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          第55号 「歌、『Come Foglie』(Malika Ayane)、秋の訪れと学習のヒント」  

 

                     2010年9月18日(土)


------今号の目次-------------------------------------------------------------------------

1.歌、「Come Foglie」(Malika Ayane)

2.秋の訪れ

3.イタリア語学習を成功させるヒント

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*今回の記事でも、サイトの方では、写真を載せ、主要な言葉を赤や青で記して、学習しやすいようにしてあります。

 インターネットに接続できる方は、ぜひこちらのリンク先のウェブページの記事をお読みください。

 ⇒ http://www.geocities.jp/naoko_ishii/vol55.18_9_2010.html

 

 1.歌、「Come Foglie」(Malika Ayane) 

 

 8月末に、マリーカのコンサートに行きました。元気な曲からしっとりとした曲まで見事に歌い上げて、観客を熱中させていました。(ブログの記事はこちら

 今回は、遅ればせながら「今月の歌」としてサイトの表紙に載せたマリーカの歌、「Come Foglie」を取り上げてみます。

 まずは、次のリンクから、歌を聞いてみてください。

 

 YouTube    Malika Ayane - Come Foglie (official video)   

 http://www.youtube.com/watch?v=8bDRLZPSsB0

   

 夫がよく口ずさんでいる歌ですが、あまり歌詞をまじめに聞いたことがなくて(というより夫自身がうろ覚え)、「木の葉が落ちるなら、秋の歌だろう」と思って、9月の歌に選んだ後になって、「さあ、メルマガで取り上げよう」と歌詞をじっくり読み始めてから、「歌詞が詩的・象徴的で難しいこと」と、「秋の歌としては季節はずれである」ことが分かりました。

 というわけで、歌が分からないからと言ってくじけずに、今度は、次のリンクで歌詞を確認しながら、歌を聴いてみてください。

  AngoloTesti - Testo Come Foglie

  http://www.angolotesti.it/M/testi_malika_ayane_45470/testo_canzone_come_foglie_888504.html

 

 初級の方でも知っている単語がたくさん並んでいる割りに、中級の方でも意味がつかみにくい歌だと思います。  季節の変わり目のとらえがたい気持ちの移り変わりを歌ったもので、詩的抽象の度合いが強いからです。

 まずは、最初の4行を見てみましょう。歌われている「季節」と「天候」がどんなものかに注目してください。

  "E’ piovuto il caldo
 Ha squarciato il cielo
 Dicono sia colpa di un’estate come non mai
 Piove e intanto penso"

 季節と天候が分かりましたか。まずは、季節・天候に関わる言葉をすべて、まるで囲んでみましょう。

 

 正解は、

 caldo, cielo, estate, piove

 の四つです。すべてとても基本的な重要語句ですから、意味はご存じですね。

 

 最初の三つは名詞で、それぞれ、「暑さ」、「空」、「夏」です。

 Pioveは、動詞 piovereの直説法現在、3人称単数形です。ふつうはこの一語だけで、「雨が降る」を意味します。英語だと、It rains.と、形式主語のitが動詞rainの前に入るのですが、イタリア語で天気を表す動詞は、形式主語を必要としません。

 ついでに、自然現象を動詞一語で表す他の表現を見てみましょう。

 Nevica. 雪が降る。 (英語、It snows.)

   Tuona.  雷が鳴る。 (英語、It thunders.)

 これらの天候を表す動詞は、無主語であり、活用形が3人称単数だけの非人称動詞です。1人称、'io piovo, noi pioviamo'、2人称や3人称複数、'loro piovono'と言った、人称に応じての活用がないので「非人称動詞」(verbo impersonale)と呼びます。

 ただし、このpiovereという動詞は、本来の「雨が降る」という意味を表すときは非人称ですが、そこから派生した「高いところから雨のように落ちてくる」、「突然大量に押し寄せる」といった比喩的な意味で使われるときには、主語があり、主語に応じて、人称変化をします。たとえば、伊伊辞典、『lo Zingarelli』(Zanichelli)には次の用例があります。

    Piovevano tutt'attorno cenere e lapilli.  「 あたり一面に火山灰と火山礫が降り注いでいた。」

 Piovono telegrammi e notizie.    「たくさんの電報や知らせが殺到する。」 (「 」内は石井訳、以下も同様。)

 上の2例で、動詞piovereの活用が、3人称複数であるのは、こうした比喩的用法では主語が存在するために、動詞が主語に応じて活用しているからです。

 もう一度、歌の1行目を見てみましょう。 

  "E’ piovuto il caldo "

