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環境に関して考えたこと

●蓄熱暖房

オール電化では戦略的に夜間の電力が安く設定されているので、この【お得な】エネルギーを 活用する機器がいろいろある。

なかには首を傾げてしまうようなものも登場するが、その一つに「蓄熱暖房」がある。 蓄熱暖房は「蓄暖」とも呼ばれることがある。

原理は簡単で、夜間の電力でヒーターを使って蓄熱体を暖めておいて、昼間にその蓄熱体から 放出される熱で暖房しようというものだ。要は焼け石暖房である。

おもに輻射熱を利用した暖房になるので、非常に快適な 暖房である。

自然対流を利用した輻射熱方式の蓄暖ヒーター 電動ファンを使用した対流方式の蓄暖ヒーター


×重い

まず、蓄熱体には石やレンガ、金属など熱をためられる性質のあるものが選ばれる。 このような性質を持つ物質はたいがい重い。また家を暖めるほどの熱容量が必要なので、 物自体の容量もかなり必要になる。

もともと重いものを大量に必要とするので、機器は非常に重いものになる。ほとんどの機種は 一台あたり100kg以上あり、400kgなどという機種もある。したがって床補強は必須となる。

したがって通常の建物より、設備を置くための工事にもエネルギーを余分に消費する。


×ニクロム線

またヒーターはニクロム線なので、エネルギー効率が非常に悪い。

ニクロム線は他の方式に比べ非常に安いので、ここでも環境負荷や効率の問題に目を瞑り、 経済性を優先している。しかし、一般消費者にとっては初めの設備費用が安いというのは 大きな魅力にうつるため、エコロジー(ecology)とエコノミー(economy)をわざと混同させた 「エコ」という言葉がマーケティング上使われている。


×調整ができない暖房機

さらに決定的なのは、暖房の調整ができないことだ。

蓄熱暖房機は文字通り前夜に蓄えた熱を翌日放出するのが作動原理なので、強弱の調整が できない。(ファン式のものは風量は調整できるが、放出する熱の量が調節できるわけでは ない)

実際の運用方法はこうだ。前日寝る前に翌日の日中の温度を天気予報などから予測して、 蓄熱量を使用者が設定する。多くの機種は100%、70%、40%、OFFなどを選べる。

例えば次の日は暖かそうだから蓄熱は40%にしておこうと寝る前にセットするのだが、 その予測が外れ、寒くてもっと暖房を強くしたいと思っても、蓄熱した熱量しか使えないので、 他の暖房器具を使うことになる。それは割高かつ環境負荷の高い昼間の電力を使うことを意味する。

蓄熱不足の時のバックアップ暖房にエアコンを選べば、エネルギー効率的には悪くはないが、 温風暖房なので快適性ははるかに劣る。また他の電気暖房器具は熱源がニクロム線なので 効率が悪い上、割高な電気料金となって跳ね返る。高額な電気料金の請求書を見て、 石油ファンヒーターを導入する人が出てくるかもしれないが、最近の高気密化された住宅では 一酸化炭素中毒の可能性があり危険である。灯油の燃焼による水蒸気の発生や悪臭など 二次的なリスクも考えられる。

反対に蓄熱量が多すぎた場合、窓をあけて調整することになる。それはすなわちエネルギーを 大気に捨てていることになる。まさしく「地球を暖めている」わけである。

しかし深夜電力は不当に安く設定されているので、余裕のある蓄熱量を設定しがちである。 必然的にエネルギーの無駄遣いを助長する機器と なりやすい。


×床下蓄暖

法外に安く設定されている「お得な深夜電力」を使わないと、なにやら損をするような気が するのか、蓄熱暖房には派生商品がいろいろある。

特筆に値するのは、床下の基礎などを温めて暖房に使用する床下蓄熱暖房である。

通常、住宅の基礎はコンクリートで壁を作り、プールのような形状にする。プールの 水が入るべきところを通風と床下点検のためのスペースとして使用する。

コンクリートは石と同じく熱をためる性質があるので、基礎のコンクリートを蓄熱体として 使ったらどうだという発想がある。蓄熱体は大きい方が望ましいし、暖める対象すなわち家に 近ければ近いほどよいので、基礎のプール部分を全部コンクリートで埋めてしまい、 それを暖めて蓄熱体とする考え方である。鉄筋を入れておけば、頑丈な基礎となり、 今流行りのベタ基礎をさらに強くした基礎としての売り方もできる。これを「土間床工法」 と言う。

プール部分を全部埋めてしまわないまでも、蓄熱材を床下に設置して暖房に使用する似たような 方法がある。
床下蓄熱の家の模式図

これらの方法は非常に快適で上質な暖房空間をを実現するだろう。しかし、重大な問題がある。

まず床下にメンテのために人間が入ることを拒絶する。床下のメンテナンスをするためには、 床を破壊する必要がある。つまりシロアリや給排水設備の点検がまったくできないか、 あるいは限られたアクセスしかできなくなる。給排水設備を修理改造しようとすると、 破壊を伴う大規模な工事となる。

さらにシロアリは暖かい環境を好むので、暖かい基礎が土に接してあるというのは、 シロアリを誘引しているのと同じである。その上基礎の周囲には断熱を行うことになるが、 基礎断熱に用いられる発泡系の断熱材はシロアリの食害を受けやすく、簡単にシロアリを 家の木部に誘導してしまう。ただでさえシロアリのターゲットとなりやすい基礎であるにも かかわらず、前述の通りその後の点検と対処は困難である。

シロアリ対策のため、基礎断熱を取り外す例があるが、その場合放熱損失が多く無駄が 多いものとなる。


☆結論

■安いから使うという考えは間違った考え方である
■エネルギーは元ある形のまま貯めておいて、必要な時必要なだけ使う
■ニクロム線はダメ(熱はヒートポンプ、光は蛍光灯から得る)
■一つの尺度だけで判断しない目を養う
■余剰電力だから安いというのには嘘があるが、深夜電力の恩恵に
あずかっているのなら原子力発電所の方向に足を向けて眠らないこと。
(2006/7/10)


×地震で火災発生

平成16年(2004年)10月23日17時56分頃発生した新潟中越地震で、蓄熱暖房による火災(ぼや) が発生しています。

出火日時は10月24日12時43分頃。つまり翌日の昼で、再通電火災です。 概要は「地震により、蓄熱式暖房機(約300s)が畳上に倒れた。その後通電したことにより 蓄熱し、畳に着火。無炎燃焼を継続したと思われる。発煙したため家人が水道水で消火。」 とのことです。

倒れた蓄熱暖房機
出典:消防科学総合センター

家(住宅)の中にこんな重い器具が複数あること自体が耐震性を損ねますし、人の上に 倒れたら無事では済みません。また今回は家人が在宅中で「覚知12時45分・鎮火13時00分」と 大事には至りませんでしたが、避難していて不在だったらたちまち火災となる例です。


×大穴が必要

蓄熱暖房器具は機種によっては巨大な電力を消費するので、1台で普通の家一軒分位の電力を 供給するものがあります。あまり語られることがないのですが、ヒーターに使われる200v配線は 非常に太いものを使わなければなりません。またファンなどに100v電源も必要な機種もあり、 電線が太く本数が多くなります。当然配線のためには大きな穴を多数開けなくてはなりません。 (2006/8/5追加)