主要目次へ

6.補語のまとめ

6.1 主体・側面  
6.2 対象  
6.3 相手 
6.4 恩人  
6.5 場所
6.6 範囲
6.7 時
6.8 相互関係
6.9 仲間
6.10 道具・手段
6.11 原料・材料
6.12 原因・根拠
6.13 基準
6.14 変化の結果
6.15 様子
補説§6


6.1 主体・側面  
6.1.1 名詞文   6.1.2 形容詞文:主体と側面   6.1.3 動詞文:Nが・Nで・Nから  [主体のない文]  [Nが]  [Nで]  [Nから]
6.2 対象 
6.2.1 Nを   6.2.2 対象:Nに   6.2.3 対象:Nが
[補説§6]
   §6.1 補語の立て方
   §6.2 益岡・田窪の補語/格助詞の用法



  ここで、これまでに出てきた補語をかんたんにまとめ、それ以外の補語についても述べておきましょう。
これまで、基本述語型の補語、特に動詞文の補語を「Nが・Nを・Nに・Nと」など、具体的な形で一通り 見てきました。次に、これらの補語を述語との意味関係から見直して、まとめて振り返ってみましょう。こ れまであまり問題にしなかった「Nが」や「Nを」についても少しくわしく考えてみます。

述語に対する名詞の意味関係は、人間が生きる世界の複雑な現実を描写するためのものですから、 実にさまざまです。しかし、それを表現する手段である格助詞の数は限られているので、一つの格助詞 がいくつもの意味関係を表す役を持たされています。そこが、日本語学習者にとって難しいところです。

さて、一般に補語には二種類あると考えられています。
一つは「必須補語」で、ある述語にとって、それがないとその述語が表わそうとするものごとが表わせ ないようなもの、その述語にとって必須不可欠のものです。
例えば、「食べる」にとっての「主体」「対象」、「行く」にとっての「主体」「場所」などです。今まで補語と して取り上げてきたものはほとんどこれです。
もう一つは、必須ではないもので、いろいろな呼び方がありますが、ここでは「副次補語」と呼んでおき ます。「食べる」にとっての「場所」「道具」、「行く」にとっての「手段」「仲間」などがその例です。特に言 わなくても「何か足りない」と感じないようなもの、です。ただし、この二つを厳密に区別することは難しい ようです。この本ではこの区別にはあまりこだわらないことにしておきます。

では、典型的な必須補語から見て行きます。後のほうでは副次的なものもとりあげます。



6.1 主体:Nが・Nで・Nから

6.1.1 名詞文

 名詞文「AはBだ」の「Aは」は、補語としてはどう考えたらいいでしょうか。いろいろな考え方がありえま すが、ここでは一応、形容詞文・動詞文と同じように「Nが」であり、「主体」と考えておくことにします。他 の考え方については、「補説§6」を見てください。
 「ハ・ガ文」、「AはBがCだ」の場合。
のように「B」が「A」の部分で、「AのB」の関係がある場合は、「B」が主体で、「Aは」は「Aの」が「主題 化」されたものと考えられます。 のような「AのC」の型の「ハ・ガ」文では、「広島」を「主体」と考え、述語名詞と連体修飾の関係にある「 カキ」が主題化されたものとします。
「主題化」については「8.ハについて」を見てください。



6.1.2 形容詞文:主体と側面

 次に、形容詞文の例を見てみましょう。  「空」は「青い」という性質を持つ、「私」は「悲しい」という感情の、それぞれ主体であると言えます。  しかし、「ハ・ガ文」の場合は、何を「主体」とするか、ちょっと迷います。
という例で、「素直」なのは「彼」でしょうか、それとも「性格」でしょうか。 の場合は、「象」自体が「長い」わけではないので、主体は「鼻」で、「象」 は「象の鼻」という「Nの」が主題化されたものと考えます。
 「素直」の例でも、「彼の性格」と考えればいいようですが、 の「彼」は主体で、「彼は性格が素直だ」の「彼」は「Nの」という連体修飾だというのは、疑問が残ります 。
 そこで「側面」という補語をたてます。「彼は素直だ」で「素直」なのは「彼」の中の「性格」という「側面」 だ、と考えるのです。 の「体」も側面です。(「象は大きい」が言える)
 名詞文の「ハ・ガ文」、 の「長さ」も「側面」になります。



