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第3回「芦屋市立美術博物館を考えるワーキンググループ」

日時:    2004年4月26日(月)18:00-20:00
会場:    芦屋市立美術博物館 講義室
パネリスト: 大森一樹(映画監督)
       角野幸博(武庫川女子大学教授)
報告者:   河崎晃一(芦屋市立美術博物館学芸課長)
一般参加者: 約70名


〔目 次〕

I. 機能面(ハード)

II. 運営面(ソフト)
II-1. 財源
II-1-1.財源:市の責任(官)
II-1-2. 財源:市民の支援(民)
II-1-3. 財源:企業の参加(産)
II-1-4.ワーキンググループと市民運動
II-1-5. 財源:その他のアイデア
II-2. 組織
II-2-1. 組織:財団機構
II-2-2. 組織:教育委員会
II-2-3. 組織:運営協議会
II-2-4. 組織:館長
II-2-5. 組織:ボランティア
II-3. 企画

II-4. 情宣
II-4-1.情宣:広報ボランティア
II-4-2. 情宣:インターネット
II-4-3. 情宣:パスカード
II-4-4. 情宣:機関誌

III. その他:文化特区

IV. 結び



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I. 機能面(ハード)


大森:これまでの概略ですが、1回目は総論的に、行政との美術館との関わりなどを話し、会場からもかなりご意見をいただきました。2回目は主に博物館機能について、郷土史料を寄贈された方々にお越しいただき、ご意見を伺いました。3回目ですが、私が一番最初からやりたかった、どうすれば美術博物館をより魅力的にできるか、ということについて話します。武庫川女子大学の角野先生とぼくのふたりで対話しながら、その都度皆さんのご意見もお聞きしつつ、進めていきます。
今日の話題は、大きく分けて美術博物館の「機能面(ハード)」「運営面(ソフト)」「その他」の三つに分かれます。まず「機能面」については、「かたち」「もの」「ひと」の三つの要素があります。
美術館の「かたち」(土地、建物、設備)については、よもや潰してマンションにするとか、転売するのであれば、これはまた別の問題になります。「もの」(所蔵品、寄贈品、購入品)についても、民間に売り渡すわけにもいかないし、捨てるわけにもいかないし、置いておく場所としてこの建物は必要です。もうひとつの「ひと」=人材は一見ソフトのようですが、学芸員は実は一種のハードウェアではないかと。所蔵品、歴史資料だけがあっても仕方なくて、学芸員がいて初めて「もの」が「もの」として成立するからです。その意味では、学芸員まで含めてハードであるから、いくら財政難であろうとも、「かたち」「もの」「ひと」の三つは残さねばならない。必然的に「機能面」はあるもの、という前提で話を進めます。

II. 運営面(ソフト)


 II-1. 財源

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II-1-1. 財源:市の責任(官)
大森:お配りした新聞記事「公立美術館 火の車」(『産経新聞』2004年3月28日)をご覧ください。全国の美術館の収益率が一覧表になっていますが、どこも同じ問題を抱えていて、お金がないという理由で芦屋市だけがやめてしまったら、他は一体どうなるのか。このデータと同じ2002年度の芦屋市立美術博物館の歳出はだいたい8,200万円です(新聞記事の算出法に準じて人件費を除いた総額)。歳入はトータル約1,100万円で(入場料、グッズ、カタログ収入、貸しスペースの使用料など)、歳入を歳出で割るとだいたい13.5%という数字になり、全国平均よりやや低い。従来、極めて低いようにいわれているんですが、こうして改めて全国の県立美術館と比較すると、もっと低いところはざらにあるんです。確かに自慢できる数字ではありませんが、それが閉館する理由にはならないでしょう。

角野:いまのお話で、そもそも公立の美術博物館とは一体何をするところなのか、という前提の確認が抜けていると思います。そういう確認、覚悟ができていないのに、事業収入だけでランニングコストをみろ、というのはそもそも不可能で、がんばっても30%くらいが限度です。つまり税金を投入することの大義名分、意味は何なのか、考えておく必要があるし、当然それに市民が同意することが必要なのです。
美術館を行政が持つことの意味ですが、今のところは教育委員会の社会教育の機能として位置づけられています。さらに博物館法でいえば、美術品の収集と保存、研究、普及教育などの機能があります。まずそういうことに対して、お金が必要だということを理解しないといけない。
ただ、芦屋市の人口、財政規模では、現状の機能、規模のまま美術博物館を長期にわたって運営し続けることには限界があります。それをサポートする仕組みが必要なのですが、だからといって企業や住民だけで全部まかなえるかというと、それもとんでもない話です。行政が税金を投じて維持管理運営すべき意義と機能は何か。それから市民が支えるべき機能、活動内容は何か。それらを企業はどんなかたちでサポートできるのか。そういう問題を整理したいのです。

