猫の恩返し
チャプター7


私 悪いんですけど

結婚の話はちょっと

あれ

オーケーしてくれたんじゃなかったの?

そのように聞いて おりましたが

(ハル) 王子様はどこ?

地方で経済連の会食に

うーん

(ハル) とにかく―

まだ よく知りもしない相手だし

王子様は猫でしょう?

私 猫にはなれないし

(猫王) んー?

ふふん

そのことなら ご心配なく

もう なってるにゃ

へ?

んー

えっ

(女官) ささささ…

はぁー すごい 本物だ

猫ぉーっ?

ムタさーん!

キャー!

どうしたのぉ?

マタタビゼリーを浴びるほど食べたい

と申されて このようなありさまに

まさか こんな死に方しなくても

えーん バカバカ ムタさんのバカ

あの 祝宴のご準備が

イヤよ! はなれたくない

(ナトル) では ごいっしょに

あれがハル様?

んー お見事な耳!

ふくよかな肉球

(シェフ) ネズミはお嫌いと

伺いましたので

とれとれピチピチの お魚ですにゃ

ハル殿 退屈そうだにゃ

はっ

おい にゃにかやらんかね

では例のやつを

(軽快な音楽)

ニャーッ!

ニャオ

ニャ ニャ ニャ

ニャオ

ニャイーッ

ほぉー

ムフフフフ

ヒック ヒック…

もっと おもしろいの!

はっ

(ドラムロール)

アチョーッ!

イニャーン

ウッ

あら

ンー ウン

エホン エホン

ニッ

シッ

はっ

アァー

つぎ!

(軽快な音楽)

フッ クッ クッ

にゃー はっはっはっ

にゃー はっはっはっ

あん?

ウァー

もっとマシなのは いにゃーのかっ
 

チャプター8


(猫王) ん?

私がハル様を―

喜ばせてごらんにいれます

フーム

どうされます?

まっ いいんじゃにゃい

ん?

お嬢さん わたくしと一曲

私 ダンスなんて踊れにゃいって

あっもう 猫語になってるし

うん?

おまかせを

(アコーディオンの音)

(ワルツのメロディ)

なかなかいい感じですにゃ

ふん

(ハルの心の声) なんだろ これ

こんな気分はじめて

このまま猫になってもいいかも

(ヒゲが伸びる音)

キャッ

ダメだハル 自分を見失うんじゃない

えっ?

キミは キミの時間を生きるんだ

うーっ

前にも そう言っただろ

あなたは…

その音楽 やめーい!

コソコソと怪しいヤツ

貴様 一体何者じゃ!

これは名のり遅れて失礼した

決して怪しい者では

ハァー…

私は フンベルト・フォン・ジッキンゲン

ハルを迎えに来た!

バロン!

こんなのって!

ありですかにゃ

あるわけないにゃ

ひっとらえぃ!

ニャー

ニャー

フニャ

(器の割れる音)

んー

もう食えん

キャー おばけー

やった! ムタさん生きてた

やべ

待てぇ この狼藉者!

早く! 陛下を安全な所へ!

(猫王) 逃がすにゃよー

危ないですよ はーい

貴族の方は こっちからどうぞ

こっちです はいー

キャッ

(猫兵) にゃー

どけぇ

ムタさん すごい

オレは関係ねぇぞ

こっちです

あなた さっきの!

バロンさん

助けに来てくれると思ってました

なぜ 私のことを?

猫の事務所のことは聞いてましたから

さっきはごめんなさい

あなたの言うことを聞いていれば

こんなことには

大丈夫 夜明けまでにこの国を出れば

また もとに戻れるから

ホント?

外へ通じる抜け穴です

(バロン) これは便利だ

でも ムタさんは?

フム…

彼は大丈夫だ ハル急げ

うん

ウアーッ

城のウラだな

あの塔の先が外へ通じています

(ハル) うわっ たっかーい

(ユキ) ふもとの廃墟を抜けて

登って行くしかないのですが

(バロン) なんとかなるだろう

よかった

バロンさん ハルちゃんをよろしく

あっ 待って

行っちゃった

まだ お礼も言ってないのに

ハル これはあくまで推理だが

キミを私の事務所に導いたのは

あの子じゃないのか

(謎の声) ハルちゃん 猫の事務所よ

そうだ あのキレイな声 まちがいない

でもどうして

(物がとびちる音)

ニャー

おまえのせいで

オレは とんでもない目に

とにかく今は急ごう

うん

オレの話 聞けよ

うふ 入ったかにゃ

ハイ 入ったようです

よーし

我が国が誇る迷路の堀です

高見の見物だにゃ
 

チャプター9


フム 厄介だな

(ハル) でも まだ昼だし

(ムタ) ここは いつでも昼なんだぜ

えっ?