6.1.3 動詞文:Nが・Nで・Nから

[主体のない文]

ほとんどの動詞・形容詞にとって、「主体」は必須のものです。
主体を必要としない述語、というのは考えにくいかもしれませんが、例えば英語の「to rain」という動詞 は、それ一つで「雨降る」という意味を表わし、主体と動きの両方が一つの単語で表わされます。ただし 、英語では「主語」が必要なので、「it」を使って、「It rains.」という形で文にします。
しかし、これは例外的な表現で、人間の動作、物の動き、人・物の存在、状態、変化など、その「主体」 を動詞とは別にして表現するのがふつうです。
日本語でも主体は必須です。主体は、基本的には「Nが」で表されます。主題化されて「Nは」になるこ とが多いです。
それでも、例外というものは常にあるものです。例えば、 の述語「春めく」に対する「主体」として別の語を立てる必要があるでしょうか。「季節が」あるいは「あた りの雰囲気が」などを補うことはできるかもしれませんが、必須の補語とは言えません。
あるいは、次の例はどうでしょうか。 このように、時間や季節の移り変わりなどを表わす文のなかには「主体」を表現しないのがふつうのも のがあります。
 小説などの出だしで、 のような例もよくあります。「それは」とか「この話(の時)は」などを補うのはかえって不自然です。
 また、次の例は、テレビの実況中継の初めの言葉です。 それぞれ、理論的には説明を付ける必要がありますが、教育上の観点からは、「例外的な表現」として いいでしょう。
また、次のような文はどう考えたらよいでしょうか。 「英語の文」の動詞との関係は「Nが」ではなくて「Nを」で、動詞の対象です。このような、一般に人が行 なう動作では、「誰が」ということは問題とされず、その「やり方」を説明するような文章では主体が表現さ れません。あえて主体を言うと、その人独自のやり方になってしまいます。 主体を言わないのがふつうであるこのような文は「料理型」とか「操作型」とか「対格型」とか言われま す。「料理型」というのは、料理の作り方の説明に多く現れる文型だからです。


[Nが]

さて、「Nが」に戻って、もう少し考えてみましょう。「主体」とは言っても必ずしも「主体的意志」を持って いるわけではありません。上の例の「春」や「雨」を見てもわかりますし、抽象名詞も主体になります。  ただし、二番目の例のように他動詞の主体になると、いわゆる翻訳調に感じます。
 人間の場合も、意志的な主体と、無意志の場合があります。 「は・が文」で主題の部分を表す名詞も主体と考えておきます。 「目が覚める」の場合は、「私の目が覚める」のように考えるのは不自然です。主題に対して「主体+ 述語」全体が一つの述語相当になっていると考えられます。主題は、その全体に対する主体になってい ます。つまり、「目覚める」の主体と同じです。

「主体+述語」の結びつきがもっと強くなると、一つの動詞と考えた方がいいものになります。つまり、「 Nが」を主体とは考えません。 これらは「慣用的表現」として、動詞の補語の型の例外とされます。
「ある・ない」と名詞の結びつきにも、同じような問題があります。 「責任」を主体とするより、「彼」を主体としたいところですが、形の上では「彼」という「場所」に「責任」と いう「主体」が「ある」ことになります。
「無理がある」「関係がある」などもこの類です。

また、次のものは述語を受けてある種の「ムード」の表現になっています。この「必要が」「恐れが」など を「あります」の主体と言うべきではないでしょう。(「56.連体節」の「56.3 外の関係」の名詞です。) 「必要がある」「恐れがある」全体で助動詞相当と考えられます。
主体の中で、原因に近いものがあります。次のようなものです。  「苦しめる」の例はまだかなり翻訳調という印象を受けます。原因を表す「で」などを使った方が自然で す。



[Nで]

 「Nが」以外の形が主体を表すことも、まれですがあります。例えば、次のような例では「Nで」が動作 の主体を表します。  この「〜で」はほとんど「〜が」と同じですが、組織やある立場(二つの側の一方など)の人が主体であ る場合に使われます。
[Nから]
次に、「Nから」の主体の例。動作の起きる元を示すような場合、また、順番を表す場合などに「Nが」 の代わりに「Nから」を使うことができます。



