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■ エ ー リ ッ ヒ ・ ケ ス ト ナ ー ■
(Erich Kästner 1899~1974)

1899年2月23日、ドイツ・ドレスデンの皮革職人の子として生まれる。
第1次世界大戦で召集され、士官候補生としての訓練中上官の酷いいじめに心臓病を患うほどに悩まされる。終戦後はベルリン大学、ローシュトック大学、ライプチヒ大学でドイツ文学を学ぶが、敗戦国ドイツは貧困のさなかにあり、彼も様々なアルバイトをしながらの苦学だった。
卒業後は詩人として活躍し4冊の詩集を刊行。また1928年からは児童文学も書き始め『エーミールと探偵たち』で好評をはくすなど、この分野でも第一人者としての地位を築くが、ナチスが政権を取ると作風が反体制的であると見なされて『エーミールと探偵たち』を除く全ての著作が焚書となり、執筆や出版を制限されたり、2度逮捕されるなど迫害を受けるが、亡命を勧められてもがんとして受け入れず、偽名で脚本を書いたり、発禁処分になる恐れの少ない政治色を排したユーモア小説三部作を発表したりなどしてナチスに抵抗し続けた。
終戦後は本格的に執筆活動を再開し、1949年に発表した『ふたりのロッテ』が大ベストセラーになる。1960年には『わたしが子どもだったころ』で第3回国際アンデルセン大賞を受賞した。
1974年7月29日、ミュンヘンにて死去。

■ 映画化された作品 ■
(ご紹介しているサイトは別ウインドで開きます)
日本では主に児童文学が有名ですが、その作品の多くが映画化されています。
 yahoo!ムービー エーリッヒ・ケストナー



作 品 I N D E X 





 この著者の既読本



NEW
■ 雪 の 中 の 三 人 男 ■
(Drei Männer Im Schnee 1934年)
★★★★

アルプスの高級スキー・リゾートホテルを舞台に
貧乏人のふりをした百万長者と失業中の貧乏青年が取り違えられて起こる抱腹絶倒の喜劇


オンライン書店ビーケーワン:雪の中の三人男

雪の中の三人男 小松太郎:訳

 東京創元社 1982 \609 4488508022

オンライン書店bk1




■ 内 容
”高級ホテル十日間滞在の旅”が懸賞に付いたトーブラー・コンツェルンのプッツブランク工場の公募広告に2人の男が当選した。一等賞は大学は出たものの長いこと失業中で貧乏なフリッツ・ハーゲドルン青年、二等賞はシュルツェ氏。このシュルツェ氏、実は偽名で応募した枢密顧問官で当のトーブラー・コンツェルンの会長、百万長者のエドゥアルト・トーブラー氏その人だった。
トーブラーはこの機会を利用して貧乏人シュルツェとしてお忍び旅行を楽しもうと、目を背けたくなるような珍妙で貧乏たらしい旅装を用意し、下男のヨーハン・ケッセルフートを金満家に仕立てて同行(ただし見ず知らずの人物として)させた。一方のハーゲドルンはいつもの着たきり一張羅で出立した。
父親の計画を危ぶんだトーブラーの娘ヒルデガルトは父親には内緒で滞在先のホテルに電話を入れた。「百万長者が貧乏人のふりをして滞在するから、気が付かないふりをしながら百万長者が快適に過ごせるように気を配ってほしい。」と・・・。
ところが、ホテルではハーゲドルンとシュルツェを取り違えたから、さあ大変! 下へも置かぬ待遇に訳がわからない貧乏青年。逆にシュルツェは厄介者扱いされて・・・。

児童文学で名高いケストナーが大人のために書いたユーモア小説。
■ 目 次
第一の序文 芸術的主題としての百万長者/第二の序文 作者がねたを明かす
1.朋輩どうし/2.シュルツェ氏とトーブラー氏/3.ハーゲドルン親子/4.安物あさり/5.ブルックボレインのグランドホテル/6.二つの誤解/7.シャム猫/8.雪人形カシミア/9.雪の中の三人男/10.ケッセルフート氏の興奮/11.孤独なスケーター/12.ルンペン舞踏会/13.大きなリュックサック/14.ひと目見て/15.ドアをはさんで<三つの問い>/16.ヴォルケンシュタインの頂上で/17.希望と構想/18.ぶちこわされた錯覚/19.シュルツェにもさまざま/20.いやなことはあとから
■ 純粋に笑える
この作品は1934年に書かれたもので、既にケストナーの作家活動はナチスから厳しく制限されている時期の作品です。そのため、全く政治色の無い内容になっているのだそうですが、それにしても、何か教訓めいた事とか風刺とかが感じられるかと思ったのですが、見事に純粋に楽しめる小説になっていました。
ただ、ドイツが第一次世界大戦の影響で不景気なことだけは2つの<序文>から強烈に伝わって来ます。
他にも、有閑マダムの恋愛遊戯相手探しの露骨さやホテルの支配人やポーターの貧乏人に対する差別的な態度などが滑稽なほどに強調されていて、ケストナーがそんな人種に批判的なのは良く伝わって来ますが、それは当時でも多くの一般民衆の共感を呼んだでしょうし、ナチスから見ても問題は無かったのでしょう。第一、それは批判という意味よりも笑いの大きなツボとしての意味合いの方が強くて、これ無しにはこの作品の面白みは半減してしまいます。

■ 微笑ましく爽快な無邪気さ
でも、ただ滑稽なだけで笑いを誘われるんじゃありません。
この作品が舞台化された時の題名は『いつまでも子ども』と言うんだそうですが、その題名通りに、トーブラー(シュルツェ)もハーゲドルンもケッセルフートも呆れるほどの子どもっぽさを発揮しています。トーブラーとケッセルフートは老人と言ってもいい歳だし、ハーゲドルンだって大学出の立派な大人。それが、徹夜で雪人形(雪だるま?)なんか作って喜んでるんです。
特に枢密顧問官様ともあろうトーブラーの意地の張り方やわがままは本当に”大きな子ども”と言うのがぴったりです。しかし、そんな彼らの子どもっぽさ、よく言えば無邪気で純真なところに最初は呆れていたのが段々と微笑ましく思われて来ます。そして、そんな彼らの行動が爽快にさえ感じられるようになって行きます。

■ 魅力的な人物・・・ヨーハン・ケッセルフート
この無邪気な3人の中で個人的には、金満家に扮している下男ケッセルフートが一番面白い人物に思えました。虐げられている主人の惨状を見かねて、周囲は勿論、当の主人にも隠れてこっそり世話を焼くのですが、そんな心根が実に良いのです。卑屈な使用人根性などではなく、忠誠心の域すらも出て、最早それは愛情と言ってよく、ケッセルフートの人柄の良さが伝わって来ます。また、人品卑しからぬ品格を隠し持っていて、それなりの服装をさせればりっぱな紳士に化けてしまうところも素敵です。
3人の本来の立場が全て入れ替わっているという設定が巧く生かされていて、人格は身分や、まして金持ちか貧乏かなどは全く関係ないのだということがケストナーがこの作品に込めた唯一の主張らしい主張だと思われますが、そんな中で浮かび上がって来たケッセルフートという人物の奥深さが一番印象に残りました。
(2006.2.20)


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