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ホームジャンル別IXDEX推理小説(海外作家)>ロバート・ゴダード


■ ロ バ ー ト ・ ゴ ダ ー ド ■
(Robert Goddard 1954~)

1954年英国ハンプシャー州フェアラム生まれ。ケンブリッジ大学ピーターハウスカレッジで歴史学を学び、デヴォン州議会教育部書記官を経て1986年の処女作『リオノーラの肖像』発表。発表と同時に「希代のストーリーテラー」と呼ばれるようになった。日本に於いても、年末のミステリー・ランキング海外部門の常連となっている。
単なる推理小説に留まらず、主人公の愛と苦悩を描く叙情的な作風で、主人公が巻き込まれる現在の事件を、過去の事実を追求する事により明らかにして行く・・・というパターンに特徴がある。



作 品 I N D E X 






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■ 千 尋 (ちいろ) の 闇 ■
(Past Caring 1986年)
★★★★☆

文春ミステリーベスト10 20世紀海外部門25位 96年度海外部門6位
本の雑誌 90年代のベスト100 24位

オンライン書店ビーケーワン:千尋(ちいろ)の闇 上

創元推理文庫 幸田 敦子:訳

 東京創元社 1996.10 ¥ 861 448829801X

 東京創元社 1996.10 ¥ 861 4488298028

オンライン書店bk1


■ 内 容 ■
ポルトガルの沖合いの島マデイラ島に住む資産家セリックから20世紀初頭にイギリスの内務大臣だったストラフォードの回顧録を渡され、調査を依頼された元歴史教師マーチン。回顧録には一般に知られている彼の順風満帆な生涯からはうかがい知れない無念が綴られていた。そのギャップに興味を抱き調査を始めたマーチンは、事故死とされている彼の死に疑問を持つ。

■ コメント ■
よく出来た作品だと思います。読み出したら主人公マーチン同様、ドンドン深みにははまって行く面白さです。巧みな謎が幾重にも用意され、解いては進み、解いては進みで飽きさせません。過去の出来事と現代の事件の交錯、決して大団円とはいえない終焉など、以後の作風の特徴が良く出た作品です。


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■ リ オ ノ ー ラ の 肖 像 ■
(In Pale Battalions 1988年)
★★★★☆

オンライン書店ビーケーワン:リオノーラの肖像

文春文庫 加地美知子:訳 *絶版

文芸春秋 1993.01 ¥ 830 4167218097


オンライン書店bk1 絶版本を投票で復刊! 『リオノーラの肖像』


■ 内 容 ■
リオノーラは娘に昔語りを始める。ミアンゲイト館での彼女の少女時代の記憶は暗く、謎に満ちていた・・・。ソンムの会戦(第1次世界大戦)で戦死した父親のこと、彼女自身の出生の秘密、母リオノーラ(同名)を巡る三角関係と殺人事件。隠され続けたこれらの事柄に不審を抱き続けていた彼女の元に訪れたウィリスという男は長年にわたりこれらの謎を追い求め、とうとう解明したという。しかし、そのウィリスが死に、遺産が彼女に贈られていた事から新たな謎が浮かび上がる・・・。 第1次大戦の時代を舞台に、戦場に借り出された若者の悲惨な体験とそれによる心の傷、一人の女性の生涯を探るゴチック・ロマン的な要素がうまく融合した作品。

■ コメント ■
邦訳第1作目です。様々なミステリー・ランキングで上位を獲得している「千尋(ちいろ)の闇」に比べると評価の低い作品ですが、しかし、内容は「稀代のストーリーテラー」の名に恥じないものです。個人的にはちょっと硬い内容の「千尋の闇」よりもドラマチックで読み易く、惹き付けられました。
第1次大戦というゴダードのこだわりのテーマを扱っている点、現在と過去が交錯するストーリーという点でも、彼の特徴的な作風を備えているので、ゴダード入門に、また、ゴチック・ロマンがお好きな方は最適かと思います。


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■ 闇 に 浮 か ぶ 絵 ■
(Painting The Darkness 1989年)
★★★★☆

文春ミステリーベスト10 98年度海外部門2位
このミステリーがすごい! 98年度海外部門9位

オンライン書店ビーケーワン:闇に浮かぶ絵 上

文春文庫 加地美知子:訳

 文芸春秋 1998.02 ¥ 650 4167527510 重版未定

 文芸春秋 1998.02 ¥ 650 4167527529 重版未定

オンライン書店bk1


■ 内 容 ■
時は19世紀末。11年前に自殺したはずの嫡男ジェイムズだと名乗る男(ノートン)がダヴェノール准男爵家に現れた。自殺はしたものの一命を取りとめアメリカで暮らしていたのだと言う。確かに死んだはずのジェイムズと良く似ていて反駁する材料はないのだが、兄に代わり財産と爵位を相続していた弟ヒューゴーは勿論、母親も彼を息子として受け入れようとはしなかった。彼は本当にジェイムズなのか・・・?