そうなの?

多分 今ごろ 外は夜中だろう

そんなっ 急がなきゃ!

あっ あっ えっと えーっと…

どっちに行く?

(ナトル) 迷ってますにゃ

そう簡単に進めるものか

ねぇ 陛下

フフフフフ

余裕だにゃ

(ナトリ) 兵の配備は?

(ナトル) あそこに

(猫兵達) ホッホッホッ…

こっちへ行こう

一つ一つ調べて行くしかない

絶えず塔を見るんだ

方角を見失わないですむ

そっか

ムタさん ずるい

正直に迷ってやるこたないぜ

(猫兵B) いたぞ!

ゲッ

なんで こうなるんだ!

ムタが囮になってるうちに急ごう

うん

囮じゃねぇぞぉー

ニャッ

おっ あーっ

キャッ

下がれ ハル!

うにゃー!

ニャーッ!

ニャー!

あいニャッ!

ドワッ!

強い!

曲がっちゃった?

いや そろそろ買い換えたかったんだが

(ハル) 物持ちがいいんだ

(ナトル) ナイスショット!

(カーン)

あっ 当たっちゃった

にゃに?

猫王様 あんまりです

んー ないしょ ないしょ

ナイショはいいんですが ナトリ様

ん?

(ナトル) なんかバラバラですよ

(ナトリ) みんな迷ってるにゃー

(猫王) ハルちゃんは?

(ナトリ) あっ あんな所に!

(ムタ) よっ!

(ハル) おかえり

(バロン) そっちは?

(ムタ) 行き止まりだ

フム…

クックックッ

細工は流々だにゃ

ん?

また行き止まりか

難しくなってきたな

んーと んーと…

おかしい! さっきここに壁なかった

そんなわけないだろう

ホントよ さっきここ通ったもん

壁に足でも はえてるってのか!

これは壁じゃないぞ

ハリボテだ

(猫壁) ニャハー

ニャン… ニャー… ニャ?

ほらぁ

でかしたぞ ハル

こうなるか ふつう?

ありゃーっ

あ・れ・ほ・ど

一列に並ぶにゃと言ったのに!

(猫王) 逃げられるぞ!

(ナトリ) あっ 猫王様お待ちを

ハァハァハァ…

(ハル) 先行って すぐ追いつくから

キャッ

キザなことを…

いいよ バロン

まかせろ!

(ヒゲが伸びる音)

ん?

(ナトリ) 猫王様危険です おやめ下さい

そうはいくか!

こんなこともあろうかと

塔に兵を隠してますよー

(猫王) おおお!

いいではにゃあか

フフッ いいぞ いいぞ

ウニャーァ!

おっ!

塔の建て付けがいまいち

ダメではにゃあかっ

こうなったら最後の手段っ!

まさか いけません あれだけは!

あれをやれば さすがに

好感度が下がりますぞぉ

スイッチ!

ありません! そんなものここには

はい コードレス

ヌーッ フッハッハッ…

やったー 広いとこに出たよ

(バロン) もう一息だ

(ナトリ) あわわわ…

今にゃっ

(爆発音)

キャッ!

なに?

つかまれ!

うわぁーっ

にゃーっはっはっはっ

(ナトル) スペクタクルですにゃー

行こう!

(ナトリ) あわわ

(ハル) あーあ 低くなっちゃったね

しばらく様子見だな

やむをえん
 

チャプター10


(猫王) フハハ ニャッハハハ

早よ来い! 早よ来い!

ニャハ ハッハッハ

(猫王) ジッキンゲン君

また会えてうれしいにゃ

ハルちゃーん

すぐ お城に連れて帰るから

待っててにゃー

猫も悪くないぜ

ネズミ 好きにならなきゃダメ?

まだ諦めるのは早いらしいぞ

これは一体 なんというありさまだ!

父上ー!

ルーン もう帰ってきたんにゃ?

皇太子殿下なるぞ 直れぇ!

王子様?

ユキちゃんの知らせを聞いて

急いで帰ってみれば

これは一体なんのさわぎですか!

ハルちゃん

あっ

(ハル) また会えた

よかった 間にあって

いや だからちょっとしたお礼をにゃ

おまえだって ハルちゃんみたいな子が

お嫁さんに来てくれたら

うれしいかにゃーって

そんな気遣いは無用です

僕は このユキちゃんと結婚します

へ?