 実は、この冒頭の  "E’ piovuto"も、動詞piovereの直説法近過去、3人称単数の活用形なのですが、ここでは、piovereは比喩的な意味で使われています。 "il caldo "「暑さ」がこの文、動詞の主語だからです。

 というわけで、まず冒頭の4行を訳してみると、次のようになります。

   "E’ piovuto il caldo
 Ha squarciato il cielo
 Dicono sia colpa di un’estate come non mai
 Piove e intanto penso"

 「突然に猛暑が訪れ、空を引き裂いた。

  人々は、かつてなかったような夏のせいだと言う。

  雨が降り、その間に思うのは」

 

 penso「(わたしが)思う」内容は、"Ha quest’acqua un senso..."(「この雨には意味があるのかしら、…」 )以下の部分です。

 

 少し飛ばして、先を読んでみましょう。 

 "E’ un inverno che va via da noi
 Allora come spieghi
 Questa maledetta nostalgia
 Di tremare
come foglie e poi
 Di
cadere al tappeto? "
 

   「わたしたちのもとから去っていくのは、冬。

 だったら、この木の葉のように震えて、

 それから落ちて打ちのめされるような郷愁を

 どう説明するの?」

 

  これがわたしが勘違いした部分なのですが、よく歌詞を読んでみると、「落ちる」(cadere)のは「木の葉」(foglia、foglieは複数形 )ではなく、「自分たち」です。comeは「〜のように」で、名詞の前について、直喩を表す副詞です。

 一度うちの夫がわたしに言ったことがあります。

 "Sei come la luna crescente."

 「君は満ちゆく月のようだ」なんて、甘い言葉なんて苦手で言えない夫に何が起こったのだろうと思っていたら、続いて、

 "Il tuo viso diventa sempre piu rotonda."

 「君の顔、(太って)丸くなる一方だからね。」

 というオチがありました。まったくもう。

  

 inverno は「冬」です。夏と冬が出てきたついでに、四季と1年12か月を、イタリア語できちんと書けるでしょうか。まずは、自分でノートに書き出して、辞書や参考書で、答え合わせをしましょう。

 

 さびの一部も見てみましょう。

   "D’estate muoio un po’
 Aspetto che ritorni l’illusione
 Di un’estate che non so…
 Quando arriva e quando parte,
 Se riparte? "

    muoioは、動詞morire「死ぬ」の直説法現在、一人称が主語のときの活用形です。「非常に苦しい、死ぬほど…だ」という意味もあって、たとえば、"Muoio di noia."は、「退屈で仕方がない。(死ぬほど退屈だ)。」という意味です。

 親しい友人に向かってならば、「おなかがすいて仕方がない、空腹で死にそうだ」というときには、

 "Muoio di fame."あるいは "Ho fame da morire."と言うことができます。

 

「夏は、ひどく苦しい気持ちになる。

 いつやって来て、いつ行ってしまい、そして再び去ってしまったらどうなるのか

 それも知らない夏に対して抱いていた幻想が

 戻るのを待っている。」

 

 皆さんにも、遠足やパーティ、大学生活や社会人としての生活、あるいはイタリア旅行など、何かとても楽しみにして、いくつもの夢を思い描いていた出来事があるはずです。ただ、実際にその日、そのときが来てみると、思っていたように楽しいこともあれば、憧れや幻想が強すぎて、実際にその機会が来てみると、「こんなはずではなかった」と、失望することもあるでしょう。

 イタリアでは雨の多い寒い冬のあとに訪れる、太陽の光あふれる夏を待ち望む人が多く、夏はバカンスの季節、出会いや旅行の季節でもあります。夏を楽しみに待ち望んで、でも実際に来てみると、想像とはうらはらで苦しく、夏の訪れを待ち望んで、幻想を抱いていた頃のほうがよかった……と、そういう複雑な思いを歌った歌ではないかと思います。 

 実際、この歌詞に限らず、詩や文章の解釈はいくとおりにもできる場合がありますので、以上は、夫に助けを借りたわたしの解釈です。歌詞の言葉やメロディー、歌の雰囲気だけで、歌を味わっていた夫は、「これは、一語一句つきつめて理解する歌ではなく、歌の心を感じ取るべき歌なのだ」と考えているようです。

