冬富士登山者のための気象

長田尾根の安全策は富士山測候所の無人化に伴い撤去を開始しています。8合目から成就ヶ岳の撤去は終了しました。ご注意ください。

あなたはこの氷を見て安心して歩けますか?私も23年歩いてますがやっぱり不安です。チョッと吹かれたらイっちゃいます。
さあ一緒に冬の富士山について考えましょう。(自分の気持ちを引き締めるために作りました。)

風

1.富士山てどんな形をしていますか? →丸い・・・円錐形

2.冬はどんな風が吹きますか?     →  冬型になると北西風・・・西風・・・低気圧が来ると南西風

これがとっても大事な事なんです。
山頂を円錐型の頂点として自分の登る登山ルートの向きを考えて下さい。
吉田口・・北東、須走口・・東、御殿場口・・南東、富士宮口・・南となりますね。
たとえば冬型の北西風が当たるとどうでしょう?
吉田口・・右から吹きっぱなしの強風。
須走口・・下部は穏やかだがだんだん強くなり、上部は合流する吉田口と同じ右からの強風。
御殿場口・・比較的穏やかだが突風に注意。
富士宮口・・左から吹きっぱなしの強風。
つまり同一の風向、風速でも自分の登るルートによって受ける風向、風速は異なる!
他人と比較するのはナンセンスなのですが測候所の職員の場合、御殿場口が通勤ルートになっていて、5合5勺から上は安全柵と呼ばれる鉄柵が頂上の測候所まで続いています。(無人化に伴い撤去を開始してます)8合目に避難小屋(一般使用不可)がありそこから頂上までの間に避難所と呼ばれる石垣の囲い(風除け)が5ヶ所あります。そのような万全な対策を施しても平均風速が北西風で20m、西風で17m、西南西風で14m、で出発をあきらめます。南西風なら微風でもまず出発しません(天候が悪化してくる、湿り気があり凍傷になる等)。

3..強い寒気や冬型が持続する場では?→気象情報は出ていませんか?(気圧配置の予想を参考に!)→ 気象庁HP全国の気象情報

4.昨日からどんな風が吹いていましたか?→  気象庁ホームページ → ウインドプロファイラ →  河口湖ウィンドプロファイラ
           山頂の気温や気圧は?→ 気象庁ホームページ → 富士山頂のデータ

5.天気図は見ましたか?       →      気象庁ホームページ → 天気図

6.予想天気図(特に風)を見ましたか?  →  HBC北海道放送 → 天気 → 専門天気図 → 日本850hps風・相当温位12.24.36.48時間予想図と検索 
最低限冬富士に登る前には確認しよう。
そして、気圧配置や風の変化を予想し、昨日から今日にかけての実況値から明日の風を予想する。
予想に反して強い風に吹かれる事がある。しかしやる事は、慌てずに自分の置かれている状況を確認し最善(生きて帰るための)を尽くすのみ!
登りながら「風が強くなったらどこをどうやって逃げよう」と言う心構えは必要です。

アイスバーン

アイスバーンは形成される要因に分けると、サンクラストウインドクラストレインクラストとあります。

サンクラスト→春に比較的大きく発達する。モナカになる事も有り、周辺には柔らかい部分も残りルートを選べば回避出来る事が多い。

ウインドクラスト→風と雪が有ればいつでも出来る。何日か風が強く吹いて飛ぶ雪が無くなり雪煙消えてくると発達する。ザラメに磨かれたウインドクラストは泣きたくなる位硬く、白く光沢の無い斜面が一面に広がっている。状況によっては登頂を諦める事も考える。

レインクラスト→雨によるアイスバーンで暖冬の年は長く続き、逃げ場が無いほど広がる。雨が多く筋状に表面に変化が有る時は、凸部の氷が薄く、凹部の氷が厚いことがある。凸部を強く踏み込んで踏み抜ければラッキーだ。一面に発達していれば登頂は出来ない(どんなベテランでもリスクが生じる)。

雪は絶えず変化していく。新雪→しまり雪→ザラメ雪と変わるように絶望的なアイスバーンも日射により少しづつだが昇華する。シーズンを通してアイスバーンということは無くいつかは解ける。
危険は自分の体で感じることが大切で、数字や他人の行動にとらわれる事無く自分が危険と感じたら危険なのです。勇気を出して引き返しましょう。

気圧、気温

意外な強敵はこれ! 冬の富士山は4000mだ!
8月の平均気圧は648.3hPsだが、2月の平均は626.2hPsでその差は22.1hps有る。単純に高度に相対すると221m、つまり夏は3776mの富士山は気圧換算すると冬3997mで、約4000mになってしまう。冬型が強いときなどは600hPs近くまで下がることがある。この変化には山頂に勤務していて順化が出来ている者でも頭痛がするほどだ。

気温は年平均−6.4℃で8月が最も高く、1月が最も低い。月平均が0℃以上になるのは6月から9月までの4ヶ月間だけである。最低気温が0℃以下になる冬日の初日は9月16日、終日は6月27日である。この終日〜初日間は夏山登山シーズンにあたり、わりあい軽装で登下山できる。(実際は梅雨明けの7月中旬から山小屋の閉まる8月下旬まで)最高気温が0℃以下になる真冬日の初日は10月15日、終日は5月26日であり、特にその期間は、冬山の装備が必要になる。しかしその実際は、その年の気候の傾向、積雪等の状況により前後する。

雪崩

富士山の雪崩は際立った特徴を持っていて、山体の北から南までの東側に多い。
新雪雪崩は頂上付近の沢状地形に多く、高度は6合目以上に発生し、発生時期は積雪初期にピークがある。
スラッシュ雪崩はおもに富士山東半分に特に多く発生し、
1〜2月頃は2〜3合目付近から、3〜4月、11〜12月頃は6合目付近から発生する。
積雪の下に出来るスコリアの凍結層が大規模な発生のカギになる。
雪崩発生時の気象はいずれも顕著な低気圧が存在している場合が多い。
要約すると

新雪雪崩(表層雪崩)
@10月から5月までの間に起こり、11〜12月に多く、4月頃もやや多い。
A顕著な低気圧が太平洋岸を通過し、降雪により積雪が多く不安定な積雪状態にある。(このとき人為的な要因によっても発生する)
B低気圧の中心が富士山の南を通過した直後に発生のピークをむかえる。

スラッシュ雪崩(底雪崩、稀にずれ面が積雪内で起こり表層雪崩)
@11〜5月頃発生し、3月頃に多く1〜2月は低所から、4〜5月、11〜12月頃は高所から起きる。
A顕著な低気圧が富士山の北側を通過し、富士山は暖域にあり、雪崩発生地点では雨、御殿場の降水量も多い。
B山頂の気温が高極となり、低気圧の中心が富士山の北を通過する直前が発生のピークになる。

登山者以外に人的被害が発生しにくい表層雪崩に対してスラッシュ雪崩れは規模、発生場所、条件が重なれば巨大土石流にも発展し甚大な被害が考えられる。最悪の場合被害想定域は富士山ハザードマップの土石流想定域と等しいと考えられる。
平成16年12月5日の富士スバルライン土砂災害は山頂付近で発生したスラッシュがトリガーとなり雪の無い斜面を数キロ下り自動車数台を巻き込んだ。

富士山測候所

冬季無人化に伴い平成16年9月30日をもって完全閉鎖されました。
避難スペースも有りません。
建物は機密性が高く空調が停止状態で中に入ると酸欠の恐れがあります。
緊急避難で壊して入ってもリスクがあります。

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