うっそー

急な話らしいな

やるじゃないか 王子様

ユキちゃん これを

キミの故郷で探してきたんだ

まさか 懐かしい!

それ 昔 私が好きだったクッキー

そうよ

みなしごだった私に ハルちゃんが

食べさせてくれた お魚のクッキー

そっか あなた あの時の子猫

あんまりキレイになってたから

気がつかなかったぁ

ユキちゃん

これから始まる僕らの暮らしの記念に

このクッキーを受け取ってくれるね

って 言うことはー

二人は結婚するってこと?

んー

すごいすごい ユキちゃん おめでとう

ありがとう ハルちゃん!

私 ハルちゃんに会ってなかったら

おなかをすかせて―

倒れていたかもしれないし

僕も危ないところを助けて頂きました

まさかあなたが いつも―

話に聞いていたハルさんだったとは

あなたは僕ら二人の恩人です

どんなお礼をすればよいでしょう?

お礼なんていらない!

だって私もうれしいんだもん

やっぱり猫を助けてよかったのよ!

(猫王) おっおっおっ うぉーん…

なんとまあ感動的

そうか

おまえには決まった人がおったんか

しょうがないにゃ うん うん うん

問題はハルちゃん

さぞかし 寂しかろうなぁ

(ハル) べつに

いにゃいにゃ… 倅がダメならば

ワシの妃にならんかにゃ

クッキーでも魚でも

なんでも好きな物を

食べさせてあげるにゃ

どう?

それより 私をもとの姿に戻して

それは お答え次第

ムッ!

かってなことばっかり言ってぇ

私がアンタの妃になんか

なるわけないでしょ

この変態ネコォー!

ねね どうして?

ガッハッハッ…

こいつは ケッサクだなあ

当然よ!

オレは ハッキリした女が好きなんだ

おまえのために一肌脱ごうじゃねぇか

このルナルド・ムーン様がな!

ルナルド?

ルナルド・ムーン?

あのルナルド・ムーンか?

思い出したぁ

にゃに?

お忘れですか 猫王様

この国の歴史 最大にして

最悪のあの事件!

どこからかフラリとやってきて

湖の魚をすべて食い尽くし

逃げたという

伝説の大犯罪者 ルナルド・ムーン!

(猫兵) 恐しい

なんてヤツだ

おまえ そんなことやってたのか

くだらない

へへっ

今度は城ごと飲み込んでやるぜ!

うわわ

早く陛下を安全な所へ!

うぬぅ… くーっ

やだにゃー!

ハルさんを守れ!

(隊長) ハッ

全隊 前へ!

おにょれー

猫王様っ

父のことは僕にまかせて

皆さんは早く逃げて下さい

しかし 塔が落ちてしまった

大丈夫! まだ道は通じています

不思議

マズい 夜明けだ

オレにまかせろ!

え? なに? まさか!

ウガァー

投げないでー

おっ?

よし!

ハル 走れ! すぐ行く!

お元気でー!

うん

(ハルの心の声) ありがとう ユキちゃん

私 まちがってなんかいなかった

猫を助けたことも

迷って苦しんだことも

みんな 大切な自分の時間だったんだ

うがぁー

うわー

先に行け!

すまん

父上は?

あそこに

父上 危険です 降りて下さい

なんて ムチャなことを

わたくしが連れ戻します

はあ はあ はあ…

うぬーっ よっとぉ

神妙に勝負だにゃ!

望むところ!

男爵

ハルを頼む

よし

はあ はあ はあ…
 

チャプター11


にゃおーっ

(ピシッ)

おーっ!

ううーん

あっあっああー

勝負あったな 猫王

くやじーっ

(猫王) おせっかい焼きの猫人形の噂は

聞いていたが

これほどの腕とはにゃ

聞けば どこぞの裏通りに

立っているだけの暮らしとか

(猫王) この国に来て―

ワシの仲間ににゃっていれば

よかったものを

はっ!

あいにく 不自由な暮らしも

気に入ってるのさ

(ハル) キャー

ここどこぉー?

何をした!

にゃははは…

何もしないにゃ

塔がこれだけ崩れれば

出口がどこへ移動しても

不思議はないにゃ

失礼する!

ニャーハッハッハッ…

(ナトル) ハル様ぁ

うかつだったか

でも見て ハルちゃんがもとの姿に

あっ あっ…

落ちるっ

落ちるっ 落ちる

もうダメェー

ハルー!

