風の谷のナウシカ
チャプター1


(風が吹く音)

また村が一つ死んだ

(蟲の羽音)

行こう ここもじき腐海に沈む

 

 巨大産業文明が崩壊してから1000年

錆とセラミック片におおわれた荒れた

大地に くさった海…腐海(ふかい)と

呼ばれる有毒の瘴気を発する菌類の

森がひろがり 衰退した人間の生存を

おびやかしていた
 

チャプター2


(動物のような鳴き声)

アッ!

王蟲の道

まだ新しい

ああ!

王蟲の抜け殻

すごい

完全な抜け殻なんて初めて!

(キーン)

フフ いい音

(カチン)

あっ…

ウフフ

セラミック刀が欠けちゃった

谷の人が喜ぶわ

道具づくりの材料に

ずーっと困らなくてすむもの

すごい目

これ一つなら持って飛べるかな

取れた!

なんて軽いのだろう フフフ

ムシゴヤシが午後の胞子を飛ばしている

きれい

マスクをしなければ

5分で肺が腐ってしまう死の森なのに
 

チャプター3


ハッ?

だれ?

何かしら

胸がドキドキする

(銃声)

蟲封じの銃だ!

だれかが蟲に襲われてる!

(銃声続く)

ゴメン!

あそこだ

すごい胞子の煙

王蟲!

きっと あの抜け殻の主だわ

あっちに逃げてはだめだ

気がついて

答えた! こっちへ来る

(爆発音)

あの人は!

なんて立派な王蟲

(ナウシカ) 風上へ!

(ユパ) すまん!

(ナウシカ) 王蟲 森へお帰り

この先は お前の世界ではないのよ

ねえ いい子だから

怒りに我を忘れてる 静めないと

(爆発音)

閃光で王蟲が目を回した

(蟲笛の音)

蟲笛

(蟲笛の音 続く)

王蟲 目を覚まして! 森へ帰ろう

気がついたわ

おおっ!

王蟲が森へ帰って行く

光弾と蟲笛だけで

王蟲を静めてしまうとは
 

チャプター4


(風の音)

ユパ様!

おおっ! ハハハ

ナウシカ 見間違えたぞ

1年半ぶりですもの 父が喜びます

礼を言わねばならん

よい風使いになったな

いいえ 父はまだまだだって

うん?

(ユパ) ああ そうそう

こいつのことを忘れていた

まあキツネリス

(ユパ) こいつが羽虫にさらわれたのを

人の子と間違えてな

銃を使ってしまったのだ

それで 王蟲が怒ったのね

(ユパ) 気絶していたので

毒を吸わなかったようだ

手は出さない方がいい

チビでも凶暴だ

おいで

さあ

(ユパ) おっ おい!

ほら 怖くない

怖くない

ほらね 怖くない

ねっ?

おびえていただけなんだよね

ウフッ ウフフ…

ユパ様 この子 私にくださいな

ああ かまわんが

ありがとう

カイにクイ 私を覚えてる?

不思議な力だ

ウフフ

疲れたでしょう いっぱい走って

みなに変わりはないかな?

(ユパ) どうした

父が…

父はもう飛べません

ジルが?

森の毒がもうそんなに…

はい

腐海のほとりに生きる者の定めとか

(ユパ) もっと早くに訪れるべきであった

(ナウシカ) いいえ

本当によく来てくださいました

先生

後で ぜひ見て頂きたいものがあるんです

私の秘密の部屋

みんなには内緒 怖がるといけないから

私 先に知らせに行きます

先生も急いで!

ユパ様!

これ運んでくださる?

気流が乱れてうまく飛べないの

それにしてもよく風を読む

さあ もう少しだ

(ゴル) ユパ様

(ムズ) ようこそ

(ユパ) みなも息災か

(ゴル) 水も風も

とどこおりなく穏やかです

ユパ様

(ユパ) やあ みんな 元気だね

(人々) ああっ ユパ様だ!

お待ち申しておりました ユパ様

(ミト) 姫様 お着きになりましたぞ

(ナウシカ) もうちょっと

ユパ様

(ユパ) ミトおじ 精が出るな

今宵はまた 異国の話を聞かせて下さい

(ナウシカ) いいわ 回して

いいようですな

うん

(ゴル) 本当によい品じゃ!

