Counter 偽旅団シナリオ


<民宿『とらぶる☆メ〜カ〜』> 偽旅団シナリオ 『遠き日の誓い』中編(1)



心に降る雨にただ心が濡れていた
冷えた心温める思いは、現か、幻か。
その答えすら見出せぬまま
僕らは今を生きている。
暗い闇の中。
光差す道を目指して。


■『舞台上のピエロ』
眼前の少女は変わらぬ笑みを浮かべている。
『―…でも…そんなに嫌いなら…自分を消しちゃえばいいのに』
少女の言葉。それは紛れもなくウィンを切り裂いた。深く。鋭く――その心を。
それは認めるわけにはいかない、隠された思い。
傷つける事が恐い。だけど、それ以上に傷つく事を恐れている自分が。とても醜い、と。そう感じたと同時に湧き上がった思い。
それは逃げるための口上である事すら知っている。
そう。彼はすべてを知っているのだ。所詮この世は矛盾で出来ていて。その矛盾に気づいてしまえば、すべてを拒絶したくなる事も。そして、その後に残る絶望感と悲壮感を。
そんな自分に救える者などなく。
道化としてしか笑えぬ自分でも必要とされているから。ただ誰も居ない舞台で演じているだけ。
―皆が求めてくれるであろう“ウィン・フォルス”という男を。
ゆえに、男には自我が無く…道化。
自我すら道化であるのならば、本当の痛みなど感じる事もなく。消え逝く時は、ただ静かに舞台を去る事が出来るだろうから。
「―…それが貴方の真実」
少女が微笑む。

さあ。そろそろ始めましょうか。
貴方は仮面をつけて独り舞台上で微笑むピエロ。
存分に道化を演じなさいな?
なに、難しい事じゃないわ。ただ貴方は普段と同じように、硝子越しに皆を見ている自分という舞台を演じるだけ。
3文芝居ならば、笑ってあげる。
パントマイムならば、見えない鏡越しにおどけてあげる。
だけど。

―悲劇を演じるつもりならば、貴方はここで死ぬ。


「―……やはり彼奴は」
水晶の浮かび上がるウィンの姿。それを見ていた老師が渋面で言う。
辛い過去を照らし出す森であるはずが、過去を映し出さずにいる現状。それはつまり―。
「……今が辛い、という事でしょうね」
老師とは裏腹にトウカは表情を変えず、老師に答える。
「主…こうなると分かっておったな…」
重い声。それはこの森の危険性を一番理解しているはずのトウカが発した、森を軽視したような発言に老師は憤りを感じたゆえの言葉。
「否定はしませんよ」
それでもトウカは表情を変えずに答える。
「だが…肯定もしません」
トウカが決意に満ちた瞳で答える。
「本当に大切なモノを失い、彼がすべてを拒絶する前に…なんらかの答えが必要でしょう」
もちろん、この森が答えになるなんて事はトウカも考えていない。これは分の悪い賭けなのだ。大切なモノを今すぐに失うか、それとも失わずにいられる時間を延ばす事ができるかどうか。
「この道化が…」
老師はトウカの言葉に項垂れ、そう呟いたのだった…。

■『継がれしモノ』
辺境の名も無い集落で、これといった特徴は無い平凡な夫婦の長男として生まれる。
だが、突然の賊の襲来によって両親は他界。
孤児になったところに、偶然か―必然か。通りかけた元・冒険者の老人―カスラに拾われ育てられた。
老人との生活は少し…いや、かなり普通とは違っていた。
物心付いた時から朝昼晩の飯時には冷酒が出てきたし、どんな時だろうと気を抜くと後ろから平手打ちが飛んできた。
早朝3時には起こされ朝の鍛錬が義務付けられ、食事以外の全ての家事は少年の仕事となった。たまに一泡吹かせようと、老人と手合わせすると、カスる事も無く叩きのめされた。負けた次の日に飯抜きだったのは言うまでも無い。
赤子が老人に拾われ14年が経った時の事。その日常も突然に崩れた。
早朝の鍛錬を終え、家に帰った少年は病によって血の海の中に倒れる師を見た。
そして少年へと引き継がれた師の名と刀。
だが、少年は一言。
「俺は……まだアンタに勝ってない……何時か生き返って来い。待っている」
「…それまでアンタの名と刀は俺が預かっておいてやる」
涙は見せずに、死に逝く師にそう伝える。不可能だという事は重々承知だ。だが、少年にとってそれは大切な約束だった。
そして振り返らずに少年は―カスラは家を出たのだった。

