日本産水草の採集

ここでは、水草の採集法や自生地の探し方、採集時のマナーなどを載せたいと思います。


〜まえがき〜

         ・あなたの家の近くに水草はありますか?

             日本の水草は河川改修や水質悪化、さらに外来種の侵入でどんどん自生地が狭くなっています。そんななかで、魚採集などの際に
             水草にも目を向けてみてはどうでしょう。綺麗な川の水草の群生は目を見張るものがありますし、水草の自生環境や、自生状況を知
             ることは、魚の生息環境を考えるきっかけとなるだけでなく、河川環境をも考えるきっかけとなるかもしれません。自生地が減っている
             日本の水草ですが、探してみると、「えっ?こんな所に?」と言うことは良くあります。あなたの家の近くでも思わぬ発見があるかもしれ
             ませんよ。
             ということで、ここでは水草の探し方や採集時のマナーなどを私的に紹介したいと思います。


〜日本産水草採集の実践〜

       ・水草を探す・水草を採集する
           水草は綺麗で汚染のない場所だけに自生しているわけではありません。意外なところに自生していることも多いです。ただし水草が
              自生している環境にはある程度共通点があるようです。ここではその共通点に基づいて探し方を紹介したいと思います。

           ・採集場所別水草探しのポイント           

            < その一  用水路・水路で探す >

           条件を満たした用水路は様々な水草を目にすることができる場所でもあります。
              ベストは護岸されておらず、底が土質の水路ですが、いまや多くの用水路が三面護岸されています。しかし三面護岸水路でも、底
              に土や砂泥が溜まっていればOKです。とにかく水草が根を張れる土壌がある水路であることが最重要課題です。コンクリート剥き
              出しでは水草が定着できません。また大きな砂利がゴロゴロしている小石底のようなところは水草がうまく根を張れないことが多く、
              過酷な環境となってしまいます。とにかく砂泥底、最低でも砂底が基本の水路であることが条件です。砂泥底と言ってもヘドロが溜
              まっているような水路はNGです。
              さらに流れが速くないことです。流れの速い水路は底が完全な小石であることが多く、さらに浅いので、水草にとっては定着しにくい
              環境となります。また三面護岸水路では、水の流れで土や砂が溜まらなくなってしまいます。こういった水路では淀みになっていると
              ころを探しましょう。そういったところに土や砂が溜まり、水草も根が張れます。
              また水深が深すぎる水路も避けましょう。底まで目視できないような水路は川底まで十分な光が届いていない事もあり、水草に十分
              な光が届いていないかもしれません。そもそも深いと水草を採集するには不便なところがあります。
              それと常に安定した水量があることです。といっても水量が多く轟々と水が流れていれば良いと言うことではありません。水量が少な
              目でも、常に水が流れていたり、水が溜まって枯れることがない水路と言うことです。とくに水田の導水路は必要なときにだけ大量の
              水を流し、必要ないときは全く水を流していない水路もありますが、こういった水路は水生生物自体生息が困難です。 
              また、市街地を流れる水路は汚染が激しい所が多く、ヘドロ水路も多いため水草が見つかる水路は少ないです。水田地帯の水路や、
              郊外、里山の水路に足を伸ばすといよいでしょう。最近は水田の農薬使用が減った地域もあり、水草も徐々に回復している地域も多く
              なっています。石組み護岸の水路もねらい目です。 
              上のような条件を満たす水路ならば上からちょっと見ただけでも水草の姿を確認できるでしょう。
              平野部の水路であれば主にカナダモ類、ヤナギモ、センニンモ、エビモ、フサジュンサイ(カボンバ)、セキショウモなどが見られ、山より
              の低水温の水路ならミクリ、ミズハコベ、セキショウ、バイカモなどが見られるでしょう。 

             < その2 川で探す >

           川で探す場合は、大河川よりも小河川の方が圧倒的に探しやすいです。川で水草を見ると、水草は日光が良く当たる、流れの緩い岸よ
              りの浅瀬に生えていることが多いです。そういった意味で、川の本流だと水深が深かったり流れが速かったりして見つけるのが困難な
              場合が多いです。川に的を絞るときは、小河川を狙います。本流から枝分かれした支流や、本流のワンドなど流れの緩いところ、河川
              敷内にある本流の水が湧く伏流水の溜まりなどもねらい目です。底の状況や流れの強さは用水路で探す場合と同じような環境を探し
              ます。

            < その3 湖、池や沼で探す >

              こういった場所でも探すポイントは川で探す場合と同じです。湖では小石がゴロゴロしている湖岸や、遠浅の砂浜では水草そのものが
              見つかりません。湖では桟橋周りや、やや急深になっているところ、葦など抽水植物で岸が囲まれている場所などがねらい目です。河
              川の流れ込みも以外とポイントです。こういった場所でも底の状態が砂泥メインであることがキーポイントです。
              池、沼でも探し方は同じです。水草がある池なら、見ると様々な水草の浮き葉があると思うのですぐ分かります。ジュンサイがあるような
              池は同時に色々な水草を見かける可能性が高いように思えます。人工池や、護岸されたり親水池化された場所では期待薄です。ただし
              、山間の防火用水池で見つかることも割とあります。ただしこの場合も底に砂泥が溜まっていることが条件となります。

