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第961話

部長が、
「石本のやつは後でゆっくりお仕置きするとして、問題はダボだ。
 今度こそきっちりと倒さないと。」
ダイちゃんも、
「こっちの世界はゲームの中とは違ってレベルとか関係ないからね
。 単純にあいつより巨大になれたら楽勝なのに。」
ベルが、
「逆に言うと、あいつより小さいと勝てない。」
部長が、
「大丈夫だ、こっちには心強い助っ人がいるんだ。」
ギニフが、
「え、私のことですか? そこまで言われると照れますが。
 でもきっとお役に立ちますよ。」
ダイちゃんが、
「とりあえず作戦をたてようよ。
 能力はまだどのくらい使えるのかはっきりしないし。」
部長が、
「ああ、確実なのはこの巨大な分身を作るヘルメットと
 ギニフの能力だけってわけだが。」
ベルが、
「今回はヘルメットで脅すだけでは何の意味もない。
 ここはギニフさんの力でみんな巨大化していっきに倒すのが一番じゃないかと。」
ダイちゃんが、
「だめだめ、そんな作戦。 そんなごり押しで倒せたら苦労しないって。
 やっぱり、僕が最後にとどめをさす場面がないと。」
大ちゃんが、
「それ、ダイちゃんがかっこつけたいだけでしょ。」
部長も、
「失敗するわけにいかんからな。 確実な方法で倒したほうがいい。」
ギニフが、
「言い忘れてましたが、私の力で巨大化させられるのは1度に2人までです。
 3人以上もできなくはないですが、その場合あまり大きくはできません。
 逆に1人だけを集中して巨大化させるなら、かなり大きくできます。
 さきほど、この力は5分くらいと言いましたが。
 時間も短くすればするほど巨大化の効果もアップできます。」
部長が、
「なるほど。 あいつを倒すにはあいつより巨大化しないとダメだ。
 その場合はどうすればいいんだ?」
ギニフが、
「2人を5分間巨大化させた場合、そのダボというやつの倍くらいの大きさにできます。
 1人の巨大化の場合は4倍ほどになると思います。」
ダイちゃんが、
「1人で4倍か〜。 ちょっと踏み潰すには小さいかなー。
 もっと圧倒的に巨大化したいんだよねー。」
ギニフが、
「でしたら時間を短くするしかないですね。
 1分短くするごとに、さらに2倍ずつ大きくできます。」 

第962話

 さて、こちらは石本とダボ…
「なかなかやるじゃないか。その調子でやれ。」
 ダボがそう言ったとき石本は何かの影で暗くなるのに気づいた。
(急に曇ってきたのかな?)
 石本は何気なしに上を見ると途方もなく巨大なダイちゃんが
石本とダボを見下ろしていたのだ。
「Д※&∀◆!」
 石本は言葉にならない叫び声をあげて腰を抜かしてしまった。
そうしているうちに超巨大ダイちゃんはしゃがみ、
ダボを捕まえて持ち上げる。
「な、なな、何がどうなってるんだ?」
 自分自身よりはるかに大きい巨人など知るはずがないダボは、
何が起こったか理解できないでいた。そうしているうちにも
自由のきかなくなった自分の体はどんどん上へと持ち上げられる。
「ま、まさか俺よりずっとでかい…。」
 ダボがそう思ったとき突然巨大ダイちゃんは(時間切れで)消えた。
自分自身を持ち上げた巨人が消えたのだ。ダボはそのまま落下した。

‐ズドーン‐

 ダボの落下地点は、ものすごい轟音と土煙が上がった。
「あれだけ巨大化すると1分も持たないなあ。
 一気に踏み潰したかったんだけど。」
 ダイちゃんがいうと大ちゃんが、
「そんなことしたら周りのこびとさんたちも街も踏み潰しちゃうよ。」
 部長は、
「さて、あいつがどうなったか確認しないと。」 

第963話

土煙がだんだん薄くなって、ダボが見え始めた。
部長は、
「どうだ、倒したのか。」
ダイちゃんも、
「もっと派手にやりたかったんだけどなー。
 でもあれだけ高いとこから落としただけでも無事で済むわけないでしょ。」
ところが、ダボが動いているのが見えた。
「いててて、何なんだあいつは。 俺よりでかいやつがいたとは・・・」
部長が、
「くそ、ダメだったか。」
ベルも、
「他の作戦を考えるしかないか。」
ダイちゃんは、
「もう一回だ。 もう一回僕が巨大化して今度こそ一撃で。」
するとギニフは、
「残念だが、連続で同じ人を巨大化することはできない。」
部長が、
「そうだ、堕天使だ。
 あいつのとこにつれていけば何とかなるんじゃないか?」
ダイちゃんは、
「どうやって連れて行くの。 ここからじゃけっこう距離ありそうだけど。」
ベルが、
「いや、それはいいアイデアかもしれない。
 1人ずつ順番に巨大化して、ダボを無理やり運ぶんだ。」 

