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Adult Children Storys

患者さんとの思い出話 番外編

この話は物凄く重いので、患者さんの年齢、性別、経過は
プライバシー保護のため、かなり変更しております。

 Case4.許されざる父親の大罪
 
  世の中には耐えがたいストレスというものが存在します。生まれも生育歴も問題なく、普通に真面目に生きていて、その人に何の問題もないのに、突然過酷な試練に遭遇する人・・・。東日本大震災の時もそうですが、突然の事故や、犯罪の被害者などなど、多くの場合はどんな困難でも誰かに励まされたり、共に助け合うことなどで、乗り切ることが出来るのが日本人の底力なんですが・・・・、


 もし、それが自我が形成される前の子供の頃のことで、その事件が家庭内のこと、そして誰にも相談出来ないし、助けてくれる人がいない環境だったら・・・恐らく乗り切れる人はいないと思います。そしてそのことが、その人の人生や生き方そのものを破滅させることがあるんです。今回の話はそんな「虐待」にあった少女の物語です。




 彼女の父親は娘のことを溺愛していました。父親は真面目で非常に優しく、彼女が母親に怒られている時も学校で問題を起こした時も、テストの点が悪くても常に彼女の味方だったんです。会社の部長だった父親はいつも定時に帰宅し、可愛い娘を抱き締めました。お風呂に入る時も、寝る時も彼女は常に父親と一緒だったんです。


 そんな彼女も父親のことが大好きでした。ある事件が起きるまでは・・・・


 小学校5年生のある夜、寝ている彼女の服の中を酔った父親が触りました。彼女もいつものスキンシップではないことに気が付き、「やめて」と言おうとしたのですが、その時の父親の表情は普通じゃなく、怖くて、寝たふりをしていたんです。

 翌朝彼女は母親にそのことを相談します。それを聞いた母親はそんなことある訳ないと真面目には取り合わず、そのスキンシップも父親の愛情表現だと説明し、そのことを誰にも言わないようにときつく言われたんです。


 翌日からも父親は何も無かったように仕事から帰ってきて、彼女を抱きしめ、一緒にお風呂に入る日々が続きました。父親のしていることに対しては、恐怖に似た違和感があったのですが、母親の言うように必死に愛情表現だと思い無理やりに納得しました。彼女の歳では、まだ性に対する知識が無かったんですね。


 そして父親の彼女に対するスキンシップは徐々にエスカレートしていき、彼女が中学生になったばかりの時に、遂に一線を越えてしまいます。最初の頃は彼女は性行為に対して訳が解らず苦痛しかありませんでした。何度も拒否をするんですが、力では敵わない父親の暴走は止まらず、彼女は次第に抵抗するのを止めてしまったんです。



 ある夜、母親に関係が発覚・・・・母親は父親だけでなく彼女のことも罵倒し、汚らわしい娘彼女に対し一人の女として嫉妬したんです。そこで彼女は初めて自分のしていることが、とんでもないことだと気がついたんですね。


 そして家庭が崩壊します・・・


 彼女は父親を軽蔑し、徹底的に避けるようになるのですが、母親も彼女と父親を見る目が変わり、娘に対しても異常に厳しく接するようになっていったのです。そんな中で彼女は、家族と食事も一緒に取ることはなくなり、言葉使いも乱暴になり、付き合う友達も悪い連中ばかりで、学校でも問題ばかり・・完全に両親を無視し自分の部屋と学校だけを行き来していたんです。


 高校生になってから彼女は、ほとんど家に帰らなくなりました。友達の家を転々とし、泊る所が見つからない時は、繁華街で見知らぬ男性と、ホテルに泊まることもしばしば・・・不思議なことに見知らぬ男性との性行為に抵抗は無く、むしろ、もっと自分を汚したいと思うようになっていました。


 ある夜、あまりの素行不良を見かねた父親が、きちんと家に帰るように彼女を叱りました。その時に彼女は思い切り父親を殴りつけ、そのまま家出をしてしまうんです。その後はお決まりの夜の世界に飛び込みます。友達の家に転がり込み、年齢をごまかして、キャバクラやスナックのホステスなど、容姿は非常に良かったので、仕事には困りませんでした。