             <その4 休耕田で探す>

           休耕田も以外と穴場です。水草がある休耕田の条件は、水が張っていること、最低でも土壌が湿っていることです。さらに、放置されて
              1〜3年しか経っていないことです。あまり長く放置された休耕田は、他の植物が入り込んで荒れ地と化してしまう事が多いからです。こ
              ういった休耕田ではチョウジタデ、ノチドメ、ミゾカクシ、コナギ、オモダカなどが良く見られます。郊外や山間のの好環境な休耕田なら、
              マツバイ、ヘラオモダカ、ミソハギ類など見られる種類が増えます。水量のある休耕田なら、ミズオオバコ、シャジクモ、イバラモ類や、
              ウリカワなども見つかります。
              休耕田の場合、市街地に近いところや車の通りが激しいところでは、色々な雑草が入り込んでしまいます。ということで、お勧めなのは
              郊外や山間地です。

            管理人はフィールドに出ると必ず水草を探します。採集記にも水草の見つかった水辺の写真が載せてあるので、そちらも参考にしてください。


       どの場所での水草探しにも言えることですが、市街地や都会の水辺は水質汚濁や改修が激しいので、一度郊外や
      山間帯の水辺に出向くことをお勧めします。きっと水草の姿を目にすることができるはずです。



     ・水草を採集する

           水草の自生地を探したり、見て回るだけでもいいですが、見つけた水草を少し持ち帰って育ててみるのはどうでしょう。水槽で育成する
              と、野外では観察しづらい細部の特徴なども見ることが出来るはずです。また、自らの手で採集し、育てることで愛着も湧いてくるでしょ
              う。

           ・基本的には自らの手で・・

              水草(沈水植物や水中葉)は水中に適応しているため草体が柔らかく、タモアミでがむしゃらに掬ったりすることもできますが、これでは
              柔らかい水草は簡単に傷んでしまいます。やはり川に入って、自らの手で優しく摘んだり引き抜くのがベストだと思います。これなら道
              具などを使ったときに手元が狂って水草を痛めつける事も少なくできるでしょう。もっとも、タモアミ等を使って採ろうとすると、水草の群生
              を痛めつける原因になってしまいます。

            ・採集の時あると便利な道具

              道具は使わず、自分の手で採集するのもいいですが、採集場所の条件が悪かったり、足場が悪いときなどは、手の代わりになる道具
              があると便利です。ここではそんな道具の一例を紹介します。

            ・ウェーダー

                  基本的には水中に入って、手で直接採集するのが水草にも優しいです。こういったとき、ウェーダーがあれば濡れるのを気に
                  せず水辺に入れます。用水路や河川での採集で重宝します。

             ・箱メガネ

                  ウェーダーで水中に入ったときなど、水面からだと波で水中はよく見えないものです。ですがこれがあると水中がよく見渡せ
                  ます。水草を摘まなくても種類の同定が比較的楽になります。プラケースなどでも充分代用できます。

            ・スコップ

               休耕田や湿地で採集するとき、あると意外と役に立ちます。特にヘラオモダカ等、根張りのよい抽水植物は、素手ではうまく掘
                  り出せないときもあります。また、無理に引き抜こうとして草体を乱暴につかんでしまい、草体を痛めつけてしまう事も多いので、
                  頑丈に根を張っている植物はスコップを使ってまわりの土ごと採集するのが良いと思います。こういったとき、スコップがあると簡
                  単に掘り起こせます。また、根が傷みやすい植物でも、スコップなら広く掘り出せます。

             ・タモ網 & 高枝切りばさみ or 棒の先にスコップをくくりつけたもの

                  不思議な組み合わせですが、直に手の届かない(水面まで距離がある水路等)場所や、橋の上等から採集したとき非常に便
                  利な道具です。まず、枝切りばさみは水草を切り取るために使います。ただし、非常に目立ち、まわりの人間の目も引くため、
                  使うにはかなり勇気がいりますが・・・・・タモアミは、枝切りばさみで刈り取った水草をすくい取るために使います。つまり、タモア
                  ミは磯ダモなどを改良した、長くのばせるものの方が使い勝手がよいです。短いものだと、ここぞというとき水面に届かなかった
                  りして使い物にならないときがあります。
                  水路など流れのある場所なら、タモアミを川下側に設置しておき、その川上で枝切りばさみで水草を刈り取れば、流されてきた
                  水草がタモアミに入ります。また、枝切りばさみでなくとも、長い棒の先端に鎌をくくりつけたものでも代用できるでしょう。
                  ただし上の方法が使えるのは有茎種のみで、セキショウモやミクリなど、ロゼット型の水草などの場合は、根こそぎ採る必要が
                  あるので、この方法は使えません。こういうときは、枝切りばさみではなく、曲がりにくい長い棒の先にスコップを装着したもの
                  で、根ごと掘り出すようにします。あとは先と同じようにタモアミで掬います。
                  ウェーダーで入れない三面護岸水路や、水に入らずに採集したいとき、手が届かない場所に生えている水草を採集する場合
                  は便利ですが、水草の群生を痛めつけやすいことや、採集した水草そのものも痛みやすいという欠点があります。さらに手元
                  が狂って別の水草まで痛めつける事も多いです。どうしても川に入れない状況のとき以外は、ウェーダー等を使用して、自らの
                  手で丁寧に水草を採集することをお勧めします。