■ コメント ■
貴族社会を描いた珍しい作品です。しかし、相変わらず歴史的な事柄の織り交ぜ方は見事。ストーリーも二転三転の面白さです。ノートンは明らかに胡散臭いんですが、では何故そんなにもジェームズに似ているのか? ダヴェノール准男爵家の内情に詳しいのか?・・・という疑問を抱かせ続けられます。また、ジェイムズの婚約者だったコンスタンスの切ない心情も読みどころの一つになっています。
ビクトリア朝の小説がお好きな方には特にオススメの作品です。


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■ 蒼 穹 の か な た へ ■
(Into The Blue 1990年)
★★★☆

文春ミステリーベスト10 97年度海外部門4位
このミステリーがすごい! 97年度海外部門6位

オンライン書店ビーケーワン:蒼穹のかなたへ 上

文春文庫 加地美知子:訳

 文芸春秋 1997.08 ¥ 650 4167254212 重版未定

 文芸春秋 1997.08 ¥ 650 4167254220 重版未定

オンライン書店bk1


■ 内 容 ■
共同経営者に裏切られ、倒産の憂き目を見たうだつの上がらぬ中年男のハリーは、昔アルバイトとして雇ってやった学生で今は国防次官に出世しているダイサードのロードス島の別荘に管理人のような立場で置いてもらっていた。そこへダイサードの秘書の妹ヘザーが休暇で訪れる。親しくなった2人は一緒に山歩きに出掛けるが、山頂を目指すというヘザーと別れてハリーは下山。しかし、ヘザーはいつまで経っても戻って来なかった。警察はハリーに殺人容疑をかけるが、遺体も見つからぬまま、捜査は打ち切られる。
ヘザーが生きていると信じているハリーは彼女の行方を捜し始めるが・・・。

■ コメント ■
ダメ男が優位な女性に翻弄される、という構図はこの作品が最初です。ハリーはダメ男ながらなかなかに魅力的な人物です。
ハリーはヘザーを捜すうちに次から次へと新たな謎に遭遇します。そして、思いもよらなかった事実を突き止めます。そのあたりはミステリーとしても十二分に楽しめますが、それ以上にここに係わって来る重要人物の不幸な過去やそれによって歪められてしまった人間性に興味を惹かれました。
この作品は前3作と違い歴史は係わって来ません。それに抵抗感があった方にはこちらの作品がオススメです。

  『日輪の果て』はこの作品の続編に当たります。


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■ さ よ な ら は 言 わ な い で ■
(Take On Farewell 1991年)
★★★★☆

本の雑誌が選ぶ文庫ベスト100 45位

オンライン書店ビーケーワン:さよならは言わないで 上

扶桑社ミステリー文庫 奥村章子:訳

:  扶桑社 1994.10 ¥ 612 4594015654

:  扶桑社 1994.10 ¥ 612 4594015662

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■ 内 容 ■
ジェフリーは新聞記事で12年前に自分が設計した屋敷で起きた惨劇を知る。屋敷の女主人コンスエラが砒素により夫の殺害を目論み、夫は一命を取り留めたものの、居合わせた夫の妹が同じお茶を飲んで死んでしまったというものだった。実は、仕事でその屋敷に出入りしていた当時、ジェフリーは夫に顧みられない妻のコンスエラと不倫の関係にあり、駆け落ちまで計画していた。だが、キャリアの一大転機になるような大仕事が舞い込み、ジェフリーはコンスエラを裏切ってしまったのだ。しかし、その仕事の成果である大ホテルも第一次大戦の戦火で跡形も無くなってしまい、ジェフリーの建築家としての未来も同時に潰えてしまった。あの時、駆け落ちを決行していればコンスエラもこのようなハメには陥らず、自分もまた、ささやかながらも幸福でいられたのではないか・・・。警察を始め、生き残った夫からも犯人と目されているコンスエラの無実を信じ、ジェフリーはあの時の行いの贖罪の意味も込めて彼女の無実を証明しようとするが・・・。