第964話

「と、いうわけで石本お前が最初にやれ。」
 戻ってきたばかりの石本に部長が言った。ギニフは、
「もともと体が大きいですから、あまり巨大化させなくて済みます。
 かなり長時間持ちますよ。」


 さて、こちらはダボ……。
「あのでかいやつ、どこへいったんだ?ん?」
 ダボは周りを見回した。
彼はは自分のところへ戻ってきた石本と目が合った。石本は、
「あ、ええっと…。」
 石本は今は自分より小さな相手なはずなのになぜかビビっていた。
ダボは石本を見上げながら、
「お前こんなにでかかったか?まあいい、こっちへ来い。」
「あ、え…ごめんなさいっ!」
 石本はダボのところへいきなり駆け寄り、後ろから抱え上げた。
「な、なんだ!?」
 さすがのダボも自分の2倍はある石本に抱きかかえられ、
両足がつかない状態ではどうにもならない。
駄々をこねて親に無理やりその場から強制移動させられる
小さな子供のようである。
「おい、そっちじゃないぞ。こっちだ。」
 既にギニフを含む部長たちは石本の頭の上に乗っていた。
部長の指示で石本はダボを抱きかかえたまま
堕天使のところへ向かって走り出した。
「下ろせ!俺様をどこへ連れて行く気だ!」
 石本に抱きかかえられたダボが足をじたばたさせながら叫んだ。 

第965話

 石本は必死で走り続けたが、巨大化の時間切れが来てしまった。
じわじわと体が縮んでいき、ダボを抱えることができなくなった。
わけもわからず抱きかかえられて運ばれたダボは、
「いったいどういうことだ!
 突然巨大化したかと思うと、俺を変な場所に運びやがって。」
石本はダボと同じサイズまで戻ったが、走り続けて息が上がってしまい
なかなか話すことができない。
ダボは腹を立てて石本に掴みかかろうとした。
が、そのとき。
「おっと、続きは俺が相手してやるぜ。」
いつの間にかダボの後ろに、
さっきまでの石本と同じサイズに巨大化した部長が立っていた。
「お、お前までそんな巨大に・・・?」
部長はダボを抱きかかえて堕天使の方に走り出した。
ダボは、
「お前らいったいなにを企んでやがる。 俺をどこに連れて行く気だ!」 

第966話

「……。」
 何も言わない部長にダボは、
「お前らの思いどおりになると思うなよ。なんとか言え。」
「ここはお前の居るべき世界では無い。」
「なんだと?どういうことだ?」
「言ったとおりだ。」
「そんなことはほかのやつには決められん。」
 部長は、
「残念だが落ち着いて議論している時間は無い。」
 と、言ったあとで大ちゃんと交代した。
「一体お前ら、なんなんだ?」
 ダボは大ちゃんに聞く。
「ボダさんと約束したんだ。連れて帰るって。」
「あいつのことなんか…。」
「お願い、戻ったら弟のボダさんと仲良く暮らして。」
「誰があいつと一緒に。俺様は自由に…ってまた別の奴に替わっとる!」
 話しているうちに大ちゃんは時間切れになり、ベルと交代していた。


 こうして交代を繰り返し堕天使のところまであと少しとなったが、
「おい、こんなところに川なんかあったか?」
 ギニフの力で巨大化し、
ダボを抱きかかえたままのニショブは川の前で立ち往生した。ダボは、
「お前らの目論見もここまでのようだな。」
 部長は石本に
「うーむ、近くに橋もなさそうだし
 一番長時間巨大化できるお前が泳いで渡れ!」
 石本は、
「何か流れも早そうだし、途中で溺れちゃうよー。」
 その時何者かが、
「あんたら、向こうに渡りたいんか?」
 部長は、
「そうだが、ん?」
 ダボよりはやや小さめの巨人がいた、
 その後ろにはダボを加えた部長たちを乗せるには十分なサイズの船。
「私はこの川で渡し船の船頭をやっているヤーシ。お金はいらん、
 代わりにあることをしてくれたら全員無事に向こう岸まで渡す。」 