「……変らぬの」
刀の構えた師が微笑む。その笑みは、いつか見た師の姿そのものだった。
「―…アンタ…記憶があるのか」
カスラと呼ばれていた、今は名も無き冒険者が師の言葉に顔を渋める。いくら幻だといえども、記憶があるなんて考えもしていなかった。そして何より驚いた事は、老人は敵ではなく、純粋に己の師として自分と対峙している。
「性質の悪い幻だな―…」
「…主に言われると釈然とせんものがあるのぉ」
緊張感の無い声色で、互いに言葉を交わす。思わず漏れる失笑めいた笑い。
だが―。
「…初撃に全力を込める。奥義の名は―電刃衝」
次の瞬間、鋭い眼光で師を見抜き、己の意思を伝える。記憶があるならば尚更の事だ。弟子として…師に挑む。
「………是非もあらず」
腰を据えて、師が構える。短き会話。だが。そこにはすべてがあった。
「…いざ」
「尋常に」
「「勝負――!!」」
駆け出す二つの影。影が交わり、そして互いの刀が互いを切り裂かんと交差した―!!
そこにはすでに築き上げた屍は無く。
ただ妙に、頬を撫でる風が心地よかった事を覚えている―。

■『ユン』
強大な力を持つ紋章術士宗家の嫡男に生まれるも、一族に伝わる特殊な術法を全く使えない『無能』だった。
姓は天照(あまてら)、名は純(じゅん)。
後にユン・リューゲナーメと名乗ることになる少年が生まれた。
戦闘能力に至上の価値を見出す天照一族にとって、強き事こそ美徳、弱き事こそ恥辱。
『能無し』『宗家の出来損ない』『母の胎内に全ての才を置き忘れてきた上澄み』
幼い頃から純は、存在そのものが恥であると言い聞かされてきた。
そして、十二になってから一ヶ月後。純の人生を狂わせた運命の日。
再従妹の少女と戦い、勝った方が時期宗主の地位を約束されるという、方法も単純なら結果も分かり切った儀式―継承の義。
敗北。そして―追放。
強くなりたかった。強くなって、認めてほしかった。狂ったように修行を続けた。何度も死に掛けるまで身体を苛め抜いた。それでも――強くなれなかった。
だが。
「のぼせ上がるな。お前はちょっとケンカが得意なだけの小僧っ子に過ぎんのだ。分不相応な幻想を抱かず、地に足をつけて生きていけ」
奴隷商に売り飛ばされた鉱山で出会った奴隷仲間のリザードマンに言われたこの言葉が、ユンを変えた。
狂おしいほどに追い求めた力も、夢に見ることさえなくなった。
自分に微笑んでくれる人のために生きる――そう思えるようになったのだ…。

繰り出された刃。
ユンは慌てて喉元にあった刃を返し、迫り来る刃を叩き伏せる。
もちろん、そのまま喉を切り裂く方が確実な方法ではあったが、ユンはそれをする事は避けた。
だがそのユンの甘さゆえに出来た隙を、相手が見逃すはずも無く、燐と呼ばれた少女は―。
「―…喰らいなさい」
微笑み、ユンの迎撃すらその反動にし、素早く体を回転させそのエネルギーを刃に乗せ貫く。
“螺旋法”高速で回転させ、その螺旋により相手を射貫く。そしてこれこそが天照一族が最強と呼ばれる所以―!!
前触れはちゃんと感知していた。だが、ユンはそれよりも燐の命を優先させただけの事。
奪う事は容易かった。だが、奪えば己の忌み嫌った一族と同じになる。才能のみを欲し、必要のないものはあっさりと捨てた、あの一族と。
刹那―奔る閃光。
「よくぞ避けましたね」
土煙の先。貫かれた横腹に手をやりながらも、立っているユンに燐は賞賛の言葉を投げかける。
「…まぁなんとかな」
脂汗を額に浮かべ、ユンは苦笑いを浮かべる。
凛然とした姿で佇む燐の姿はあの頃と変わらず、気品に溢れていた。
「―…なぜ刀を引いたのです」
燐が疑問を口にする。
「純…私を侮辱するつもりですか?」
鋭い殺意を込めて、ユンを睨みつける。タメを要する螺旋法と、タメを必要とせず、ただ少し力込めれば終わる、互いの攻撃の差。なのに、ユンが傷つき、己が無傷だという結果を選んだユンに、燐は憤りを感じていた。
「別に。お前を超えたなんて思っていないさ」
「…才能の差など関係ないとでも言いたいのですか?それこそ戯言です」
はっきりと。燐が断言する。
「…努力に勝る才はない、とまでは言わないさ。才能がない奴には決して届かない領域だってある」
ユンはそう言って。
「けど、本気だったらそんなの気にする余裕なんてねえんだよ」
「最高のかっこよさってのはな。決して倒れないことじゃない。何度倒れようがその度に起き上がれるって事だ」
微笑んだ。
その答えをどう捉えたのだろうか。燐は静かに溜め息をついて。
「…そうですか」
そう言った瞬間。視界から消えた燐はユンの懐に潜り込んでいた。そのまま足を払い、倒れたユンを遥か上から覗き込む。
そして素早くユンに座り込むようにその膝で両手を封じ、仰向けになったユンの喉元に手にした刃を突きつける。
「……少々戯れが過ぎました。私はこの森に幻として招待された生きた御身ですので、些か時間にゆとりが御座いません。純、貴方とはここでお別れです」
「…招待?どういう事だ?」
ユンの疑問に“答える義理は御座いません”とだけ告げ、燐はその刃に力を込める。 そして―。
燐が黙ってその場に立ち上がる。
ユンの頬を掠め、地面に突き刺さった武器を手にして。
「…残念です」
溜め息混じりに呟いた。
「私が軽蔑していた純ならば。あの頃のようにただ力を欲するだけの存在だったのなら。その驕りと共に貴方を消そうと考えていたのですが―」

