうです(笑)」
王さん以外にも数人の日本語ガイドが
少数の日本人を連れて来ている

内部もかなり変わっている。珍しいことに道教、仏教、儒教の三教合一を目的として建てられたということで、3つの宗教の神様やら仏像やらがひとつの部屋にごちゃ混ぜに祭られていて、もう何がなんだか訳がわからない。

駐車場近くのレストランで食事。本来、今日は雲崗石窟のあと市内で昼食の予定だったが、
「ここのレストランでも大丈夫です」。
パック旅行だというのにこのアバウトさ
が笑えるが、欲張りでわがままな私にするとありがたい。王さんは、
「ここは1人用メニューというのがないんで一緒に食べましょう」。
料金システムは
一体どうなっているのか?? 考えれば考えるほど謎だらけ(この日の昼食はツアーに含まれているので、もちろん私はいっさいお金を払わず)。ドライバーと王さんの3人で昼食。かなりはやっていて満席。しかし見ると周りのテーブルも皆同じものが並べられているのでメニューというものじたいがないらしい。我々の前にも9〜10皿が並べられる。

◆ LUNCH ◆

春雨ときゅうりの酢のもの  
   (各自1つ。お碗に山盛り!) ★
レタス炒め+あんかけ ★★★
豚肉と長ネギの炒め物 ★★★
豚肉ときくらげの炒め物 ★★★★
ニンニクの芽の炒め物 ★★★★
餃子 ★
包子 ★★★
あん入りゴマ団子 ★★
白ごはん

2人とも、思わずひいてしまいそうなほど
すごい勢いで黙々と、そしてガツガツ食べる。3日くらい山で遭難していたんじゃないかと思ってしまう。が、それでも3人で半分は残す。中国人は食べきれないほど注文しておいて残す(以後もレストランで1人客が2〜3皿注文し、少しずつ食べて残す姿をよく目撃しました)。王さんは、
「これが文化ですから」。

懸空寺を出たのが1時半、大同に戻ってきたのはそれから1時間半後の3時頃で、のべ5時間、距離にして130km、旅行の中のプチ旅行。急きょ予定変更して連れて行ってもらったが、本当に良かった。王さんとは明日朝8時半にホテルで待ち合わせる約束をし、ドライバーさんに200元を支払い、2人に礼を言って部屋に戻る。王さんの臨機応変さに感謝。
懸空寺で見つけた、少しまともな絵ハガキ(中国の絵ハガキは質が悪い。写真がかなりいまいち)にペンを走らせていると外は激しい雷雨。
部屋に電話がかかってくる。電話の向こうの声は王さんではない。しばらく日本語で「アー、ウー・・・」とやっておいて、
“Do you speak English?”
と英語になる。こちらの旅行会社の男。先ほど王さんに、明日、北京へ帰る列車のことについて早急に教えてほしいと言ってあったのだ。到着駅が北京駅なのか北京西駅なのか(北京には4つの鉄道駅がある)、そして私が乗り込む車両の号車番号を、わかりしだい北京のガイド、顧さんに電話で伝えなければならない。男は、北京西駅到着であることと、号車番号はわからないこと(なぜわからないのか?と突っ込むと、手元に切符がないと言っていた)、そして何かあったら北京のミスター・チャン(たぶん顧さんの上司)にかけろと携帯番号を2つ言って電話を切った。駅名だけでも知らせなくちゃと、すぐ顧さんの携帯に電話。しかしホテルの部屋からは外線をダイヤルしてもどうやっても通じず、フロントでかけてもらう。電話の向こうの顧さんは相変わらず元気いっぱいで、
「わかりました、じゃ明日、汽車降りたらホームで動かないでね!!

夕方、雨が止んでから街を散策。ホテルからすぐのところに大同のメインストリートがあるが、道幅拡張と歩道を作る工事で掘り返している上、先ほどの大雨で足元はドロドロ。スーパーが多く(歯科の診療所がやたら目につくのは職業病?)、歩いていてもさほど面白くなく、王さんに教えられたホテル目の前の‘雲岡風味面食’という店で刀削面を食べる。3元(45円)。山西省は麺のかたまりを鍋に向かって刀で削る(TVで一度は御覧になったことあるでしょ??)、名の通りの刀削面の本場。西安の萩原社長も言っていたが、注文時に「小さいの」と言わないと、大きなどんぶりに一杯入って出てくるらしい。

◆ DINNER ◆

刀で削っただけあって
麺の太さや長さはまちまち
(うどん状だったりきしめん状だったり)
で不恰好だが、味は良い

高菜や肉を炒めたものがのっており、一緒に大根の酢のものやきゅうり、パクチー(香草)の皿が出されるので好みで入れる。
パクチーが別皿にされていたのはありがたい!! これ全部入れられてたら全く食べられないところでした。パクチー大ッ嫌い!!なんです。どう頑張ってもこれだけは全くダメ(アジアを旅する時はパクチー恐怖症)。私がパクチーをよけてきゅうりだけ入れている様子を見た店員が、きゅうりだけの皿に替えてくれる。隣の女の子は1人でこの刀削面と冷麺らしきもの(これがまた信じられないほどの山盛り!!)を注文し、冷麺は半分以上残していた。

夜8時頃、突然王さんがホテルの部屋にやってきてびっくりする。何かと思えばわざわざ明日の北京への列車の切符を届にきてくれたらしい。しかも、切符を見ると昼の便なのに軟臥(1等寝台)。
「アレ、昼の便なのに
寝台なの?!
至れり尽せりの中国旅。

                                      Continue...


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