第967話

部長が、
「あることって何だ? これだけの人数を無料で乗せるって言うくらいだ。
 嫌な予感しかしないんだが。」
するとヤーシは、
「別に嫌なことをさせるつもりはない。
 この川を渡りたいってやつのほとんどは、堕天使に用があるやつだ。
 お前らもそうなんだろう?」
部長が、
「まあ、言うとおりだが。 堕天使を知ってるのか?」
ヤーシは、
「会ったことはないが知ってる。
 さっき言ったあることというのも堕天使のことだ。」
ダイちゃんが、
「まさか堕天使を倒してくれって言う気じゃ?
 あいつは僕たちを元の世界に戻すために待ってるんだ。
 そういう理由で倒せないからな!」
大ちゃんが、
「あんな巨大な相手、どんな理由でも倒せないけどね。」
ヤーシは、
「いやいや、倒してくれなんてとんでもない。
 堕天使に私の頼みを伝えて欲しいんだ。」
部長が、
「頼みって何だ?」
ヤーシは、
「この川を堕天使の力で無くして欲しい。」
部長は、
「そんなことをしたら仕事がなくなってしまうんじゃないか?」
ヤーシは、
「これは仕事じゃない。 私は元は天使だったんだ。
 でもちょっとしたミスで神様に罰を与えられた。
 体を縮められ、この川で一生船頭をすると言う罰だ。
 けど、その罰はこの川がなくなれば無効になる。」
部長が、
「なるほど。 確かにあれだけ巨大な堕天使ならこんな川片手で無くせそうだな。」 

第968話

 部長たちは堕天使のところへ向かうため全員ヤーシの渡し船に乗った。
「それにしてもダボのやつがあっさりこの船に
 乗ってくれたのは意外だったな。」
 べるが言うとダボが、
「ちょっと、堕天使というやつに会ってみたくなったからな。
 帰るかどうかはそいつに会ってから決める。」
 ダイちゃんは、
「会ったらびっくりしてすぐに帰りたくなると思うよ。」
 こうして部長たちが話しているうちに渡し船は向こう岸についた。


 ヤーシと別れたあと部長たちは堕天使の家を見上げながら、
「改めて見ると、途方も無くでかいな。」
 部長が言うとダボが、
「こんな家に住んでいるとはそうとうでかいやつだな。」
「でも入口のとこへ回るだけでも大変そうですね。」
 ギニフが言うと大ちゃんが、
「ここまで来たら全員堕天使さんの所へテレポートできると思うよ。」
「じゃ、早速やってくれ。」
 部長が言うとギニフが、
「私からもお願いしますね。
 巨大化はできてもテレポートの能力はありませんから。」


 部長たちはダボを連れ、無事堕天使のところへと帰還した。
堕天使は部長たちを見下ろしながら、
「思ったより早かったな。ご苦労。ん?こいつは…?」
 ギニフは堕天使に
「はじめまして、ギニフと申します。お会いできて光栄です。」
「それよりダボは…。」
 部長が言うとダイちゃんは、
「堕天使を見上げたまま固まっちゃってるよ。
 今まで自分より大きい巨人がいない世界にいたからね。」
 堕天使は、
「こいつはそのまま元の世界に帰しておこう、これで任務完了だな。」
 すると大ちゃんが、
「ちょっと待って、その前に一つお願いがあるんだけど。」
 大ちゃんはヤーシのことを説明した。堕天使は、
「うーむ。困ったな。」
 堕天使が言うと部長は、
「あのくらいの川ならすぐに埋められるだろう。」
「たしかにそうだが、あの川は俺が作ったわけじゃない。
 いたずら好きのあいつだ。俺が埋めても元に戻してしまう。」
「何者なんだ?」
「あいつは、本来天使とともにこの世界を維持管理しているんだ。
 と、言うか天使の部下のようなものだな。
 あいつの仕事は地面を整地したり、堤防を作ったり
 地形をいじる程度の能力がある。」
「て、言うとそうとうでかいのか?」
「いや、サイズは俺よりずっと小さいが
 地形操作には専用の機械を使うんだ。」
「そいつを俺たちが説得しろと。」
「事情を知ってる奴の方が説得力があるからな。」


 しばらく後、部長たちは「天使の部下」の家の前にいた。 

第969話

確かに、堕天使の家に比べたらかなり小さい。
だが、堕天使を基準にして見ると小さいだけであって、
部長たちにとってはものすごく巨大な家には違いなかった。
部長が、
「とにかく入ってみよう。
 いたずら好きって言ってたが、
 天使の部下なんだから話くらいはちゃんと聞いてくれるだろう。」
ダイちゃんは、
「それはどうかな〜。 家に入ろうとしたら何か罠が仕掛けられてたりして。」
大ちゃんは、
「誰が入ってくるかわからないのに、罠なんか仕掛けないんじゃない?」
ベルは、
「まぁ、なにがあるかわからない。 それなりに用心して入ろう。」
天使の部下の家には巨大な扉と石本サイズの扉があった。
巨大な方の扉は部長たちに開けられる大きさではない。
石本に扉を開けさせて、部長たちは中に入っていった。
薄暗くて周りがよく見えないが、どうやら1本道の通路になっているようだ。
部長たちはその通路を歩いていく。

