25話・夏代の一人芝居について(寅次郎さん:2000・6・25)
雑居時代を何度かくりかえして見ていると、どう解釈していいのか判らず、気になってしまう部分が何個所かあります。いろいろ考えて、こうなのかな、と自分なりの答えが思い浮かぶこともあれば、なかなうまくいかないこともあります。nisimurasanさんとsueha_o_monoさんがヤフーのトピックス(246、247)で、(25)「やっちゃった!?」について書かれている中で、話し合われている問題もその一つです。
(246)sueha_o_mono
>一般的評価の高い「やっちゃった!?」見所は色々あると思いますが、私の場合はこれです。日頃は献身的な夏代の心に潜む疑問、「家族とは血の繋がった他人?」。また恋愛に対しても同様に、「騙し合い」だと言う様な一種歪んだ気持ちが、家族によって素直な心を取り戻していく・・・。最後のシーンはまさにそんな晴々した演出でした。
(中略)
>一つ疑問が。
ラブシーンの後の、「でもいいや、まだ全部終わったわけじゃいし。」とはどういう意味だったのでしょうか?昔から意味が良く解りません。
(247)nisimurasann
>これは単純に夏代のひとり芝居がまだ全部終わっていないという意味でしょう。(十一との偽の結婚によって春子を焦らせ、式を予定どうり挙げさせようという夏代の芝居が。)彼女のシナリオとして十一をその気にさせたまではよかったが、キスを奪われるところまでは予測できなかった。しかし、春子を挙式に向かわせる芝居としては、それは突発的な事故として翌朝十一との偽の結婚を家族に報告し、それによって春子を焦らせ、挙式を思い直させることこそが大切なんだ、とそういうことでしょう。
以上の件について、私の意見を述べさせてもらいます。
夏代の科白の少し前の部分を加えると、以下のようになります。
「私としたことが.....。でもいいや、まだ全部終わったわけじゃないし。」
この夏代の言葉は、単に一人芝居が終わっていない、というだけでなく、彼女が十一にキスを奪われたことに対して、あとで「お返し」(所期の目的を達成した後に、婚約を破棄することで、浮かれている十一の鼻をあかしてやること)をしてやることを想定して、「でもいいや」以下のことを云っているのではないでしょうか?
しかし、これは、必ずしも「恋愛に対しても同様に、『騙し合い』だと言う様な一種歪んだ気持ち」
によるものではなくて、これを云う時の夏代の嬉しそうな表情や、ラストの
「私、もう一度誑かそうと思ってきたの。
...........
だって素適なことじゃない、好きな人にだまされるって。
愛だとか恋だとかそんな目に見えないものが本当にあるかどうかわから
ないのに。」
という言葉とを考え合わせると、夏代の一種独特な「恋の駆引き」と取るのが妥当であるように思えます。この時点では夏代の一人芝居には、二重の意味が込められていることになります。一つには、姉の挙式の延期を思い直させること、もう一つには、キスを奪われたことへの仕返しです。
<それでは、春子の結婚式が予定通りだと知った時に、夏代は何故あのように動揺したのか?十一に婚約破棄の電話をした時何故あんなに悲しげだったのか?もともと一人芝居で十一を騙すつもりでいたのだし、姉の式も彼女の願いどおりに行われることになったのに。>
姉の為に一人芝居をして、十一を騙すつもりであったとはいえ、そこで語られた内容は夏代自身が打ち明けたくても、明かせなかった彼への想いであったことは明白です。そうであってみれば、その時の夏代の心理は、一方で、愛の告白から婚約へと事態が進展して幸せを感じているが、他方で、この状態は「仮のもの」であって、いずれ婚約破棄という形で終止符を打たねばならない、という葛藤の中にあった筈です。そうした時に、春子が気楽な調子で、結婚延期をあっさり否定してしまうのを見た夏代は、常に家族のことを心配し、苦労しているいる自分のあり方に、深刻な疑問、懐疑を抱いてしまったと思われます。家族の者たちは夏代の苦労を誰も理解してくれず、自分とは関係ないところで各々が幸せになっていく。
「家族って何だろうって、時々考えちゃうことがあるの。
結局、血の繋 がった他人じゃないかって。
それが一つの家に雑居してるだけかもしれないて気がするんだけど。」
先に「夏代の家出」で扱われた問題がより鋭い形でここに再現されています。勿論、この夏代の状態は、父や姉妹達の夏代に対する思いを知ることで解決されるわけで、結局25話は、家族愛の故に苦しむ夏代が、家族愛によって救われことで、十一との恋が実る、と言う構図になっていると理解できます。夏代の十一に対する気持ちは、姉の幸せを願う気持とからまって、動揺し、分裂し、とても複雑な様相を呈しています。
「夕べの女は私じゃなかったの。別の人間がした約束を私が守ることないワ。」
この間の出来事はQで信が稲葉先生に語った夏代の複雑な性格をこれ以上ない程に見事に描いています。それだけに、一回見ただけでは、なかなか各部分の関連が解らないし、逆に何回見ても飽きがこないものになっています。
最後にラストでの夏代の言葉の解釈の問題が残ります。
<何故「好きな人にだまされるって素適なこと」なのか? 夏代は何を言おうとしているのか?>
しかし以上のように見てくれば、答えはおのずと明らかです。夏代の言いたかったのは、
「騙し、騙される恋のかけ引きを通じて、お互いの本当の気持ちが解り合えるようになる」
だから、素適だと考えているのでしょう。
*nisimurasanさん並びにsueha_o_monoさんへ
お二人の意見を勝手にあげつらい、言いたいことを言ってしまった失礼、お詫びします。
お二人のヤフーのトピックスのコメント、「雑居」の理解にとても役立ち、示唆に富むものばかりです。特にsueha_o_monoさんの(25)に対する、着眼点と、この回全体に対する理解は基本的に私のものと同じではないかと思っています。
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