―貴方は今“天照 純”では無く。ユン・リューゲナーメとして存在しているのですね

失望と憧れ。そんな様々な想いが入り混じったような、複雑な表情を浮かべ。燐は静かに立ち上がる。
そして去ろうとする燐にユンが一言。

―常識も現界も無視して、死ぬ手前までやっても駄目だったら、その時初めて諦めて別の道を選ぶさ

立ち去る燐の後姿を見送る。

―そうですか。だから私は純が嫌いだったのかも知れません

振り返らず。燐はその言葉を残して、ユンの前から姿を消したのだった…。

■『孤狼百夜』
五歳の時。孤児院にあった小さな祠にあった狛犬みたいなものに触れたとき、彼女―フェリンの人生が変わった。
感じたのは心が冷やされる不気味な感覚。気づいたときには既にその狛犬は姿を消していた。
そして起こった孤児院の惨劇。
孤児院に在中だった23人全員が死亡。
殺めたのは、他ならぬフェリン自身だった―…。

「…一つ聞きたい」
魔狼が言葉を発す。
「………なんですか?」
フェリンが膝を地に着けながらも答える。その幾度となく繰り返された動作に、魔狼は静かに憤りを露わにして疑問を口にする。
「貴様…なぜ立ち上がる?」
フェリンの姿はすでに満身創痍。肩は己の蛇腹剣によって裂かれ、その動きを止めるために足を貫いた。立ち上がれるはずがない。立ち上がれるはずもない。
だが―。
「…そうですね。諦めが悪いんでしょうね」
フェリンは立ち上がる。ゆっくりと。だが…しっかりとその足で大地を踏みしめて。
「…こんな自分でも、まだ掴めるモノがあると思えますから」
「―……!!」
魔狼は言った。『私の血塗れた手で掴めるものなどありはしない』と。
確かにそれは紛れもない事実。どれほど願ってもこの手はすでに血に染まっているのだから。でも。
「私には…帰りたいと思える場所があるから」
“どんな強さだったらみんなが死ななかったのか”
有耶無耶になってしまった答え。その答えを得るためにこの森へと足を踏み入れた。
私は―きっと。眼前に凛然と佇む、魔狼と…何より自分自身と決着をつけたかった。
過去に縛られ過ぎた弱い自分に終止符を打ちたい。
でもそれは人を殺めたという過去を捨てるのではなく。
戒めとして自分の中に残すために。残せる自分であるように―。
「……それが貴様の弱さだと言っているだろう!!」
手にした蛇腹剣を再びしならせ、魔狼が吠える。蛇がフェリンの肩に再び喰らいつく。
「大切なモノを掴みかけてる…あの場所へ」
喰らいついた蛇をその手でしっかりと掴む。
でも、それは。大切なモノを再びこの手で壊してしまわないように。再び得る事が出来た、大切なモノのために。
「―…ちっ!?」
魔狼が舌打ちする。最早反撃の術は無いと踏んで放った攻撃。だが、フェリンはそれすら意に介さぬように、その動きを奪い―。
「…此処で帰らないと…みんなに…怒られるでしょ?」
微笑んだ。その曇りの無い微笑みに。魔狼は一瞬瞳を奪われる。
それが魔狼にとっては致命的な一瞬だった。フェリンが手にしたナイフをその胸に突き立てる。
己の胸に突き立てられたナイフを、まるで始めてみるモノのようにゆっくり眺め、魔狼は。
「…ふん。やはり貴様は弱いな」
つまらなそうに呟き。