「わっ!」
ズンッ
ズシーン・・・

全員がいっせいに転んだのだ。
巨大な石本はもう少しのところでみんなを押し潰すところだったが、
なんとか全員無事だった。
ダイちゃんが、
「なんだよもう。 みんな同時に転ぶなんて。」
部長が、
「いや、地面がおかしいぞ。 べたべたしている。」
大ちゃんも、
「ほんとだ。 この辺一帯の床が全面べとべとしてる。」
部長が、
「動けないほどじゃないが、これのせいでみんな転んだんだな。
 けど、これじゃ普通に歩けないな。」
するとどこからか声が響いてきた。
「あれ〜、虫ケラホイホイに何かかかったようだな。」 

第970話

「おい誰だ?」
 部長が辺りを見回しながら言う。ギニフは、
「ここから早く逃げたほうがいいみたいですね。」
「とは言っても、足元がベタベタしてうまく動けないよ。」
 大ちゃんがそう言った直後、
部長たちは上昇する高速エレベーターのような動きを感じた。
ダイちゃんは、
「一体何なんだよ。」
 今度は床全体が大きく傾き始めた。
足元がベタベタしていなければ全員転げ落ちてしまっていただろう。
次に天井部分が開き、巨大な顔が部長たちをのぞき込んでいる。
「お〜、大漁大漁。」
 声からして先程の声の主のようだ。部長は、
「おい、なんで俺たちにこんなことをするんだ。」
「う〜ん、虫けらのくせに話せるとは珍しい。
 目的を推理させてくれ。答えるのはそのあとだ。」
 ダイちゃんは、
「なんか微妙にバカにされてるみたいなんだけど。」
 ギニフは、
「今の状況では私たちの方が圧倒的に不利です。
 相手の出方を待ちましょう。」
 ダイちゃんは、
「こういう推理って意外と当たらないんだよね。」
 巨大な顔は、
「え〜っと、もしかしてあの堕天使さんとこから来てない?」
「あ、当たってるよ!」
 大ちゃんが言うと巨大な顔は、
「う〜ん、今日は冴えてるなー。
 私の推理は14回に1回くらいしか当たらないからな〜。」
 部長は、
「それより何で俺たちにこんなことするんだ。」
 巨大な顔は、
「いや、失礼。私の家には色々な訪問者たちが訪ねてきます。
 でも、あなたたちくらいちっちゃいと
 怖がって何もしないで逃げてしまいます。
 そこでこうやって足止めをしているんですよ。」
「なんか納得がいかないな。」
 部長が言った。巨大な顔は、
「せっかく来てくれたんだし、何か出さないと。ちょっと待っててね〜。」
 そのあと、床の傾きは戻り、下に降ろされ、周りの壁も開かれた。
部長たちは堕天使のところに比べたら小さいが
何もかもがとんでもなく大きい部屋の中にいた。
「何かこっちに来るぞ。」
 ベルが指さす方から、
石本の2倍くらいの巨人が部長たちの方へ向かってくる。部長は、
「なんだこいつは、踏み潰される前に逃げるぞ!」
 だが、部長たちの足元のベタつきは強まり
思うように動けなくなっていた。 

第971話

「もうダメだ。 踏み潰されるー」
と思ったが、巨人は部長たちのすぐ手前で立ち止まった。
そして足元の部長たちを全員摘み上げて、石本を脇にかかえて再び歩き出した。
ダイちゃんが、
「僕たちをどこに連れて行く気だ?」
巨人は無言のまま歩き続ける。
「あ、ごくろうさん。 そのカップに入れてあげてくれる?」
天使の部下の声が聞こえたと思ったら、部長たちは何かの中に放り込まれた。
部長は、
「な、なんだこれ。」
放り込まれた先は、真っ黒い液体がたまった巨大な池のようなところだった。
周りはつるんとした壁に囲まれていて外に出られそうにない。
部長が、
「おい石本。 お前でかいんだから島みたいに浮かんでろ。
 俺たちはその上に避難する。」
石本が仰向きに浮かぶと部長たちは泳いで石本の腹に上った。
上を見上げると、天使の部下の巨大な顔が覗きこんできた。
「おい、俺たちに何する気だ!」
すると天使の部下は、
「せっかくきてくれたお客さんなんだし、お茶ぐらい出さないとね。
 それ、アイスコーヒーだからみんなで飲んで飲んで。」
部長が、
「こんな状況で飲めるか!」
天使の部下は、
「虫用のカップは持ってないからなぁ。 それで我慢してくれる?」
部長が、
「コーヒーなんかいらないから、さっさとここから出してくれ!」
天使の部下は、せっかく入れたのにとブツブツ言いながら
部長たちをカップからつまみ出してテーブルに置いた。 

