身近にある自然エネルギー
                         「金剛・葛城自然エネルギーの会」
                                  事務局長 長尾正典

 2014年1月、「自分で電気を作ってみたい」「自然エネルギーで地域活性化に貢献したい」などの思いを持ち寄って「金剛・葛城自然エネルギーの会」が結成されました。
 寝屋川市の市民共同発電所、東淀川区の「エコまちネット」など市民による「自然エネルギーで地域経済活性」が大阪府内でもすすんでいます。
 「金剛・葛城自然エネルギーの会」事務局長の長尾正典さんに、私たちの身近にどんなに豊富な自然エネルギーがあるか聞きました。


身近にある自然エネルギー①  
千早川のミニ水力発電、クリスマス・イルミネーション点灯

 暮れの12月23日、稼働停止している「千早川水車小屋」の導水路で、ミニ水力発電の実証実験が行われ、クリスマス・イルミネーションが輝いた。「自然エネルギーを利用する会・千早赤阪」が実施したもので、およそ100wの出力。会の事務局長の松岡さんは、運転を停止して8年になるという直径6mの大型水車の前で、「この水車は300年の歴史を持っており、かつて杉の木から『線香』を作る作業の動力として活躍していた。史跡か村の文化遺産として千早観光の役に立てる日が来ることを期待している、そのためにも今回のミニ水力発電が役に立てば」と挨拶。発電機を製作した奥村卓三さんの案内で取水口、水路周り、発電機を身近に見たあと、取水を開始。小型発電機は勢いよく回り始め、LEDのイルミネーションが鮮やかに点灯した。説明では、千早川の水量をすべて発電に活用できる設備ができればこの地域150軒分の電気は優に賄える、とのこと。
 参加者は40名近くになり、期待と関心の高まりを反映した実験となった。点灯は23日から25日までの三日間、行われた。



    
身近にある自然エネルギー②  
府下の水力発電の現状


 高度経済成長期直前、大阪の電力需給の主力は火力発電だった。水力による発電の主流は大阪府以外の地域・地方での発電によって供給されていた。
水力資源に乏しい地理的条件ではあったが、わずかながら大阪でも昭和30年代には六カ所の水力発電所があった。大和川水系の滝畑第一発電所(120kw)、滝畑第二(82kw)、千早第一(110kw)、千早第二(100kw)、水分(100kw)、それに神崎川水系の余野川発電所(130kw)である(大阪府年鑑 昭和33年版 新大阪新聞社)。こうした小水力発電所は1960年~70年代にかけてすべて姿を消していった。
 これまでに紹介したように、現在大阪にある水力発電施設は、大阪広域水道企業団の村野浄水場にある水位差発電(240kw)など5カ所で、いずれも上水道施設の水位差や水圧を活用しており、富山県小矢部川流域下水道施設の最終段階での発電形式は大阪ではまだ実現していない。
 大阪府下の水量の少ない中小河川での発電はできないのか、この問題に挑戦している市民グループがようやく生まれはじめた。



身近にある自然エネルギー③  
浄水・配水や下水での発電に挑戦する自治体     


大阪府下で浄水・配水を利用した小水力発電が行われているのは、村野浄水場(枚方市)、寺内配水池(豊中市)、長居配水場(大阪市)、桃山台配水場(堺市)、流木配水場(岸和田市)などである。村野浄水場の水位差発電は、出力240kw(年間156万kwh)、最大流量3,24㎥/s、落差9,84m。桃山台配水場の場合、出力82kw(年間66万kwh)、最大流量0,42㎥/s、落差30Mとなっている。
都市部で最終処理した下水は放流されているが、その水を活用した発電施設のあるのが富山県高岡市「小矢部川流域下水道二上(ふたがみ)浄化センター」である。小矢部(おやべ)川にかかる「米島大橋」の欄干には大伴家持の歌碑があり万葉資料館も建っている。砺波(となみ)・射水(いみず)平野一体の国司(今風に言えば県知事か)として平城京から派遣されていた高級官僚の家持は、この地でも多くの歌を詠み、地元に人に慕われていたからとおもわれる。
大阪での下水処理水発電は、「なにわのマイクロ水力発電を考える会」などがようやく実証実験を開始したところで、これからの課題といえる。


身近にある自然エネルギー④ 
お寺さんが地中熱で冷暖房(ジオサーマル)


一年中温度の安定した地中熱を活用した冷暖房システムがある、というので訪れた。地下鉄御堂筋線中百舌鳥駅から徒歩5分のところにある西栄寺というお寺さんのセレモニーホールがそれである。冬は地中から汲み上げた熱で室内を暖房し、夏は温まった熱温水を地中に放熱し冷房し消費エネルギーを削減し、CO2削減に貢献している。
僧侶の榎本さんの話によると、完成したのは2011年12月で、この方式の冷暖房設置は大阪府下では二番目とのこと。設備は7本の地中熱交換器と暖房31キロワット、冷却28キロワットのヒートポンプだけの簡単なものである。
こうしたジオサーマル方式の冷暖房は、小規模のものは、セブンイレブンが福岡の一部店舗で、大掛かりのものは「東京スカイツリー」で、それぞれ実用化されているが太陽光、風力、地熱、バイオマスなどとともに日本国中どこでも活用できる地中熱にも注目したい。