―闇に生きられぬ弱き弧狼ならば、せめて。白き夜を駆けてみせろ

その言葉を残して、魔狼はその場から姿を消した。
傷ついた己の体を支えきれず、フェリンはその場で仰向けに倒れる。
見上げれば、空。
雲の隙間から僅かに漏れた、霧に拡散され淡く幻想的な光がフェリンを照らす。
その先に映し出されるのは、微笑む仲間達。そして―その中で一緒に微笑む自分の姿。
確かに魔狼の言う様に、信頼できる仲間を得た今は、孤独な闇夜の中では生きられない。それが弱さだと言われても仕方がないことかも知れない。
でも―
「皆が照らしてくれる夜なら―…」
それはきっと夜を照らし出す明星達の存在に気がついただけの事。闇の中、月光を求め、空へと牙を向け吠えるだけだった弧狼が、地上の星達の光に照らされて、輝く強さを手に入れたという事。
「駆けられる。たとえ、あの日求めた月を見失っても…。星の輝きならこの胸にあるのだから」
触れる者すべてを傷つける弧狼ではなく。皆を護るための牙を持つ狼へ。
差し込む光に、フェリンは眩しそうに、だが嬉しそうにその瞳を細め、静かに微笑み囁くのだった―…。

■『忍冬(すいかずら)』
イオ7歳。
グドン数対に襲われ、育ての親である叔父が他界。
花摘みに行ったイオと双子の弟・マオが死体を見つける。
叔父が森の中で戦った理由がイオのとある我が侭だったため、それを悟ったイオの精神が異常をきたして感情が消え、更にイオの声が失われる。
それから二年間入院生活をし、最終手段の記憶隠蔽という形を取って驚異的な速さで回復。
イオ12歳。
弟が家出した後、イオは弟を探しに誕生日当日旅に出る。
その途中でイオ曰く「顔はいいけど変な男」と出会い、二人旅をすることに。
指名手配にあったり暴漢に売られそうになったりとするがそれなりに悪くない旅であり、イオは男を大切な存在と思うようになる。
そしてある日事件に巻き込まれ、イオは男と別行動をし、とある巨大組織から没落貴族の女性を護ることになる。
しかし敵数十人の待ち伏せに会い、イオは女性に護られ、女性はイオの目の前で微笑んで死んでしまう。
女性の遺体にしがみ付いて呆然となるイオを敵は笑いながら切り刻み、イオの背は赤く染まっていく。
トドメを刺そうとした瞬間男が助けに現れ、即戦闘。
が、呆然となるイオを人質に取られて男は倒れ付す。
倒れこむ男に駆け寄って泣き叫ぶイオに向かい、「笑え」と言い残して息絶えた。
…その後は、イオもよく覚えていない。

「―…ぁ」
気づいた時にはたくさんの敵の死体と植物の残骸がそこにはあった。そして血まみれで座り込む自分。
何が起こったか―本当は知っていたのかも知れない。でも気づかない振りをしていた。
自分の意思でなく力が暴走した結果だとしても…人を殺めた事には変わりが無いのだから。
「…おねーちゃんに…人を殺して欲しくないなんて言っておいて…ボク…っ…!」
朱色に染まった世界で独り。とめど無く流れる涙を拭おうともせずに。イオはその場で泣き崩れる。
そんな時。ふいに背後から投げかけられた言葉。
「――避けろっ!!イオ!!」
その声に驚きながらもイオは駆り立てられるように、咄嗟に前へと跳ぶ。
そして響く―斬戟音。
先程までイオが泣き崩れていた場所が、破壊されている。
泣き崩れていたはずのイオが、反応出来たのは、警戒を発した声があまりにも懐かしい声だったので驚いたから。
そして。それが剣を振り上げた本人だという事も―イオにとっては衝撃的だった。
「どう、して―…」
目の前に佇むのは、先程死に絶えたはずの“あいつ”。
「…花を召喚しろ。イオ」
「………ぇ?」
あいつがそう言って手にした剣を構える。
「――殺されたくないのならなっ!!」
駆け出す。イオへと向かって。その手にした剣でイオを切り裂くために。
彼は本気だ。だったら…ボクも本気で迎撃しないと、殺される。でも。
「―…いや」
「…………!?」
呟く言葉。
「いや!!もう誰かが死ぬなんて…失うなんて―絶対にいや!!」
武器から手を離し、今度はしっかりと。想いを叫ぶ。
あの時、イオは自分の弱さを呪った。そして思った。誰かに護られたままの自分じゃなくて。全てを護りきれるような―そんな自分になりたいと。
「馬鹿―…野郎っ!!」
でも。男の言葉は。そんな願いすら叶わぬ、辛い現実だった。
「この森に召還された人間は、強制的に相手を殺すように仕組まれてるんだよっ!!」
「―…いや!!」
再び口にする拒絶の言葉。そんな事は知っている。自意識過剰かも知れないが、男がそれ以外の理由で自分に刃を向ける事なんて有り得ないと思うから。
迫る自分を前に、未だに戦闘態勢を取ろうとしないイオに業を煮やしたのか。男はイオに優しすぎる罵声を浴びせる。
「…てめぇには死んで欲しくないって言ってるんだよっ!!」
「――…!!」

