アグリ (1998) THE UGLY


監督:スコット・レイノルズ (劇場未公開)
連続殺人犯が精神病院の一室で、精神科医からの尋問を受ける。なぜ、人を殺すのか、どういう家庭で育ったのか、などと質問を受けながら、主人公のフラッシュバックを交えながら話は進んでいく。
彼は本当に、狂人なのか、罪を免れるために装っているのか、その真相に迫る...って言う『ザ・クライアント』や『羊達の沈黙』のような社会派映画ではなく、これは完全にホラーです。
主人公の家庭環境や,いじめなど、よくあるパターンで、それでどうして殺人狂になってしまったのか、良く解んないけど、そんなことはどうでもいい。とにかく気味悪くして、怖がらせてやろうぜって言う映画です。
何といってもこの映画が変なところは、精神病院です。 看護人や医者の方が精神異常者という感じで、主人公が一番まともにみえてくる。 あのスタッフ無しにして、この映画の怖さは有り得ない。 しかし、病院のスタッフ全員をサイコにしたことが、話の筋に必然的があるとも思えない。 これじゃぁ、恐くない、そうだ、病院自体を気○いに変えてみようってな感じで、取って付けたようなアイディアみたい。
もちろんそのおかげで、この映画のシュールな効果はグッと上がって、信憑性はグッと下がって、そしてカルト映画監督の座に一歩近づくのです。
ニュージーランドってなんか牧歌的な国だと思ってたけど、ピーター・ジャクソンに次ぎ、このスコット・レイノルズ...、なんかイメージ狂ってしまいます。 行ってみたいなぁ...。

乙女の祈り (1994) HEAVENLY CREATURES


監督:ピーター・ジャクソン
ピーター・ジャクソンが、ニュージーランドのB級ホラー監督からハリウッドに進出するきっかけとなったのが本作品。 血しぶきと乙女チックなファンタジーとそしてブラックなコメディとが巧みに織り込まれ、ニュージーランドで50年代に実際に起こった悲劇を基にしてるにもかかわらず、娯楽性に富む。
女学校に通う14歳のポーリーンは周りに溶け込めない反抗的な女の子。 ある日、イギリスから美少女ジュリエットが転校して来る。 教師を馬鹿にしたような態度と、奇抜な想像力を持つジュリエットは、ポーリーンと意気投合し、二人は大親友となる。
しかしジュリエットはまた両親の都合で南アフリカに転校しなくてはならず、ポーリーンは一緒に付いて行くなどと、無茶なことを言い出し、母親に反対されると、ふたりの少女はポーリーンの母親を殺害する計画を立てる…。
普通なら、自分達の我がままが通らないぐらいで母親を殺したりしない。 ポーリーンの母親は極ふつーの、娘を思いやる母親だ。 しかし、なぜあそこまで追い詰められたのか。 その心理状態を見事に描いているところが凄い。 ピーター・ジャクソンは乙女心を知り尽しているみたい。 こんな庶民の家庭に生まれてきたのは何かの間違い、自分は実は貴族のお姫様だ、みたいな、えっとこれはまさに『中二病』の重症な状態ね。 同じアイドル歌手が好きな友達がいると異常に盛り上がるのも女の子。 そのアイドルが中世の騎士になっている物語を空想し、自分達の敵をバッタバッタと倒してくれる。
ふたりは始終きゃっきゃ言いながら走り回って遊んで、その延長で抱き合ったりキスしたりするのだけれど、これもレズビアンというより、中学生女子の仲良しにはありがちのような気がする。
  では何で犯行にいたったかと言うと、全てが行き過ぎて集団ヒステリアみないな精神状態になっちゃったっていうことかな。 所詮中学生は自分勝手なバカなんです。 中坊女子研究をしたいなら絶対に見るべき一本だと思います。 ちなみにジュリエット役のケイト・ウィンズレットはこれがデビュー作。 (2011.12.30)