 心の揺れ、とまどいを、初めはささやくように、のちに力強く美しい声でのびやかに歌い上げるこの歌が、わたしも好きです。

 今回ご紹介した歌、「Come Foglie」は、アルバム、『Malika Ayane』に収録されています。

      

 アルバム、『Malika Ayane』の収録曲の一覧は、米国amazon.comのページにあります。リンクは次のとおり。

 http://www.amazon.com/Malika-Ayane/dp/B001RTP4EK

 なぜか米国での方が販売価格が高く、Amazon.co.jpでは、はるかに安い値段となっています。

 メルマガ第39号(リンクはこちら)で、マリーカがカヴァーした歌、「La prima cosa bella」を、紹介・解説しています。美しい歌を、マリーカが優しく力強く歌い上げていて、わたしも夫も大好きな一曲です。ぜひ聴いてみてください。

 

 「La prima cosa bella」は、アルバム『 Grovigli』に収録されています。

 『 Grovigli』の収録曲は、米amazon.comのページ(リンクはこちら)で、全曲試聴することができます。

 

2.秋の訪れ

 

 「スポーツの秋」ということで、秋の山を散歩すると、少しずつ色づいていく美しいブラックベリー(mora、複数形はmore)をあちこちで見かけて、「実りの秋」も楽しむことができました。

         

  左の写真は熟れていくブラックベリー、右は野バラの実です。秋色に衣替えしていく山の様子に興味のある方は、こちらの記事をお読みください。

 そのほか、最近のブログ記事をいくつかご紹介しますので、興味のある記事があれば、ぜひご覧ください。(サイトの記事には、各記事へのリンクも貼ってあります。⇒ http://www.geocities.jp/naoko_ishii/vol55.18_9_2010.html

 

 イタリアの美しい自然を見てみたい方は、

 ・空の青山の青、民の信仰と暮らし [2010-09-09]

 ・フランコ訪ねて1、森の幸満つ湖 [2010-09-15]

 

 イタリアといえば、「食」が魅力という方には、

 ・ペルージャ田舎風トマト入り炒り卵 [2010-09-14] 写真入りの詳しいレシピつきです

 ・逃げた白いハト   [2010-09-12]        ペルージャには、ハトやウサギを食べる食習慣があります。

 ・朝顔とテラスの夕食 [2010-09-07]        夏は食卓をテラスに運び、おいしい夏野菜をいただきます。

 イタリアでの日々の暮らしに興味があるという方には、

 ・滞在許可証よもやま話1 [2010-09-06]      

 ・歯医者でびっくり、日伊の違い [2010-09-13]

 ・あるイタリア人学生の質問 [2010-09-04]

 

 がおすすめです。

 

 最後に、とても悲しく痛ましいニュースなのですが、若く惜しい富沢選手事故死の翌日に、イタリアの記事を日本語で要約して、ご紹介した記事もあります。

 ・富沢選手事故死、サンマリノGP [2010-09-06 ]

 より詳しい情報がご自分で知りたいというファンの方は、上のブログ記事中に、いくつかのイタリア語のオンライン記事へのリンクが貼ってありますので、参考にしてください。

 

 3.イタリア語学習を成功させるヒント

 

 さて、秋は「学問の秋」でもあります。夏の間、イタリア語の学習から遠ざかっていたという方は、「参考書を1日2ページ」あるいは「1週間に1課」、「毎日イタリア語を30分耳にする」など、短期の目標を具体的に立てると、実行しやすくなります。

 外国語学習研究の結果によると、「外国語をみごとに習得できる学習者」というのは、異なる学習方法を数多く知っていて、それを実践していく人であるということです。

 「机に向かってイタリア語の問題集」を解くだけでも、「イタリア語の歌を聴く」だけでも、「イタリア人の友人にメールを書く」だけでも、「イタリア語の映画を見る」だけでもなくて、こうしたさまざまな学習法を組み立てて、できるだけ数多く実践していくことが大切です。

 

  これからイタリア語を学習したいという方や、そろそろいい学習辞典が一冊ほしいという方は、ぜひサイトのページ、

  イタリア語学習におすすめの教材(入門者編)(メルマガ 第8号から)  を参考にしてください。

 

 留学や旅行を考えている方は、同じくサイトのページ、イタリア留学・旅行をお考えの方へ をお読みください。

 