脳裏に駆け巡るあいつとの過ごした日々。
―縁があるな、俺たちは。やっぱり仲良くしよう。
そして女の子なら顔が赤くなってしまうんじゃないかと思うほど特上の笑顔でウィンクをして。
モンスターに襲撃され、火の海となった町から救い出してくれた時。
「……ありがとう」純粋に伝えた少し照れくさい言葉に。
「んー、お礼はちゅー一回でいいよ♪」返ってきたふざけた要求。
馬鹿みたいに怒った日々。
馬鹿みたいに…楽しかった日々。
それはもう失われてしまったけど。それでも。君の事を大切に想うから。
そして今、命を投げ出そうとしているボクを本気で叱ってくれた大切な…君だから。
そして気づいた自分自身の思い。
「ボクは、このまんまじゃいけないの。…ボクのせいで倒れた人の…そして殺した人の、ボクに関わった人たちみんなの為に。何より―ボクの為に」
だから――。

雨音が、やけに耳に響く。
男が手にした剣は、イオの衣服の肩部分を少し切った所で止まっていた。
「……サンキューな…イオ」
そう言って男は、手にした剣を手放し、イオに力無くもたれかかる。その腹部には、イオの足元から咲き誇った美しい花が突き刺さっている。
「…やっぱ…むっさいヤローに殺されたってより…惚れた女に殺された方がマシじゃん?」
そう言って微笑む。どうして。こいつはいつもいつも。
イオは空を仰ぐ。流した涙を男に気づかれないように。
「…いつもながら…馬、鹿…だね」
精一杯の強がりを口にする。あいつを抱きしめる形になってほんとによかったとイオはふと思った。こんな涙でぼろぼろの顔なんて…見せられないから。
そんなイオの言葉に。男は少し驚いた表情をしたが、イオの頭を優しく撫でて、ゆっくりと瞳を閉じ、再び微笑んだ。

「―あぁ。イオにはやっぱ笑顔が一番似合うからな。俺は馬鹿にでもなれるさ」

―だから、さ。

―笑え。

再び告げられるあの日の言葉。

―うん。

その一言に込められていた、あいつが伝えたかった言葉、想い。イオはやっと男の言葉に答える事が出来たのだった…。
吐く息が白い。だけど。抱きとめたあいつの体が温かいので、気にはならなかった。
「―…いけ」
あいつが静かに、言い聞かせるように呟く。
「…うん」
涙を拭いて。支えていた体を、そっと壁にもたれさせた。そして―。
「うんっ!!」
向かい合い、精一杯の笑顔で。ボクは答えた。
「よっし。いい笑顔だ!!じゃあお別れのちゅ〜を…」
思いっきり殴る。とりあえず。重傷人だろうが、こいつにはこれぐらいが丁度いい。たぶんだけど…。いつかのように殴ったら涙目だったけど、やっぱり無視する。付き合いきれないので、立ち上がってあいつを置いて歩き出す。
でも。ふと立ち止まり。
「行ってくるよ…大切な人達、護りたいから…」
振り向かずに。自分の想いを伝える。忘れるわけじゃなくて。君を辛い過去になんて…もうしないから。言葉にはせず。その想いを込めて。
「―…ああ。がんばれよ〜」
軽いノリで答える。でも。それがボクにとっては最高の言葉だった。
だから。
「―うん。行ってきます!!」
そう答えて。ボクは走り出す。大切な、皆のところへ。

■『蒼き燕』
「飛燕連撃…奥義!!」
迫り来る眼前の敵に、その手から繰り出された刃を叩きつける。
そして間髪入れずに、白き線を描き、手にした糸を操り、敵を打破する。
だが―。
「参り…ました」
傷つき、動かなくなった右腕を押さえながら、シズクは呟いた。
築き上げられた屍の上。どれ程の時間が過ぎたのだろうか?
すでに感覚すら皆無。その身は満身創痍。だが。眼前には敵、敵、敵。
「無茶…し過ぎました…でしょう…か?」
苦笑いを浮かべる。もっともそんな事は承知の上での行為だったので、後悔などありはしないのだが。
皆は無事に帰って来てくれるだろうか?たぶん無事に帰ってきたら今回の無茶を怒られるだろうが、それでも…笑顔で迎え入れたい。“お帰りなさい”と。
「……諦めたら…もっと怒られますから…もう少し…がんばりましょう」
笑顔で呟く。まだいける。そう言い聞かせながら。
諦めるなんて事は絶対にしない。諦めれば、あの笑顔が二度と見る事が出来ない。それは困る。
「……っ!!」
その手から繰り出される攻撃。だが、無常にもその攻撃は空を切る。
―しまっ…!!
そう感じた瞬間。体を駆け抜ける衝撃。そしてシズクの体は宙を舞った。それが不運なのか、幸運なのか。シズクが落ちた場所は、敵の包囲網から離れた場所。それにより追撃は免れた。
「――痛」
傍にあった木に体を預け、体の状態を確認する。
……拙い。今の一撃で、最後の力を刈り取られたようだ。体が―動かない。
ぼやける視界。強制的な眠りがシズクを襲う。
―困り…ました
だが、頭は冷静だった。緊張感の無い思いに再び漏れる失笑。敵が手にした武器を振り上げるのが見える。シズクはそれを何処か遠くに見て、呟く。
―ごめん…なさい、と。
だが。聞こえた声。
「……アレだな。命に換えられると俺が困る」
「―……ぇ」
ザンッ!!
シズクがその存在に気がつくよりも速く。カスラは敵を斬り伏せる。だが、その右肩は赤く染まっている。
「カスラさん!?怪我をっ!?」
慌てて駆け寄るシズク。先程まで動かなかった体はなぜかすんなり動いてくれた。
「あぁ……死にそうだ…」
「ぇえ!?」
カスラの言葉に慌てふためくシズク。だがカスラは、そんなシズクを横目に飄々とした表情で。
「―…だからおまえも手伝え。俺一人じゃ…疲れるだけだ…」
そう言って群がる敵を指差す。カスラの言葉に、シズクは一瞬呆然としたが、すぐに笑顔になって。
「―…はいっ!!」
元気良く答えた。駆け出す2人。
シズクの姿に微笑み、カスラはついさき程までの師との会話を思い出していた。

