土作りとは一体何を目的に、何を主体として行えば良いのでしょうか!?
農家の皆さん、JAや普及所の指導員さん、その他作物を栽培されている皆さんや農業資材屋さん達も一様に
「まずは土作り!」と言われます。
しかし、話を聞いていると、皆さんそれぞれに『土作り』の目的や方法といったモノが微妙に違っている事に気付きます。
土を団粒化させる為。土に栄養を持たせる為。土に保水力を持たせる為。排水を考慮する為。
さらには農薬に耐えうる土を作る為だ!なんて人もおられますが・・・。
上記の様な目的の為、年に一度は堆肥や有機物を投入しましょう! と、皆さんせっせと『土作り』に励んでおられます。
私も以前は「微生物の棲家にはなるだろう」と、訳も解らないままに有機物や堆肥を投入していました。
しかし、結果は・・・見た目は立派なホウレン草が出来たものの、窒素過剰により苦味の有るホウレン草が出来てしまいました。
挙句の果てには乾燥気味な畑の上、農薬を一切やらないモノですからアブラムシやダニが付いてしまい、
収穫を断念せざるを得ない状況にまでなってしまいました。
窒素過剰(濃度障害)に因るほうれんそうの硝酸塩(硝酸態窒素)の過剰摂取の為、ムシの格好のエサになった訳です。
本来植物は、適度な硝酸態窒素を吸い上げて光合成による原子転換によりタンパク質やデンプン質、ビタミン等を合成しますが、
硝酸態窒素を過剰摂取してしまうと、転換しきれずにそのまま蓄積されてしまいます。
それが渋みや苦味となって現れるのですが、本来硝酸自体には害は有りません。
ただ、恐ろしいのは人間や動物の身体に硝酸を摂取すると還元作用で亜硝酸に変わります。
亜硝酸という物質は多量摂取すると血液に流れ込み、酷ければ酸欠状態にもなり幼児や老人であれば死に至る事もあります。
亜硝酸は微量でも体内に蓄積してゆき、アトピー性皮膚炎として現れたり、発ガン物質のニトロシアミンを形成させたり、
軽いモノでは発熱、嘔吐と言った症状をも誘発したり・・・と言った恐ろしい物質なのです。
食物アレルギーの人が口にしたなら、たちまち呼吸困難や発疹等の症状となって現れたりするものです。
以前、新聞で「亜硝酸塩に起因する事故で乳牛が死亡」といった報道がありました。
未熟堆肥で育った牧草を食べた牛が上記の様に酸欠状態となり死亡してしまったという話でした。
また、アメリカで「ブルーベビー症候群」という赤ちゃんの突然死が問題化しましたが、母親の食事が問題となってます。
私の友人の農家のお爺さんも昔、硝酸過剰摂取による酸欠死で亡くなられたそうです。
このように、完全無農薬、有機農法でさえ、ちょっとした施肥量や環境の変化により、人体へ影響を及ぼしたりもします。
因みに畜糞堆肥や化学肥料等のアンモニア態窒素を土中に入れると、約1ヶ月で亜硝酸化成菌により有害な亜硝酸に変化。
そして、健全な土であれば、その後硝酸化成菌により約1ヶ月掛けて無害な硝酸や養分に合成させます。
但し、硝酸化成菌は非常に少なく弱い菌で、化学肥料、除草剤等でも簡単に死に至る、慣行や有機農法畑には少ない菌ですが。
また、害虫と呼ばれるムシは弱った野菜を好んで食べます。
ムシの体内で醗酵させやすい実や葉を好むと言う事ですから、ムシが付くという事は野菜が健全かどうかのバロメーターです。
たとえ健全な作物をムシがカジッたとしても、それ以上食べたり、実の中に卵を産んだりはしません。
基本的に腐敗したもの、腐敗しそうな軟弱なものを好んで食べ、目の見えないムシや蛾などは腐敗臭(アンモニア臭等)や
ガスを感じて寄り付き、卵を産み付ける習性があります。 だから畑の直ぐ脇に畜糞堆肥等を堆積してはならないし、
未熟な堆肥を畑に投入すると、土の中で害虫の卵が孵化し畑が格好の棲家となり繁殖したりします。
健全に育った野菜は葉面バクテリアが腐敗を防ぎ、ムシが食べようとしても阻止したり、
食べた虫は葉を吐き出して死んでしまったりします。 それを利用したのが食酢や牛乳や木作液の希釈液防虫剤です。
但し、そのような希釈液は本来、ムシの殺傷能力、ホルモン破壊はしませんから、健全な作物以外には効果はありませんが。
また健全で葉面バクテリアが活発であると、野菜の日持ちも良くなります。 収穫した野菜を水道水(カルキ水)や消毒液で
洗うと、たちまち腐って枯れてしまいますが、微生物(光合成細菌等)浄化された水や井戸の水で洗っても、葉が黄化したり
しなびる事はあっても、なかなか腐ろうとはしません。 (・・・葉物野菜は洗わないのが基本ですが。)
私はそんなホウレン草(硝酸態窒素過剰)を育てた事で、「これではいけない」と思い、自分の手で土を作るのを止めました。
堆肥や施肥の投入に因る土作りは自然の摂理にはかなって無いという事に気づいたからです。
自然の山や森、草地に生える植物は人間が施肥する事無く健全に育ってます。
そして、同じ植物が同じ場所で毎年、元気に育ってます。 これは不思議な事でしょうか!?