 秋は「食欲の秋」でもあります。

 初級・中級の方は、イタリア語でかかれたレシピで、何かおいしそうな料理を見つけて、このレシピを参考に作ろうとすると、イタリア語のいい勉強になる上に、腕と運があれば、おいしい料理も食べられます。特に写真つきのレシピは、単語が映像と共に目に入るので、記憶に残りやすくなります。できるだけ多くの感覚器官を通して学んだ方が、学習効率が上がるという研究結果が、心理言語学(psicolinguistica)の分野で、出ています。レシピで学習すれば、イタリア語を「味覚」を通しても学ぶことになります。

 秋は「芸術の秋」でもあります。

 同じ理由で、イタリア語の歌を聴いたり、映画を見たりするのも、イタリア語の学習に大いに役立ちます。これは、共に「聴覚」を通しての学習になる上に、歌では歌のメロディーがイタリア語のリズムをつかみ、また言葉や内容を記憶するのを助け、映画では、「視覚」「聴覚」を共に使い、さらに、イタリア文化の中での風習、つまり、あいさつの仕方や買い物の仕方、若者同士のコミュニケーションの在り方などを、学ぶことができるからです。

 イタリア語で話される映画なら、何でも学習に役立つかと言うと、そういうわけではなく、

・一度に多くの人が話す場面の多い映画は、会話が重なり合うので、聞き取りが難しい

・方言色が強いと、語彙や文法、アクセントも、標準イタリア語とは違いすぎる。

(たとえば、風景も美しく大好きな名画ですが、『イル・ポスティーノ』はイタリア語学習には不向きです。)

・白黒の昔の映画であり、戦前・戦時中あるいは直後のイタリアを描いていて、現代のイタリアの風習や社会とはかなり異なる文化・社会が映し出されている。

(そのため、ネオレアリズモの映画は芸術作品としては傑作でも、繰り返し見て学習に使えるかというと、難点があります。)

・現代社会の若者間のやりとり、あるいは夫婦間のやりとりを描いているけれども、俗語的な表現やくだけた表現が多く、また話す速度が非常に速い。

(見たのはかなり前ですが、『L'ultimo bacio』や『 Manuale d'amore』にはそういう印象を持っています。)

といった具合で、イタリア映画でさえあれば、イタリア語の学習に適しているというわけではありません。

 

 シエナ外国人大学大学院課程には、「イタリア語教育における映画の活用」をテーマとした授業やセミナーもあり、そうした授業中に配布された資料の中には、各映画で話されているイタリア語を詳しく分析して、どのレベルの生徒に適しているかを書いたものもありました。

 そういう授業で学んだことも踏まえ、自分自身が見たことのある映画の中から選んだ、「イタリア語学習に役立つ映画」を、次のページでご紹介しています。ぜひ機会を捉えて、何か一つあるいは二つの映画を、しっかり何度も視聴して、学習に役立ててください。

  ⇒ おすすめのイタリア映画    http://www.geocities.jp/naoko_ishii/film_italiani.html

 先に4点にまとめてご説明した、「イタリア語学習にあまり適さない映画」も、上級の人であれば、イタリア語の学習に役立てることができます。というのは、すでにイタリア語の語彙力・文法力や、聴解力がある人は、こういう映画を通じて、さまざまな状況・地域で話されるイタリア語を幅広く学ぶことができるからです。

 「イタリア映画やイタリアの歴史・昔の風俗」に興味があって見るのであれば、入門・初級・中級の人にももちろんおすすめです。ただし、上で4点にわたって説明したような映画を、イタリア語の学習に使おうとすると、とても効率が悪いので注意してください。

  アメリカの外国語教育研究家、クラッシェンが言うように、「自分自身の今の力よりも、少しだけ上のレベルの外国語・授業内容であれば、最も学習効率がいい」からです。教材が難しすぎては、理解ができないので、あまり頭に入らず、意欲がそがれるだけです。逆に、教材が簡単すぎても、今の自分の力で間に合ってしまうために、語学力の向上には、あまり役立ちません。 

 イタリア語の歌については、いずれバックナンバーや過去のサイト表紙に載せてあった歌を、見やすい形でホームページ上にまとめてみたいと思っているところです。お急ぎの方は、バックナンバーから、興味のある歌手や歌を取り上げた記事を見つけて、お読みください。

 では、また。ご愛読ありがとうございました。

 

 このメルマガの著作権は石井に帰属します。引用・転載を希望される方はご連絡ください。

  バックナンバーはこちらのホームページからご覧になれます。http://www.kitsunenomado.com

(HPでは、アポストロフィで代用せずに、イタリア語のアクセント記号つきの母音をそのまま使って表記しています。)

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発行者      石井直子

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