第972話

「ところで、どういう用事で来てくれたのか聞いてなかったね。」
 天使の部下が部長たちを見下ろしながら言う。部長は、
「来てから今まで言える状況じゃなかったが…。」
 部長たちはここへ来た理由を説明した。


「なるほど、あの川がそんなことに利用されていたのか…。」
 天使の部下が言うと大ちゃんが、
「お願い、あの川を埋めて。」
 天使の部下はしばらく考えていたが、
「そうだ、ゲームに付き合ってくれたら川を埋めてもいいよ。」
 天使の部下がそう言った直後、部長たちは光に包まれた。


「なんだここは?」
 部長たちは気がつくとどこかの海岸にいた。
はじめての場所なのになぜか以前来たような気がする。
突然空間にウインドウが現れ、天使の部下の顔が映し出された。
天使の部下は、
「アドベンチャーゲーム『トレジャーハンターワールドIII』へようこそ!」
 大ちゃんが、
「と、いうことはここ、ゲームの中の世界?」
 部長も、
「こんなゲームを作っていたのは堕天使だけじゃなかったのか。」
 天使の部下は、
「そんなに難しくはないと思うよ。
 この世界のどこかにある宝物を見つけるだけだから。
 それから見つけた宝物はあげるよ。じゃあね。」
 天使の部下がそう言うと、ウインドウは消えた。石本は、
「もしかしたら、ここから出る方法聞き忘れてない?」
 ギニフは、
「ここは言われたとおり宝を探し出すべきでは?
 ゲームですからヒントもどこかにあると思いますよ。」
 部長は、
「それはそうだが、この世界では俺たちのサイズはどうなるんだ?」
 部長たちは海岸から島の奥へと歩いていった。
植物のサイズは部長たちからすると大きい感じだ。
しばらく歩いていくと村を見つけた。巨人の…。
「とりあえず村の様子を見てきてよ。」
 ダイちゃんが石本に言う。
「ええーっ!」
 村の住人のサイズは石本と比べても何倍もありそうだった。 

第973話

石本はしぶしぶ巨人の村人の方に近寄っていった。
近づくと石本との体のサイズの差がよくわかる。
だいたい石本の5倍ぐらいの大きさだった。
部長たちを指で摘み上げられるほどの石本ですら、村人にとっては赤ちゃんみたいなものなのだ。
それでも石本はダイちゃんに逆らえず、進んでいった。
「なんだ、お前は。」
石本が突然話しかけられた。
「うわ! 見つかっちゃった。 どうしよう。」
巨大な村人は、
「何者だって聞いてるんだ!」
石本は、
「えーと、それは・・・。 何て言えばいいんだろう。」
すると巨大な村人は、
「答えられないなら仕方ない。 怪しいよそ者め。 踏み潰してやる!」

グワッ!

