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■ フ レ ッ ド ・ ヴ ァ ル ガ ス ■
(Fred Vargas)

1957年、パリ出身。二卵性双生児として生まれる。父はシュールレアリズム研究家。
パリ大学で考古学を専攻した後、国立科学研究所(CNRS)の研究員となり中世研究家として遺跡の発掘や講演をこなす一方でミステリーを書き始める。
未婚のまま漫画家との間に男児をもうける。相手の漫画家とは共同執筆をするなど良い関係を築いている。
(男性のような名前ですが女流作家さんです。^^)



作 品 I N D E X 



NEW
■ 青 チ ョ ー ク の 男 ■
(原題:L'Homme Aux Cercles Bleus 1990年)
★★★☆

1990年度サン・ナゼール・フェスティヴァル賞受賞作


夜毎路上に青チョークで描かれる円 その円の中には様々なガラクタが置かれていた
パリを騒がす奇妙な事件はやがて連続殺人へと発展して行った


オンライン書店ビーケーワン:青チョークの男

創元推理文庫 田中千春:訳

 東京創元社 2006.3 \735 4488236030

オンライン書店bk1




■ 内 容
ピレネーの山奥から警察署長としてジャン=バチスト・アダムスベルグが赴任して来たパリの街では青チョークで描かれた円の中に様々なガラクタが置かれるという奇怪な事件が頻発し話題となっていた。
ふとした切っ掛けで出会った盲人の美青年が気に掛かっていた著名な海洋生物学者のマチルド・フォレスチエは彼を探して欲しいと警察に直談判しに行った際に署長のアダムスベルグと知り合う。アダムスベルグはその盲人の美青年シャルル・レイエールを探し出してやり、シャルルはマチルドのアパートの一室に住むようになる。マチルドのアパートには一足先に住人になっていたクレマンス・ヴァルモンという老婆がおり、マチルドの資料整理を手伝っていた。
その間にも円の中にガラクタが置かれる事件は起き続けていた。アダムスベルグはその事件が危険な方向に発展する予感を覚え危惧していた。その矢先、ある朝発見された円の中には喉をかき切られた女性の死体が置かれていた・・・。

■ 感 想
前作の「死者を起こせ」は3人の歴史学者が主人公でしたが、この作品でも学者の登場人物が目立ちます。これは著者のヴァルガス女史自身が学者であることが原因だと思われます。
しかし、それ以上に前作との共通性を強く感じるのは登場人物に奇人変人が多いことです。
海から上がれば人の尾行ばかりしているマチルド、頭脳明晰な優秀な刑事のくせに午後4時以降は常に酔っ払っているダングラール、交際希望の広告に応募しては年中ふられ続けている薄気味悪いクレマンス婆さん、失明したことを根に持って偏屈になってしまったシャルル、そしてアダムスベルグ自身もつかみどころの無い人物でかなりな変わり者です。彼らの人物造形が非常に面白く、それだけでもかなりの読み応えがあります。

しかし、ちょっと問題なのが当の主人公のアダムスベルグで、彼には人間の残忍性を直感的に嗅ぎ取ってしまう能力があることになっています。そのため、誰もが見逃していた人物が犯人であることが本能的にわかってしまうのです。そんな人物が探偵役(ここでは警官ですが)のミステリーが果たして成立するものか…。
直感的に捜査を進めるアダムスベルグに対抗して証拠第一主義のダングラールが配されていて、2人の感覚的な違いもまた面白く読めますし、事件の解明も一応は論理的になされてはいるのですが、アダムスベルグは犯人を直感的に悟り、後から論理的な裏づけをしているらしく思われます。しかもその過程を語らない(書いていない)ので、導き出された結論が突飛なものに感じられてしまうのです。勿論、一応筋は通っているのですが、明快とは言い難いように思えます。読物としては面白いだけに、そこが惜しまれます。
この作品はシリーズ化しているそうで、人物的にはアダムスベルグは結構魅力的なので、この後の作品も出版されれば読んでみたいとは思いますが、この点がどうなっているのかが非常に気になります。それと、再びアダムスベルグのもとを去って行った恋人カミーユとの仲も…。
(2006.4.14)