■ コメント ■
この作品は珍しくメロドラマ調です。勿論、”第一次大戦”、”ダメ男と優位に立つ女性”という特徴は備えていまし、推理物としての骨格も整っています。しかし、一番強く感じるのは、切なさです。ジェフリーに対してどこまでも冷たいコンスエラに対し、後悔に苛まれ、何としてでも彼女を助けようと言うジェフリーの心情が非常に痛々しく、切なく、やるせないのです。コンスエラの冷たさに怒りさえ覚えるほどです。
そして、決してハッピーエンドとは言えない結末を迎えるのが常のゴダード作品の中でも屈指の悲劇的な終焉が待ち構えています。そのラストの描写が非常に切なく、それまでのメロドラマ調はこのクライマックスを更に印象的にするための伏線だったようにさえ感じられます。
重厚なテーマを内包した他の作品に比べ、恋愛感情に重点が置かれたこの作品は軽めに見られがちですが、主人公の感情がストレートの伝わって来る点とこの涙さえ誘われる悲劇的なラストで強く印象に残る作品です。


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■ 鉄 の 絆 ■
(Hand in Glove 1992年)
★★★★

オンライン書店ビーケーワン:鉄の絆 上

創元推理文庫 越前敏弥:訳

 東京創元社 1999.4 \735 4488298044

 東京創元社 1999.4 \840 4488298052

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■ 内 容 ■
英国を代表する詩人トリストラム・アブリーはスペイン内戦に義勇兵として参加し1938年に戦場にその若い命を散らせた。
彼の死から半世紀後のある夜、彼の姉のベアトリックスの家に男が侵入し彼女を撲殺した。警察は彼女の所有していたアンティークが目的の強盗の犯行と断定。古物商のコリンが逮捕される。
一方、ベアトリクスの屋敷を相続した姪のシャーロットのもとには詩人トリストラムの研究者が現れ、伝記の資料にトリストラムが姉に宛てた手紙が見たいと申し出た。ところがいくら探しても手紙の類いは何も見つからない。また、彼女はベアトリクスの旧友から、彼女が自分の死を予測し、自分が不慮の死を遂げたら郵送して欲しいと4通の封筒を渡されていたことを知る。そして、その中に研究者が探していた手紙の入ったものもあったらしいのだ。
手紙の行方を追ううちにシャーロットは、自分が全く知らなかった事実を突きつけられる。そしてベアトリクスがある大きな目的のために綿密な策謀を練っていたらしいことに気付く。ベアトリスは一体何のために、何故そのような策謀をめぐらしたのか・・・。

■ コメント ■
スペインの内戦が≪過去≫として深くかかわって来ます。その辺りの歴史に馴染みの薄い日本人にはちょっと難しい感じもしますが、謎に惹かれて読めてしまうでしょう。手紙の行方は割と早くわかってしまうんですが、その手紙にはもっと重大な秘密が隠されていて・・・と言った具合で、どんどんスケールが大きくなってストーリーも派手な展開を見せ始めます。そこにはロマンスあり、アクションあり、謎解きありで読ませどころ満載。人物も良く描けていて、バランスの取れた良い作品だと思います。


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■ 閉 じ ら れ た 環 ■
(Closed Circle 1993年)
★★★

オンライン書店ビーケーワン:閉じられた環 上

講談社文庫  幸田敦子:訳

 講談社 1999.9 \680 4062646722 重版未定

 講談社 1999.9 \680 4062647052 重版未定

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■ 内 容 ■
詐欺師のコンビ・ガイとマックスはアメリカから母国イギリスヘ向かう豪華客船に乗り込んだ。そこで知り合ったダイアナはチャーンウッド投資信託会社の社長令嬢。カモは決まった。早速誘惑開始。万が一にも結婚出来ればBESTだが、そうでなくても手切れ金ぐらいせしめられるだろうとの魂胆だったが、マックスはダイアナに本気で夢中になってしまう。ダイアナも満更ではなさそうで、2人はガイなどそっちのけ。そして、イギリス到着後も順調に交際を続けていたのだった。
マックスの変貌振りに驚いているガイにダイアナの父・チャーンウッド社長が面談を求めて来た。案の定、手切れ金の話で、ガイはホクホク。ところがマックスはカンカンだ。マックスは駆け落ちを決意。ガイは協力するふりをしながら金のためにチャーンウッドに情報を流していた。
いよいよ駆け落ち決行の夜、マックスはダイアナとの待ち合わせ場所に向かったきり戻って来ない。ガイがその場所に行くとダイアナが一人で居り、その足元にはチャーンウッドの死体が・・・。
誰がチャーンウッドを殺したのか? ガイの行方は?