巨大な村人が石本の真上に足をあげた。
「た、たすけてー! 踏み潰さないで。」
石本はあわてて逃げようとしたが、間に合わなかった。

ズシーーーン

そして目の前が真っ白になっていく。
なぜか部長たちの視界も真っ白になっていった。
そして気がつくと、全員最初の海岸に戻っていた。
部長が、
「どういうことだ? またふりだしに戻ったぞ。」
するとダイちゃんが、
「なるほどね。
 このゲームは、仲間が1人でもゲームオーバーになると最初からやりなおしなんだよ。」
部長が、
「つまり、さっき石本が巨人に踏み潰されたから戻されたってわけか?」
ダイちゃんは、
「たぶんね。 だれも死なずにクリアしないと、一生ここから出られないね。」
ギニフは、
「だが、天使の部下は難しくないといっていたが・・・。」
ダイちゃんが、
「ウソついたんじゃない?」
部長は、
「何のためにウソをつくんだ。
 どっちにしてもここから出る条件は変わらないんだぞ。」
大ちゃんが、
「とにかく、このゲームのこともっと調べてみようよ。」
するとベルが、
「さっきは気づかなかったが、海岸の端の方に何か変なマークがあるぞ。」
ベルが言う方を見ると、地面に大きな円が描かれている。
その円の中に文字のようなものが書かれてるが、部長たちには読めなかった。
全員がその円の中に入ったときだった。
また突然ウインドウが開いた。
〔ここはヒントサークルです。 このステージのヒントを聞くことができます。
 ヒントを聞きますか? はい いいえ〕
部長が、
「はいだ! 聞くに決まってる。」
〔それではヒントです。 この海岸を抜けると、こびとの村があります。
 そのこびとたちを脅して宝のありかを聞き出しましょう。
 これでステージ1はクリアです。
 その先のステージに進むと、通常のサイズの人間。 さらに進むと巨人が登場します。
 今はとにかく、こびとの村(超簡単)をクリアしましょう!〕
ヒントのウインドウが消えた。
部長が、
「こびとの村・・・なんてあったか?」
ダイちゃんも、
「巨人の村の間違いじゃない?」
ベルが、
「だが、巨人が登場するのはもっと先のステージのはずのようだが・・・」
するとまたまたウインドウが開いた。
今度は天使の部下だった。
「あー、ごめんごめん。
 このゲームさぁ、私のサイズに合わせて作ってあるんだよね。
 最初のステージはほんとにこびとの村で超簡単なんだけど・・・、
 虫ケラサイズじゃちょっときびしいかな。
 ま、みんなで力合わせればなんとかなるんじゃない? じゃね!」
部長が、
「お、おい! 話が違うじゃないか!」
大ちゃんが、
「このゲームのこびとのサイズより、僕たちが小さすぎるってことなのか。」
ダイちゃんが、
「のんきに言ってる場合か。
 こびとですらあの大きさなんだぞ。
 その先で出てくるほんとの巨人はどれだけ巨大なんだよ!」
ギニフが、
「とにかく巨人の村・・・、いや、こびとの村にもう一度行って見ましょう。」 

第974話

 と、いうわけで再び先ほどの村へ向かった一行だったが、
歩いているうちに異変に気づいた。部長が、
「おい、石本がいないぞ!」
 ダイちゃんが、
「なんで一番でかいやつがいなくなったのに気づかないんだよ。」
「あ、ごめーん。ちょっとお腹すいちゃって…。」
 石本は何かの実を食べていた。植物自体のサイズは石本の背丈くらいだ。
「よく確かめもせず食べたら腹を壊すぞ。」
 部長が言うとダイちゃんは、
「もし毒だったら死んでゲームオーバーになるんだよ。気を付けてよ。」
 そう言っているうちに、石本の体が光った。
その直後、石本の体はしゅるしゅると縮み始め、
部長たちの半分ぐらいのサイズになってしまった。
 ダイちゃんは、
「でかいだけが唯一の取り柄だったのに…。」
 大ちゃんは、
「そんなこと言ったらかわいそうだよ。」
 ギニフが、
「私の能力では時間制限がありますし…。」
 ニショブが、
「おい見ろ、海岸にあったのと同じ奴じゃないか?」
 部長が、
「早く入ってヒントを聞くんだ!」
[ここはヒントサークルです。(中略)このエリアは薬草の森です。
ここには様々な効果の薬草が生えています。
効果や持続時間はご自身で確かめてください。]
 ウインドウが消えたあと部長は、
「小さくなる薬草は石本で確認できた。この中に巨大化できる薬草もあるはずだ。」
 ベルは、
「でも、どうやって…。」
 全員の視線が石本にむいていた。 

第975話

部長が、
「よし、このエリアに生えている薬草っぽいあやしい植物を集めるぞ。」
そしてみんなそれぞれ薬草を集め始めた。
しばらくして、一人何種類かずつの薬草らしいものが集まった。
ダイちゃんが、
「それじゃ実験はじめようか。」
石本が、
「実験って、まさか僕が・・・?」
部長が、
「さっきお前、変な実を何もためらわずに食ってただろ。」
石本は、
「そ、それはお腹がすいてたからつい・・・」
部長は、
「とにかくお前しかいないんだ、順番に食え。」
ダイちゃんが、
「そうそう。 もし巨大化の薬を一発で当てられたらラッキーじゃん。
 じゃ、まずはこのちょっと臭い葉っぱを。」
石本が、
「ちょっと臭いって、それこそ毒っぽいじゃない!
 そんなの食べたくなっ・・・うぐっ!」
ダイちゃんが石本の口に無理やり突っ込んだ。
部長が、
「どうだ。 何か変わったか?」
石本の後ろにいた大ちゃんが、
「うわっ、石本のお兄ちゃんの背中に羽がはえたよ。」
部長が、
「ふむ、この薬草は空を飛べるようにするものか。
 石本、ちょっと飛んでみろ。」
石本は言われたとおり、羽をバタバタ動かした。
が、体が重くて浮き上がらなかった。
ダイちゃんが、
「小さくなったのにデブだから飛べないんだよ。」
部長が、
「まぁいい、次だ。」
部長が石本の口に大きな実を突っ込んだ。
「今度はどうだ?」
「うーん、何も変化なさそうだな。」
「ハズレか。 じゃあ次だ!」
そんな感じで石本の口に次々と薬草っぽいものを詰め込んでいった。