大森:全国的にみても収益率が4、5%というところがある。これはもう、全国的に公立美術館が公費ではもはや立ち行かない、ということではないでしょうか。

角野:それは税金を投入しなければ立ち行かない、という意味で、本来、入場料や事業収入で100%運営できる性格のものではない、ということです。

大森:もともと、その運営できない部分を公費で補ってきたわけですね。それが財政難になると、どこともに減らしたくなる。ぼくはある意味それもやむを得ないと思っていて、ならば市の財政以外からお金を入れることも考えねばならない。

角野:全く同意見ですが、一方で税金を使ってでも維持しなければいけない役割というものが、公共施設には必ずあるのも事実です。

大森:そういう意味では市がゼロ、ということはあり得ない。それが半分なのか、70%なのかは分かりませんが、市が今後全くお金を出さない、というわけにはいかないでしょう。

角野:美術博物館の機能を大きくいうと、美術館としての機能と、それから歴史博物館としての機能がありますね。後者については、財政規模によって差はあるとしても、小さな街の郷土資料館から大きな国立の歴史博物館に至るまで、共通した役割があって、「街の顔」として行政が何らかのかたちでそれを支えていく仕組みが必要です。

大森:分かりやすくいうと、市はどれくらい負担すべきでしょう。

角野:結局、誰もそんな議論をしてないんですよ。この場でもしてないし、恐らく市の方でもしてない。一体市はどれだけ予算を出せばいいのか、という議論がほとんどないまま、赤字だからやめよう、という話になってしまっているような気がします。

大森:非常に乱暴ですが、例えば最低50パーセントは市が持つべきでは、と漠然と思うのですが。博物館機能を100%市が持つという意味では、美術博物館全体なら最低50%くらいかと。

角野:おおまかな話ではそうでしょう。ただわけ方にもいろいろあって、例えば土地、建物とランニングコストについては市が持って、企画運営については自前で稼ぎなさい、とか。人件費については職員と、NPOが支援する部分などを整理する必要があります。
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II-1-2. 財源:市民の支援(民)
大森:なにぶん素人なもので、ぼくが考えていた落とし所=民間委託は、50%以上は市が持って、残りを民間で、という漠然としたものでした。それでは、残りの50%をどうするか。民間プラス市民のサポートで何とかやっていけないか。

角野:結局、市民のものである以上、市民主体で組織づくりをすべきでしょう。ただ、必ずしも芦屋市に限る必要はない。この館には、より広域的な意味合いがあります。阪神間にいくつもある美術館ネットワークの中で、この地域全体のあるイメージや文化活動を支えているのです。だから市だけではなくて、最低限、阪神間の人たちが積極的に支える仕組みを作りたいものです。
今回、署名活動が日本全国、あるいは海外へと広がりをみせましたが、そういう応援団も当然必要です。もうひとつは、個人の大口寄付。いい意味でのタニマチ、スポンサーの方にリードして引っ張っていただきたいな、と思うわけです。以上、市民が支える仕組みが三段階くらい考えられるでしょう。

大森:今まで、ここでは「友の会」組織を作っていないんです。一旦作ると、ケアのために担当者が必要となり、また人件費に跳ね返ってくるんですが、NPOなどをうまく使えば可能ではないでしょうか。
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II-1-3. 財源:企業の参加(産)
大森:芦屋の場合、ポンと出してくれそうな個人の大口スポンサーに、なんとなく期待してしまうんですが。

角野:期待しますよね、それ。やっぱり芦屋、阪神間やね、という感じは、ぼくは悪いことではないと思うんです。というのは、過去百数十年の阪神間の歴史をみると、基本的には公、役所ではなく、市民や個人が文化を支えてきたのです。戦後になり、財閥が解体され、行政の役割も変わってきたなかで、地域固有の私(わたくし)文化の伝統を引き継ぎながら、市民と行政との新しいコラボレーションの仕組みを考えていかねばならない。そういう試みもなされないままに、ここがつぶれてしまったら、阪神間の地域文化にとって非常にイメージダウンになりますし、何かやろうとしている次世代の元気を削いでしまうことにもなります。さらに、よくいわれるのですが、ここでそういうことが起こったら、間違いなく同じことが日本全国で雪崩を打って起こるでしょう。

