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「人身売買の世界的現状とNGOの取り組み」-3.8国際女性デーに寄せて-レポート
2005年3月7日 大阪市立総合生涯学習センター
by アジア女性センター、京都YWCA・APT、アジア太平洋人権情報センター(文責・宗田)

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(C)K.Soda

 世界では、毎年少なくとも60〜80万人もの人々が国外へ人身売買されており、その半数以上が性的搾取の被害者になっているとみられています。日本においても、アジア各国、南米、東欧から女性たちが人身売買のブローカーによって日本に連れてこられ、性産業などに送り込まれています。日本政府は人身売買の取締強化に向けて動き出しましたが、被害者の救済のための法制度はまだ何もありません。わたしたち市民には何ができるでしょうか? 講師のケビン・ベイルズさんと一緒に考えてみましょう。(主催者メッセージ)

 標題のシンポジウムに行ってきました。
 冒頭、ドキュメンタリービデオ「グローバル経済と現代奴隷制」を鑑賞。
 続いて、ケビン・ベイルズ氏(NGO フリー・ザ・スレイ ブズ(Free the Slaves)代表、サリー大学ローハンプトン校教授)の講演「人身売買の世界的現状と国際的防止運動」が始まりました。
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ケビン・ベイルズ氏(C)K.Soda

<「奴隷」の定義>
奴隷とは
1)暴力で支配され
2)何も支払ってもらえず
3)経済的に搾取されている人
そして重要な点は「自分で逃げられる」状況かどうかーという点。

<奴隷制の歴史>

古代エジプト、1850年代の米国・アラバマ、現代日本社会と、奴隷制は5000年前まで遡り、そして今も続いている。

<現代に奴隷が増えた理由>

現在、世界には2700万人の奴隷がいるが、ではどうしてこんなに奴隷が増えたのか?
3つの要素
1)人口爆発・・50年で20億人から60億人になった。
2)津波のような天災や内戦などの社会的不安、政府が国の資源を盗んだこと、急激な経済成長などの理由で社会的弱者が増えた。
3)政府、とくに警察権力が腐敗し、お金を警察に使って違う人を支配することが出来るようになった。

例えば貧しいところ、さびれたところで「仕事の欲しい人はいないか?」と聞く。
そこにいる人は貧しいので相手が犯罪者のように見えても連いていく。
そのあと100キロ米離れたところに連れていって暴力をふるい、その人を奴隷にする、というような事がある。

<人身売買に関して興味深い事>

例えば貧しい中で自分の子どもを食べさせるため、病気の母に薬を買うため。
仕事と言われチャンスに飛びつく。
※家族を大切にするからこそ奴隷になってしまうというパターン。そういう状況におかれたら誰でもやることと言える。
(全てが同じではない)

<奴隷の特徴に変化>

需要と供給のバランスに変化→あまりにも社会的弱者で奴隷の立場に落ち込んでしまう人が増えている→奴隷一人の価値が低下。
1850年代、米国・アラバマで19才の奴隷を農業につかせるため買おうとしたら400万円。
現在、西アフリカにある奴隷のマーケットでは1人の全く健康な人間を4000円で買える。
これほど劇的に奴隷の価値が変わった時代はない。
そして処遇も変わった。人間と言うより1本のペンのようなものになった。
あなたは1本のペンのために領収書をとったり保険をかけることがありますか?
ペンが傷ついたからと言ってペンの病院に行きますか?
友人が勝手に自分のペンを使ったからと言って警察に電話しますか?
1人の人間を4000円で使えるとしたら、使いつくして捨ててしまう。

これは逆に言うと奴隷を手にいれると、とても高い利益を生み出せることを意味する。
そして人身売買は世界全体で毎年約80万人が被害者になっているのである。

<人身売買の規模>
日本と米国を見ると、政府の統計や国際機関などで調査した結果、一番少なく見積もって2万5000人の人身売買被害者がいると推定される。
(日本の殺人件数の約20倍)

<人身売買の本質>
人身売買は深刻さで言うと殺人の次に重大。いろいろな犯罪(誘拐、虐待、拷問、レイプなど)が絡んだ複合的な犯罪。
そして複雑で多面的な問題。
法律上の問題
保健医療上の問題
人権問題
経済問題
ジェンダーの問題
どういう風に結びついているかを見ていかなくてはならない。
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<解決のために有効なステップ>
解決のためにいくつかのステップが役立つ。

ステップ1・・強固な司法上の対応。

明確な法律が存在すること。他国との協定が必要(国境を越えた犯罪のため)。被害者に適切な保護を提供(被害者と合意していたかどうかは無関係に犯罪者を裁く必要がある)

ステップ2・・すべての関係者が人身売買の「結果」に着目すること。

外国人の不法入国や売春の問題である、という点ばかり見てしまう傾向があるが、本当の犯罪は結果として人間が奴隷になっている点。
奴隷制に焦点を当てること。

ステップ3・・何が原因で自分の国を押し出されて奴隷になるかを考えること。

人身売買を生み出す背景を理解する。
腐敗、内戦などの社会不安、貧困、機会の欠如、若年層が膨らんだ人口構成、性差別・民族差別。
↑のような事を経験すれば誰でも自分の国を逃れたいと思う。
日本のような豊かな国は何をすべきか?
奴隷を押し出す原因を貿易政策などでこれ以上悪化させないようにし、援助政策で改善する努力。