何故、畑では連作すると植物は健全に育たなくなるのでしょうか? 何故畑の野菜にばかりムシが付いたり病気がくるのか?
その答えは全て微生物なり、自然が教えてくれます。 全て自然界の摂理なのです。
山や森、草原の土中に住む微生物は豊富で活発です。 草や落ち葉、植物の根から出る酵素、根から剥がれ落ちる根冠細胞や
ムシゲル(根から放出された多糖類を主体とする有機物)をエサに活動、繁殖し、逆に土壌中の有機物を分解したり、
ビタミンやホルモンを生成し作物へ橋渡しをする、いわゆる相互依存、共存している訳です。
微生物の世界も生態系や役割と言ったものが当然、存在し、自然の中ではバランスを保ち、環境を維持している訳です。
その微生物達は自分達や共存している植物達の住み易い様に土を団粒化させ、保水性、排水性、保肥力、窒素固定を高め、
微生物や植物の快適生存環境を作り、必要なだけの栄養素を生み出しています。
本来、畑の土もそうだった筈ですが、畑には人が植物を育てたい一心で堆肥や肥料を入れています。
堆肥という物は極端に言うと、微生物の食い荒らした腐敗カスです。 これ以上腐る事は無いので基本的にはそれを基に
微生物は栄養素を作り出そうとはしません。 完熟堆肥とは、いわゆる『土』です。
肥料(ボカシ肥など)もごくごく僅かな量なら微生物も活発にエサとし、分解橋渡しをしてくれるのですが、投入量が多いと
濃度障害が起り、植物へ窒素分が移行してしまい、硝酸態窒素の過剰になるし、微生物が介入する余地が無くなるのです。
化学肥料など、基本的には工場から排出された廃油合成物(無機物)の様なモノで、浸透圧が非常に高く、水に溶けると
直接的に根に進入させるモノが殆どで、余りの高浸透圧により微生物の体内水分が奪われ、微生物の生態系は壊滅します。
・・・という事は、よほど畑の土中の生物性を熟知し、適切な肥培管理をしなければ作物は健全に育ってくれないと言う事で
有機栽培で頑張ろうとしても結局、農薬や土壌消毒に頼らなければならない現在の慣行農法に舞い戻る可能性があります。
現在の慣行農法、有機農法では微生物の活動が鈍り、生態系を破壊している事になるのです。
本来、健全な土壌中には適度な栄養素が還元されています。植物や雑草が空気中の窒素や微量要素、ミネラルといった物を
土中に還元し、それらを微生物がエサとし、微生物の排泄物により植物の栄養素となる循環で充分で、微生物が活発に活動
する事により、土が団粒化し、快適環境が生まれるのです。 雑草や雑草の根も重要な栄養素生成を計る訳です。
さらには、植物(野菜種)の根(から出る酵素やムシゲル)が自分に必要な微生物群を呼び寄せ、その植物自体が永続的に
生殖活動出来る様な環境を作り上げ、微生物の生態系を植物がコントロールしてると言っても過言では無いのです。
植物は周りに生える雑草さえも時の経過でコントロールしてしまう力があります。 自然循環の一環の事で、自然な事です。
即ち、無施肥、自然循環の栽培法では連作が可能。 ・・・と言うよりは連作する方が自然であり、健全なのです。
ですから、収穫した残根はそのまま土中に残します。 正に連作の為の最強の有機物になる訳です。
因みに、施肥農法よりは養分を求めて根張りが格段に良いですから、土中に残る残痕量もカナリの有機物量ですし、
栽培中のムシゲルの量もその植物体の約30%と言われてますので、合わせると相当な微生物のエサ量と養分量になります。