■ コメント ■
舞台は1930年代で、いつものように過去が問題になって来ます。それも著者が得意な第1次大戦で、しかもその勃発に関する謎、という美味しい素材が揃っています。しかし、上のさわりの部分のあらすじを読んでいただくとわかると思いますが、ゴダードらしくない軽いストーリーのような気がしませんか?
実際、軽いと言うか、薄っぺらな感じが読んでいる間中付きまとって来ます。主役格が皆、小粒です。詐欺師という小悪党だからと言うだけじゃなく、人物造形自体に厚みなくてステレオタイプになっちゃってます。それでも最後まで読ませられてしまったのは、やはりゴダードの力なんでしょうが・・・。著者がゴダードでなければこんな作品もありかな?と思えるんですけれどもね。


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■ 永 遠 に 去 り ぬ ■
(Borrowed Time 1995年)
★★★★

オンライン書店ビーケーワン:永遠に去りぬ

創元推理文庫  伏見 威蕃:訳

全1巻 東京創元社 2001.2 \1,260 4488298060


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■ 内 容 ■
ブリュッセルで欧州委員会の官僚として勤務しているロビンは迷っていた。長兄のヒューが亡くなったために職を辞してヒューの穴を埋めるべく同族会社に経営に参加して欲しいと親族たちは考えているらしい。自分としても今の職にさして未練はないが、かといって、同族会社の先行きも不透明だ。
考えをまとめる時間を持とうと故郷ウェールズまで山歩きをしに来ていた。
そんなある夕暮れ時、風景を観ていたロビンに一人の女性が声を掛けて来た。美しく聡明そうで、しかし人恋しそうな彼女としばらく人生について語り合い、そしてお互い名も告げぬまま別れた。
その何日か後に、ロビンは彼女を新聞の記事で見つけた。著名な産婦人科医の妻だというルイーズ・パクストンはあの日ロビンと別れてから数時間後にレイプされた後に絞殺されたというのだ。場所は彼女が支援していた画家の家で、その画家も同じ手口で殺されていた。
ロビンは警察にルイーズとのつかの間の出会いを話す。彼の胸には、あのときの自分の対応が違っていれば彼女は殺されずに済んだかもしれないという慙愧の念があった。そしてそのために益々ルイーズが忘れ難い存在になって行き、彼女の遺族と深く係わっていくようになる。

■ コメント ■
今回は、過去は登場しません。主人公もダメ男とは言えないし・・・。前半は淡々としていて、ちょっと間延びした感じがします。ロビンは大した行動も起こさず、ひたすらルイーズとの邂逅を思い出しては感傷に浸ってばかりで、それがちょっと甘くて切ない感じで、悪い雰囲気ではないんですが、イライラするのは否めません。しかし、それも殺された女性を謎めいた存在にする効果があったようです。後半は急転直下!ゴダードの面目躍如と言った感じで、さすがに読み応えがあり、ちゃんと佳作になっています。が、やはり前半の平板さが響いてぴりっとした感じはありません。


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■ 日 輪 の 果 て ■
(Out of the Sun 1996年)
★★★★

『蒼穹のかなたへ』続編

オンライン書店ビーケーワン:日輪の果て 上

文春文庫  成川 裕子:訳

 文芸春秋 1999.4 \570 4167218550 重版未定

 文芸春秋 1999.4 \570 4167218569 重版未定

オンライン書店bk1


■ 内 容 ■
・・・あれから6年後。ガソリンスタンドで臨時雇いのアルバイトをしていたハリーは驚くべき知らせを受け取った。息子が入院していると言うのだ。ハリーには息子などいない。不審に思いながらも”息子”が入院しているという病院に問い合わせるせ、その人物の名前と年齢を知って、思い当たる節があった。若い頃、上司の妻と不倫をしたことがあり、どうやらその時に出来た子供らしいのだ。34歳になるという息子の名前はデイヴィッドといい、なんでも高次元理論と言う野の研究では天才的と言われる数学者なのだという。その彼が今は植物状態だというのだ。デイヴィッドは糖尿病で、自分でインシュリン注射をしている毎日だったが、どうやらその注射の打ち過ぎが原因らしかった。
途方に暮れるハリーのもとに再び知らせがもたらされた。デイヴィッドと同時期に退職した2人の人物が相次いで命を落としているという。とすると、デイヴィッドがこんな状態になったのも・・・。ハリーは原因の究明に乗り出す。