身近にある自然エネルギー⑤大阪いずみ市民生協のメガソーラー

和泉市にある二か所の物流センターの屋根に、数千枚の太陽電池パネルを載せて太陽光発電を始めた大阪いずみ市民生協を訪れた。物流センターの玄関を入るとすぐ現在発電量など一目でわかるディスプレイが設置されている。出力は二か所で2300kW(2,3メガワット)、2012年11月から運用を開始し、年間稼働実績は約280万kWhで一般家庭の約600世帯分に相当するという。開発部長の吉峰さんは「すでにある建物の屋根を有効活用したシステムです。昨年は猛暑のせいか、当初目標を大きく上回る発電量となり、驚いています。メンテナンスはほとんど必要なく、設備投資費用は早めに回収できそうです」と目を輝かせていた。「日本生協連に加盟する地域生協の中では最大の発電を行っています(昨年末時点)。この取り組みに参入し、エネルギー政策の転換とCO2の排出量削減に寄与します」と案内の高野陽一さん。現地見学の参加者から「パネルの設置角度がフラットなのはなぜか」「太陽光発電の買取制度の持つ矛盾をどう考えるか」などの質問・意見が出されていた。


身近にある自然エネルギー⑥雨水での発電に挑戦

雨水を利用した小水力発電の実証実験に挑戦されているのが関西外国語大学の青木豊明教授。関西外大キャンパス(枚方市)の11階の建物に降った雨水を一旦200リットルの貯水槽に溜め、落差を利用して直径4センチの導管で4階のテラスに設置した小型発電機を稼働させている。流量200ml/sで約10wの出力を得るという。発電機は通信販売で、パイプ、水栓、貯水槽などはホームセンターで調達した文字通りのハンドメイドである。装置を見て落差と流量を増やせば出力増が期待できる、これなら3~4階建ての建造物屋上の雨水発電への応用も可能になる、と思った。
青木教授は、温室効果による地球温暖化が問題になった2004年当初から小水力発電の実験を開始し、豊かな水量のある比良山系に実験機を設置。福島原発事故後は都市部でのマイクロ水力発電を視野にひろげた実践派でもある。雨水ではないが、ビル内の空調用循環水を活かしたマイクロ水力発電はすでにNHK放送センターや帝国ホテルその他で稼働しているという。




                  
⑦身近にある自然エネルギー
         長居公園の地下発電所

セレッソ大阪の本拠地でもある東住吉区長居公園の地下にある大阪市水道局長居配水場の残存水圧を活用した水力発電所が稼働して10年になる。桜の開花発表の日に市の担当者に案内していただいた。階段を下って地下二階にある巨大な空間の一角にあるコントロール室で説明を受ける。家庭で使う水道水が常に一定の水圧を保っている仕組みや災害時の対応などの説明を受けたのち、唸るような音を立てている発電機を見る。配水圧力や落差の残存エネルギーで稼働している横軸フランシス水車で、発電能力は253キロワット。発電した電力は売電せずにすべて配水場の動力ポンプに使っているが、平成24年度の発電実績は189万7千kwh(一般家庭の年間電力消費に換算すると410世帯分)で、年間2000万円の節約になり、この部分の設備投資費用は7年間で回収した計算になるとのこと。当初目的は電力消費抑制と地球温暖化の要因の二酸化炭素排出削減であった。
水力発電のコストは政府試算でさえ火力発電とほぼ同じ、原子力の場合は建設費や事故収束・廃炉・賠償費用などがかさみ、火力・水力をはるかに上回ることが判明している。残存水圧活用の長居公園地下のような施設はますます存在価値を大きくしている。



身近にある自然エネルギー⑧
  太陽光パネルの電力でイノシシの侵入撃退


河南町や千早赤阪村など山間部の田畑は、毎年イノシシやタヌキによって農産物が荒らされるため、農家の多くは乾電池を電源とする高圧電気柵を張り巡らせて侵入を防いでいる。千早赤阪村の「棚田百選」の近くの畑に設置されている装置を兼業農家の岩本満さんの案内で見せてもらった。ここでは乾電池の代わりに昼間に太陽光パネルで蓄えた電力が、夜間出没する動物の撃退に活用されている。あぜ道に沿ってイノシシの鼻の高さぐらいに電線が二重に作られ、延べ一キロほどもある電線が何枚もある田畑をぐるりと囲んでガードしている。猛者のイノシシもさすがに手が出せないらしい。太陽光のパネルは普段目にするパネルの半分の大きさで、出力50Wと小型。これを直流高圧に変換して使用、電気の自家生産・自家消費である。設置費用は農産物被害額のことを考えると許容内とのこと。
使用目的が明確であれば太陽光発電は送電網のない地域でも手軽に利用できる素晴らしいエネルギー源である。




身近にある自然エネルギー⑨千円での節電術

 最後に、誰にもできる簡単な照明の節電方法を紹介する。
ホームセンターなどで、レセップキャップ(引掛けランプソケット)と60wの明るさのLED電球(消費電力は約9w。口金E―26)を買い揃える。節約した箇所の天井についている家庭用照明器具のカバー、蛍光灯、アダプターを外すとツメ穴が2個ある引掛けシーリング(またはローゼット)が出てくる。ここにレセップキャップ(引掛けランプソケット)をしっかりはめ込み、電球をセットするだけである。最近はLED球も安くなっており出費は1000円前後。見てくれを気にしなければこれで十分、蛍光灯に対し8~9割、白熱灯の1~2割の消費電力になる。
筆者はささやかながら出力80wの小型太陽光パネルで自家発電し、居間の照明をこれで賄っているが、自分で作った電気だと思うとなんとなくいとおしくなり節電意識が随分進化した。






 九回にわたって電力を中心に、大阪の自然条件を活かした実践例のいくつかを紹介してきた。このほかにも市民共同発電所、廃油利用の「菜の花プロジェクト」、太陽熱活用、台所生ゴミの堆肥化、木材・ペレットストーブ、など様々な分野で実用化され、又は進行中である。取り組んでいる個人、研究者、団体、共同出資者、ベンチャー企業など関係者の苦労・努力にエールを送りたい。