それでも土壌分析では慣行農法水準数値は出ませんが、コレに太陽の光、水、空気、微生物の活動を加えると、その植物が
成長するだけの栄養分が土や植物自体から作りだされる関数計算式が生まれます。 マサに自然の威力、神秘です。
慣行農法や有機農法では10の養分から8の養分を作物が奪い取ったなら、10−8=2、2では作物が育たないだろうから
次作までには6〜8の肥料を投入するという考え方です。 有機農法に関しては数値が把握し辛く、肥料が効果が遅いので、
ましてやついつい、余分に堆肥を投入しがちで、これでは窒素過剰は免れません。
慣行農法では化学肥料、除草剤、防虫剤などで有用微生物が少なくなったところで、病原菌と呼ばれる糸状菌が猛威を振うと、
土壌消毒し、微生物を壊滅させます。 但し糸状菌は住み難い環境になると胞子(カプセルの様な物)を自発的に作り、
わが身を守り、翌年も活動を開始する為に毎年土壌消毒(毒ガス)を打つ悪循環に陥ります。 掛かる費用も莫大です。
有機農法では腐敗物の多量投入により、微生物相が変化し、エサが少ない訳ですから微生物が少なくなり生態系も崩れます。
正当な肥培管理を知る僅かな篤農家を除き、窒素過剰の畑が多い為、作物は姿勢は立派でも不健全で、ムシや病原菌が好む
作物となり、『虫食い野菜』や硝酸体窒素過剰蓄積の野菜が『減・無農薬でクリーンな、元気野菜』として売られる事になる
何と言う恐ろしい虚無広告でしょう! 出荷している農家さんさえそれに気付いてない矛盾や皮肉な世界が日常で存在します。
というのが現状です。 尤も、一部のスーパーや野菜販売店買い付け人は野菜の残留硝酸体窒素濃度を測り、買い付けを決め
始めたという報道もありましたが・・・ 今後の有機野菜販売の行方に興味のあるトコロです。
クドクドと長い説明となってしまってますが、自然循環(無施肥)農法の土作りとは・・・
基本的に、肥料になる物は土に投入しない。(土中に養分は無くてはならない)
雑草を味方に付ける。(野菜生育初期の雑草は日照や養分奪取の関係で抜き取る)場合によっては緑肥を間作し、微生物の
エサとして与え、活動を活発化させてやる。(炭素量<C/N比>40〜50%前後の生の状態で土中に鋤きこんでやる)
自然の循環をなるべく阻害しない。(虫、雑草、その他全ての生き物を薬や毒ガスによって殺生しない)全てを生かす。
基本的に畑の土は微生物によって土作りをして貰います。
堆肥を作る手間も無く、運び込む労力も要らず、肥料や薬剤の購入も無く、大変な労働と経費の節約にも繋がります。
但し、薬漬けや、濃度障害が起きた畑では土の浄化を図らなければ、上記の様な土作りだけでは作物は健全に育ちません。
微生物が居ないか、生態系が崩れているかなので、自然の土の状態までマズは微生物を増やしてやらなければなりません。
菌資材や土着菌を使ったり、米糠や高炭素資材、他、状況を見て考えれば良いですが、基本的な考え方は同じです。
とにかく、自然治癒力に任せる事です。
そこには特別な農業技術も資材も必要有りません。 周囲の自然から学び、身の回りの資材で自然を活かせば良いだけです。
真に安全な、真に美味しい、命ある作物とは人間の頭や化学実験で作り出す物でなく、土中や植物をめぐる命達が育む環境
から生まれ、自然循環作用の中でその環境は整えられるのではないでしょうか!?