はじめに
 大相撲の醍醐味は、力士が廻し(相撲褌)をとってがっぷり四つに取り組むときではないでしょうか。かけ引きの表情に力がはいり、かける技が一瞬によって決まる勝敗。軍配があがると、わーっと歓声が沸き立ちます。相撲といえばこのようなスポーツ情景を思い起こすのですが、祭礼で行われる相撲の様相はまったく異なります。
 古来、農作物の吉凶を占う神事だった相撲は、春に植えた苗が秋に豊作となるよう七月に宮中で占っていた行事のひとつ。雅楽が奏でられるなか、勝負舞として行われた相撲節会(すまいのせちえ)は競いあうふりをして演じる豊作予祝の技芸祭儀でした。桜井市の江包・大西で祭礼される「お綱まつり」に付随して行われるどろんこ相撲は勝敗を競うわけでなく、泥が身体につくほど豊作とされています。
 祭りなど、地域で催されていた奉納相撲は、ほとんどが戦後に廃れてしまいました。夏や秋祭りには相撲があって楽しみにしてたんじゃと回想される長老の声が耳に入ります。奈良市の東山間部では田楽芸能の形式で継承されているところがあります。豊作に感謝して神さんに捧げる相撲の舞。秋祭りで奉納される神事相撲は勝敗を競うという形式でなく、取り組みの真似をしたり、回ったりする芸能的な色彩が濃い「舞い」の所作で演じられます。