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誘拐された!?

作者

NEW2

 恵美が気がつくと、自分が薄暗い小さな部屋にいることに気がついた。
「ここは、どこなのかしら……?」
 彼女は気ままな一人旅をしていた。そこは治安はかなり良いとされていたが、 裏通りに関しては……。と、言うような場所であった。そこは温暖な 地域でもあり、かなりラフな格好をしていた。また、彼女は護身術と語学力に 自信が有ったことも災いした。そのことが油断を生み、知らないうちに裏通りに 迷いこんでしまったのだろう。そこで何者かにスプレーのような物をかけられ、 気を失った……。  そこまで思いだした恵美は自分の手荷物を確かめた。ない!何もない! 全部取られた!が、そんな事よりも今はここから脱出する事が最優先だ。
「あ……ここから出られそう……。」
 部屋の壁の隅から光がさしこんでいた。彼女はその壁が動くことに気がつき、 そこを押し広げてみる。なんとか押し広げた間から彼女は部屋の外へ出ることが 出来た。
「へ……!?」
 そこは、先ほどいた部屋とは違い、極端に広い部屋だった。良く見ると 天井も高く、部屋というより巨大な倉庫か格納庫のような感じだ。周りには 荷物なのだろうかあちこちに巨大な箱のような物がまわりに有った。が、 それを調べている余裕はない。とにかくここから逃げないといつ犯人が もどってくるかわからない。
「ここも駄目だわ。」
 彼女は出口を探したが、出口どころか床は途切れ、その下はビル何階分も あろうかという高さだった。
「いたっ!」
 彼女はなにかにつまづき、バランスを崩しそうになった。護身術を見に つけるほど運動能力はあったが、出口を探す余りあせって、足元を注意して いなかった。
「こんなところに丸太なんて……。これは……。」
 彼女がつまづいた丸太のような物は長さ2メートルは有りそうな巨大なペン だった。回りを見まわすとコンテナかなにかと思っていた四角い物体は、 巨大なラジカセだったり、ペン立てだったり、ティッシュの箱だったりした。 更に自分の閉じ込められていた部屋は、お菓子のあき箱のようだった。
「なにこれ、ここはまるで巨人の家みたい。まさか……。そんな事有る訳  ないわ……。あそこの壁も良く見ると巨大な扉みたいだけど……。」
 そのときである、どこからともなく大きな足音が聞こえてきた。その音は 次第に大きくなり、恵美は段々大きくなる振動を感じ始めた。
「ま……まさかね。」
 そのまさかで有る。巨大な扉が開き、巨人が姿を現した。 巨人は恵美が先ほどまで入っていた巨大なお菓子のあき箱持ち、中身を確認した。
「逃げたか……、まあここからは降りられないはずだが。」
 巨人の声が彼女にとっては広すぎる空間に響く、恵美は物陰からその様子を うかがっていた。気づかれないようにここから逃げないといけない、だがどこにも 逃げられない事は先刻承知済みだ。この高い場所から降りられそうな場所はなかった のだった。巨人は、次々と回りのものを持ち上げ、逃げたであろう者を探していた。
(逃げる場所がないとすると……)
 恵美は、巨人への対応策を必死で考えていた。ここで冷静さを失ってしまっていては 更に状況を悪化させるだろう。そうしている間にも巨人の手はどんどん彼女のところに 近づき、ついに彼女の隠れていた箱が取り払われた。
「みつけたぞ。こんなところにいたのか。」
 巨大な顔が、恵美を見下ろしていた。彼女は必死で冷静を保ち、巨大な相手を 見上げ、観察した。性別は男、イケメンとはいえないまでも顔はまずまず。服装は 無地のタンクトップ。体格はやや筋肉質。下は見えない。
「あなたは誰?」
 恵美は身構えながらこたえた。明らかに体格では圧倒的に不利だ。だがここで弱気に 出れば更に状況は悪化すると考えたのだ。
「心配するな。」
 巨大な手がどんどん恵美に近づいて来た。恵美は、
「触らないで!」
 恵美は反射的に自分の目の前巨大な指を殴りつけた。相手が巨人でなければかなりの ダメージを与えているはずである。
(効いたのかしら)
 彼女はかなりの手応えを感じたものの、相手はどう感じているかわからない。だが、 意外にも巨大な手の動きが止まり、彼女はそれを確信した。
「これ以上変な事しようとしたら。許さないわよ。」
 再び恵美に巨大な手が近づく。
「まだわからないようね!はあっ!たぁっ!」
 恵美は巨大な手に連続パンチを浴びせた。だが巨大な手は今度は止まることなく 彼女を包み込むようにゆっくり近づいてくる。
「いやぁっ!」
 次の瞬間、巨大な手が彼女をつかんだ。
「放しなさい!」
 巨大な手に上半身の自由を奪われた恵美は上半身全体を使い、両腕を目の前の 巨大な指にたたきつけた。
「きゃあっ!」
 次の瞬間、恵美の体は持ち上げられた。
「無駄な事を……。」
 恵美の視界を埋め尽くした、巨大な顔が話しかける。
「そんな事、わからないじゃない。とにかくおろしな……ああっ!」
 恵美の言葉が終らないうちに、巨大な左手は彼女の体を締め付け始めた。
「あ……う……ううん。」
 恵美は両腕に全体重を掛けて、巨人の指を押し返そうとする。巨大な顔は、