             ・ビニール袋

               採集した水草を持ち帰るとき使います。スーパーの袋でも使えないことはないですが、観賞魚店の魚輸送用のビニール袋なら
                  丈夫で安心です。入手は観賞魚店で分けて貰うなり購入するなりしましょう。サイズをいくつかそろえておくと良いです。また、
                  採集の時は少し多めに持っていきましょう。水草を入れる以外にも何かと役に立ちます。

              ここに紹介した道具はあくまで一例です。この他にも使える道具はあると思います。あとは各自で探してみましょう!

           ・水草に優しく採集する

               ここでは、水草を形状別に分けたとき、それぞれの水草にダメージが少ないと思われる採集法を簡単に紹介します。

             <有茎種(沈水植物)の採集>

                有茎種は、沈水植物であれば、根こそぎ取る必要はありません。下の図のように、節と節との間を摘みます。長さは好みです。根
                が残っていれば、水草はまた新しい茎を伸ばすことができます。採集した水草には根が付きませんが、育成しているうちに根を出
                すと思います。    

              <有茎種(抽水植物、陸上植物の水中葉等)の採集>

                 チョウジタデやイボクサに代表される有茎の抽水植物や、カワジシャやオランダガラシ等の水中葉など、完全な沈水植物では
                 ない水草の場合は、根ごと採集すると良いです。土壌がゆるいときは、草体の根元をつかんで引き抜けば簡単に取れます。抜
                 きにくいときは、スコップなどでまわりを少しずつ堀りながら引き抜きます。また、地下茎で繋がってる場合、地下茎を切り離して
                 草体を引き抜きます。

              <ロゼット型(ランナーで増える種類)の水草の採集>

                 セキショウモやミクリなど、地下茎(ランナー)で増えるロゼット種(茎を持たない種類)の場合、図のように地下茎で繋がってい
                 るものの真ん中の個体を採集します。まず、土の中にある地下茎を切り、繋がっている群生から切り離して、根を極力傷めな
                 いよう、優しく土から掘り起こします。草体には根が付いているので、それごと採集する必要があります。

              <ロゼット型(ランナーで増えない種類)の水草の採集>

                 ミズオオバコやミズニラなど、ランナーで増えず、1個体ずつ独立している水草の場合、種子でしか増えることができないため、
                 個体数が少なかった場合は採集を慎みましょう。こういった水草の場合も、根を極力傷めないよう、土の中に手を差し込んで、
                 広めに掘り起こすように抜き取ります。特にミズオオバコは、草体が非常に痛みやすく、茎や葉が簡単に折れたり、破れたりし
                 てしまいます。とにかく根茎部だけつかむようにして、極力葉などに触れないように採集するくらいの丁寧さが必要です。

           ・採集時のマナー

              ・とにかく採りすぎない。自生状況を見て、場合によっては採集を諦める。

                   初めて水草を採集すると、水槽に入りきらないほど必要以上に採集してしまうことが多いです。これではせっかく採集した
                   水草が無駄になってしまうだけでなく、必要以上に採取する乱獲と同じことになってしまいます。少な目に採取しても、水槽
                   でうまく栽培すれば、有茎種なら何倍にも増やせますし、ランナーで増えるロゼット種も何株にも増やせます。
                   しかし、地下茎で増える水草や、根ごと採取する必要のない有茎種ならともかく、ミズオオバコなど、地下茎で個体を増やせ
                   ない水草の場合、採りすぎは自生地の破壊ともなり得るのです。個体数が少なかったら、採取は諦めましょう。
                   もっとも、水草は自生地、自生数が減少していますし、水草そのものは、様々な水生生物の住処や餌にもなる大切な自然
                   の一部です。これを人の手で絶滅、もしくはそのきっかけになるような行動はタブーです。

              ・自生地は大切に

                   先述した通り、水草は自生地をどんどん追われている状況にあります。地域によっては絶滅危惧種に指定されているもの
                   も数多くありますし、局所的な分布を示すもの、すでに産地が1,2カ所しかないような水草すら存在する状況です。もし、素
                   晴らしい水草の自生地を見つけても、気軽に人に教えるようなことは慎みましょう。噂が広まって業者が取りに来るようにな
                   るなどということは避けなくてはなりません。また、そこの水草を絶滅させてしまわないよう、ときには採集せずに見守るとい
                   うことも考えましょう。


               まだまだ執筆途中ですが、今後も不定期ながら更新したいと思います。


               ご意見等ありましたら、メール等でお知らせ下さい。