交差した互いの影。勝負は…決した。
次の瞬間。名も無き冒険者の男の右肩から鮮血が滴り落ちる。
「…………最後に質問していいか?」
右肩を押さえる事すらせず、剣を収め、振り向かずに師に問いかける。
「もし…アンタだったら―」
―犠牲を出さずに、過去から今までのこの道を歩んで来れたか?
己には無理だった。護ろうと。必死に戦ったはずだった。でも失なわれた命。築かれた屍。そして―背負った業。
もしあの時。あの場所で。そこにいた“カスラ”が師であったならば。救う事が、護る事が出来たのではないのだろうかと。
「……そうじゃの。救えたかもしれん」
その言葉にカスラは“そうか”とだけ呟き、項垂れる。
「じゃが―」

―そやつらがその場で必要としたのは、ワシではない。お前じゃ…カスラ。

「――!!」
振り向いた先にはその姿はすでに無く。
その言葉を残して。師は、その年老いた体を再び休めたのだった。

「…最後までくえん爺だ…」
思い出して苦笑するカスラ。
「…はい?」
そんなカスラの呟きに、隣で戦うシズクが首を傾げる。カスラは『なんでもない』とだけ答えて、その刀を振り下ろす。
「……カスラ・エンヴァトール」
呟く名に、誓いを込める。
「……参る」
そして。再びカスラとして。彼は、護るために剣を手にした。

その姿を見つめて。シズクは静かに微笑んだ。
帰ってきてくれた。そして…自分を救ってくれた。今までと同じように。
ふと考えた事がある。
自分は必要とされていないのではないのだろうかと。
心配ばかりかけてしまう自分は、皆に迷惑ばかりをかけてしまっていて。それが、誰かの重荷になってしまっているのではないのか、密かに恐れていた。ずっと。
だからこそ選んだ。この試練を。
誰かのために戦える…そんな皆のようになりたいと。そう願って。
だけど、自分は弱く、また助けられた。それがシズクにとって無性に―…嬉しかった。
強くない自分。それはきっとまだ誰かに頼れる証拠。あの温かな場所で微笑んでいて、甘えていていい事だと思ったから。
そうだ。きっとわたしは弱く。支えられて強くなれるのだ。その人を支えられるようにと、強くあろうと思えるのだから。
そしてその想いはきっと。強くなるために必要なモノ―!!
「カスラ…お兄ちゃん」
「―……は?」
シズクの突然の囁きに、思わずカスラの動きが止まる。
「がんばりましょう…ね?カスラお兄ちゃん」
歳相応の可愛らしい笑みでシズクが微笑む。
見た事のないような、その笑みにカスラは思わず膠着する。そんなカスラの姿を見て、シズクはくすくすと笑いながら、
「…ぼ〜としてちゃ…危ないですよ?」
カスラに注意を促し、カスラに迫ったアンデットを葬る。
カスラ自身シズクの笑顔は何度も目にしたが、今のシズクは普段とは違った笑みを浮かべている。だが…たぶんこれが少女の素なのだろう。遠慮など無く。本当の家族としての相手に浮かべる屈託の無い笑み。
「まぁ好きに呼んでくれ…」
頬を掻きそう言いながらも、シズクの顔を直視出来ないでいるカスラ。
そんなカスラに一言。
「慣れて下さいね?ずっと…呼びたいですから」
そう言って。シズクは満身創痍が嘘のように、元気良く戦場を駆けて行った…。