「無駄だといったはずだ。なんとかなると思っているようだが、そんな小さな体では  どうすることもできないぞ。」
 巨人が話すだけで、その息が風のように恵美に吹きつける。恵美は、
「何を言って……ううっ!!」
 巨大な手は大蛇のように更に強い力で恵美の体を締め付ける。あまりの苦しさに、 声も出なくなる。その直後、巨大な手の力は弱められた。恵美は、
「あら……ハアハア……もう参ったの……?」
「言葉その物はまだ強気だな。が、もうかなり参っているようだ。」
 恵美を握り締めていた巨大な手は開き始めた。親指だけを残して。彼女は親指 一本だけで巨大な手で押しつけられているのだ。恵美は、
「遊んでいないで私を降ろしなさい。」
 すると丸太のような親指は、その力を強めて手のひらに恵美の体を押しつける。 恵美は再び両腕に全体重を掛けて、巨人の指を押し返そうとした。更に今度は自由に なった両足の力も使って、左手親指を押し返そうとした。、巨大な顔が話しかける。
「全身の力でも、指一本にも対抗できない。これがお前の力だ。」
 必死で左手親指を引き剥がそうとする恵美の前に、巨大な右手が近づいて来た。
「なにするの!?」
 恵美に近づいて来た巨大な右手は、人差し指を伸ばして更に近づいてくる。
「やめなさい!」
 そう言って恵美は近づいて来た右手人差し指を両腕で押し返そうとする。 もちろん、そんな事をして押し返せるはずもなく、巨大な指は何も感じないかの ように恵美に近づき、彼女の胸あたりを触れそうな所まで近づいた。それでも 必死に彼女は自分のウェスト以上の太さの巨大な人差し指に抵抗していた。
「聞こえないの?この指をどけなさい!」
 恵美は言うと目の前の巨人は、
「自分の力でどけてみろ。無理だと思うがな。」
「なんですってぇ!?」
 恵美は更に両腕に力を入れ巨大な人差し指を押し返そうとする。そのときである。 今度は突然親指が近づき人差し指を押し返そうとしていた右腕をつまんだ。
「いたい!放して!」
 右腕の自由を奪われた恵美は、今度は左腕で巨大な指を何度も殴りつけた。すると、 「きゃあっ!」
 恵美を押さえつけていた巨大な左手親指から突然彼女は開放され、指2本で 摘み上げられている状態となった。彼女の目の前の巨人は、
「こうしてみるとうまそうだな。」
「ちょっとあなた、何言ってるの!?」
 巨人は大きく口を開け、恵美は巨大な2本の指につままれたままなすすべもなく 巨人の口へと近づけられる。必死で足をばたばたさせて抵抗するが、効果など ある訳が無い。巨人の口にかなり近づいた時点で、彼女の足の動きはキックとして 当り始める。しかし彼女の目の前の巨人は、
「その程度か。つつかれたほども感じないぞ。」
「強がり言ってな……きゃぁっ!」
 巨人の巨大な口が、恵美の片足をくわえた。
「やめなさい!」
 そう言って恵美は自由の利くもう一方の足で巨大な口を蹴る。そのときである。
「きゃあっ!」
 恵美をつまんでた巨人の指は突然放され、彼女は巨人の顔に叩きつけられた。
(そうだわ……ここなら……)
 だが、恵美の浅はかな考えは巨人にはお見通しだったようだ。彼女は、片足以外は 巨人の顔の上で自由が効く、とっさに思いついたのはそこから巨人の目を殴りつける ことだったが、巨人は先に目を閉じてしまった。
「うん、うん、ううん……。」
 なんとか恵美は両腕の力で巨人のまぶたを広げようとした。だが、硬く 閉じられたまぶたは動こうとしない。それでもなおかつそのまぶたを開こうと 彼女は力をいれようとしたとき、
「きゃあぁっ!」
 彼女は突然強い力で巨人の顔から引き離された。巨人は、
「まったく無駄な事を……。少しは自分の今置かれている状況を考えて見たら  どうだ。」
「あぁっ!」
 恵美は再び、巨大な手に捕らえられ、胸からしたの自由を奪われていた。先ほど 巨人の顔から引き離されたのは、その巨大な手によって自分の体をつかまれた からであろう。
「やめて!放して!!」
 その巨大な手は、彼女の締め付ける力を少しずつ強くしていった。
「やめ……ぁぅっ!おねが……。」
 恵美は叫びながら巨大な指に必死で両腕をたたきつけたり、押し広げようとする。 だが、その力は弱まる気配は無い。巨人の無情な声が恵美に響いた。
「そうだ、面白いことを考えたぞ……。」
 巨人は恵美を手に握ったまま歩きだし家具の前に止まった。恵美から見れば 大きなビルのような物である。そこから何かを取り出し、もとの場所に戻ってきた。 それは巨人にとって小さな箱だったが、恵美の体がはいってしまいそうな サイズだった。そして巨人は恵美を手に握ったままもとの場所へと向かった。 そこへ戻って来るときに恵美は自分が先ほどまでいた場所を全体的によく見る ことが出来た。そしてそこが巨人の机の上だったことを改めて思い知らされた。 巨人はその机の前に戻り、先ほどの箱を置いた。箱を置いたもう一方の手が、 恵美を捕まえている手、つまり恵美の体に向かってきた。
「一体何を……きゃあっ!」
 その巨大な手は器用に爪の先で恵美の服のえりをつまみ、無理矢理脱がそうとした。
「ちょっと馬鹿、やめなさいこの変態!」
 恵美は自由の利く両腕で巨大な指を押し返そうとするが、