大森:大阪市立大学大学院教授の上山信一先生が書かれた著書の中に、経済が稼いで文化が消費するのでなく、21世紀は文化が経済を稼がせる構造になってきている、とあります。つまり芦屋市立美術博物館があることによって、地元の経済効果が上がる可能性がある。
ぼくが考えたのは、ここの入場券の半券をもっていけば、市内の商店で割引される。100円でも200円でも割引があれば、地元商業が入場料を一部負担していることになります。お店もお客さんが増えますし。要するに、美術博物館に来た人が芦屋でお金を落としてくれたらいいではないか。そういう意味では、この距離が逆に武器になる。もし駅前にあったら、JRを降りて美術館に行って、そのまま帰るだけになってしまいます。
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II-1-4. ワーキンググループと市民運動
一般参加者:お話に具体性が欠けていると思います。ここには市の方もおられないし、考えを聞くこともできませんが、実際に委託先を探しているということは、相手に具体的な金額を示しているはずです。対案を出そうと思ったら、市がどういう考えなのか、知る必要があるのではないですか。

大森:我々も市がいくらで民間委託しようとしているか全く知りません。ただ話の流れから、必然的に「かたち」「もの」「ひと」は市で持たねばならないだろう、ということです。市の真意の解明をこの会に求められても困るんです。そういうことをお調べになりたかったら、個人的に調べられれば可能ですし、それはこの会の役割ではありません。
それから、ぼくらのいってる民間委託は、いわゆる型通りではなくて、市と市民と民間企業とが、何とかこのお金の問題を解決しよう、という非常に漠然とした話です。具体的にいくらで売る、というようなことでは全くありません。

角野:おっしゃることは正論で、全くその通りです。そうでなければ委託の条件など決めようがないし、我々も具体的な代案を出すことなどできないんです。ただ、市がどういう企業にどういうスキームの委託を検討しているのか、我々には聞く機会が全くありませんでした。だから我々は、まずはあらゆる可能性を出そうとしているのです。
民間委託先について、誰かさんは手っ取り早くどこかに丸投げ、と考えたのかもしれませんが、現実的には非常に難しいでしょう。我々としては、この美術館の中身を解剖、整理していって、その機能に応じて民間、あるいは市民など、委託先がばらばらになる可能性もあると考えています。当然それを統括する、ある種の受け皿が必要で、市の直営が不可能なら別の財団なり、NPOを作る必要がでるかもしれません。
このように、いろんなアイデアを出すことで、ひとくちに民間委託といっても、こんな可能性も、危険性もあるということを、ちゃんと考えるボードを、本当は市が中心になって作って欲しいんです。

一般参加者:今でた疑問は、皆さんお持ちだと思います。根本的に芦屋市を動かすためには、やはり市民運動が絶対に必要です。ただ8万人の市民全員が美術博物館の機能や運営について考えられるわけがありません。とりあえず市民運動に必要なのは、芦屋市が美術館を全部やめるという決定を、どこまで考えてやったのか、という議論であって、勝手に慌てて処分するようなことはやめておきなさい、と市に対して働きかけねばならないのです。
この会の一番大きな意義は、一種の勉強会のようなことだと思います。ここで出された様々なアイデアを、仮に芦屋市がすべてやってみたけどだめだった、というなら、あきらめもつきますが、恐らくやってない。検討する部分がたくさんあるではないか、と市民が働きかける材料として、この会が作る最終報告書が有効となるでしょう。
市民運動そのものは、こことは別の場でやるべきです。奥池南町自治会の次の総会で、この問題について自治会として物申す、ということが恐らく議決されます。市に働きかける権利があるのは市民だけです。今日ここにおいでの皆さんで、何とかしたいと考えている方、ぜひ地元の自治会に声をお寄せください。上からの連携と下からの声があって、初めて具体的に動くことになるでしょう。

大森:芦屋市が財政難に陥り、すぐに閉館、休館という結論を出した。その過程で何が一番抜けているかというと、智恵もアイデアも何もない。単なる数字合わせの算数があるだけです。役人さんというのは、そういうことを全く拒否している人種なので、智恵の出せる人が何人か集まって助けてあげよう、というのがワーキンググループの趣旨なのです。
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II-1-5. 財源:その他のアイデア
一般参加者:芦屋には企業家がたくさんおられますが、その方々は、自分たちの企業のファイナンスをみるための、非上場の企業を必ずひとつかふたつお持ちです。その会社に対する相続税がものすごく高くて、皆さんひっ迫していかれるんです。その株を、株のかたちのまま生前に寄付できれば、もちろん利益が上がっているので、配当があります。これは恒常的な財源になると思うんです。そういうことを団体で受け付けられないか、税制面から検討されてはいかがでしょう。