 彼女の仕事に対する姿勢は非常に真面目でした。誰よりも早く出勤して、雑用でも掃除でも、皆が嫌がる仕事は率先して行っていたんです。自分には頼れる親がいないし、学歴も資格もない、何とか自分の力だけで生きていかなければと、必死に頑張っていたんですね。


 そんな生活の中、彼女はある決心をします。こんな仕事が出来るのは若いうちだけ、だったらいつの日か自分の店を持ってきちんと自立し、将来も安泰に暮らしたいと・・・・ですからブランド物などに無駄遣いもせず、彼氏も作らず、必死に夢に向かって嫌な仕事も頑張るようになったんですね。



 彼女は人あたりも良く、色々な所に気がつくので、非常に優秀なホステスだったのですが、常に周りのことばかり目がいってしまい、人間関係で非常に疲れてしまうんです。特にキャバクラなどは女性同士での客の奪い合いとか、悪口とかで大変でした。周囲に敵を作りたくない彼女にとっては非常に過酷な職場だったんですね。



 何度も勤め先を変え、最後に行き着いたのが、ソープランド・・つまり売春でした。昔から彼女にとって自分の体を売ることは、何の罪悪感もありませんでした。むしろ、この仕事ならお客さんと一対一だし、会話やコミュニケーションで疲れることはないと・・その後はその容姿をいかしたアダルトビデオにも抵抗なく出演するようになり、今まで仕事が長続きしなかった自分にとっては、天職ではないかと思うようになっていたんです。





 内容はどうであれ経済的には成功し、「もう少し頑張ればお金が溜り、自分の夢が叶う」と必死に仕事に明け暮れていた頃、彼女のところに10年ぶりに父親が現れたんです。彼女の父親は娘が家出をしてからすぐに離婚していました。それからは一人暮らしをしており、毎日のように娘のことを考えていたそうです。そして探偵を雇い、ついに娘の所在を突き止めたんですね。


過去のことを償わせてほしいと・・・
彼女を目の前にして父親は涙ながらに土下座して謝ったそうです。

 しかし彼女は父親に罵声を浴びせ、二度と自分の目の前に現れないことを無理矢理、約束させたんです。帰る父親の後ろ姿を睨みつけながら・・・



しかしそれから3日後、彼女の父親は首を吊って自殺してしまったんです。



 その事実を知ってから、彼女の心に変化が起こります。仕事中、昔の父親との性行為のシーンが、フラッシュバックして、時に大声を上げたり、泣き出したりと・・・そして、どういう訳か、髪の毛が抜けるようになり、全身倦怠感がひどく、仕事も出来ずに、過呼吸や過食、自己嘔吐、リストカットなどを認め、一日中横になっている日々が続きました。



 何か病気ではないかと病院を転々とするのですが、「うつ病です」「ストレスです」などと言われ、沢山の薬を出されるのですが一向に良くなりません。私の所に来た時には深々と帽子をかぶっており、その下は巨大な円形脱毛症が・・・・まるで河童のお皿のようになっていたんです。美しい彼女の容姿からは想像できない姿でした・・


彼女は泣きながら言いました。


「私の体は汚れているので、もっともっと自分を汚したいんです、
 あんな父親のせいで・・・・ 
 でも、私の心の中にはいつも父親がいたのかもしれません」と・・



 以前私は近親相姦や性的虐待なんて、海外でのことであり、日本ではありえないと思っていました。しかし精神科医になって臨床経験を積んでいくうちに、何度もそのようなケースに遭遇し今では非常に身近に感じるようになりました。残念なことですが・・・


 実際、彼女と同じようなケースは稀では無く、私の所に来た風俗嬢や芸能関係など、自分を売る仕事をしている若い女性の、半数以上が同じような過去を持っていました。中にはそれが原因で人格が崩壊した人・・つまり多重人格になった女性も診たことがあります。(多重人格の90%以上に幼少時の性的虐待があるんです)


 通常そのような経験をすると、男性不信や男性恐怖になるはずなのですが、どこの世界にも男性は存在するんです。その恐怖心から、「反動形成」という防衛規制が働き、自ら恐怖の世界に足を踏み入れ、怖い感情を麻痺させようと、飛び込んで行くんです。