■ コメント ■
『蒼穹のかなたへ』の続編です。正編を読んでから読まれることをオススメします。
単発の作品ばかり書いていたゴダードには珍しい続編ですが、読者の強い要望で書かれたそうです。ですが、ゴダード自身も主人公ハリーは一番自分に近いキャラクターでお気に入りなのだそうです。それだけに、ゴダード自身が楽しんで描いているのが良くわかる快作となっています。超常現象が起きたり、ドタバタっぽいくだりがあったり、楽しみながら実験的に書いているような感じがします。つまり、ちょっといつもの作風とは違っているのですが、お馴染みのハリーの登場ですんなり作品に入り込め、とても楽く読めました。


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■ 惜 別 の 譜 ■
(Beyond Recall 1997年)
★★★★

オンライン書店ビーケーワン:惜別の賦

創元推理文庫  越前敏弥:訳

全1巻 東京創元社 1999.1 \861 4488298036


オンライン書店bk1


■ 内 容 ■
姪の結婚披露宴に、少年時代の親友が闖入してきた。落魄した友は、三十四年前の秋、殺人罪で絞首刑になった父親の無実を訴え、翌朝首を吊って自殺する。罪悪感に突き動かされたわたしは、疎遠にしていた人々を訪ねる過去へのたびに出たが・・・。錯綜する物語は、失われたものへの愛情と激しい悔恨を湛え、万華鏡さながらに変転してゆく。

■ コメント ■
この謎の設定はシンプルながら、なかなか良かったです。話の展開も登場人物も、スッキリと整理された感じで、他のゴダードの作品のような複雑はプロットはありませんが、出来としてはいいです。ただ、「これぞゴダード!」という感じではないですが…。初めての人には読み易いと思います。ゴダード入門には良いかもしれません。


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■ 一 瞬 の 光 の 中 で ■
(Caught in the Light 1998年)
★★★★

オンライン書店ビーケーワン:一瞬の光のなかで 上

扶桑社ミステリー文庫  加地美知子:訳

 扶桑社 2002.2 \860 4594034233

 扶桑社 2002.2 \760 4594034241

オンライン書店bk1


■ 内 容 ■
イギリス人カメラマンのイアンは、撮影のため、真冬のウィーンを訪れていた。雪が舞う美しい街で、彼のカメラは、偶然ひとりの女性を捉える。彼女は、マリアンと名のる英国人だった…こうして、運命的な恋ははじまった。異国の街ではげしい逢瀬をかさねたイアンは、ついに妻子を捨てて、マリアンとの生活を決意する。だが、再会を約束して帰国したイアンを危機が襲う。彼のフィルムは何者かによって感光させられ、なにも写っていなかったのだ。しかも、マリアンは、約束の場所に現われない。

■ コメント ■
お得意の主人公のダメ男っぷりも飛びぬけたダメさです。ズルズルと深みにはまり込み、気が付いた時には全てを失っていたと言う典型的なわかり易ーいダメ男。しかし、ストーリーの方は一瞬、出来の悪いサイコモノかと思わされて、がっかり・・・一転、過去と未来を相変わらずの巧さで交錯させ、謎は次から次へと謎を呼び、グングングングン引き付けられて行きます。ゴダード作品の典型的な要素を持っている作品です。こちらも初めて読まれる方には、入りやすい作品かもしれません。


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■ 石 に 刻 ま れ た 時 間 ■
(Set in Stone 1999年)
★★★☆

オンライン書店ビーケーワン:石に刻まれた時間

創元推理文庫  越前敏弥:訳

全1巻 東京創元社 2003.1 \1,050 4488298079


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■ 内 容 ■
ロンドンからコーンウォールに転居し、待望の自然豊かな生活を始めた矢先、トニーは妻を失った。妻のマリーナは切り立った断崖で転落死したのだ。
親友のマットとマリーナの妹であるルーシーの夫妻はトニーの悲しみを癒そうと、最近手に入れたばかりのレスターシャーにある古い屋敷に彼を招待した。屋敷の名はアザウェイズ。第一次大戦前、異端と言われた建築家エミール・ボズナンによって設計されたもので、人造湖に囲まれ、円形をモチーフにした奇妙な形状をした屋敷だったが、代々そこに住む者は奇怪で悲惨な死を遂げているという。そして、彼らの周囲にも何やら不穏な気配が漂い始めた。