角野:たいへんありがたいアイデアです。そのための受け皿が問題で、恐らく市が直接お金をもらうわけにはいかないでしょう。そういう基金づくりのための組織について、財政や法律の専門家にしっかり聞く必要があります。

大森:株の話になると、美術博物館に限定せず、一種の芦屋芸術文化基金みたいなファイナンスを作ってはどうでしょう。

角野:文化活動への寄付にも、それと同額くらいの税金がかかるんです。例えば企業メセナ協議会という、企業からの寄付を一旦そこで受けて、再配分していく免税の仕組みがあります。そういうことを、いまのアイデアに応用できないか。直観的に、かなりいろんな壁があるとは思いますが、検討すべきテーマでしょう。

一般参加者:奈良にある財団法人「たんぽぽの家」、障害者芸術と関連がある団体なんですが、障害者の創作活動や展示活動のためのアートセンターがこの5月15日に落成します。センターを建てるときに、一口一万円の市民債券を作ったんです。確か10年で返還する形だったんですが、半分以上は債権放棄され、寄付になったんです。かなりのお金を集めることに成功して、全国のNPOの資金集めのモデル・ケースとなりました。

大森:ぼくの友人が、その方式で大阪で映画館をやって、300人くらいから数万円づつ、合計一千万以上集めて映画館を始めたという例はあります。全員が株主です。美術館の場合も、規模は違いますが、考えられる話ではないでしょうか。

角野:今ちょうど株主とおっしゃいましたが、この美術館に対して、市民ひとりひとりが「私のもの」という実感が持てる仕組みが必要でしょう。手っ取り早いのは、ある部分をお金で買ってもらうことで、債券が一番分かりやすい。
箱物ではないんですが、舞台興業そのものを証券化して売る、という試みはあります。例えば二週間の興業に対して、証券会社を通じて投資を集めるわけです。入場者数が一定に達すれば配当がありますが、そこまで行かなければ寄付にして下さい、という仕組みです。美術館に当てはめれば、ある企画展に対して投資しませんか、というかたちです。配当がない恐れの方が大きいけれど、ある種夢を買って下さい、ということですね。

 II-2. 組織

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II-2-1. 組織:財団機構
河崎:当館の運営機構は非常に複雑で、外からみると分かりにくい。市から美術博物館に出向して来られた方でさえ、分からないまま1年以上過ごされることがあるほどです。
1988年に谷崎潤一郎記念館ができたとき、芦屋市が100%出資して芦屋市文化振興財団を作りました。その後、美術博物館ができ、ルナホール協会を吸収し、震災後にはさらにスポーツ施設や市民センターの施設管理までも市から委託されて、この10年ほどのあいだにどんどん膨れ上がってきました。
お金も二重構造になっていて、市からの委託料と、財団の自主事業費の二種類があります。観覧料収入は市に入りますが、グッズの売上げ収入は財団に入ります。両方合わせると、それなりの収入になります。もちろん採算ベースは無理ですが、そのへんの運用形態も頭をひねれば、ある程度の数字を計上することができるでしょう。
先ほどファイナンスの話が出ましたが、いま美術関係の法人では、国の独立行政法人だけが、免税措置の対象になります。芦屋市文化振興財団の場合、スポーツと文化、両方の要素があるために、特定公益法人になる審査を受ける資格すらないのです。今後寄付金の問題は避けて通れないのですが、それには構造的な問題を相当クリアせねばなりません。
先ほど出た企業メセナ協議会は、館の運営全体ではなく、ひとつの展覧会に対して寄付をした場合に、免税措置を得ることができる、というものです。例えば当館の場合、今年秋のコシノヒロコ展では、既に実行委員会を作り、企業メセナ協議会の認定を受けています。各企業からの寄付金は損金算入とみなされ、免税の対象となるのです。
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II-2-2. 組織:教育委員会
大森:美術館は教育委員会の管轄ですが、市の経済効果まで考えると、観光課や広報課、商工会まで巻き込む必要があるのではないでしょうか。

