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蜻蛉日記
(かげろうにっき)


作者は夫の愛を求め、「30日30夜は我がもとに」を
目標に「寂しい」「待ってる」としおらしい手紙を送る。

しかし、夫が作者の家を訪れると、彼女は嫌がらせ
連発で不満タラタラ。「手紙」と「実際の態度」がい
つも違う。不満がたまってそうなるわなぁ。でも夫はう
んざりする。

貴族の男性は妻と同じ屋敷には住まず、妻が複数
存在する。貴族の女性は、そんな夫を毎日じっと待
つだけという立場。

彼女の輝いていた日々も苦悩の日々も、感情の流
れが胸に迫るように書き綴られている。

   


作者 下級貴族(受領)藤原倫寧の娘。 美人で才女。
歌人。藤原道綱の母
藤原兼家 上級貴族(摂関家)の子息。エリート
時姫 兼家の正室。 藤原道長の母。 最終的に兼家の
本邸に迎えられる。 3男2女を産み、長女は天皇
に入内。 (作者も時姫と同格の妻だったが作者と
兼家は次第に疎遠に)
町小路女 兼家の妻の1人。日記で彼女を罵倒していた作者
は、彼女が兼家の愛を失った時に気分爽快になる
近江 兼家の妻の1人




蜻蛉日記の一節(要約)

兼家の求婚

<兼家は美人で才媛の作者の噂を聞き、和歌を送って求婚してくる>


度々兼家から手紙がきたが、返事を全く出さなかった。すると歌を送ってきた。

おぼつかな 音なき滝の 水なれや
ゆくへも知らぬ 瀬をぞ尋ぬる
          (訳)
気がかりです。音なしの滝のように音沙汰がなくて。いつかわからない逢える機会をさがしています


この歌に対して 「また、こちらからお返事します」 と言うと、また歌が届く。

人知れず いまやいまやと 待つほどに
かへりこぬこそ わびしかりけれ
          (訳)
返事を今か今かと待っていたのに、返事がなくて淋しいです


すると私の母が「お返事をさしあげなさい」
と、きちんと返事の書ける侍女に返事を書
かせた。

代筆の返事も兼家は喜び、「嬉しかったが
本人から直接もらえないのがつらい」と書い
てきた。

それでもなお、代筆で返事を出した。

そのうち歌のやり取りをするようになった。


兼家からの歌
鹿の音も 聞こえぬ里に
住みながら
あやしくあはぬ 目をもみるかな
         (訳)
鹿が鳴く声も聞こえない静かな場所に住みながら、逢えないあなたのことを思って眠れません。




私の返事
高砂の をのへわたりに
住まうとも
しかさめぬべき 目とは聞かぬを
         (訳)
もし高砂の山(雄鹿が鳴く名所)にあなたが住んでいたとしても、眠れないような方だとは聞いていません。


兼家からの歌
逢坂の 関やなになり
近けれど
越えわびぬれば 嘆きてぞふる
         (訳)
「逢う」という名の「逢坂の関」は近くにありながら越えられず、あなたに逢えない。嘆いています


私の返事
越えわぶる 逢坂よりも
音に聞く
勿来(なこそ)をかたき 関と知らなむ
         (訳)
越えられない逢坂より、私は「なこそ」(来るな)という堅固な関だと知って下さい。




そして結婚後

「30日30夜は我がもとに」の願いもむなしく、兼家の足は徐々に遠のいていたある年の正月のことだった。


元旦に姿を見せなかったことは今までないので、「来るかしら」とそわそわしていると、昼すぎ、兼家一行の先払いの大声が聞こえてきた。


「そらそら、いらっしゃった」と侍女たちも騒いでいると、兼家はサッサと門の前を通り過ぎて行ってしまった。「近江のところへ行ったのかも…」と不愉快だ。


3日ほど後、再び兼家の先払いの大声が聞こえてきた。また前のようなことになる恐れがあるので、せつない。


それでも、やはりドキドキしていたら、召使たちが門を開けて地面にひざまずいているにもかかわらず、また兼家は素通りしてしまった。


そしてその翌日も門前の素通りが続く。過ぎて行く車の音を「ああ1台、また1台」と数えながら、「今のが最後の1台だった」と終わってしまうと、私は放心状態になってしまった。


どんなにつらい恥ずかしい思いをしたか心中察してほしい。


翌朝、兼家から手紙がきたが返事は出さない。

(つづく)

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