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■ 死 者 を 起 こ せ ■
(原題:Debout les morts 1995年)
★★★★

ル・マン市ミステリ大賞/仏ミステリ批評家賞受賞作


オンライン書店ビーケーワン:死者を起こせ

創元推理文庫 藤田真利子:訳

 東京創元社 2002.6 \798 4488236022

オンライン書店bk1




■ 内 容
失業中やパートタイム講師の職しかない「クソに足を突っ込んでいる」状態の3人の歴史学者たちは、家賃節約のため<ボロ館>と呼ばれる家に同居することになった。中世史学者マルクの伯父で自称悪徳刑事の元警視も一緒だ。
西隣は元ソプラノ歌手が夫と共に住んでいるが、彼女の庭にある朝突然、ブナの若木が植えられていた。不審がる彼女に頼まれた3人はブナを掘り起こしてみるが、他に何か埋まっている形跡は無かった。
やがて、彼女が失踪。後に彼女は黒焦げの死体となって発見される・・・。

■ 感 想
馴染むなあ〜と思ったら、やはり女流作家さんでした。(男性みたいな名前ですが・・・)

「いつの間にこんな木が・・・?」と言うソフィア(元歌手)の疑問から始まったので、てっきり、軽い感じのミステリーだと思っていました。3人の歴史学者たちも変わり者ぞろいで笑わせてくれますし・・・。
でも、読み終えてみれば、ミステリーとしての骨格がしっかりしていて、なかなかどうして侮れない作品でした。

至る所に細かな伏線が張り巡らされています。しかも、かなり捻って。それがとてもさり気無いので、うっかりすると、読み流してしまいそうです。
犯人を当てる事は出来ましたが、本当の経緯には想像よりももう一捻りあって、非常に複雑な謎解きになっています。そこまで推論を組み立てるには、あれらの伏線だけでは無理なのではないか?と思えるのですが、読み直してみると、ちゃんと筋が通って、過不足無く書いてあります。ユーモラスな描写に惑わされて、そこまで綿密には考えずに読まされてしまうのです。

ネタばれ

この作品で一番感じるのはキャラクターの良さです。
食い詰めた歴史学者3人が個性的で、そのバランスも良く、作品の魅力のかなりな部分がこの3人の存在にあります。
主人公のマルクは中世、マティアスは先史時代、リュシアンは第1次大戦を専門にしていますが、3人の誰もが、自分の専門以外の時代を研究している奴を認めていません。性格も三者三様で、その呉越同舟の同居ぶりがユーモラスです。そんな3人も、共に住み、共に難局に立ち向かううちに、次第に相手の人格を認めて行くようになるのが微笑ましくもあります。

3人の中で一番気に入ったのが第1次大戦を専門にしているリュシアンです。
うるさい程のお喋りで、非常に辛辣な物言いをするのですが、興味の無い時は知らん顔。自分の研究が何より大事で、興が乗ると殺人事件でも、知ったこっちゃ無い!・・・と言う、かなり自己中心的なお人。 人が良いんだか、悪いんだか???・・・と、いう所が好きですね。元警視の「半分は天才だが、半分は馬鹿。」というリュシアン評が的を射ていると思います。
マティアスが一番安定感のある性格だと思いますが、整った人格の(あくまでも他に2人に比べてですが)キャラクターより、欠点を持ったキャラクターの方に魅かれてしまいます。リュシアンは欠点が多過ぎますが、だからこそ、たまにキラリと光る言動があると、「良し良し!」と褒めてやりたくなってしまいます。まるで、出来の悪い子供を持った親の心境・・・とでも言いましょうか。ハラハラしながらも、次は何をやらかしてくれるのかと、興味津々でした。

このように、入れ込める登場人物が出来てしまうと、作品を一段と楽しめるようになりますね。その点でも、かなり楽しませてくれた作品です。
(2004.2.2)


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