そして集めたものを全部石本に食べさせ終えたのだが・・・
部長が、
「結局巨大化の薬草はなかったのか。 実験は失敗だな。」
ダイちゃんが、
「ほとんどがハズレだったんだもん。」
ベルも、
「よく考えてみれば、このステージは普通ならものすごく巨大な状態で進む場所。
 つまり、巨大化する薬は意味のないものだからな。」
部長が、
「ふむ、仕方ない。 他の方法を探すか。」
すると石本が、
「仕方ないで済まさないでよー! この体どうするのー? 元に戻してよー!」
部長の指先に乗った小さな石本が小さな大声で騒いでいた。
部長が、
「しょうがないだろ。
 小さくする薬はいくつかあったが、大きくする薬はなかったんだ。」
大ちゃんが、
「こんなに小さくて羽が生えた石本のお兄ちゃん。 なんだか虫みたい。」
石本は、
「大ちゃんまでひどいよー。」
ベルが、
「そうだ。
 このステージはとにかくあの巨人たち・・いやこびとたちから情報を聞き出すことが目的なんだ。
 この羽の生えた小さな体なら虫みたいにどこにでも入り込んでいける。」
部長も、
「なるほど、今の石本なら虫みたいに気づかれずに近寄って話し声を聞いたりできるってことだな。」
石本は、
「そんなの無理だって。
 もし気づかれたら蚊みたいに潰されてまた最初からだよ。」
部長は、
「そうなったらそうなったで、また同じことを繰り返せばいい。
 いつかは有力な情報を聞きだせるだろ。」 

第976話

 石本は仕方なく村の方に向かって飛び始めた。その時、

ーヒュゥ〜−

 突然強い向かい風が吹き、石本は風に押し戻されてしまった。
「やっぱり無理だよ〜。」
 石本がそう言った直後、

ービュゥゥ〜−

 風の方向が変わり、石本はちょうど村の方向へ飛ばされた。


 さてこちらはこびと(部長たちから見れば巨人)の村。
「ここにあるやつ、全部虫干ししとけよ。
 先祖代々伝わる大切なものばかりだから丁寧に扱え。」
「は〜い、でも祭りの道具以外にもあるみたいだけど。」
「これは古文書とかそういうものだな。
 ご先祖様のありがたいお言葉とが書いてあったりするからな。」
「この地図は?」
「宝の地図だってじいちゃんが言ってたな。」
「へぇ。」
「今日は風が強い。飛ばされたら困るからこっちの小屋の中に並べとけ。」
「わかりました。」

 ちょうどそこへ通りかかったと、言うか飛んでた石本の耳に入った。
そのとき、

ービュゥゥ〜−

 またもや強い風が吹き、
石本はうまいぐあいに部長たちの元へ戻ってきた。
「村に宝の地図があるのか。でかした。」
 部長が言うとダイちゃんが、
「ん、たまたま風に飛ばされて偶然聞いたんじゃないの?」
 石本は、
「そんなことないよ。調べるの大変だったんだから。」
 ベルは、
「で、どんな地図か見たのか?」
 石本は、
「えーっと、それは……。」
 石本以外全員
「「……。」」
 部長は、
「石本では頼りない。
 村にある宝の地図を村人に見つからないよう見に行こう。」 

第977話

部長たちは、石本に案内をさせて村に入っていった。
「で、その地図はどこにあるんだ?」
石本は、
「えーと、たしか風で飛ばされるから小屋に並べておくとか言ってたような。」
部長は、
「頼りない答えだな。 それで小屋ってどこなんだ?」
石本は、
「そこまではわからないよ。 その話を聞いてすぐに戻ってきたから。」
ダイちゃんが、
「とりあえず、この辺りの小屋を探していけばいいんじゃない?」
ベルが、
「今の私たちでは、その小屋を判別することも難しそうだが。」
部長が、
「うう、たしかにどの建物も巨大で小屋なのかなんなのかわからないな。」
大ちゃんが、
「石本のお兄ちゃんが話を聞いた人を探すのはどうかな?
 まだその小屋の中で地図を並べてるんでしょ。
 それなら並べ終わったら小屋から出てくるはずだよ。」
部長が、
「なるほど、そいつが出てきた建物が地図のある小屋ってわけか。」
部長たちは村人に見つからないように、石本が話を聞いた辺りの建物がよく見える位置に移動した。 