角野:今までやっている議論は教育委員会マターでは絶対あり得ないと思います。ですから、違う組織、受け皿のようなものを作る必要が間違いなくあります。
それでも教育委員会を使いたおすとすれば、何が有り得るか。美術館は従来は社会教育の枠組み内にありますが、その中でも学校教育や生涯学習との連携を、もっと考える必要があるでしょう。
教育委員会の枠組み外では、福祉施設として何か使えることがないか。例えば高齢者福祉施設から見学に来ていただくとか、あるいはそういったところへ出前にいくとか。行政の縦の枠組みを越えて機能連携することは、要するに税金をより有効に使う、ということにもなりますから。
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II-2-3. 組織:運営協議会
大森:美術の専門家をはじめ、市民の代表、学芸員らによる運営協議会というか、企画編成委員会のようなものも必要ではないでしょうか。
『博士の愛した数式』を書かれた、作家の小川洋子さんが芦屋にお住まいです。岡山から越してこられたのですが、岡山の美術館からの方が、まだ声がかかるそうなんです。芦屋では全くお声がかからない。有効な人材のネットワークをまだまだ活かせていないように思います。

角野:大森さんがいわれる委員会は、ある種の知恵袋のようなイメージだと思うんですが、智恵だけじゃなくて、ちゃんと身体も動かしてよ、というところまでできないでしょうか。
公共施設の計画管理運営の一部を市民に委託する、あるいは市民と一緒に計画、運営していくようなプログラムを作る動きが各地にあります。三田市の「兵庫県立有馬富士公園」では、県立公園を舞台に、運営組織を市民からも公募し、行政の担当者と、専門家と、市民とで計画管理運営協議会を作り、いろいろ決めていく。決めたからには当然市民にも責任がかかります。普段の維持管理活動も手伝うかわりに、市民が企画提案をしたときには、公園管理者と一緒になって実行します。そういうことを、美術館でもできないでしょうか。
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II-2-4. 組織:館長
大森:館長についてはどう思われます?

角野:館長さんはね、めちゃくちゃ有名人で金とってこれる人。副館長、あるいは事務局長には、いろんなことができる人が欲しい。

大森:問題なのは、教育委員会の人が館長を兼任しているのが、無理があるような。

角野:普通は事務局長くらいですよね、兼務するとしても。

大森:やはり館長は顔ですからね。ある程度の人がいることで、他の美術館との連携もできるわけで。

角野:顔のある人っていうのは、要するにネットワークを持っている、ということですから。
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II-2-5. 組織:ボランティア
一般参加者:美術館などを運営する際、一番大きいのは人件費です。アメリカの西海岸の、リタイアされた方がたくさん住む地域に、小さな水族館があって、そういった悠々自適の方々を募集し、組織的に教育して、何百人単位でボランティア採用しているんです。イベントのスタッフをしたり、観客に対して解説をする、そういうのは何人いてもいいわけで、逆に水族館がスタッフを育てているということが、啓蒙活動にも直結しています。

一般参加者:私はアメリカの歴史協会でインターンをしたことがあるんですが、そこでも地域の資産であるミュージアムをどう守っていくか、ということで市民ボランティアが積極的に活動していました。教育は必要ですが、ボランティアというのは、地域の価値を上げるために喜んでやってくる人たちですから、そういう市民の巻き込み方をうまくデザインすれば、この美術博物館もかなり見直されると思います。
先ほど大森さんがおっしゃった上山先生が、今ミュージアム評価のグループを作られていますが、お金の問題だけではなく、どういったミュージアムは残すべきなのか、という視点から、もう一度この美術博物館を評価していただいてはどうでしょう。

一般参加者:ボランティアが即戦力になるのは難しいとしても、職員の皆さんと一緒に半年間でも研修すれば、ある程度力が育ってくるでしょう。
それから音楽会にはスポンサーがつきものですが、展覧会にもスポンサーをつければ、その広報力にも期待できると思います。また美術だけでなく、先ほど大森さんがいわれた映像のほか、音楽、文学などすべて盛り込んでいくことも、市民へのPRの上で必要だと思います。

一般参加者:人に来てもらうことを考えると、業態としては、美術館はサービス業ですね。しかし、ただ作品を並べて字を書いて、どうぞ来てご覧ください、こんなのサービス業でも何でもない。やはり魅力を知ってもらうためには、ポイントを解説してもらったほうが面白いし、魅力を感じると思うんです。
そういうのはどうしても人手が要ります。専属で朝から晩までやるとたいへんだし、専門技術を持った人だとお金がかかる。それをサポートするボランティアを育てていくべきでしょう。企画内容ももちろん大事ですが、ボランティアの手も借りながら、実際の展示場における市民への働きかけを、もっと考えるべきです。
いま、市議会が市に対して弱腰だと。美術館を応援しない理由について、お金の問題もありますが、大事なのは入館者数なんですね。多少赤字でも、市民に支持されているから潰すわけにはいかんやろと、現状ではいえない。放っておいてもお客さんが来るなんて、世界でも有数の美術館しか無理ですし、こんなちっぽけな美術館にたくさん来てもらうためには、現場でのPRにどんどん人の資源を割いていかないと、成り立たないと思うんです。お金も大事ですが、やはり人が来ることで、お金が集まってくる、というものですから。

