ワンダーフォーゲル部勉強会

危機への対応  

<滑落>  夏山では、転倒、滑落による事故が多い。樹林帯なら樹木にぶつかりケガをするだけですむかもしれない。しかしガレ場や岩場で転倒、滑落すると、長い距離を落ちて大きな事故に結びつきやすい。幸い一命をとりとめても、危険な場所に投げ出されることが多く、救出するのは困難な作業になる。また、救助を待つ間に症状が悪化して遭難死することもある。  遭難事故を防ぐには、常に自分の歩いている道の状況に注意を払うことである。つまり滑落してもほとんどダメージを受けないのか、それとも岩稜・やせ尾根・急斜面のように滑落したら致命的な結果を招く地形か。たとえ足場がしっかりしている一般コースでも、踏み外せば何百メートルも下の谷底に落ちるような道はいたるところにある。そのような場所では、絶対に転倒したり足場を踏み外したり、落石を起こしたりしてはならない。また、滑落が危険な場所では休憩しないこと。  滑落は難所や危険箇所よりも、むしろ技術的に容易な場所で起こりやすいようだ。つまりよく注意しているうちはいいが、これくらいならやさしいとたかをくくっているうちに、わずかな気の緩みがスリップを招く。滑落を防ぐのは登山者本人であり、誰かが防いでくれるわけではない。困難な岩のコースに出かける前に岩のぼりのゲレンデなどで、岩場を登降する基本技術を身につけることが大切である。  

<落石>  山で落石が危険な場所は2種類に分けられる。

(1) 林道や沢沿いの道で、岸壁・ガレ・草付斜面などの下を横切るケース。これは上部に注意を払いながらスピーディーに通過すればよい。落石があっても、よほど運が悪くないかぎり当たることが少ないだろう。もちろん、このような斜面の下で休憩してはならない。

(2) 森林限界を超えた高山帯の岩場・ガレ・ルンゼ・雪渓など。これは広い範囲にわたって落石危険地帯が続き、その中が登山コースになっていることも多いので十分な注意が必要である。まず上部からの落石に注意する。指先大の小さな落石でも骨を打ち砕く破壊力をもっており当たれば大ケガをすることがあるので注意する。次に自分の足元から絶対に石を落とさない。安定した足場と手がかりを選び浮き石を踏まないなど、岩場での基本技術がしっかりしていれば、それほど落石しないはずである。自分が落石を起こしたら、大声で「落石!」または「ラーク!」と叫んで周囲に落石を知らせる。登山者がいなくても念のためにコールする。事故がなかったことを確認したら「すみません」と声をかけたほうがいい。  

*ルンゼ  岸壁に食い込む急な岩溝のこと。周囲からの落石が集中するため、細長いガレになっていることが多い。  *落石が多い時期 ・ 雪が消えた直後→雪渓の周辺など ・ 長雨や台風の直後  また、積雪や梅雨時の雨が少ないと不安定な浮き石が十分に落とされないまま夏山シーズンとなる。このような年には浮き石・落石ともに多く、山は例年よりも危険な状態になっている。  

<事故が起こったら・・・>

@  現場まで行く  現場に行けるかどうかを冷静に判断し、行ける場所は何人かが行って救急処置をし、患者の状況をチェックする。

A  救急処置をする 見よう身まねの処置は、かえって患者の状態を悪化させることもあるので、救急処置 は確実に知っている範囲にとどめること。可能なら、落石のこない安全な場所に患者を移動し、ツェルトなどをかけて安静を保った上で救助を待つ。(雨風・直射日光などが当たらないようにしたほうがよい。)

B  山小屋に知らせる 技術・体力面で確実なメンバーを連絡係にする。事故者氏名、事故発生日時・地点、 事故者のいる場所・状況、事故者へ施した処置内容を書いたメモ書きをメンバーに渡す。

C 事故者を救出・搬送する 山小屋に連絡がつけば、適切な手段をとってくれる。きちんと訓練されたパーティー 以外は、自力で救出・搬送しないほうがいい。  <過労に伴うトラブル>  バテをしのいで歩きつづけられるうちはいいが、立ち上がることも歩くこともできないほど疲れ切ってしまうのは問題だ。本人が苦しいのはもとよりグループ全体が動けなくなり、最悪の場合には夜道を歩いたり、ビバークを余儀なくされることもある。  ビバークの方法  まず早めに決断することが大切。早くビバークに入れば条件のいい場所を確保しやすく、体力も温存できる。転落・落石・増木などの危険がなく、雨風が当たらない場所を決めたら、シートやマット類、ザック、不要装備などで地面からの寒気を遮断する。衣類をすべて身につけてその上に座り、ザックの中に足を突っ込んでもよい。  以上は着のみ着のままのビバークだが、ツェルトを利用できればもっと快適だ。コンロがあればお茶を沸かしてのみ、非常食もできるだけ食べておく。ツェルト・コンロ・非常食の用意があれば、ビバークもそれなりに楽しい。  

<日射病>  暑い環境下で長時間休みなく活動した結果、次第に発汗量が低下しついには発汗、体温調節機能が停止してしまうのが日射病(熱射病ともいう)である。急激に症状が起こり、頭痛・めまい・吐き気・疲労感に襲われる。顔面が紅潮して、皮膚はかさかさに乾燥し、発汗は全く止まる。体温は40.5℃以上になる。  日射病は命に関わる重い病気なので、処置は速やかに行わなくてはならない。患者を風通しのよい涼しい場所に移し、衣服を緩め休ませる。電解質を含む飲み物を与える。  

<熱疲労>  高温下で長時間行動して大量の汗をかいたのに、十分な水分補給をしなかったために起こる脱水性のショック症状。脱力感・立ちくらみ・頻脈・頭痛・めまいなどの症状が現れ、顔が蒼白になり、肌は汗でベトベトになって冷たく感じることが多い。  熱疲労になったら患者を風通しのよい涼しい場所に運び、汗でぬれた衣服を着替えさせて、十分休ませる。意識があれば、薄い食塩を含んだ飲み物を与えるとよい。