【新連載】

私が惚れた女性アスリートたち〜/原リサ編

●シュルジー檜山(schulze@silkroad.ne.jp)

 またまた、気まぐれに新連載を始めました。今回は女性アスリートにスポットを当ててみようと思います。第1回目は体操の菅原リサ選手を取り上げます。

私が菅原リサに注目するようになったのは、アトランタ五輪の時でしょうか。この五輪では中国の力が圧倒的で、その力強さばかりが目立った大会でした。とても人間業とは思えない、李小双の鉄棒の演技などを記憶している方も多いと思います。日本の体操陣は残念ながら見るべき成績を残せず、特に女子は惨敗といっても良い結果でしたが、その中で菅原の演技だけは印象に残っています。
 当時彼女はすでに日本の第一人者という位置付けにいましたが、その演技からは日本を支えるプライドといったものが強く伝わってきました。結果は総合7位ということで、ほとんど注目を浴びることはなかったのですが、日本の女子体操界を一身に背負っているという風格が漂っていました。どうもそれ以来、私は菅原の演技に惹かれてしまうようになりました。早い話、一目惚れといったところでしょうか(笑)。
菅原の得意種目は、ずばり「床」です。テンポのよい、流れるようなリズムでの表現力はピカイチで、本人も自信を持っているようです。逆に苦手なのが平均台?でして、持ち前のリズム感が発揮できない事務作業的な種目は不得手のようです(と言っても全日本選手権では何度も種目別優勝していますが…)。
彼女の魅力は演技後の「リサ・スマイル」もさることながら、むしろ演技前の表情にあります。特に得意種目である「床」に臨む際に見せる表情が、個人的に一番だと私は思います。ベテランらしい落ち着いた貫禄と自信がみなぎっていて、独特のオーラがあるのです。

 その菅原も、もう21歳になりました。この世界では年齢的なピークが15〜18歳ぐらいですから、彼女のように20歳台だと「超ベテラン」と呼ぶのが相応しい状況です。何せ国内大会では周りの選手は中学生だったりします(笑)。おまけに肩などに慢性的な故障を抱えていますので、常に引退の噂が絶えません。私はアトランタが一つの区切りになるのかなと勝手に思っていたのですが、彼女は現役続行の道を選びました。
 そして、「菅原リサ健在」を大いにアピールしたのが去年11月のバンコクアジア大会でした。この大会、中国勢の不振という要素はあったものの、見事に個人で銅メダルを2つ獲得しました。特に種目別だけでなく、総合で銅メダルを獲得したのは、現在の日本女子体操界を考えれば快挙といっても良いぐらいです。この大会では男子も塚原直也が総合3位に入り、斉藤良宏も種目別で銅メダルと健闘を見せ、女子も新鋭 ・ 大畠祐紀が段違い平行棒で銅メダルと、日本勢は一時期の不振がウソのような活躍を見せました。女子は菅原の活躍などもあり、団体でも中国に次いで銀メダルと、「体操ニッポン」復活へ向けて明るい話題ばかりが揃った大会でもありました。菅原自身、シドニー五輪へ向け手応えをつかんだ大会ではなかったかと思います。一時期は余りに遠かった中国の背中が、かすかに見えてきたかなという感触は得られました。

 しかし、ここ5年間ほど日本の第一人者として女子体操界も引っ張ってきた菅原リサも、そろそろ若手に取って代われる日も近くなってきました。先日行われた第38回NHK杯体操(これは今年10月に天津で行われる世界選手権の代表選考を兼ねた大会ですが)、ここで4年連続5回目の優勝を狙った菅原は若干14歳の新鋭・山脇佳奈に大差で敗れてしまいました。この大会のテレビ中継を見ましたが、肩を氷でアイシングしながらの演技は痛々しく、女王交代を強く印象づけられました。
 やはり、年齢的な衰えを技術でカバーするのは、並大抵のことではないなと感じました。14歳の勢いと21歳の技術。残念ながらその差は歴然としており、菅原は体の重さが目立ちました。このようなことを書くのは本人には大変失礼なのですが、年齢を重ねるとどうしても肉が付いてしまうものなのです(決して太っているのではない、念のため)。スピード感が持ち味の菅原にとって、少々これは痛手でしょう。

 NHK杯を見る限りではシドニーは若干厳しいかなとも思いましたが、それでも菅原の技術と経験はまだまだ捨てたもんじゃありません。現実に得意種目の床ではまだ第一人者の地位を保っています。逆にようやく菅原を追い抜いた若手が現れたことが喜ばしいとも言えます。他の若手は何をやっているのでしょうか。このままで行けば、菅原が3度目のオリンピック出場を果たすのは間違いないと思われます。筆者としては個人総合は無理としても、せめて種目別床でメダルを取って欲しいと願っています。それにはまず、故障気味の肩を万全に直してから、悔いのない演技を披露してもらいたいと思いますね。そして本人も意欲に溢れていると思います。普通はこの年齢では現役を諦める選手が多い中で、彼女の競技にこだわる姿勢が良い結果につながることを期待しています。

菅原リサ/Risa Sugawara
●1977年8月15日生 ●身長/149cm  ●体重/42kg
●バルセロナ五輪・アトランタ五輪日本代表
●バンコクアジア大会女子総合3位・種目別床3位・団体2位
●全日本選手権個人総合優勝4回、NHK杯総合優勝4回
●在学校/日本体育大学 ●埼玉県在住


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