一般参加者:美術博物館に市民が何を求めているのか、他の美術館との比較も含めて、かなり丁寧にアンケート調査などをする必要があるかもしれませんね。市民の中に入っていくようなかたちで企画のあり方を考えないと、自分たちだけで判断すると、失敗する可能性が高いでしょう。
美術博物館が残されて、運営される、という前提で議論されていますが、これは分からない。今後は年間30億円づつ赤字があるので、閉館したい、というのが芦屋市の本音なわけです。これをひっくり返そうと思ったら、館を残さねばいかんのだ、という市民の声が基盤に根強くあって、市長もはやりこれは閉めたらいかん、金を少しは使わんといかんのかな、と思わせる雰囲気が、世論などでできないといけない。そのためには、市民がこれまであまり足を運んでないけど、あそこは大事やから、これから行こうやないかと、面白そうやで、という雰囲気になるような、情報発信が必要です。

角野:要するにお金、人手、さらにノウハウによるサポートもある。いろんな角度から新しい運営体制を検討すべきだし、そういう提案やアプローチがないと、市でもなかなか「残していこう」という議論にはならない、ということですね。
ここで気をつけねばならないのは、行政にお金がないから、その分を市民に任せたらええやないか、それは絶対に違います。行政の下請けという発想では、NPOもボランティアも継続しません。最初だけです。
ボランティアであれ、NPOであれ、それ自身がちゃんと成立し、継続するような体制をむしろ作らないといけない。その中にお金も人も入るのです。いつまでたっても持ち寄りだけでは続きません。1万円の会費を10年払い続ける保証はどこにもないんです。どんなにがんばったって3年ですよ。だから、それも含めてここで議論して欲しいんです。
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 II-3. 企画

一般参加者:運営の仕組みと企画とを連動させ、かつボランティアが関わる様々なチャンネルのひとつになるようなプロジェクトができないでしょうか。
市民から、企画を提案してもらいます。ただし内容のレベルが非常に問題なので、何らかの審査テーブルにかけたうえで、実際にある部分の企画を主体的にやってもらうのです。やりたいことができる、それこそが最大のモチベーションであり、広報やボランティアの力になるんです。ある部分は独立採算型で、スポンサーもがんばって取ってきてもらったり、先ほどお話があったエンジェル・システム=投資の仕組みを一部に適用することも可能だと思います。
この場合、なるべくコンパクトに、小さな実験をやることが大事だと思うんです。最初から大きなことだと、マネージメントだけでたいへんですから。提案者とそのグループが中心になって、自分たちのネットワークでできる範囲で、知っているお店に協力してもらう、みたいなイメージがひとつあります。それによって、マネージメントの大変さやいろんなものを体験できる。何も市民に限らず、若い意欲的な学生さんとか、いろんな人を入れたらいいと思います。芦屋市だけではなく、阪神間くらいにまでターゲットをひろげて、結果としてお客さんにたくさん来てもらい、広報効果が上がればよいのです。
例えば、秋のコシノヒロコ展の際に、こういう自主プログラムを、ほんの少々オプション的にできないでしょうか。例えば前庭を使って、ファッションと食べものをテーマにしたり、小規模であっても、クオリティの高いアイデアがだせる市民はおられるでしょう。

一般参加者:実はこの前の「幻のロシア絵本」展の際に、「おもしろプランニング」という市民グループで、小さな企画をしました。私どもが講師を見つけてきて、ロシアのアコーディオンを弾いてもらったり、ロシアン・ティーをいただいたり、ロシア人の方に絵本を朗読してもらうという、立体的な企画でした。けっこう人が集まって、なかには初めて来館された方もありました。ささやかではありますが、いまいわれたようなことは、既に美術博物館と共同でやっています。今度のコシノヒロコ展についても、館が懐を開いて下さったら、手を上げる市民はたくさんいると思います。

 II-4. 情宣

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II-4-1. 情宣:広報ボランティア
大森:今回の問題と関わって、一番感じたのが、広報が本当に行き渡ってないことです。まずここを改善するだけで、ずいぶん事態は好転するのではないでしょうか。
市民ボランティアにとって一番やり甲斐があるのが、実はこの部分だと思うのです。自分のごく近所でいいから、チラシを配ったり、ポスターを貼ったり、そういうことがうまく組織できれば、そこを入口として、チューターなど美術館機能により直結したボランティアへと繋がっていく可能性もあるでしょう。