んー

ムタさん 重いって言わないで

でも… 次 こうなる前に…

ダイエットしとけぇ

きゃー!

うぬー

苦しぃー

ハルー!

キャッ

絶対 死んじゃうー!

まだ死んでない! 目をあけてみろ!

バロン?

胸をはって 下を見るんだ!

胸なんてないのにぃー

オレを信じろー!

ハッ?

私達 まだ生きてる?

(バロン) ああ!

(ムタ) 多分な!

ひょっとして 私達?

カッコイイかもー!

はっ

(ムタ) なんだ なんだ

(ハル) わっ わっ

すごい数

(バロン) 助かったぞ

よぉムタ!

どうだい? 鳥に助けられる気分は

トトさん!

なんだ 靴ずみヤローか

(バロン) 助かったよ トト!

街の上に 仲間を集めておいて

正解だった

上を歩いて 痛くないかな?

(トト) ハルは軽いから平気さ

そぉ?

(ムタ) そんなハズは

(バロン) 見ろ ハル!

(ハル) 学校だぁ!

帰れた 私 帰れたんだ!

みんな ありがとう

(ナトル) やった やったぁ

わぁーっ ハル様ーっ

よかった

元気でね ハルちゃん

猫王様

ナトリ

ワシャ もう引退だにゃ…

では わたくしもごいっしょに

トトさん ありがとう

あーもう まだドキドキしてる

無理もない

でも ちょっと楽しかったけど

調子いいぜ

さてと ハルは学校もあることだし

早く帰って 少し休んだ方がいいだろう

そうだな

もしかして お別れ?

もうひと仕事だな

バロン 私 あなたのことが

好きになっちゃったかも

ハルの その素直なところが

私も好きだよ

もし ハルが―

本当に私達を必要としたなら

きっとまた

猫の事務所の扉は開くだろう

その時まで

しばしの別れ!

あっ

さよなら

ありがとー!

バローン トトさーん!

ムタさんもねー!

(ムタ) “も”ってなんだ

“も”ってーっ!

フッ
 

チャプター12


(目覚まし時計の音)

うーん

あ 起きなきゃ

うわっ

おはよ

どうしたの こんな早く

今日 日曜だよ

ひろみと映画

混むから早めに行くの

ふーん

よし!

タマゴとサラダ 作っといたね

えっ?

私 もうすんだから

ポットに紅茶も入ってるよ

はぁ

あっ それね

へっ?

ハルちゃんのスペシャルブレンドよ

そのつど ビミョーに変わるから

味の保証はできないけどね

フフッ

あっ そう

あら いい香り

ハル! 情報よ

しかも たしかなスジ!

大ゲサだなぁ

別れたんだって 町田のヤツ

えっ?

ふーん そうなんだ

あれ なに その反応

なにが?

もっと ほかに言うことないの?

べつに

もういいのよ
 

チャプター13


(主題歌「風になる」流れる)

ハル なんかあった?

なんにも

うそ!

ホントだってば

それより ひろみは?

なに?

柘植君とは どうなの?

えっ いや べつになんにも

♪忘れないで すぐそばに

♪僕がいるいつの日も

♪星空を眺めている

♪一人きりの夜明けも

♪たった一つの心

♪悲しみに暮れないで

♪君のためいきなんて

♪春風に変えてやる

♪陽の当たる坂道を

♪自転車で駆けのぼる

♪君と失くした 想い出

♪乗せて行くよ

♪ララララ 口ずさむ

♪くちびるを染めて行く

♪君と見つけた しあわせ

♪花のように

♪忘れていた窓開けて

♪走り出せ恋のうた

♪青空に託している

♪手をかざして もう一度

♪忘れないよ すぐそばに

♪君がいる いつの日も

♪星空に輝いてる

♪涙揺れる明日も

♪たった一つの言葉

♪この胸に抱きしめて

♪君のため僕は今

♪春風に吹かれてる

♪陽の当たる坂道を

♪自転車で駆けのぼる

♪君と誓った約束

♪乗せて行くよ

♪ララララ 口ずさむ

♪くちびるを染めて行く

♪君と出会えた しあわせ

♪祈るように

♪陽の当たる坂道を

♪自転車で駆けのぼる

♪君と誓った約束

♪乗せて行くよ

♪ララララ 口ずさむ

♪くちびるを染めて行く

♪君と出会えた しあわせ

♪祈るように

♪君と出会えた しあわせ

♪祈るように
 

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