buck to home


協力隊的ブータン御食事考

 ブータンは独特の食文化を持つ。ここでは、私の食したものの中から印象に残ったものを紹介する。
名前は出来るだけ現地名を用いた。材料および作り方は聞き取りによりわかる範囲を調査した。
尚、私は日本ではカレーはボンカレーの甘口と決めていたほどの甘党で辛いものは苦手であった。
味の評価は一般的ではないかもしれない点をご理解願いたい。


・Noh sya paa(牛肉のトウガラシ炒め) 
・Patsha/Dambru tsoem(パツァ・ダンブルーのスープ)
 鍋に油、塩、チリ、冷水、牛肉(Noh sya)を入れ一気に加熱する。その後肉に火が通ったら、ほうれん草等の葉菜を加え皿に加熱。水分を十分に蒸発させて、塩で味を調える。蓋をし、冷えるまで待ったら出来上がり。葉菜の代わりに大根、人参、トマトなどを入れてもおいしい。
 これに更に水を加え、Dambruを煮込んだものが、Dambru tsoemである。Dambruはワカメのような味がし、とてもおいしい。
 Patsha tsoemは、Patsha(藤)をしばらく水につけアク抜きした後、水と塩、チリを加え煮込んだものである。とても苦い。

・Shamu datui(キノコのトウガラシ煮込み) 
・Ora choto tsoem(ランのスープ)
 鍋に油、塩、チリ、冷水、キノコ(Shamu)を入れ蓋をし茹でる。キノコがしんなりしたら火を止め、チーズを加え蓋をし蒸す。チーズがしっかり溶けたらかき混ぜて冷やして出来上がり。キノコは高価なため、一般ブータン家庭ではご馳走である。
 ランの調理方法は調査中。ラン(Ora choto)には実(?)から種を取り除き鞘を利用するものと葉、茎、蕾をまとめて利用するものがあるが、名前は同じである。写真は前者。癖の無い味で食べやすい。後者はとても苦い。

・Daru(ダール豆のスープ)
 Daruはネパール料理であるが、ブータンにも広く浸透している。食堂で食事をする際は、ほとんどの場合頼んでも無いのに出てきて、しかもオカワリ自由である。
 作りかたは、家庭によって違うようであるが、私が食した限りでは、最初にタマネギを狐色になるまでいため、そこに茹でたダール豆を加え煮込み、仕上げに細切りにしたトマトをたっぷり加えて作るDaruがもっともおいしかった。
 ネパリ系ブータン人のDaruは塩が少なく飲みやすいが、生粋のブータン人のダルは塩が多い傾向にあり、さらにチリが入っていることもあるので注意が必要。日本の味噌汁感覚で口にするとえらい目にあうこともある。
 ブータン料理は一般的に冷まして食すものが多い。御飯やオカズも基本的に冷たい。そんな中でこのダルの暖かさはホット安心でき、日本人的な味覚に良く合う一品である。
 正直、大好き。

・Dry noh sya paa(乾燥牛肉のトウガラシ炒め) 
・Ema datui(トウガラシのチーズ煮込み)
 Ema datuiはブータン料理の代表といっても過言ではないのではなかろうか。作り方は上記Shamu datuiの作り方と同様である。とにかくトウガラシが辛い。一般にEma datuiといってもトウガラシ以外の野菜が何品か入っているが、トウガラシがメインになっているものをEma datuiと呼ぶ。他にジャガイモが入っていようが、トマトが入っていようが、圧倒的な存在感で口の中を焼きつけるトウガラシには天晴れというか・・・降参というか・・・。とにかくコレが食べれれば、ブータン料理は怖くない。
 Dry noh sya paaは時々ドライではなく腐っていることがあるので注意。本当の乾燥牛肉の場合、日本のビーフジャーキーのような味がしてうまい。腐っているものも慣れればイケルが、そんな自分のことを嫌いになってしまうので手をつけないほうが良い。

・Ezey(トウガラシサラダ)
 このEzey(エゼと聞こえる)もブータンを代表する料理の一つ。Ezeyには炒めたものと生のものがある。写真は生のもの。初めてEzeyを食べたとき気を失いそうになった。それくらい辛い。辛いというか痛い。手足がしびれるような感覚に陥り、翌日トイレの後は椅子にきちんと座れない。作り方はいたって簡単。大量のトウガラシに数種類の野菜、お好みのハーブ類、香辛料を用意し刻んで混ぜ、大量の塩で味を調え、チーズをたっぷり加えれば出来上がり。ブータンでは数少ない生の料理である。ブータン人は日本人のフリカケ感覚でこのEzeyを利用する。信じられない。ブータンは農学的に見て面白い国だが、医学的にブータン人の体を調査しても面白いんじゃないか、と思う。 

・Phak sha ngo ngoe(乾燥豚肉の塩味フライ)
 見た目がものすごい一品だが、味はそこそこ。とにかく油っぽい。というよりも油そのものに肉と骨の小さな塊が混じっているといったほうが良いか。乾燥させた豚肉を油でいため塩で味を調えるといういたってシンプルな料理。ラードが固まったら出来上がり。実は高級料理である。客が来たときにアラ(雑穀や米から作る酒)と一緒に振舞う。骨までしゃぶって中の油を吸いだすのが上手な食べ方だそうだ。日頃肉を食べないブータンにいればご馳走だが、日本ではとてもではないが食べたくない代物だ。逆に言うと、ブータンにいなければおいしく食べることはできない。まさに幻の一品である。

・Byo(Kheng語)(芋のトウガラシスープ)
 ロサ(ブータンの正月)としてKheng出身の友人が御馳走してくれた一品。トウガラシの風味がとても強いのだが、辛さ控えめでおいしい。控えめな辛さの中に芋の甘さを感じることが出来る。チーズも濃すぎず聞いており、御飯が進む味である。Khengt地方のロサでは必ず食べる料理で日本のおせち料理のような感覚か。大切な客人があるときもこれを出すそうである。この料理について質問をしたとき、少し恥ずかしそうに「大切な客人に出すんだよ。」と答えた彼の顔が忘れられない。