■『軌跡の果て』
約150年前、医術士で無く、ドリアッドの狂戦士をやっていた頃の話。
私はグリモア争奪戦で負傷し行き倒れていた所を、奉仕種族であったヒトの青年医師に助けられた事がきっかけで彼と親しくなった。
そしてそれが必然のように彼を好きになって。共に過ごして。彼との間に娘をもうけた。
私は幸せだと。今でも思える夢のような時間だった。
だけど―後の別のグリモア争奪戦の際に奉仕種族との間柄を認めてもらう為にも、と功に逸って持ち場である奉仕種族の集落を離れた為に、聖域争奪に巻き込まれた集落は焼かれ、住民は殺され…娘までも失った。
そして復讐の狂気に憑りつかれ、奪った数多の命――最愛の人。
「自らの民を守り、助けるための努力を怠らない事」
違えた誓約。そして失われた狂戦士としてのすべての力。
それは違約制裁なんだと私は思った。当然の報いだとも。娘が死に、彼をこの手で殺めた。そんな私が誰かを守るために、戦場に立つ事は二度とないのだと。
だが―再び手にした力。それは皮肉にも彼と同じ“医療士”としての力。
それは偶然か―必然か。でも…自然と納得する自分がいた。
自らの手で人々を殺め、大地を傷つけてきた分、永劫の悔恨と孤独の中で生き続けることが、きっと自分の贖罪と制裁の一部なのだ、と…。

「―…まったく…都合のいい解釈ねっ!!」
嘲笑うように。彼女はそう言った。
だが―言い返せない自分がいた。都合のいい解釈?そんな事知っている。でも、そうしなければ…そう考えなければ、私はきっと前に進めない。
「癒す?貴女が?殺す事しか出来ないはずの貴女が?」
繰り返される容赦ない斬戟。心の深くに突き刺さる言葉。そのすべてがフィルレートの体力を、心を削り取ってゆく。
狂戦士の背後では、可愛く微笑んでいるあの子が手を振り。そしてそんな娘を優しく抱き上げ、笑っている彼がいる。
「違うでしょ?」
拒絶する痛烈なる言葉。
「その力は所詮、“貴女の血に染まった癒しなどでは人は救えない”って事を認識させるために科せられた罰でしかないのだから――!!」
「―……ぁ」
ふいに。その言葉に手にした杖に込めた力が緩む。目の前にはやけにゆっくりと己に襲い掛かる白刃。フィルレートにそれを避ける気力はすでに失われていた。そして…白刃はフィルレートの体を切り裂き、フィルレートはその場にうつぶせに倒れた。
―痛い。
斬られた肩から腰にかけておびただしい鮮血が流れ出すのを、体で感じながらそんな事を考えていた。掠れゆく視界。やけにリアルに感じる喪失感。自分の血に抱かれる、妙に生温かい空間に漂う。
―血に染まった癒しなどでは人は救えない。
そんな事分かっていたし、理解もしている。私に癒せるものなんてないって事ぐらい。癒す事こそが永劫の孤独。偽りの癒しなどで救えるものなど無く。変らず奪い続ける事になるのだろう。それこそが私の贖罪なのだから。
この道はさらなる暗闇に落ちるための茨の道。救えなかったあの子が私を導き。殺めたあの人がこの道を歩ませる。
掠れゆく視界の先。あの子と彼が佇んでいる。表情が旨く見えない。それが残念に感じる自分が、馬鹿みたいで少し笑えた。
見なくても分かる。きっと変らず笑っているのだろう。無様にも地に平伏した私の姿を見て。
あれほど愛していたのに。大切だったはずなのに。
救えなかった。守れなかった。そんな私を彼等が赦してくれるはずなんて―きっとない。
「―…癒してあげられなくてごめんなさい」
それは誰へ向けられた言葉なのだろうか?
そう言って、フィルレートは微笑み、そっと杖を抱き寄せた―…。

―刹那。
光が世界を包み込む。
『…いつか、皆が笑顔でいられる日が来るといいね』
「―……ぇ?」
その言葉に閉じかけた瞳が見開かれる。眩い光の先には、彼が微笑んでいた。その先にある神々しい光を放つ結晶に祈りを捧げ。
『ぅん?おとうさん?』
その横で、彼に頭を撫でられ、心地よさそうに微笑む愛しいあの子。
流れ込んでくる。あの人の想いが。
「―…う、そ」
その想いに涙が頬を伝う。それは先程とはまったく違う涙。そんな事ありえない。あまりにも都合のいい…馬鹿げている想い。
『今日は何をお願いしたの?』
あの子が彼を見上げ尋ねる。あの頃私にも見せてくれた、無邪気な笑みで。
『うん?お母さんを戦場に向かわせないで下さいってお願いしたんだよ』
彼が微笑む。嘘のような―その言葉を口にして。憎まれていると思っていた。赦されていないと思っていた。これはきっと幻で。目覚めれば、きっと覚めてしまう幸せ過ぎる幻だと。必死に頭に言い聞かせた。
『ふ〜ん…。どうして?』
「…う、そ…よ」
嗚咽で言葉が旨く続かない。そして―。
『―彼女は優しい人だから。人を傷つける事が嫌いで、とても苦しんでいる。だから―』