 彼女達に共通するのは、基本的に自尊心というものが破綻しており、自分は汚れていると、自分はどうなってもよいという破滅願望が存在しているということ・・・彼女達は無意識に他人の愛情を拒み、幸せな安定した生活というのが、落ち着かないんです。ですから幸せになりそうになると自ら破滅の方向に向かっていくんです。

 そう考えると幼少時に受けた虐待が、一生その子につきまとい、親が亡くなった後まで、その子の思考を狂わせると言っても過言ではありません。




診察中に彼女に聞かれたことがあります。

「先生・・・何故、私ばかりこんな目に遭うんですか?」

正直どう答えて良いか解りませんでした。



「何でなんだろうね・・・・・・」

彼女の目をジッと見ていて、涙がこぼれそうになり、そう答えるのが精一杯でしたよ。






それにしても・・・酷い父親だと思います・・・

 自分を守ってくれる存在であるはずの親から、そういうことをされる・・・子供心に受けるダメージは計り知れないものです。さらに誰にも相談出来ず、黙っていろと・・・全く何を信じればいいか解らなくなりますよね。


 そのような子供時代を送れば、当然のように大人になってから、精神的に不安定になり、アダルトチルドレンの共依存的な思考を持つようになります。常に周囲を気にし、自分の居場所がはっきりしない中で容易に「適応障害」をきたすんです。ありのままの自分で生きることが出来ずに、自分の体に対して強い嫌悪感を抱き、周りに流されて、自尊心を崩壊させ、最後には人生を破綻させます。その子は何も悪いことしてないのに・・・


 恐らく謝りに来たというのも本心ではなく、結局自分の欲望を満たすために彼女と復縁したかったんではないでしょうか?。本当に自分のしたことに罪の意識があり、娘の幸せを考えれば、二度と娘の前に現れないのが一番良いことなんて誰が考えても解るはずです。



 そして娘に再会した3日後に自殺なんて・・・愛情と憎しみは紙一重とはいえ、彼女の父親なんですから、最後の最期まで、どうして娘を傷つけるんでしょう?本当に自分のことしか考えない幼稚な発想だと思います。(他のページでも話しましたが、私は個人的に自殺は残された家族に対する最悪の暴力行為だと思っています


 彼女の人生そのものが、過酷な運命だったと考えることも出来ますが、もう少し母親が最初の相談を受けた時にもっと真摯に受け止め、あくまで母親の目線で、父親の暴走を止めるべきだったのだと思います。

 
例え、それが親戚から変に見られることになっても、父親の暴力につながったとしても、体を張って彼女のことを守って欲しかったです。彼女は被害者であり、あの時の彼女の味方は母親だけだったんですから・・今さら言ってもしょうがないことですが・・・



これからも彼女は一生傷を背負いながら生きていかなければいけない・・・
でも彼女の過去は変えられないんですから、何とか彼女の未来を変えないと・・・・




彼女には以下のことを伝えました。





「破滅願望の奥底にあるのは、愛情に飢えている純粋な気持ちなんです。」

「あなたの体はどこも汚れていないし、今でも綺麗ですよ。」

「あなたには誰かを愛する権利もあるし、誰かに愛される権利もある。」

「お父さんとのことも、両親に怒りをぶつけたことも、 あの時のあなたは・・・、そうするしかなかった・・」

「今まで・・・本当に一人で・・・よく頑張りましたね」

「あなたは何も悪くない・・・昔も今も・・・・」


「お父さんが亡くなったのは、絶対にあなたのせいではないから・・・」





 泣きじゃくる彼女を見ていて、一人でも彼女のような人を出さないように・・・・
この国から虐待というものがなくなるように・・・祈らずにはいられませんでした・・・・
 

 付)ACお勧め本

「アダルトチャイルドが自分と向き合う本」
「(続)アダルトチャイルドが人生を変えていく本」
:アスクヒューマンケア
「私は親のようにはならない」
「持ちきれない荷物を抱えたあなたへ」
:クラウディア・ブッラク著
「アダルトチルドレンと癒し」:西尾和美著
「アダルトチルドレンと家族ー心の中の子供を癒す」:斎藤学著
「毒になる親」:スーザンフォワード著
「永遠の仔」:天童荒太著(ドラマにもなりました)
 

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