資料提供:jack11jack さん

映人社のドラマ(1981年7月号)という雑誌で当時、「池中玄太80キロ」と「玉ねぎむいたら」を執筆中だった松木ひろしさんへの、仕事場訪問と題した、ロングインタビュー物です。
(文:jack11jackさん)


松木ひろしさんインタビュー(映人社/ドラマ(1981年7月号)より)

--その時からコメディが多かったですか?

ええ、書いた芝居もブール・バールだったし、見る映画もルビッチ、クレール、ビリーワイルダーやユニバーサルコメディ。しゃれたああいう系統の大人の喜劇が好きだったんです。日本では、飯沢(匡)先生のものとか...。
僕は、ストレートにぶつけるドラマっていうのはあまり好きじゃないんです。台辞一つでも、横っちょから見るとか裏からひっくり返すとか、変化球専門っていうんですかね、そうなると、やっぱりコメディってことになっちゃうんですね。
僕のはシチュエーションコメディ楽しいドラマを作りたい。
僕のは要するにシチュエーションコメディ。展開の発想が一番先でテーマはそのあと。発想がおもしろくないと自分でも乗らないんです。
普通のホームドラマでも、お父さんがいてお母さんがいて子供がいてっていうんじゃなくて、家庭っていうのは、母親の要素が一番強いんだから、じゃあ逆に母親が居なかったらどうなるか...そういう消去法とか、世間も男も何でも知っている女がカマトトで、逆に何も知らない男が、わざと悪ぶって、その二人があったらどうなるか...だとか。(バス・ストップ)その種の単純な発想です。
「玄太」の場合も、コブつきの女をもらって、その女が死んじゃって、他人の子供だけ残ったらどうなるだろっていう、その程度の単純な発想なんですけどね。それと、演出の冠(石橋)チャンのいう、父親が見直されてきた時代...そういうものと合わさって出来たんです。あとは人物設定ですね。
僕の主義として、見終わって感動したあとに残るとか、その芝居見て人生変わったとか、そういうの苦手なんです。(笑)やっぱり楽しいドラマを作りたい。テーマは僕は第二主義的になっちゃう。それよりも話のおもしろさ、そこがテレビのホームドラマとちょっと合ったのかもしれない。ただ、それが失敗すると軽くなっちゃうんだな。自分でもどうにも動かせなくなっしゃって流れちゃうんですよね。それだけは気を付けないといけないですよね。

--シナリオを書く上で心がけていることは?

昔は映画を見ても芝居を見てもシビレたセリフがあるとメモしてたんですよ。僕はやっぱりセリフが自分の作品の命だと思っているから、しゃれた会話って好きなんです。語尾一つ、"ます"でにするか"ました"にするのか一時間ぐあい考えることがある。それで必ず自分でしゃべってみますね、一人でブツブツ。役者さんが"松ちゃんのホンはセリフが言いやすいよ"って言ってくれるのが一番嬉しいです。

--構成はどのように...

一応、ハコ(箱書)は作ります。昔、東宝の映画を初めて書いたときに、プロデューサーからハコ書きを教わったんです。シーンを全部書いて、登場人物は何人で、下位亜はこういうことって、細かく書くんです。紙をつなげて一米以上のもので、その箱作りが大変でね。
テレビの場合は、そんなことやってられないんで簡単にシーンと登場人物の出入りを矢印で書くぐらいの、ペラで二、三枚のコンテを作って書いてます。作らないで書く人もいるけど、僕はやっぱり一応ラストシーンまで考えないとちょっと書けないです。書きだして途中でもう一回考え直すこともありますね、書いているうちに変わっちゃう...不思議なもんで連続(ドラマ)ってのは、こっちの意志と違って登場人物が勝手に動き出すのね、不思議だね、あれは-----。
今はテレビよりも芝居を書きたいと思っている


中略


--今後、手がけてみたいお仕事は?

最終的には、小説書いてみたいんです。テレビってのはあんまり制約が多すぎるんですよね、一時間以内にはめるとか、セットはこれにしろとか役者は誰にしろとか...。一番制約のないのは小説ですからね、やっぱり活字にして、死んだ後に何か皮を残したいってことはあるんですよね。
当面は、しばらくやってませんから芝居を書きたいですね。テレビだと反応がないから。

--この秋テレビのご予定は?

単発が二本きてますけど、連続は、まだハッキリきまってません。(1981/5/21)

 
 
2001年7月1日。テツマニアさんからの資料(石立ー松木対談)の興奮さめやらぬうちに、jack11jack さんからこんな書き込みをいただきました。

――−こんにちは。
休暇が取れたわけではないのですが、段ボールをひっくり返して昔の雑誌を引っぱり出してきました。映人社のドラマ(1981年7月号)という雑誌で当時、「池中玄太80キロ」と「玉ねぎむいたら」を執筆中だった松木ひろしさんへの、仕事場訪問と題した、ロングインタビュー物です。内容はだいたい4部構成になっていて昔の家と、今の家についてシナリオライターになるまでのお話ご自分のドラマについて今後についてに分かれています。
スペースもあるので、勝手にですが後半のドラマについてと今後についての抜粋をsubmitしたいと思います。

松木氏の作品に対する姿勢がよくわかる非常に興味深いものですが、残念ながら掲示板には字数制限があるため、分けてかかなければならない。また、新しい書き込みが上にきてしまうので通して読む場合順序が逆になってしまう。第一書き込みが増えるにしたがって下に沈んでしまうため、機会を逃した人の目にふれることなくすんでしまう――私はこの貴重な資料をテツマニアさんのものと同じ形で残したいと思いました。

ただ、まだjack11jack さんの了承を得ているわけではありませんので、要請があれば即座に削除します。松木氏に興味のある方は早めにHDにコピーされることをお勧めします。

 
 

松木ひろし (Matuki Hirosi:まつきひろし)

シチュエーションコメディを得意とするテレビ脚本家、舞台作家。
「おひかえあそばせ」「気になる嫁さん」「パパと呼ばないで」「雑居時代」「水もれ甲介」「気まぐれ天使」「気まぐれ本格派」など一連の石立鉄男主演青春ホームコメディや西田敏彦の「池中玄太80キロ」が有名。
他に、沢口靖子と陣内孝則の「結婚物語」。
石坂浩二とマリアンの「俺はご先祖様」。
「敵か味方か3対3」「聖女房」「ある日、突然スパゲティ」など傑作コメディ多数。
戯曲の傑作「娑婆に脱帽」は日本戯曲全集に収録されている。(j.o)