―私と同じ医療士になって、ずっと傍で笑っていて欲しい。人を癒す方が彼女には似合っていると思うから。

希望のグリモアを前に。告げられた想い、祈り。その願いに。…フィルレートは言葉を失う。
これが真実だというのならば。
狂戦士としてのすべての力を失ったのは。
再び誓約の儀をやり直せたのは。
そして…医療士として、人を癒す道を選べたのは―。
決して違約制裁などではなく。
彼が望んだ、優しい希望という名の下に創り出された―軌跡の果て。
「……ぅ…そ」
何度この言葉を口にしただろうか?すでに涙で景色が歪んで見える。彼の姿をもっと見ていたいのに。その優しい笑顔を見ていたいのに。どうしてこんなに涙が流れるのだろうか。
そして…どうして…この道を選んだ事を……後悔していたのだろうか。
『―も、お母さんが傍にいてくれて、笑顔の方が嬉しいだろう?』
あの人が導いてくれた道なのに。
『うん♪じゃあ、あたしもお祈りするね』
あの子が―。
『おかあさんが、いっぱい、い〜っぱい笑顔になりますように♪』
―その道を照らしてくれているというのに。
『…私は君と共にはその道を歩めませんが、せめて見守らせて下さいね』
こちらを向いて微笑む彼。
『おかあさん、あたしは大丈夫だよ。だから泣いちゃ駄目だよ?』
無邪気な、お日様のような温かな笑みで、手を振ってくれるあの子。
―これが偽りでも。幻でも構わない。その想いを己の胸に刻みつける。
そうだ。何を恐れていたのだろう。恐れる事なんてなにひとつない。この想いがあるのならば―。

瞳を静かに開ける。
体は…動く。急いで己の体に癒しを施す。眼前には昔の自分自身。癒す真の意味も知らず、ただ己は憎まれていると。贖罪の道などで赦されるはずがないと、思い込んでいる弱い自分。
赦されなくてもいい。憎まれていてもいい。
あの人が、あの子が愛してくれたという事を誇りとし意地として歩んでゆける。あの人が祈りの軌跡の果てに作り出してくれた、癒しの道を。今度こそ。迷うことなく。
だから…今はまだ彼等に触れない。手を伸ばせば挫けてしまうから。このすべてが逃げる口実という矛盾だということも承知している。その上で、この矛盾に生きることも。
だから。
「―…ありがとう」
立ち上がったその視線の先。優しく微笑む彼らを見て一言。謝罪の言葉ではなく。感謝の言葉を口にする。
その言葉をどう取ったのだろうか?
あの人は微笑んで、最後まで世話のかかる女房の前から…姿を消した。
フィルレートは自然と微笑んでいた。なんて矛盾だらけの誓い。
だけど―この想いが…あの人が望み、あの子が微笑んでくれる道ならば、その矛盾すら誇りを持って進んでゆけるのだから―!!

「―…なに?」
立ち上がったフィルレートを見て、呆然とする敵。その敵に向かい唱える術は―。

「すべての者に等しく癒しを…ヒーリング…ウェーブ」

―彼と同じ、すべてを癒す医療士としての、私の誓いの言葉。

■『現の牙』
幻よ。幻よ。泡沫の現を映す幻よ。
闇深き軌跡は奇跡に満ちて標すあやかしは希望。
運命という盤上に磔にされし君臨者よ。
その声がすべてを壊すのならば。
その術である希望ならば与えよう。その謳に込めてみせよ。
幻霧の巫女姫の名において。
泡沫に漂う幻に僅かな現の牙を突き立てよ―!!

「…これで良し、と」
民宿の一室。とある解呪が唱えられた事を確認して、セフィーナは静かに立ち上がる。
「―…行くんだな?」
入り口に背をもたれていた焔獣・ティム(a12812)が伏せていた顔を上げ、セフィーナに問いかける。
「ええ。だから言ったでしょ?待っているだけなんて性に合わない、ってね。勿論ティム君も…でしょ?」
軽くウィンク。まるで気負った様子が無く、意地悪っぽく微笑むセフィーナに少々呆然としてから。
「確かに…俺も性分だな」
ティムが苦笑する。そして武器を手にして。“行くか”とだけ答える。
「―貴女は?」
セフィーナはそう言って、解呪を終えた幻霧の巫女姫である少女に声をかける。
「どうする?…ティナちゃん」
幻霧の巫女姫―雪と舞う笑顔の舞姫・ティナ(a13183)は静かに首を縦に振り。
「―…行くよ」
静かに呟くように答えた…。