その3・ガッツ部長ご乱心 (00/02/02 UP)



最近、うちのシマ(部署のこと)ではエクセルブーム。

というか、古いタイプのワープロが社内から一掃されてしまったので
パソコンを覚えるしかないのだ。
そんなわけで、ガッツ石松似のG部長もいよいよエクセル参入。

しかし、部長は「覚えるよりも聞け」という人なので、
先日、私は8回目の「罫線の引き方」を説明させていただいた。
はちかいめ、である。なんだか周りの人々からの情報によると、
「私も聞かれたわ」「俺も」「ワシも」
ということなので実際はその倍であろう。

あまりにも覚えないので、
「メモを取ったらいかがでしょうか?」
と提案したところ、翌日、携帯電話で社内の別のシマの人に聞いていた。


なんだそりゃ。

プリントさせれば10枚も出し、
「必要なのは1枚だけなので止めてくれ」
と飛んでくる。

もちろん、保存せずに全部消し、
「元に戻せ」
なんてのは日常茶飯事である。


戻らんっつーの。

いつからか、ガッツ部長がパソコンに向かうと
引き潮のように周囲の人々は去るようになったが、
そうすると必然的に他のシマの人が犠牲者になってしまう。
これではいかんと仕方なく私が人身御供になる決心をしたが、
その教える態度があまりにも横柄なので結局、最後には
部長自ら遥々遠方より人を連れて来てしまうことになるのであった。

恐るべし、私。

さて、このG部長、元々おとぼけキャラなのだが、
先日もパソコンに向かいながら一人でクスクス笑い出す。

それをなぜかと訊ねると
「テンキーを押しているつもりだったんじゃが、よく見たら計算機だった」
らしい。
それはよく見なくても気づくだろうという突っ込みはさておき、
それがディスイズG部長なのである。

必ず私ともう一人の女性社員の名前をテレコにして呼んでは
「なぜ返事をしない?!」
と怒り、
「おーいナミく〜ん」
と語りかけてはそのまま他の電話をかける。

電話をかけ、先方が出るまでの間がたまらなくじれったいらしいのだが、
その時間潰しのために呼びかけられ、
待ちぼうけをくらう側はどうにもやるせないというものだ。

ここでも私は
「私の名前はナミと申します。
G部長は先ほどA子さんの名前をお呼びでしたので返事をしませんでした。」
「お電話が終わってから呼んでくださるようには出来ませんか」
などとキンキン怒る。

するとおかしなものでG部長はウフウフと身悶えせんばかりに喜ぶ。
なんだか周囲の人は
「部長にそんな態度をとるなんてナミさん失礼ですよ」
と忠告してくるが、皆んなにはあの身悶え喜びが目に入らないのだろうか。


ま、別に入らなくてもいいけど。

さて、G部長を困らせてばかりの私のように思われるかもしれないが、
そんなことは稀で、通常はその逆の出来事のオンパレードだ。

例えばのエピソード1。
毎日ハードな勤務をしていると評判の若手男性社員Sさん。
彼は社内で寝泊りをしているという噂もあるほどのハードワーカーであったが、
そんな彼が半休を取ると言い出した。

ま、そこまでは私と全然関係がないのだが
G部長のひとことで思いっきり関係させていただくことになる。
「ワシ、昼イチにSと話したいことが出来たんじゃわ。
奴、午後から半休取るとか言ってたから引止めといて」
ビクビクブルブル…。


G部長は怖くないけど、怒れる獅子Sさんは怖いよう。

泣きじゃくる私。
恐る恐るSさんにそれを告げると
「いいッスよ」
と明るいお返事。

さすがだわ、いいぜいいぜ!
と意味なく喜びを噛みしめているその時、出先のG部長からまた電話が入って来た。
「ワシ、今からご飯食べるんで戻り3時になるってSに言っておいて」
ヒャー。
それじゃあ、半休にならないぞお。
しかも、なぜそれをSさん本人に直接電話せず、私経由で伝える?


わたしゃ、伝書バトかっつーの。

(しかし、怒れる獅子はあまりにも相手の伝書バトの弱々しさに
腹も立てず快諾してくれたのであった。)
それにしてもG部長…。

エピソード2。
こちらの不手際で商品の入荷が遅れ、迷惑をかけた北海道在住のお客様に
「向こうから電話させろ」
と言い出す。
「そ〜れ〜はちょっと〜。先方に失礼じゃあないでしょうか」
と答えると
「ワシは全然かまわん」
とのこと。


『あなたは構わなくても私が構うのです』
と言いたいのをグッと堪え、後でこっそりこちらから電話しておいた。

それにしても、
やはりG部長の思考は読めないと実感した事件であった。

さてある日、友人にそんなこんなをボヤいていたら、
結構そういう上司は多く、しかも
「そんなエクセルを教える時に反撃さえさせてくれない」
のだと言う。

ひどい話になると
「300件くらいの顧客リストを全部自分で消しておきながら、
2日間で再作成しろと言う」
上司を持つ友人もいるのだ。
まさに鬼。

まあ、そう考えるとたまにご乱心されることもあるが、
ビクビクビックルと罫線の引き方を習いにくるG部長の方が
何倍もマシというものである。

しかも風貌もかなりキュート。

などとボンヤリ考えながら、心の中で
「これで罫線の引き方聞いてきたの、通算9回。」
などと数える私。
こんな楽しみもアリかと思う今日この頃であります。


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