「源氏星」と「平家星」(岐阜県揖斐郡横蔵村)

   旗の色、源氏(白)、平家(赤)にもとづいて、リゲルを源氏星、ベテルギウスを平家星と考えがちで、多くのホームページや本にもそのようになっている。しかし、実際の調査記録は反対で、野尻抱影氏著『日本星名辞典』に、次のような香田壽男氏の手紙が紹介されている(注1)。

「村の古老に尋ねると、炉の灰の上にシダの葉柄で、三つ星とα・βを示す図を描いて説明してくれました。子供の時からいいなれた名だということで、ただし説明は、右が平家星、左が源氏星とあべこベでした」

 なぜ反対に、源氏星がベテルギウス(赤)、平家星がリゲル(青白)となったかについては、次の2つの可能性を考えた。

]端圓竜憶が定かでない。

⊆分たちが平家と知られたくないためにあえて反対に伝承された。

  香田氏に確認したところ、源氏星と平家星の色の違いは、当時(1956年頃)60歳ぐらいの老人から指で、はっきりと星を指されて教えられたものであり、西美濃では、「赤は源氏の色」と広く伝えられていることがわかった。単に一人の話者の記憶違いではなかったのである。そして、「わざと反対に伝承するというのは面白いご指摘で、もとはそうしたものであったかとも思います」と、香田氏は書いておられた。リゲル(青白)が平家星、ベテルギウス(赤)が源氏星と、暮らしのなかで逆に語られたことの重みを感じさせられた(注2)。

 注

(1)野尻抱影『日本星名辞典』東京堂出版、1973、pp.154-155。

(2)増田正之氏は、富山県高岡市で、へイケボシ(べテルギウス)、ゲンジボシ(リゲル)と記録している。1985年に行なった富山県高岡市の伏木小学校6年生へのアンケート調査によるものである。増田氏のケースは逆になっていないが、直接伝承者に確認しているかどうか不明である。野尻氏は1977年にオリオン霊園に昇天されており、増田氏の記録を知ることはできなかった。

 (増田正之『ふるさとの星―続越中の星ものがたり―』1992、pp.15-16。)

 なお、香田氏によると、「源氏星」と「平家星」の名前があまりにも出来すぎているというので、当初、野尻氏は警戒され、香田氏との手紙のやりとりが四桁になって信用していただけるようになったというエピソードがあり、このことからも野尻氏の「源氏星」と「平家星」は香田氏のみが情報源であったと推測することができる。

  湯村 宜和氏撮影

       

 

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