はじめに
 太鼓や笛が奏でる秋祭りの音が各地で聞こえてきます。収穫を祝う秋祭りは地域によってさまざまな特色があり、お祭りの形態は変化に富んでいます。なかでもお渡り行列は衣装姿も美しく絢爛で見応えがあります。大がかりなお渡り行列の代表格になるのは大和神社のちゃんちゃん祭り。お旅所へ向かうときは神幸祭。神事を終えて戻っていくのは還幸祭といいます。お渡りには太鼓や鉦を叩いて練り歩くことが多いです。
 一方、宮座組織で営まれる村の祭りには、神さんを遷し祀った頭屋(とうや、当家の字もある)の家から神社へ向かうお渡りがあります。なかには特筆したいお渡りがあります。楽器の音色でなく、頭屋のお渡り衆が大きな掛け声をかけてお渡りをするのです。その多くは「トーニン、トーニン、ワーイ」と唱和されています。頭屋らなどが発声したあと、行列している者がそれを繰り返し発声します。トーニンは頭屋の人であって、頭人(とうにん、当人の場合も)といいます。「トーニン」が「ゴヘイ」に置き換わったもの、簡略されて「ヨーイ」に、さらには「トーニン」を発声しないお渡りもあります。県内事例が少ない唱和するお渡りを紹介しましたが、発音を写真で表現できなかったことが申しわけなく思います。