6.2 対象:Nを・Nに・Nが

6.2.1 Nを

「対象」は基本的に「Nを」で表されます。これのあるなしで、日本語の動詞全体を自動詞と他動詞に分 けることが一般的に行われています。その意味で、非常に基本的な補語です。
最も単純な、わかりやすい補語でもあり、また、あらためて考え直すと、よくわからないものです。これ があるものは他動詞とされるわけですが、では、すべての他動詞に共通する意味、言い換えれば「を」 の「意味」とは何かというと、どうもよくわかりません。

他動詞の意味とは何でしょうか。他動詞というのは「他に働きかける」動詞という意味でしょう。そこで、 その「対象」がどういう「働きかけ」を受けるのかを少し考えて見ましょう。
 いちばん大きな「働きかけ」は、ものを壊したり、人を殺したりすることでしょう。対象をそれ自体でなく すこと、とでも言えるでしょうか。

機能の消失  壊す・切る・破る・割る・殺す 
存在の消失  消す・なくす・食べる・飲む 
終了  終える・やめる・よす 

逆に、新たに存在させることも大きな変化と言えるでしょう。

造出  産む・作る・建てる・湯を沸かす・穴を掘る・書く 始める・会を開く 
増減  増やす・減らす 

その他、さまざまな状態の変化。 以上は、対象となる物そのものの変化を生じさせます。強い「働きかけ」があると言えます。
 また、存在場所を変化させる、つまり移動すること。それに、所有の移動。

場所の変化  運ぶ・動かす・つける・かける・落とす・のせる 
所有者の変化  貸す・借りる・売る・買う・渡す・受け取る 

 以上が、対象に実際に変化を与える「働きかけ」の例です。
次のような精神的な行為は、対象に変化は起きませんが、働きかけはあると言えそうです。 もっと精神内部の行為だと、働きかけとは言いにくくなりますが、これらも他動詞で、多くは受身にもな ります。

精神的  憎む・恐れる・思う・忘れる・覚える・信じる・感じる 

 結局のところ、「を」の意味が何かということは、広がりがありすぎて、はっきりとは言えません。はじめ に述べたように、何らかの「働きかけ」がある、という漠然としたことしか言えません。後で見る「対象の ニ」との明確な区別をつけることは難しくなります。
また、他動詞とされる動詞でも、動作の影響が自分自身に戻ってくると言える次のような動作は、「他」 への働きかけとは言えず、「他動詞性」が弱い、ということが言われます。 このような動詞を「再帰的」な動詞と呼ぶことがあります。ヨーロッパの言語に見られる「再帰動詞」とい う用語の影響でしょう。ただし、「再帰性」の強さには段階があり、上の三つの例のどこまでを「再帰的」 と考えるかには議論があります。


6.2.2 対象:Nに

 この「Nに」は「相手」と呼ばれることがありますが、ここでは「Nを」と並んで「対象」と呼んでおくことに します。ある動作が成立するために、主体以外にもう一つ要素が必要で、それが「Nに」で表され、しか も何らかの「働きかけ」を受けると見なされると、「Nを」と同じ役割を果たしていると言えます。「を」と同じ ように、働きかけの強弱は様々ですが。  ある動作が成り立つために、「主体」の他にもう一つある「何か」が必要な時、それが「Nを」で表される か、それとも「Nに」で表されるかは、何によって決まるのでしょうか。以上の例で見る限り、「Nに」をとる 動詞には何らかの「方向性」が感じられます。何かに対する動作、そちらを「向いている」感じがします。 「到達点」の「Nに」との関連がありそうです。そうは言っても、「Nを」の中で「方向性」のあるものを探す ことは難しくありません。  「人に頼る」は「人を頼る」という言い方もあります。「人を恋する」は 「人に恋をする」でもいいでしょう。 「意見を批判する」と「意見に反対する」で「を」と「に」の意味の違いを言うことは難しいです。
 次の「Nに」はどう位置づけていいか迷うものですが、「対象」に含めておきます。 最後の例の「記事に」と「新聞に記事を書く」の「新聞に」は違います。  これらの場合は、「写真」や「図」というものが先にあるのではなく、「写真を撮った」り、「関係を表した」 りした結果として、「写真」や「図」ができあがるという関係にあります。「穴を掘る」や「湯を沸かす」の「N を」と似たところがあります。「結果」の補語、とすることもあります。
次の「Nに」は、この本では「対象」に入れておきます。  この構文には、別の分析があります。例えば上の例を、 のように、複文のような構造を持つものだと考えるのです。理論的には魅力ある分析ですが、この本で はそれをとらず、補語とします。