-ばりっ-

 もちろんそんなことが出来る筈もなく恵美の服は簡単に裂けてしまった。 そのときである、突然恵美の足の自由が利くようになった。巨大な指が恵美の 体を離れたが、恵美の体を残った一本の親指でウェスト辺りを押さえつけていて、 逃げられない。そこへ再びもう一方の手が迫ってきた。
「う……ん、う……ん、いやぁっ!!」

-ばりっ-

 恵美は今度こそ巨大な指を押し返そうと体全体の力で対抗しようとしたがまったく 動くことなく今度はズボンを引き千切られた。巨人は、
「まったく、下手に暴れるからお前の服が破れた。」
「あなたのせいでしょう。」
「心配するな。」
 巨人は先ほど持ってきた箱を開けると、何か布のような物が入っていた。 よく見ると服のようである。
「着せてやろう。」
「私は着せ替え人形じゃないわよ。」
 とは言うものの恵美はなんとか箱を自力で立て巨人からの見えないようにし、 その服に着替えた。
「では、これから良いところに連れていってやろう。」
 巨人はそう言うと恵美に向かって巨大な手を伸ばしてきた。
「もうやめてよ!」
 恵美はそこから逃げようとしたが、もう一方巨大な手が彼女の行く手を阻んだ。
「きゃっ!」
 その手によけきれずぶつかった恵美はひっくり返り、その場に倒れた。 すかさず彼女に巨大な手が襲いかかり、捕らえられてしまった。
「さあ、いい子だ。お前も気に入ると思うぞ。」
 巨人は恵美を手に持ち、話しかける。恵美は、駄目とは思いながらも必死で自分を 締め付ける大蛇のような指を押し広げようとしながら言った。
「もう、いつまでもあなたの思い通りになるとは思わないでよ。」
 巨人は恵美を手に持ったまま、扉の前にやってと来た。そこにはいくつかの ダイヤルやボタンがついていて、巨大な金庫を思わせる。巨人はダイヤルとボタンを 操作し、その扉を開けた。そのとき、突然回りの景色が一変した。今まで見た事も ない澄んだ青空、足元はどこまでも広がる花畑。恵美はこれまでのことを忘れ、 癒されるような気がした。
「どうだ。気に入ったか。」
 恵美は、
「まあね。」
 巨人はゆっくりとかがみ、恵美を下に降ろした。するとどこからともなく何人かの 人が集まってきた。みんな恵美が先ほど着替えたような服を着ていた。その中の 一人が、
「私たちの国へようこそ。ここは良いところです。」
 恵美は、
「一体ここは……。」
「妖精の国というところでしょうか……。ここへ来た皆さんは、以前の生活に悩みや  不安を抱えていましたが、ここではそんなことはありません。病気も災害の心配も  ほとんどありません。食べ物も豊富です。こちらの世界でも仕事はあります。でも  みんなで助け合い、信頼し合ってます。みんなこの国が、世界が気に入って  しまったんです。」
 恵美は思いだした。もし無事に帰っても仕事では上司に嫌味を言われつづけ、 毎日のように無理な仕事を押し付けられるに決まってる。結婚し様と思っていた 彼もリストラされて別れた所、このまま将来いいことなどあるのだろうか……。 恵美の心は決まった……。気がつくと巨人の姿は消えていた。

-終-

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