第978話

 そのときである。

ーズシーンー

 別の村人が、部長たちに気づかずすぐ近くを通りかかった。ベルが、
「危なかった。もう少しで踏み潰されるところだった。」
 部長も、
「うーむ、周りにも気を付けないと踏み潰されて
 ゲームオーバーになりかねない。」
 ダイちゃんが
「あ、また誰か来る。」
 部長は、
「踏み潰されない場所に早く移動しろ!」
 また部長たちに気づかず村人がやって来た。その人は…。

「一体、虫干しするのにいつまでかかってるんだ。
 普通ならとっくに終わってるぞ。」
 そう言って近くの(もちろん部長たちからすればかなりの距離だが)
建物の中へ入っていった。大ちゃんは、
「あっ!あそこだ!」
 するとダイちゃんは石本に、
「そうだ、念のため先に入って中の様子を見てきてよ。」
 石本は仕方なくドアの隙間から中に……
入ろうとしたときに運悪く薬草の効き目が切れはじめた。
そこでつかえて動けなくなってしまった石本は、
「動けないよー!助けてよー!」
 ダイちゃんは、
「んもう、ここまで来たのにまたゲームオーバーか。」
「そんなぁ…。」
 石本が言うとギニフが、
「今の時点ではまだゲームオーバーじゃありません。
 助ける方法を考えましょう。」
 ニショブが、
「そうも言ってられない。さっき入ったやつが出てくるぞ。」

「こんなところで寝るなんて、しょうがない奴だ。
 作業も終わってるようだし、そのままにしてやるか。」
 村人は部長たちやドアの隙間に挟まった石本に気づかず
ドアを開けて外に出た。

「あの人がドアを開けてくれたおかげで助かった。」
 村人が出たあと元の大きさに戻った石本が言った。ベルが、
「それはいいが、まだ中に誰かいるぞ。」
 部長は、
「寝てるようだ、奴が起きないうち宝の地図を確認しよう。」 

第979話

ダイちゃんが、
「で、地図はどこ? ここからじゃ見当たらないんだけど。」
ニショブが、
「虫干しと言っていたから、どこかに広げて置いてあるはずだが・・」
部長が、
「この巨大な小屋の中で広げて置いておけそうなところは・・・、
 あの巨大なこびとがもたれかかってる台の上くらいしかないようだ。」
ダイちゃんが、
「ってことはあの上に登らないと見れないってことか。
 でもあの台、僕たちのサイズだとちょっとしたビルくらいの高さあるよ。」
ギニフが、
「登れそうなところ・・・。
 もたれかかって寝ている巨大なこびとの体を登っていくしかなさそうですが・・・」
ダイちゃんが、
「それなら石本に登らせよう。」
すると部長が、
「いや、元に戻った石本では大きすぎて登ってる間に気づかれて起きてしまうだろう。」
ベルが、
「たしかに。 起こしてしまってはゲームオーバーは確実だろう。」
ダイちゃんが、
「えー、まさか僕たちで登っていく気?」
部長が、
「時間はかかるが、その方が安全だ。 それに石本が地図見ても理解できるかどうか。」
石本が、
「ちょっと部長、失礼なこと言わないでよー。 でも今回は行かなくて済みそうだしラッキー。」 

第980話

「いや、石本ちょっと待て。」
 部長が言うと石本が、
「ええーっ!何もしなくていいんじゃなかったの?」
「て、言うか何もするなとは言ってないだろ。」
「そうだっけ?」
「一人ずつ俺たち全員をこいつの体につかまらせろ。」
 それを聞いたダイちゃんが、
「なるほど。一番下から登るよりはいくらか楽になるね。」
 石本は巨大なこびとの近くまで行き、
一人ずつ部長たちをその体につかまらせた。ニショブが、
「ふう、それでもやっとここまでか…。」
 部長たちは巨大なこびとのお腹の上辺りまで来た。
「さてこれからが…。おい、逃げろ!」
 ベルが言ったとき、
巨大なこびとが寝ぼけてを動かしお腹あたりを触り始めた。
部長たちは巨大な手から走って逃げようとするが
足元が柔らかくうまく走れない。
「わああああっ!」
 部長たちが声のした方を向くと、
ニショブが巨大な手の下敷きになっていた。部長が、
「みんなで助けるぞ、このまま潰されたらゲームオーバーだ。」
 ニショブが、
「すまない…。」
 部長たちは全員で巨大な手を動かそうとするが、動く様子が無い。
ギニフが、
「ここでできるかどうか分かりまぜんが、
 私を含め全員2倍程度に巨大化させましょう。」
 部長が、
「頼む。」
 一時的に2倍程度に巨大化した部長たちは
ニショブの上に乗っている巨大な指を少し動かし、彼を助け出した。
しかしその直後大ちゃんが、
「大変だ!」
 もう一方の手が、部長たちの方に近づいてきていたのだ。 





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