(村人) さっそく明日にでも

人手をくり出して 取りに行かねばな

(ナウシカ) さあ トエト

ユパ様 今年生まれたトエトの子です

(ユパ) どれどれ

おおっ よい子だ

幼い頃のナウシカを思い出す

(トエト) どうか

この子の名付け親になって下さいませ

いつも いい風がその子に吹きますように

引き受けよう

よい名を贈らせてもらうよ

ありがとう

どうか姫様のように丈夫に育ちますように

(ミト) うむ

丈夫というなら姫様は折り紙付きじゃ

だが 腐海遊びまで似ると困るぞ

でも おかげで王蟲の殻を見つけたのよ

しかしだ

城オジの わしの身になってみろ

心配でオチオチしておれんわい

ワハハ 王蟲の殻となりゃ

姫様の腐海遊びも むだとは言えんのう

(ユパ) そうとも

わしも それで助けられたのだからな

ハハハハハ

(子供の笑い声)
 

チャプター5


(笑い声)

(ジル) 負うた子に助けられたか

(ユパ) この谷はいい

いつ来ても心が和む

(ジル) 今度の旅はどうじゃった

(ユパ) うーん ひどいものだ

南でまた2つの国が

腐海にのまれてしまった

腐海は着実に広がっている

なのに どこへいっても戦に 飢え

不吉な影ばかりだ

(ユパ) なぜ この谷のように

暮らせぬのか

(大ババ) ここは海から吹く風様に

守られておるからのう

腐海の毒も谷へは届かぬ

どうだ ユパ

そろそろ この谷に腰をすえぬか

わしはこのザマだ みなも喜ぶが

(ユパ) うむ

(大ババ) むだじゃよ

ユパは探し続けるよう定められた男じゃ

定めか…

大ババさま 探すって何を?

ナウシカは知らなかったのかい

あの壁の旗にあるじゃろう

わしにはもう見えぬが

左の隅にいるお方じゃよ

“その者 青き衣をまといて”

“金色の野に降り立つべし”

“失われし大地との絆を結び”

“ついに人々を青き清浄の地に導かん”

ユパ様

私 古い言い伝えだとばかり

思っていました

(ユパ) ババ様 からかわれては困る

同じことじゃろうが

私は ただ腐海のなぞを

解きたいと願っているだけだよ

我々人間は このまま

腐海にのまれて滅びるよう

定められた種族なのか

それを見きわめたいのだ

私に

ユパ様のお手伝いが できればいいのに

(風の音)

(ミト) 姫様

何? ミト

ゴルが風がにおうと言うとります

もうすぐ夜明けね すぐ行くわ

ご苦労さん

いい嵐なんじゃが どうもおかしい

アッ!

あそこ!

ホラッ また!

船だわ

なぜこのような辺境に船が

(ユパ) 何ごとかね

ユパ様! 船です

船?

来るわ

大きい!

ワァ〜ッ

(ユパ) トルメキアの大型船だ

飛び方がおかしい

(ナウシカ) 不時着しようとしている

ゴル あげて

姫様 ムチャじゃ!

海岸に誘導する

回って来たぞ!

エ〜イ 行きますぞ!

テト

アッ!

なんてことを!

腐海に降りて蟲を殺したんだわ!

舵を引けーっ! ぶつかるぞ

舵を引け!

舵を!

あっ!
 

チャプター6


落ちた!

姫様

(ゴル) 海際の崖だ

(ミト) 行こう!

動ける者は みんな出ろ!

早くしろ!

あの子だわ 生きている

あっ!

ここは?

風の谷よ しゃべってはだめ

あっ

あたしは…

ペジテのラステル

積荷を… 積荷を燃やして

積荷?

お願い 燃やして

積荷ね わかった

大丈夫 みんな燃えたわ

よかった

姫様!

この方はペジテ市の王族の姫君ですな

蟲だ ウシアブが生きてるぞ

まずい 仲間を呼んでる

傷ついて飛べないんだ

銃を持って来い

だめだ 撃てばもっと仲間を呼ぶぞ

即死させる

ウシアブが銃で死ぬものか

じゃあ どうするんだ

待って

ミト メーヴェを持って来て

姫様

(蟲笛の音)

森へお帰り 大丈夫 飛べるわ

そう いい子ね

(ミト) 姫様

ありがとう

やった

(ミト) よかった

たった一匹殺しただけでも

何が起こるか わかりませんからな

あっ!

王蟲
 

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