 なお、形容詞文の「対象のニ」は「3.6.2」でとりあげました。「Nに対して/関して」の意味になります。


6.2.3 対象:Nが

 「NはNが〜」の型の文で、「Nが」が対象を表す場合がありました。  動詞は状態動詞であることが一つの特徴です。感情形容詞の多くがこの形をとります。
 「ある」の例の「子ども」はとりあえず対象としておきますが、 となると、「彼女」は「場所」で「子ども」は主体ということになります。どちらにしても問題の残る例です。


6.3 相手:Nに・Nから

 対象の「Nを」をとる動詞で、その対象の物理的・抽象的移動の行く先となる[ひと]または[もの]の「N に」をとる場合、それを「相手」と呼びます。
 初級教科書で「人にものを」の形でよく出てきます。  これと、対象の「Nに」との違いは何かということも、難しいところです。それで、両方をまとめて「相手」 とする考え方もあり得ますが、ここでは「Nを」の有無によって分けておきます。

 同じように、物理的・抽象的移動のでどころとなる[ひと]または[もの]の「Nから」を「相手」とします。 典型的には[人からものを]の形になります。  「Nから」のほうは「相手」としない文法書が多いかとも思いますが、貸し借り・売買の「相手」という点 で共通すると思いますので、「Nに」とともに「相手」にしておきます。
 この「Nに・Nから」が[ところ]の名詞の場合は、後でとりあげる「場所」とします。


     

6.4 恩人:Nに・Nから

動作を受ける主体を「Nが」で表し、その動作が発する人を「Nに」で表す動詞があります。その場合、 の「人に」を(半分冗談で)「恩人」と呼ぶことにします。「Nから」でも言えるところが特徴です。  「組織」から「もらう」場合は、「に」は使えません。  同様に「本を借りる」の場合、「図書館から」で、「図書館に」とは言えません。かわりに、「図書館」を[ 場所]と見て、「Nで」が使えます。 給料の例で「会社で」とすると、意味合いが変わります。銀行振込ではなく手渡しで受け取る、という感じ です。

 この「に」も「から」も使えるという動詞は、何か抽象的な移動を表すものです。「借りる」の場合も、重点 は物理的な移動よりも(一時的な)使用権の移動とでも言うべきところにあります。単なる物理的移動で ある「受け取る」は「に」が使えません。  「方向」や「到着点」を表し、方向性の感じられる「対象」や「相手」にも使われる「に」が、反対方向の動 きにも使えるというのは、不思議なことです。学習者にも、「出発点」の意味を持つ「から」のほうが理解し やすく、使いやすいようです。


(この「恩人」という呼び名は、何かほかの名前にしようと思っているのですが、いい言葉が見つからないままになっています。)

6.5 場所:Nに・Nで・Nを・Nへ・Nから・Nまで

 方向性や移動の話が続いたので、「場所」の補語について述べておきます。場所を示す格助詞の使い 分けの問題は「4.3.8-9」や「4.5 場所を表す助詞」で触れました。ここではその意味的な役割を並べて みます。
 場所と言ってもいろいろな役割があります。  かっこの中の名称は、便宜的なものです。細かく検討し始めると、いろいろ問題が出てきますが、ここ では議論しないことにします。
これらをみな個別の補語の種類と考えるか、「場所」という補語の下位分類とするか、という問題もあり ます。(→「補説§6」)
理論的には難しいところですが、教師と学習者にとっては、上のようなそれぞれの違いを理解し、使い 分けられればいいわけでしょう。
 なお、「相手」の「人に/から ものを」に対応する「所に/から ものを」はここに入ります。  こう並べると、「相手」も「到着点・出発点」の一種と考えてもよさそうですが、[ひと]であることを重んじ て別にしておきます。
 対象の「Nが」をとる動詞の主体が「Nに」になる場合は「抽象的な場所」としておきます。