角野:界わいのお店にチラシを置くのもひとつの広報活動ですが、さらにそれを一歩進めて、都市空間全体としてアピールしていくような仕掛けができないか。その時々の企画展にあわせて、例えばレストランだったら関連したメニューを出すとか、展示内容に関係した音楽を流すとか、美術館活動が、実は街の中に勝手に滲み出している、そんな空気を作ることも有効でしょう。

大森:サービス業として市がなってないのは、まさに宣伝をやらないことだと思うんです。阪神芦屋から神戸方面に行く途中、体育館の横に巨大な壁がありますよね。いまは国体ののぼりがひとつあるだけなんですが、市の持ち物だし、どうして使わないのかなぁ、といつも思うんです。あと阪神芦屋駅の暗ーい地下通路の掲示板。本当にきたないですよ、あれ。

一般参加者:大森さんのいわれた広報ボランティアは、逆だと思います。チラシをまく前にサポーターであるべきで、サポーターだったら自主的にまくんです。美術館を好きじゃなかったり、距離を感じていたら、そういう労を進んでやる気持ちになりませんよね。

大森:ボランティアといっても、強引にやるわけです。例えば芦屋市内の全マンションには、必ず掲示版があります。掲示版と管理人室の前には必ずチラシを置いて下さい、というふうに、美術博物館から持っていくわけです。貼ってくれたマンションに対して、何枚か割引券がプレゼントされる。いわばマンションローラー作戦ですね。否が応でも美術館が目に留まるようにしないと、好きな人だけのネットワークだけでは限界がありますから。

一般参加者:それはボランティアではなくて、むしろ戦略でしょう。私はポスター貼りやチラシ置きをけっこうしているほうなんですが、気持ちの良くないときもあるんです。嫌な顔をされたり、本当に低姿勢でお願いしながら、一軒一軒まわるわけです。そうでなくても忙しい学芸員や、あるいはここの職員がそれをするわけですか? それをしてないのは、職員の怠慢だとおっしゃるんですか?

一般参加者:私もいろんなボランティアを経験し、かなりチラシもまくし、ポスターも貼ります。けれども相手とのコミュニケーションがなければ、チラシもただの紙きれ同然になるんです。
私たち市民グループ「芦屋おたすけたい」は、このあいだ約一週間、業者が撤退したあとの喫茶室をボランティア運営しました。従来の喫茶店の場合は平日で20人、土日で50人程度の来場者だったのが、一日あたり120人、最後の日は190人も来ました。大事なのは人と人とのコミュニケーションで、私たちは一軒一軒訪ねて、もてる全ネットワークを使って宣伝したし、私たちがこの場所にいるからこそ、みんな会いにきてくれるんです。「初めて来たけれど、美術博物館っていいわね」という方も何人かおられました。市民がこの美術博物館に関わることで、ほかの市民もこちらを向いてくれる。そういう連鎖反応があれば、行政も美術博物館を潰しにくくなると思います。

角野:従来の枠組みを越えた美術博物館の機能として、この場を二週間くらい使って、市民が自分たちの企画を自己責任で運営し、それを館が受け入れるような仕組みですね。例えばそうした企画を、今度は阪神間の他の美術館に巡回させることも、ここの活力を社会にアピールする有効な手段だと思います。
ただ、とにかく続けるのがしんどい。きっと皆さん疲れるんですね、一年くらいやってると。ひとりの人や、ひとつのグループにずっと続けてもらうのは、正直いってぼくは気の毒だと思います。それが次々とバトンタッチできるようになって、はじめて繋がっていくのかもしれませんが。
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II-4-2. 情宣:インターネット
一般参加者:これは宣伝活動になるかどうか分かりませんが、私がこのワーキンググループのことを知って最初にやったことは、分かる範囲で市会議員にメールを送ったんです。いまはすごく安いコストでできる宣伝活動があるので、ここにおられる皆さんが、市会議員に一通づつメールを送るだけでも違うと思うんです。
あと、自分のホームページを、美術博物館のサイトにリンクさせたいんですが、ここのホームページが、はっきりいってぜんぜん面白くない。リンクさせやすい、魅力あるホームページづくりも大事です。もし職員の手が足りないのであれば、ホームページなんて、ある程度の知識があれば誰でもできるし、いくらでもボランティアでお手伝いする人がいると思います。
お友達に「こういう企画があるんだけど、美術館にぜひ行って下さい」というメールをひとつ送るとか、細かいことをひとつづつやっていくのが、私たち市民にとって一番大切なんじゃないでしょうか。その先に、実行部隊として働く方、企画を出す方、そんなふうに3つ、4つのグループが連携してやっていくべきだと思います。
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II-4-3. 情宣:パスカード
一般参加者:阪神間の美術館との連携について、いま思いついた簡単なアイデアなんですが、例えばイベントを一緒にやってしまうんです。ひとつの美術館だけではなく、ミュージアム・ウィークみたいなかたちで、あちこちで同時にやって、一気に人を阪神間に引き寄せるような連携イベントも、大きな広報効果があると思います。あとは東京とかでよくやってるような「ぐるっとミュージアム・パス」みたいな、三千円のチケットを買えば三日間行き放題とか、そういうチケット開発も有効ではないでしょうか。