■ コメント ■
その中では時間が乱れ過去の住人が出現すると言う不思議な屋敷アザウェイズ。この不思議な屋敷の謎をどんな風に解明してくれるのか、興味津々。得意の過去の事件も出て来るし…。
ところが、事件の謎解きも、屋敷に起こる不思議な現象についての解明も、どちらも中途半端。屋敷の不思議はホラーのままで終わってしまった感じでがっかりです。新しい境地を模索している意欲は伺えますが…。題材としては興味深いものが揃っているのでとても残念です。巧くすれば物凄い傑作になったかもしれないのに…。


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■ 今 ふ た た び の 海 ■
(Sea Change 2000年)
★★★★

オンライン書店ビーケーワン:今ふたたびの海 上

講談社文庫  加地美知子:訳

 講談社 2002.9 \880 4062735385

 講談社 2002.9 \880 4062735768

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■ 内 容 ■
1721年、英国史上最も悪名高き経済事件・南海泡沫事件が勃発。英国の経済は大混乱に陥り、政治スキャンダルへと発展しそうな様相を呈していた。
その頃、地図作製士のスパンドレルは亡くなった父の負債を抱え抜き差しならない状況に追い込まれていた。そんな彼に、債権者でも最も高額の債権を持っているサー・シオドアが債権を棒引きする代償としてある仕事を持ちかけられた。それは、今スキャンダルに発展しそうな例の南海会社からの賄賂が記されている『グリーン・ブック』と呼ばれる秘密の帳簿をオランダの友人に届けるというものだった。
その仕事を引き受け、無事に使命を果たしたスパンドレルだったが、何者かに命を狙われた。口封じだと判断した彼は『グリーン・ブック』を奪い返してやろうとするが・・・。

■ コメント ■
ゴダードには珍しい純然たる歴史物で、彼の作品の特徴の1つになっている現在と過去の交差はありません。ハラハラドキドキのサスペンスタッチの冒険小説と言った感じでちょっと驚かされます。それだけにぐいぐいと引っ張られるように読めてしまいました。謎の解明は幾重にも仕掛けが施してあり、その辺りはやはりゴダード、大変面白いものに仕上がっています。でも、ヨーロッパ人にはピンと来るらしい南海泡沫事件というのがいま一つピンと来ないのが残念でした。まあ、仕方が無いですね。


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■ 秘 め ら れ た 伝 言 ■
(Dying to Tell 2001年)
★★☆

オンライン書店ビーケーワン:秘められた伝言 上

講談社文庫  加地美知子:訳

 講談社 2003.9 \920 4062738406

 講談社 2003.9 \920 4062738414

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■ 内 容 ■
ランスは幼馴染で命の恩人でもあるループが失踪したことを彼の姉から知らされ、捜してくれるよう頼まれる。ランスが調べたところ、ループは1963年に英国で起きた大列車強盗事件について調べていたことがわかった。ランスはその謎を解き、ループを発見すべく、ベルリン、東京、京都、サンフランシスコと手掛かりを求めて飛び回る。

■ コメント ■
まるでジェットコースター・ムービーを観ているような、息つく暇も無い展開。サクサクと読み易く、グイグイ引っ張られるように読めます。でも、ただそれだけ。派手なシーンなど無くて良いから、謎の解明のプロセスにもっと凝って欲しかった。日本が舞台になると言うので期待半分、がっかりしそうだなぁという思い半分で読みましたが、がっかりの方でした。ランスが京都に行く部分なんて特に取って付けたようで、単なるくすぐりにしか感じられません。
新しい方向性を見出そうとしているのはわかりますが、この手のモノならゴダードでなくてもいくらでも書く人はいます。ゴダードにしか書けないような作品を書いて欲しい・・・と言うのが一番の感想です。


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■ 悠 久 の 窓 ■
(Days Without Number 2000年)
★★★★☆

