資料提供:テツマニアさん

「気まぐれ天使」開始直後の'76.10.17.付読売新聞日曜版に、二人の対談が掲載されています。松木さんの発想やそれに対する石立さんの考えが伺えて、なかなか味の有る対談ですから、図書館に行ったついでに一度読んでみて下さい。公式の場での対談としては、唯一の物と思います。 (文:テツマニアさん)


石立・松木対談(76.10.17.付読売新聞日曜版より)

石立  「よく言うでしょ。よろしくお願いしますって。芝居に対する考え方が違うのにお願いはないですよ。お願いされたくない(笑)と思う事、多いんですよ」

松木  「先日もやったなあ、森田君と。血の雨が降るか(笑)と楽しみにしてたのに」

石立  「またオーバーな(笑)でも、夜明けの刑事おりたのもその辺の心境なんです。本気で役作り考えたのは、始めの三本ぐらいまでかな。後は二日酔いだろうが何だろうがセリフをはめ込んでればいい。こういう流れ作業の芝居って、やりきれない」

松木  「わかるわかる。鉄ちゃんの場合、傍若無人ぶりを評価(笑)して、押しの芝居をさせたがるけど、本当はデリケートなんだ。引きの中での哀感が実は身上なんだろう。形だけで引き回すのは無理なんだよな。ただし君は乗り始めると周囲を教育する(笑)」

石立  「今度もやっちゃった(笑)大原君が公園で紙芝居見てるシーン。唐突だけど泣いて下さい、と言ったんです。ストーリー外の余白で人間味が出ると、ボクなりの受けの芝居があるんじゃないかと思ったら、監督がやめましょうだって(笑)」

松木  「またホンをいじくろうとしたな(笑)でもね、コメディーとは演者が大まじめに演じているからハタ目におかしい。バカな話といった捨て方では笑いにならない。そこまで話し合う時間が無いのが悲しいよなあ」

石立  「松木さんは、とにかく物事をまともに見ない。日陰でひっそり暮らしそんな中から人間をじーと見てる。こちら側はいかにしてそれをくみ取るか。型通りにやったのでは、つまんないでしょう」

松木  「わかってるじゃないか君は(笑)」

石立  「持ち味にこだわるのボクにもわかります。でも味気ないなあ。ボクなんか自分が世間に出ても通用する普通の人間なんだと信じててこれがささやかな支えになってる」

松木  「ドラマは俳優の持ち味に依存する度合いが強い。壊したくない、そんな考え方が一般的なんだ。作家だって第一話のホンを渡して演出や俳優で肉付けされるとその事実を追っかける羽目になる。ボクなどは結局面白ければいい、という割り切りだけどね。その為のセリフだけは大切にしたい」

石立  「松木さんのセリフは転がるんですね。御自分でしゃべってみるんですか?」

松木  「そうじゃないよ。僕のホン作りって平凡なんだ。波乱万丈の設定も好まないし妙な主張も嫌なんだ。平板な中での会話のシャレが好きで語尾やカット変りのセリフに意味を持たせてる。そこで人間を描こうとしているんだから、苦心のところでアドリブやられるとカッーとする(笑)」

石立  「すいません(笑)」

松木  「いや冗談、冗談。僕はめったに怒らないよ(笑)」

石立  「熟慮断行しての一語がアドリブですね。思い上がってのアドリブてまずいかな(笑)」

松木  「守らなければならない一線というとオーバーだけど常識の線では色々考えるよ。気が弱いから大声は立てないけどね(笑)ところで鉄ちゃん、最近とみに成長したってね(笑)変貌ぶりの原因は何なの?」

石立  「唯唯諾諾ではダメになるって事ですね。仕事を断れば考える時間も出てくるし、連続して5年ほど(笑)疑問を持ってるとそれが突如として形になるみたい。それにしても今回はホンの上がりが早いですね(笑)これも変貌かな(笑)」

松木  「筆が早いというヘンな自信あるもんだから、ギリギリまで書かないんだ。そばで仕事する機会の多かった菊田一夫さんのマネッコ(笑)最近は他に仕事無いから、トントンとやってます。俳優も作家も乱作はいけません(笑)」

 
 
2001年6月17日。テツマニアさんから「石立ー松木対談」と題する以下のような書き込みをいただきました。

――−「気まぐれ天使」開始直後の'76.10.17.付読売新聞日曜版に、二人の対談が掲載されています。松木さんの発想やそれに対する石立さんの考えが伺えて、なかなか味の有る対談ですから、図書館に行ったついでに一度読んでみて下さい。公式の場での対談としては、唯一の物と思います。

私は狂喜しました。この情報を自分の「雑居時代」ノートに記し、図書館へ向かえる日を指折り数えました。しかし、どうしても興奮して眠ることができない。私はテツマニアさんにこう返信しました。

――−・・・ちょっとだけでも内容を教えていただくわけにはいかないでしょうか。
おしゃるように図書館に行けばよいのでしょうが・・・なかなか機会が・・・なんだか気になって眠れません。(笑)

そうして私の不躾な書き込みに対してテツマニアさんが送ってくださったのが、上記対談の抜粋です。

感動しました。

>言葉の端端から2人の日頃の関係が浮かんできませんか?

テツマニアさんが書かれている、まさにその通りだと思いました。等身大の松木氏と石立氏がまさにそこで会話しているような.・・・。
私はテツマニアさんのその書き込みをHDにコピーし、保存しました。
「雑居時代」作者の、繊細にして強靭な精神の秘密が、少し垣間見えたように思えたからです。

テツマニアさんの了承を得て、この貴重な資料を、今またこのような形で残すことができて、本当によかったと思っています。HPを訪れる石立・松木ファンにとって、ふたりを理解するとば口になるのではないかと思うのです。

 
 
石立鉄男(いしだててつお)

俳優。高校卒業の1961年春、俳優座養成所を受け13期生として入所。。1970年、文学座を退団。1970年、「おくさまは18歳」(大映テレビ室制作)で一躍人気スターとなる。その後、「パパと呼ばないで」、「水もれ甲介」、「雑居時代」(いずれもユニオン映画制作)などのホームドラマの主演をし、その人情味あふれるキャラクターで好評を得る。劇場用映画においては銀幕デビュー作「血とダイヤモンド」(1964年、宝塚映画)、初主演作「殺人者」(1966年、大映)、彼の代表作ともいわれる「愛の渇き」(1967年、日活)などテレビとは違った役どころを演じてみせた。


松木ひろし (Matuki Hirosi:まつきひろし)

シチュエーションコメディを得意とするテレビ脚本家、舞台作家。
「おひかえあそばせ」「気になる嫁さん」「パパと呼ばないで」「雑居時代」「水もれ甲介」「気まぐれ天使」「気まぐれ本格派」など一連の石立鉄男主演青春ホームコメディや西田敏彦の「池中玄太80キロ」が有名。
他に、沢口靖子と陣内孝則の「結婚物語」。
石坂浩二とマリアンの「俺はご先祖様」。
「敵か味方か3対3」「聖女房」「ある日、突然スパゲティ」など傑作コメディ多数。
戯曲の傑作「娑婆に脱帽」は日本戯曲全集に収録されている。(j.o)