一般参加者:芦屋にあるいろんな美術館にすべて入館できる、共通のパスカードを以前から提案しています。展覧会をもう一回みたいなと思っても、二回目の入場料を出すのがちょっともったいない。友だちを案内して、その人には当日券を買ってもらい、私はパスカードで入場できる。そういうものがあれば、より気軽に友人を誘いやすくなります。
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II-4-4. 情宣:機関誌
大森:月刊でも季刊でもいいから機関誌を出せないか。スタッフに聞くと、やはり人手が足りないそうですが、無理ならインターネット上でもいいのです。こういう部分こそ、お金をかけずにまだまだできる余地があると思うのです。

一般参加者:機関誌こそ、この館の規模を考えれば、ボランティアで編集してはどうでしょう。以前、大森さんがプロデュースされていた「広報あしや」の表紙の写真を、毎回楽しみにみてたんですが、そういうプランニングや、執筆者のラインナップとか、大森さん以下ネットワークを持った人がけっこういると思うんです。芦屋に縁のある人のボランティアで編集できれば、面白いものになるかもしれません。配布先も阪神間、全国、あるいは外国にだってPRできるでしょう。発行予算は、もしかしたら広告を取ってきてある程度まかなう必要があるかもしれませんが、これも美術館外の労力を使えるはずです。
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III. その他:文化特区

角野:今までいろんなアイデアがでているんですが、恐らくいま現在の芦屋市の条例や、博物館法等々で、寄付の制度をはじめ、できないことがいっぱいあると思うんです。それらの規制をクリアするために、何らかの構造改革特区、例えば「文化特区」が考えられないか。
実際にやってるところは、東京の豊島区に「豊島文化特区構想」というのがあるそうです。ほかには京都が「知の創出活用特区」というようないい方をしています。「特区」というのは当然受け皿というか、対応する行政の枠組みが必要なんですが、今のところ芦屋で考えられるのは街づくりと、教育に関する特区提案で、他にもう少しできそうな気もします。
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IV. 結び

大森:私が昨年、芦屋市議会に出した請願書がこのワーキンググループのそもそもの始まりです。請願を出すにあたり、いろんな団体名を考えたんですが、市がいろいろいうもので、結局私個人で、映画監督の大森一樹として提出しました。それが採択されたがために、なんとなくひとりで引き受けるはめになり、時間もずいぶん費やしました。誹謗中傷めいたことをいわれたり、変なメールをいただいたこともあります。ともかく私個人の名前で請願がでているかぎり、最後までやり抜こう、ということで何とか今日にまでこぎ着けた次第です。
本日の内容をたたき台にして、市議会に提言させていただきますが、これも私個人の名前で行います。内容にご不満があるかもしれませんが、私が話したことと180度違うようなことはありませんし、「だめだ」といわれたことは、もちろん外すつもりです。全議事録を付けて提出しますので、私個人の提言と、お集まりいただいた皆さまの意見との両方が反映されるでしょう。
この会は、私という民間の一個人がやったもので、ご指摘のとおりどうしても限界を越えられない部分がありました。市はこう考えているという、具体的な数字と方針の説明がないと、解決しない問題が山積みだからです。それをすっ飛ばしたがために、いろいろと問題も出ました。そういう意味でも、きちんとオーソライズされた、行政主導による「考える会」が作られるべきであると、提言の最後に付け加えたいと思います。
ここでご発言された方々が、それぞれご自身でワーキンググループを作られて、それが市内にたくさんできた時に、初めてこの問題は動き出すのではないかと思います。そのための一番最初のワーキンググループとして、この会を位置づけたいと思います。
以上、皆さん長い間どうもありがとうございました。

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