屋敷に隠されているという中世のステンドグラスの謎とは?
屋敷の売却に反対だった父の死を切っ掛けに家族に災厄が降りかかる


オンライン書店ビーケーワン:悠久の窓 上

講談社文庫 加地 美知子:訳

:  講談社 2005.03.15 ¥ 920 406275021X

:  講談社 2005.03.15 ¥ 940 4062750392

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■ 内 容
イギリスのコンウォールに本拠地を置くパレオロゴス家はビザンチン帝国皇帝の末裔だとの伝説を持った一家だった。その一員ニック・パレオロゴスは長兄アンドルーの50歳の誕生日を家族で祝うため父の住む古びた屋敷トレナーに向かっていた。しかし、アンドルーの誕生日祝いは口実で、父のもとに5人の兄弟姉妹が集う本当の目的はトレナーの売却に反対する父を説得することにあった。タントリスという大富豪がトレナーには中世の極めて価値の高いステンドグラスが隠されていることが判明したと言い、法外な高値で屋敷を買い取ると申し出ていたのだ。乗り気薄だった末弟ニックと次兄バジルも金を必要としている兄や姉たちに協力する約束をしていた。だが、説得は見事に失敗に終り、アンドルーは席を蹴って帰る始末。他の弟妹たちも退散するしかなかった。まさにその夜、父はセラー(地下室)の階段から足を踏み外して死んでしまう。
それを切っ掛けに兄弟たちは思わぬ事態に巻き込まれ、翻弄されて行くことに・・・。父の新たな遺言状と隠された古い死体の発見、架空だったトレナーの買取話、長兄アンドルーの事故死。家族に降りかかる不可解な状況と度重なる悲劇にニックとバジルは否応無くその原因を追究せざるを得なくなるが・・・。

■ 読むほどに深まる謎
屋敷を売った分け前が欲しい人間がいて、屋敷を売りたくない人間が死ぬ・・・始まりはとても単純な構造に思えました。死んだ父親の新たな遺言状によって兄弟たちが屋敷の権利が奪われても、それはちょっとした悲喜劇に思えます。(この部分は喜劇性を意識して書かれているように感じます。)しかし、そこから加速度的に不可解な出来事が起こり、一つの手掛かりにたどり着くと更に新たな謎が浮かび上がると言ったような底知れない様相を呈するようになります。また、誰をどこまで信じていいのか、ニック同様翻弄され続けます。
翻弄されるニックが遭遇する人物は積極的に情報をくれ、次のステップへと導いてくれます。この辺りが少々ワンパターンで不満に感じられましたが、読み終わるとこれも著者の意図の一つだったことがわかります。

■ 他の作品には無い温かさ
ニックはゴダード好みのダメ男の系譜に連なる人物ではありますが、他の作品の主人公とは決定的に違う点があります。孤独感や社会からの疎外感(落ちこぼれ感?)を持ち合わせている点は他の作品の主人公と同様ですが、この作品ではニックの肉親や縁者が数多く登場します。ニック自身は、兄弟同志は疎遠だと言い、兄や姉は煙たい存在でしかないように言っていますが、彼の行動の端々からは肉親に対しての親近感や甘えを感じ取ることが出来ます。これが孤立無援と言っていい他の主人公たちとは大きく異なる部分です。それが他の作品には無い温かな雰囲気を醸し出していて、とても好感が持てました。

■ ステンドグラスの秘密と主題の融合
事件が終息を迎え、この事件が何故起きたのかがわかっても、問題のステンドグラスが登場する必然性が感じられませんでした。ステンドグラスにまつわる逸話は興味深く読めたものの、他の現代と歴史的な時代を平行して扱った作品のように、2つの時代が同時進行するわけでもありません。しかし、そのステンドグラスそのものに隠された秘密が明らかになる時、ステンドグラスが隠され続けて来た謎も氷解します。そして、それが作品全体のテーマをも表わしていることに気付かされ、同時にニックが事件に対して受動的に描かれている理由もわかるのです。”Days Without Number”という原題の意味もここに来て初めてわかります。
この作品は読み終えて初めて、その構成の見事さがわかる作品です。
(2005.4.7)



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■ 最 期 の 喝 采 ■
(Play to The End 2004年)
★★★★

落ち目の俳優トビーに次々と降り掛かる災難
その裏には地元の実業家一族の秘められた闇が!