ステップ4・・人々が安全に移住できるシステムをつくること。

透明性の高い合法的な移住の方法。
アンダーグラウンドな方法でいかざるを得ないと人身売買の被害者につながる。
人身売買はより良い生活を求める人々がいることを背景にして生じている。
入国管理の改革に取り組むこと。

ステップ5・・人身売買の需要があることを認識することが重要。

イタリアの国営テレビでベイルズ氏が行った議論。
「イタリアではナイジェリア女性の問題があると言うが、イタリアにあるのは売春婦を求めるイタリア人男性の問題である」
人身売買は労働の搾取という犯罪であり、人身売買被害者を使役する様々な下位部門の需要を推定することが出来れば、どこで介入すればよいかが明確になる。
人身売買被害者の様々な「消費者」は多様な人々から成っている。

解決策は単純なものはなく包括的で多次元で高価なもの。5つのステップは取り組めば効果があると分かっている。
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<日本政府に対する提案>
ベイルズ氏の言葉
「外国人の立場で外から見ていても分からないということはあります。しかし時には外から見ているからこそ分かる点もあると思います。
"提案"として申し上げたい」

1)人身売買に関する基本的な法的枠組みが整備されていない。法律が必要。

現行の刑法改正だけでは不十分。各国の経験は「人身売買法」が必要であることを示している。
日本は国連の人身売買禁止議定書を署名済みであり批准するだろう。そして独自の「人身売買法」を創設すべきという議定書の推奨に従う予定になっている。
全ての政党が共同して取り組むことが重要であり、基本的人権に関わる問題なので各政党が必ず協力できる。

2)被害者保護が法律の中に位置づけられるべき。

被害者の視点が認知されることが不可欠。
被害者はケアされ支援される必要がある。元々、合意していたかどうかは関係ない。自分を殺すこと、また自分を拷問すること、自分を奴隷にすることーなどの合意は国際法で認められていない。警察を怖れないようになれば人身売買業者の起訴に協力することが期待できる。
日本で援助交際の摘発が報道された時と同じだけの怒りや行動が見られるか?

3)人身売買被害者のための特別な一時避難所(シェルター)の設置と助成。

日本では47カ所の配偶者暴力相談支援センターを人身売買の被害者に使おうとしているが適切ではない。被害者は精神的障害を受けており安全で信頼できる環境が必要。
被害者の母国語を話し文化を理解するスタッフが必要。
人身売買被害者のための民間シェルターに資金援助すべき。

4)反人身売買法は被害者への損害賠償を与え人身売買業者の財産を差し押さえるものにしなければならない。

損害賠償には必要であれば送還費用を含む。
日本では恥ずべきことが起こっている。それは犯罪被害者に航空券に支払いを求めていることである。
自分の身に置き換えて考えてみると、外国で誘拐され殴られ、警察が発見してくれたと思ったら自分を牢屋に入れ帰宅費用を払えるまで拘束すると言われたら、それは全くクレイジーである。日本ではまさにそういう事態が起こっている。

5)被害者ケア、証拠の収集、事件を集積し人身売買業者を起訴するための体制を確立すること。

すべての都市に反人身売買担当部署が必要。
人身売買被害者に接したり関わったりする警察、福祉関係者、民間支援団体などの人々が迅速にケアを提供することが出来れば起訴は増加する。
交番は多言語のヘルプライン(緊急電話)につながる対応を。1つの建物に、タイ語、タガログ語、ロシア語など10人のオペレーターがいれば全国に対応できるのではないか。

6)残念なことに他国籍の女性を搾取することに対する社会的受容が日本にはある。

日本人男性はかつて海外に出かけたが今では犯罪組織が女性たちを日本に連れてきている。
公教育や社会教育は外国籍女性に対等で敬意を持って接するべきだということを啓発する必要がある。
もし2万5000人の日本人女性がある国で奴隷になっているとしたら?そしてその国の人々が「日本人女性だから」奴隷でもいいのでは、と受容していたら?→その怒りをどこの国の人に対しても向けるべき。

7)「興行ビザ」システムは一掃されなければならない。人身売買の公然の門戸となっている。

本当のエンターテイナーが必要ならチェックするシステムが必要。
合法的で安全な仕事に対してビザが与えられるべき。日本の労働力不足は深刻化しており、慎重な入管政策の改正は日本経済にとってプラスになるだけでなく、移民を搾取から守ることができる。

<ベイルズ氏の問いかけ>

日本は人身売買の根絶においてリーダーとなることができ、それは世界にとって貴重であり奴隷制の終焉に資することで尊敬を得ることになる。
日本は問題を解決する資源と知性と能力を持っている。そして私は問いたい。


では意思はどこにあるのか?




