Updated: January 09, 2007

ガリシアの音楽と映画

※このあたりのネタはこのへんのどこかでアップデートされてたりするかもしれません。

音楽

その気候や風土が、いわゆるスペインと聞いて想像されるものとは全く異なるのと同様、ガリシアの伝統的な音楽は、いわゆるスペインと聞いて想像されるもの (例えばルンバ・フラメンカやフリオ・イグレシアス) とは全く異なり、ケルトの遺産を受け継ぐ土地であるということが民族的アイデンティティの拠り所のひとつであるこの地では、音楽も他のケルト文化圏の影響を強く受けたものです。

ルアル・ナ・ルブレ Luar Na Lubre / Un bosque de música (DVD)
イグナシオ・ビラール Ignacio Vilar 監督による、ラ・コルーニャを拠点に活動するグループのドキュメンタリー映画。前半は山村でのレコーディングの模様、後半はラ・コルーニャ市庁舎前の広場 (マリア・ピタ広場) でのコンサートの模様を中心に、メンバーへのインタビューやオフショット、そしてガリシア各地の風景が次々と挟みこまれる。フィルム撮影による映像はとても美しく、構成はテンポよく、音楽ドキュメンタリーとしてはもちろん映像作品としての完成度も極めて高い。ガリシア及びその音楽に興味がある全てのひとにお勧め。
プロモーションサイトは こちら で、素晴らしい出来栄えの予告編映像への直リンクは こちら
DVDは英語やスペイン語等の字幕付きで、メイキング等のボーナストラック多数。
ただし、現時点でリリースされているのはスペインのみで、当然PALのみ。残念ながら日本での入手は(La Tienda Celta あたりでのネット通販を除けば)絶望的。

ルアル・ナ・ルブレ Luar Na Lubre / 約束の地 Hai un paraiso
上の Un bosque de música に併せてリリースされた2004年の作品。タイトル曲や「Uah lúa」に見られる現代的な要素や、ファドを初めとした様々な地域の音楽を取り込んだ多様な音作りが試みられているのだけど、それに加えて、個々の楽曲の美しく親しみやすい旋律が、この作品を幅広い層にアピールするものにしている。タイトル曲はサンティアゴ・デ・コンポステラの聖年を祝う XACOBEO 2004 プロジェクトのオフィシャルソング。チェロとヴォーカルを担当するロサ・セドロン Rosa Cedrón 女史にとっては、グループでの最後の作品となった。
グループのオフィシャルサイトは こちら。また、版元のワーナースペインの、グループのページ にタイトル曲のプロモーションビデオが、こちら にその訳詩があります。

カルロス・ヌニェス Carlos Núñez / シネマの海 Cinema do mar
ビゴ出身のガイタ (ガリシアのバグパイプ) 奏者。チーフタンズの「Santiago」(下を参照)での共演者らをゲストに迎えた初リーダー作 スパニッシュ・ケルトの調べ が大ヒットし、世に「スパニッシュ・ケルト」なるもののブームをもたらした、現代ガリシア音楽界の最重要人物。オフィシャルサイトは こちら
これは、映画「海を飛ぶ夢」(下の「映画」欄を参照)の音楽に参加したことが切っ掛けで構想されたと思われる、「海を飛ぶ夢」のものを含む映画音楽や、クラシック音楽などの主題による演奏を収録した2005年の作品。ホアキン・ロドリーゴのアランフエス協奏曲(アダージオ)とモーリス・ラベルのボレロの壮麗な演奏は、あたかもそれらが元々ガリシア/ケルトの音楽であったかの如く、とうに使い古された筈のこれらの曲に、全く新鮮な響きをもたらしている。同様にゴッドファーザー・ワルツは、シチリアではなく(シチリアと同様、新大陸に大勢を送り出した)ガリシアの移民への哀歌のよう。伝統音楽に依りながらも、その礎とするコミュニティの枠を越え、万人に遍く受け入れられ得るであろうこの作品は、現代のガリシア音楽が到達した頂のひとつ。

チーフタンズ The Chieftains / Santiago
カルロス・ヌニェス(上を参照)という才能との出会いによってガリシアの音楽に注目したアイルランド伝統音楽界の巨人が、ガリシアはもとより、その移民の足跡を辿るというコンセプトで、バスクからキューバ、メキシコまで、各地の音楽家との競演を収録した1996年の作品。
このアルバムで中心的役割を果たしたカルロス・ヌニェスが一躍脚光を浴びたのはもとより、ライ・クーダーとキューバの音楽家とのセッションが、かの「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」へと発展するという、ワールドミュージック史上、極めて重要な作品。音楽的にも多様な作品が散りばめられていて、飽かずに楽しめる傑作。

エビア Hevia / Tierra de Nadie
ガリシアではなくアストゥリアスのひと。自ら開発した電子MIDIバグパイプの奏者。このリリースのオープニングを飾るダンストラック「Busindre Reel」が、ブエルタ・エスパーニャ のテーマ曲に採用されて大ヒット。オフィシャルサイトは こちら
ダンス/ロック志向の故か、はたまた商業的にはカルロス・ヌニェス(上を参照)の柳の下のドジョウフォロワーという認識であったせいか、ワールドミュージック業界の生真面目な評論家や研究者からはシカトされがちなのだけど、純粋に聴いてて楽しいポップス (というかフュージョン) 。ライブステージで、見た目にも美しいエレクトロニック・パイプを自在に操る姿は、単純にカッコイイと思う。