オンライン書店ビーケーワン:最期の喝采


全1巻 講談社文庫 加地美知子:訳

講談社 2006.1 \1,040 4062752905


オンライン書店bk1


■ 内 容
落ち目の舞台俳優トビー・フラッドは進まぬ気を奮い立たせて不人気な芝居の主役を務めるべく最後の興行地となるブライトンに向かっていた。気が重いのは芝居が不人気なだけではなかった。そこは離婚訴訟中の妻のジェーンが婚約者と暮らしている街だった。トビーは自分を捨てて行った妻にいまだ未練を持っていた。
ブライトンに到着したトビーに思い掛けなくジェーンから連絡が入った。ある男に付きまとわれて気味の悪い思いをしているのだが、その男がトビーのファンらしいので何とかして欲しい、と言うのだ。その男デリク・オズウィンは一度はトビーに”ジェーンに付きまとわない”と約束したものの、すぐにそれを破り、トビーに主演舞台の休演を迫った。代役を立てて一夜だけ休演したトビーにデリクが明かしたジェーンに付きまとう本当の理由とは、彼が書いたコルボナイト社の歴史『ザ・プラスティック・マン』の原稿の売り込みだった。コルボナイト社はジェーンの婚約者ロジャー・コルボーンの家が経営していて今は閉鎖されたプラスティック工場で、デリクはそこの元従業員だった。ロジャーに出版の協力を頼んだが無視されたのでこんな手段に及んだのだと言う。トビーが自分のエージェントに原稿を見せると約束すると、デリクは喜んでジェーンに付きまとうのはやめると宣言した。
同じ夜、トビーの代役を務めたデニス・メイプルは怪しげな美人局(つつもたせ)に引っかかりそうになったが、彼らの狙いがトビーだったらしいと感じる。そして翌晩、デニスはその美人局の男に追いかけられていると電話でトビーに助けを求めて来た。トビーが駈け付けるとデニスは既に死んでいた。死因は持病の心臓発作だったが・・・。
そして、今度はデリクが何者かに拉致されたらしく、姿を消してしまう・・・。

つきまとい男を説得するだけのはずが、地元の実業家の一族の秘密に深く係わってしまうことになった男の8日間を描いたサスペンス。

■ 複雑で意外な展開をすっきりと読ませる
現在と過去を交錯させた重層的なストーリーが特徴のゴダードですが、この作品は2002年の12月のある8日間という極めて短い時間に起きた出来事が時系列で描かれています。ですから、いつもほど厚みのある物語にはなっていませんが、その分凝縮された濃密なストーリーになっていて、次から次へと主人公トビーの身に降りかかる事件に息つく暇も無いほどです。そしてその事件の一つ一つがあっちと絡まり、こっちと関係して・・・と言った具合に複雑に絡み合っているのですが、そんな複雑で意外な展開の連続を手に汗握る面白さですっきりと読ませてしまうのはさすがです。

■ 狂気の不気味さ
暴かれる真相もいつもよりはちょっと小粒な感じはしますが、それ以上に、そこに潜む人間の心の奥底に潜む狂気の不気味さが強く印象に残ります。ロジャーのジェーンに対する愛着、デリクの腺病質と言えるほどの几帳面さは常軌を逸しているように思えますが、それが彼らの個性となって異彩を放っています。
逆にトビーの方はゴダード作品ではお馴染みのタイプです。飛び切りではないものの、彼もダメ男の系譜に連なる人間で、巻き込まれる度合いといったら今までで最高の部類に属します。目新しいのは彼が俳優だということくらいです。それは、ブライトンに留まるのが興行期間が1週間で、何か問題を片付けなければならなくても常に公演の時間に縛られているという、主人公が常に時間的拘束を科されているという設定に生かされています。

■ 違和感を感じる点
以下は重要な内容に触れています。構わない方のみ下の領域を反転させてお読みください。>

降霊術が出て来てそれが重要な鍵になっているのには少し違和感を感じましたが、イギリスでは降霊術は信じる信じないは別にして、日本とは比べ物にならないくらいポピュラーなものらしいので、まあ、こんなのもありなのかなと…。

違和感と言えばラストにも少々感じないではいられませんでした。
結末は強い徒労感を感じさせる空しいもので如何にもゴダードらしいのですが、最後の最後はハッピーエンドです。その伏線はささやかながらも張られているので意外には感じないものの、らしくないと言えばらしくなく、しかし、主人公のためにはよかったなぁと思うなど、ちょっぴり複雑な心境です。

しかし、全体的には非常に強く惹かれる好作品と言えます。過去が交錯する作品が重厚過ぎると感じた方にはオススメです。
(2006.2.16)



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