引き続き、青木理恵子氏(京都YWCA・APT)から「日本における人身売買の現状と課題」について報告がありました。
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青木理恵子氏(右)(C)K.Soda.

<人身売買の定義>
「手段」・・力の行使 強制 詐欺 弱い立場の悪用 権力の濫用
「行為」・・募集→採用→移送→運搬→住居提供→収受→搾取(=目的)

<人身売買の手順>

人身売買の段階
主な要素
関連事項
渡航手続き
エージェント(送り出し国側)
短期滞在、興行、日本人と結婚
就職先の斡旋
同上
業界ネットワーク
来日/移送
同上
エスコート
出迎え/収受
プロモーター(日本側)

労働
条件について交渉、選択の余地なし
勝手に作られた借金
管理
監禁、軟禁、精神的拘束

助けを求める
警察→入管→退去強制
大使館→入管→退去強制
警察→婦人相談所→入管→退去強制
大使館→民間シェルター→入管→退去強制
NGO→民間シェルター→入管→退去強制
日本上陸時に許可された日本在留期間、活動に違反している場合→退去強制

日本は刑法の改正などで対応しようとしているが被害者保護の視点が欠如している。

<必要な被害者保護対策と日本政府施策の問題点>

1)安心して保護される場の保障・・母語の保障、専門相談員、長期保護も視野に→人身売買被害者保護・支援機関が不可欠。
  政府の対応・・婦人相談所での一時保護(2週間)

2)医療・カウンセリングの保障・・心のケア、精神病、HIVその他の性感染。医療の必要性大きい。
  政府の対応・・医療費の予算化なし。無料低額診療実施医療機関紹介

3)リハビリテーションの保障・・心身が健康な状態になるまでの回復。不利益の回復(未払い賃金、損害賠償、民事訴訟・刑事告訴)
                これからの人生設計(母国への帰国、日本で暮らす、第三国への出国)
  政府の対応・・法務大臣の裁量による在留特別許可の弾力的運用

人身売買の被害者は国際的犯罪の被害者。
人身売買を横行させている日本は被害者に対して保護と回復までの支援に責任を持つことが最低限の責務。
人身売買撲滅のために業者の起訴に協力することだけを要求するような保護であってはならない。

<私たちの課題>
1)性風俗産業の需要、作り出されている需要、流される大衆、黙認している私
2)外国人に対する偏見・無知と構造的暴力に対する無関心「日本に来る方が悪い」?

「人権」を守ることを中心とした動きを市民の側から作ること。



再びベイル氏が登壇。コーディネーターから質問のあった
「米国で2000年に施行された連邦法"人身売買被害者保護法"と送り出し国との連携」の2点について説明がありました。
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1)米国の人身売買被害者保護法について・・(A)被害者を犯罪者扱いしないということが(施行後)最も大きく変わった点(B)被害者と位置づけられると、その人が抱えている法的問題が問われなくなる(C)被害者を刑務所に入れてはならない(D)直ちに医療行為が義務づけられた(E)安全に生活する場所の提供(F)お金、服など当面生活するための必需品を援助(正式に被害者と確認される前にも援助することが義務づけられている)
※暴力的な犯罪の被害者の場合、「先ず助け、そのあとで問う」というのが基本的な考え。

2)海外との協力
2つの方法がある。
1つは一般的な方法で送り出し国の側で啓発キャンペーンを行うなど。しかし奴隷になるのを止めるのはとても難しい。大きな問題は貧困であり貧困に押し出されているから。

もう1つは被害者になったあとで本人とその家族を保護する方法。家族全員にビザを発行し全員(6人)を米国に連れてきた。しっかり守ることによって犯罪組織に対する証人になることが期待できる。
6人分の航空券代で1人の犯罪者が捕まれば何百もの人が奴隷になるのを防ぐことが出来る。


<人身売買とは>

  すべて人は、誰からも奴隷のように扱われない権利があります。人身売買は、人をまるで家畜や品物のように扱う行為です。2001年に国連でつくられた「人身売買禁止議定書」によると、人身売買とは、人を搾取することを目的に、強制的に人を採用したり、運んだり、ある場所から別の場所に移したり、ある場所に隠したり、受け取ったりする行為をいいます。
  18歳未満の子どもの場合は、搾取という目的があれば強制がなくても人身売買となります。人身売買は女性や子どもだけが被害にあうとは限りませんが、女性や子どもが被害者の多数を占めるのが事実です。
  日本では、とりわけ海外の女性(女児を含む)をさまざまなルートを使って日本国内の性産業に送り込み、それによって利益をむさぼることが問題となっています(主催者パンフレットより)

ケビン・ベイルズ氏・・米国ミシシッピー州在住。現代奴隷制および人身売買問題の専門家。国連にお ける人身売買問題コンサルタント。ワシントンDCに本部をもつNGO フリー・ザ・スレイ ブズ(Free the Slaves)代表であり、サリー大学ローハンプトン校教授。 少なくとも2700万人といわれる「21世紀の奴隷」の人権回復に向けた具体的な行動を 精力的に展開している。著書『グローバル経済と現代奴隷制』(Disposable People) は2000年のピューリッツアー賞候補。


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