6.6 範囲:Nで

「範囲」は、あることが成り立つ範囲を示します。「Nで」で表され、一つの文の中に「場所」とともに使 われることがあります。その場合「Nでは」となることが多いようです。  最後の二つの例は「で・に」「で・で」が使われている例です。(→「4.5 場所を表す助詞」)



6.7 時:N・Nに・Nから・Nまで・Nで
 時の補語も、場所と同じようにいくつかに分けられます。  かっこの中の名称にはあまりこだわらないで下さい。始めと終わりがある点は、場所と共通するところ です。
 次の例では、[とき]の名詞が使われていますが、ふつうの「対象」の「Nを」と考えます。[とき]の名詞 を主体や対象としてとるような特別な動詞に限られます。


6.8 相互関係:Nと

主に人が関係する補語としては、他に「相互関係」「仲間」があります。
「Nと」で表わします。その動作を行うためには、必ずもう一人の相手を必要とする動詞や、二つのもの の関係を表わす述語がとる補語です。「Nに」でも言える場合は、双方向的か一方かの違いになります。 「Nに」なら「対象」になります。  「Nを」がある場合。「Nに」なら「相手」です。


6.9 仲間:Nと

「Nと」です。「Nといっしょに」の意味で、多くの動詞に使われます。並立助詞の「と」と近いのですが、 ちょっとした違いがあります。 例1のほうは「いっしょに」行ったのですが、例2のほうでは別々でもかまいません。「彼女は学校へ行 った」と「彼は〜」の二つの文をいっしょにしただけです。例1では「彼と行った」ので、行き方が違うので す。
先ほどの「相互関係」は必須補語ですが、「仲間」は副次補語です。
 「仲間」の「Nと」と「Nといっしょに」の違いは、「Nと」が「Nを」と共には使えないことです。


6.10 道具・手段:Nで

一般的な道具、交通手段、言語などを「Nで」で表します。


6.11 原料・材料:Nで・Nから

原料は「Nから」、材料は「Nで」で示される、と説明されます。つまり、元がわからないほど変化してい れば「から」、そのものを見て元がわかれば「で」だと言われますが、微妙なところもあります。


6.12 原因・根拠:Nで・Nに・Nから

原因は「Nで」または「Nに」で表します。精神的なことの原因は「Nに」で表します。微妙なところはよく わかりません。  判断の根拠となることを「Nで」または「Nから」で表します。


6.13 基準:Nで・Nに・Nから・Nより

 述語の意味内容が成立するための条件や限定を示します。形容詞文や名詞文でもよく使われます。「 基準」という名のもとにさまざまな用法を含めておきます。  「比較の基準」と言われる「Nより」は「17.比較構文」でとりあげます。


6.14 変化の結果:Nに

 この本では以下の例を「変化の結果」を表わす必須補語とします。  これらを、「AがBになる」の「Bに」を「Bだ」の変化した形とする分析があります。図式的に表すと、次 のように考えるのです。  そう考えるとこれは複文になりますが、この本ではそのような理論的な分析はとらないことにします。( 「対象」の「Nに」にも同じような分析ができる構文がありました。→ 6.2.2)



6.15 様子:Nで

「Nで」で表されます。  修飾語がついた形でないと使えない「Nで」が多くあります。  上の「大声で・スーツ姿で・笑顔で・強気で」なども、意味の上では修飾語が含まれた形になっていると 言えます。(大声で→大きな声で)



 以上で補語を一通り振り返ってみたことになりますが、つくづく難しいものだと感じます。分類のための 分類でなく、全体の見通しをわかりやすいものにするにはどうしたらいいのか、実用的でかつ理論的な 整合性のある分析が求められているところです。


[参考文献]
益岡隆志・田窪行則 1992『基礎日本語文法  改訂版』くろしお出版 
寺村秀夫 1978『日本語の文法(上)』国立国語研究所     
寺村秀夫 1982『日本語のシンタクスと意味I』くろしお出版     
益岡隆志・田窪行則 1987『セルフマスターシリーズ3  格助詞』くろしお出版
森山卓郎 1988『日本語動詞述語文の研究』明治書院
益岡隆志 1987『命題の文法』くろしお出版
石綿敏雄 1999『現代言語理論と格』ひつじ書房
村木新次郎 1991『日本語動詞の諸相』ひつじ書房
北川千里他 1988『助詞』荒竹出版


目次へ

主要目次へ