エンジェル・アット・マイ・テーブル (1991)AN ANGEL AT MY TABLE


監督:ジェーン・カンピオン
ニュージーランドのノーベル文学賞受賞作家ジャネット・フレイムの自叙伝を基にした映画。
ジャネット役が子供時代、少女時代、大人になってから、の3回変わるのだが、容姿の一貫性に驚く。 手の施しようもないほどカーリーの赤毛で、色が異常に白くて、出っ歯でデブちゃんは簡単に見つかるタイプではないはず。
はっきり言って不細工なんだけど、一番ちっちゃいジャネットちゃんは漫画のキャラみたいに可愛いくって、冒頭からこのジャネット・フレイムという人物を愛してしまう。
彼女の家庭は貧乏で子沢山だが、比較的暖かく姉妹の中も親密だ。 しかしジャネットは外では非常にシャイで、学校ではいつも一人で本を読んだり詩を書いたりしている。
その極度に内気な性格と、詩人の繊細な心と、容姿における劣等感が災いとなり、神経衰弱に陥る。 今で言うなら鬱病程度だと思うのだが、しかし時は1940年代。 無知な医者に精神分裂症と判断され、精神病院に7年も幽閉され、その間200回以上も電気ショックを与えられる。 ロボトミーの手術をされる直前に彼女の小説が出版社に認められ、危うくのところで病院から救出される。
この映画は彼女の半生を順を追って語っていて、精神病棟の部分は全体の3分の1程なのだが、そこのインパクトが強烈過ぎて、『カッコウの巣の上で』みたいな、精神病院の怖さばかりが印象として残ってしまう。
  社交上手じゃない、容姿が悪い、細やかな感受性と言った要素が、個性を尊重しない社会では異常と判断され、隔離される。 しかもジャネットは社会に迷惑を掛ける犯罪者でもない。 彼女が犯した罪と言えば、下宿先の大家さんのチョコレートをこっそり食べてしまったことぐらいだ。
非常に運が悪い女性なのだけど、その不幸を抵抗しようとも、ジタバタ悪あがきしようともせず、ひたすら詩や小説を書いたジャネット。 彼女にとって不条理な現実に対抗するのは俗物的過ぎるのかもしれない。  詩人とは人間よりも天使に近いのではないかと思った。

スウィーティー/悪魔のような姉 (1990) SWEETIE


監督:ジェーン・カンピオン(劇場未公開)

『木』に対して、異常な恐怖心を覚えるのだが、独立して真面目に人生を送るケイ。 やさしいボーイ・フレンドもできる。
始めの30分は、ケイの精神的問題の克服の話かなって思うのだが、彼女の姉、ドーンの登場で、ケイの恐怖症など、蚊にでも刺されたくらいにしかに思えなくなる。
この精神病院から退院してきたばかりのドーン、無理矢理ケイのアパートに居候してしまう。 そこで、姉妹の激しい戦いが始まる。
この『悪魔のような姉』って言う副題、これじゃ、まるでホラー映画みたいじゃないですか。 ドーンは、ただ、5歳ぐらいのワガママ娘の行動をそのまま一生続けてるだけなのですよ。
自分の思い通りに行かないと、ジタバタ暴れる、食欲も性欲も抑制できない、そういう姉は、まじめに生きてる妹から観ると『悪魔』なのですが、親の目から観ると 『スウィーティー』(可愛い子)なのです。
そういう、複雑な家族内での感情のぶつかり合い、一筋縄では理解できないかもしれませんが、度合いに差はあるけどかなりみんな似たような経験をしているのではないかと思います。
この姉を悪魔と思う人と、カワイイと思う人では、全く違った感想を持つのではないかと思います。 前者にとってはブラックコメディですけど、後者にとっては悲劇としか言いようが無いでしょう。
たとえば、妹は邪魔になる姉をおいて、旅行に出かけようとするが、姉は車の座席にしがみ付いて降りようとしない。トイレに行きたくなるけど、車から出たらもうおしまいだろうから、しっかり車に捕まったまま、その横で、パンツを降ろして、おしっこをする。妹のドレスを台無しにして怒られた腹いせに、彼女の大事にしていた陶器の馬を、『こんなもの食べてやる』、とバリバリ口に入れる。なんか、私の4歳の娘と同じだなぁ。『シド・アンド・ナンシー』のナンシーにも似ている。
母親の目で見ると、やっぱり可愛くて、そしてとても可哀相なドーンです。

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