THE ROAD TO GALICIA〜ガリシアへの道
ヨーロッパを中心に、比較的認知の低いカテゴリーの音楽を精力的に紹介している ビーンズ・レコード が、独自に集めた編集盤。ガリシアの著名な音楽家がひと通り揃っているので、この地の伝統的な音楽を追求したい向きには絶好の入門盤。下の「ユーロ・ルーツ・ポップ・サーフィン」の参考資料としても最適。ただしここで紹介している他の盤に比べるとポップな風味は薄いので、ガリシア/ケルトの伝統音楽に免疫が無い方にはお薦めしません。

ユーロ・ルーツ・ポップ・サーフィン (本)
ヨーロッパ各地のルーツミュージックの紹介本。序文と目次が こちら に掲載されています。「イベリア半島」編では、フラメンコ類が端折られていることもあり、ガリシア音楽が最も大きく扱われているのだけど、そのガリシア音楽についての文章は全て、長嶺修さんの手によるもの。紹介されている音楽家の多くは、上の「THE ROAD TO GALICIA〜ガリシアへの道」に作品が収録されているので、こちらも併せてどうぞ。

以上のリストは、伝統音楽に免疫のないかたにも受け入れられ易いであろうと思われる作品に絞っています。万一ディープな伝統音楽の世界へ、これから足を踏み入れたいという奇特な方は、まずは上の「ユーロ・ルーツ・ポップ・サーフィン」を積読するが吉。また、伝統音楽に限らず、ガリシアの音楽に多く触れてみたいと思われる方は、TRASTENDA という通販サイトが、ガリシアの音楽家による幅広いカテゴリーの音楽をリストしています。

映画

海を飛ぶ夢
アザーズ で知られる アレハンドロ・アメナーバル Alejandro Amenábar 監督が、ラ・コルーニャ近郊シューノ Xuño 出身の、ラモン・サンペドロ Ramón Sampedro という、実在の人物の生涯を描いた作品。ゴヤ賞の、過去最多となる14部門を受賞したのみならず、国外でも米アカデミー賞の外国語映画賞をはじめ、数々の賞を受賞。
プロモーションサイトへのリンクなどはこちらにまとめてあります。
なお、アメナーバル監督自身が手掛けた映画音楽で、ガイタ(ガリシアのバグパイプ)を演奏しているのはカルロス・ヌニェス(上を参照)。

蝶の舌
スペイン内線前夜のガリシアを舞台にしたマヌエル・リバス Manuel Rivas さんの 短編小説 を基に、ホセ・ルイス・クエルダ José Luis Cuerda 監督が映像化した1999年の作品。ゴヤ賞 (スペイン版のアカデミー賞) の脚色賞を受賞。
日本公開のプロモーションサイト で予告編映像が見れます。

DAGON
ルゴ出身のプロデューサ、フリオ・フェルナンデス Julio Fernández さんと、監督のブライアン・ユズナ Brian Yuzna さんが中心となって、主にホラー映画の製作を手掛ける、バルセロナの映画会社 filmax のレーベル Fantastic Factory は、これまでにガリシアを舞台にしたふたつのホラー映画、DAGONと ガリシアの獣 を製作しています。
H. P. ラヴクラフトのマニアとして知られるスチュアート・ゴードン Stuart Gordon 監督のDAGONは、ラヴクラフトの『インスマスの影』が原作。ニューイングランドにあるとされる原作の舞台インスマスは、ガリシア風に名前をもじった、インボカという名の、「サンティアゴから50キロ」の港町に置き換えられているのだけど、怪奇幻想シアターDAGON評で、インボッカの不気味な雰囲気は秀逸で、まさに私の思い描くインスマウスそのものと評されたインボカのロケ地は、ポンテベドラの港町 Combarro(ちなみに、ダゴンを崇拝する、インボカの支配者一族の苗字はCambarro)。陰鬱で胡散臭い街並みは、実際のところ典型的なガリシアの港町なわけで(ビゴのような都会でさえ旧市街はこんなん)、ウシア嬢がタコの化け物で、それはつまりプルポ・ガジェゴというネタかよ、などなど、ガリシアオタにもツッコミどころが満載の映画だったりするのでした。
予告編映像などは、プロモーションサイト でどーぞ。

テレビ

デスデ・ガリシア・パラ・エル・ムンド Desde Galicia para el Mundo
スカパーの TVEスペインチャンネル で、毎週月曜日の早朝に放送されているガリシア地方のドキュメンタリー番組。TVE Internacional の再放送なので、スペイン語で字幕もないけれど、現在のガリシアの映像を日本で楽しむことがきるという点では極めて貴重な番組。音楽が好きな向きには、毎回数曲放送される、ガリシアの音楽家による演奏(伝統音楽を中心にポップスとかロックもあり)も楽しめます。