文:のぶりん さん

第1回・石坂洋次郎と「雑居時代」

第2回・「陽のあたる坂道」原作と日活映画
第3回・再び「陽のあたる雑居論」 第4回・松木ひろしさんと石坂洋次郎

 

第2回・「陽のあたる坂道」原作と1958年日活映画作品

 

「陽のあたる坂道」 原作と1958年日活映画作品のぶりんさん:2001・5・12)


 田坂具隆監督の「陽のあたる坂道」を何度か見たことがあります。

最後に見たのが何年もまえのことなので多少記憶があやふやなところもありますが、寅次郎さんの書き込みを読んで、田坂監督の映画作品の方が石坂洋次郎の原作よりも一層「雑居時代」に似ているということに気がつきました。

原作では、みどりの昔の恋人で、玉吉の親友であり、しかもたか子の大学の先生である山川が重要な役割をはたしているのですが、その山川やバーのマダム原田雪子は映画には登場しません。したがって、山川が絡んでいる以下のようなエピソード:

・玉吉が親友の山川からみどりを奪い取って結婚した過去のいきさつ。
・みどりが結婚後も山川と強い信頼関係で結ばれているのが目障りなった玉吉がその絆を断ち切るため、自分自身がものにしようとしていたバーのママ原田雪子をあえて山川に紹介する玉吉のたくらみ。
・雄吉と関係のあった川上ゆり子が原田雪子の店に勤めるようになり、玉吉・雄吉親子にきついお灸がすえられること。(これ以上書くとネタバレになってしまいますので、この辺でやめておきます。)

など「人間性の暗くドロドロした部分」がカットされています。そのため、この映画は信次とたか子の青春ラブストーリーの色彩が強くなり、十一と夏代との恋の成就が中心テーマである「雑居時代」にかなり近づいてきます。「雑居時代」ファンの方ならすごく楽しめる映画だと思います。

(寅次郎さんへ このカットの部分以外は、映画の人物設定は原作通りです。みどりは後妻ではありません。先の書き込みでは血がつながっていない母親を強調するため、「継母」という言葉を使用しました。)

一方では、これらのいきさつがなくなったため、最後の場面で信次とたか子に対して雄吉がおこなった予想外のアドバイスが説得力を失ってしまい、すこしがっかりしたのをおぼえています。でも、映画化にあたってこのようなことは仕方がないのでしょう。なにしろ、このようなカットがされたのにもかかわらず3時間20分の大作なのですから...

1968年、「陽のあたる坂道」はNHKでドラマ化されてます。13回にわたって放映されていて、このときは、原作すべてがドラマ化されてました。「陽のあたる坂道」はとても「長編」ですので、これくらいの時間がなければ無理なのでしょう。

 
 
陽のあたる坂道

製作=東宝映画 配給=東宝
1975.11.01 
3,171m 116分 カラー シネマスコープ


製作 ................  田中収 津島平吉
企画 ................  東宝企画
協力 ................  東宝芸能
監督 ................  吉松安弘
助監督 ................  山下賢章
脚本 ................  池田一朗
原作 ................  石坂洋次郎
撮影 ................  上田正治
音楽 ................  小野崎孝輔
美術 ................  村木忍
録音 ................  矢野口文雄
照明 ................  羽田昭三
編集 ................  黒岩義民
出演 ................  三浦友和 檀ふみ 浅田美代子 池部良 新珠三千代 松崎登 山本伸吾
 

石坂洋次郎 いしざか・ようじろう=1900−86年)

青森県弘前市出身で、同郷の作家、葛西善蔵に師事した。弘前高女、横手高女で教えていたが、1938年(昭和13年)に小説「若い人」が右翼団体から不敬罪で告訴され退職。上京して作家生活に入り、戦後、「青い山脈」「陽のあたる坂道」などで流行作家として活躍した。