その2・貴様な支店長 (00/02/02 UP)




不景気ですなあ。

私の周りの中堅女子社員も嘆いとりました。
「ウォーッ!今年に入って2人も辞めたのに人員補充ナシ。

3人分の仕事こなしているのに、コピーもお茶くみもやれだとォ。なら、給料も3倍よこせ!」

うう。頑張れ友よ。
何かよく分からんが、苦労話の1つや2つないと後輩に威張れんぞ。


血尿出たとか。
39度の発熱とか。

それでも笑顔でご出勤というくらいの武勇伝がないと。
だって自分が頑張っていないのに他人に頑張れとは言えないもん。普通はさ。

さて、今からお話しするのは、そんな普通じゃない人のこと。
あれは私が突然転職し、初の事務職に四苦八苦していた頃。
そこは男性3人・女性1人の小さな支店だったので
仕事を教わるにも雑談交わすにも支店長。
とにかく私は支店長に依存しまくっていたのである。

しかし。悲しいかな人事異動で支店長は北海道へ。
代わりにやってきたのがH君である。

H君。初めて彼を見た人は、そのあまりの肌黒さに驚くだろう。
松崎しげる…いや、サンコンくらいではある。
それに加えとてつもない大声。
エレベーターに乗り、2階下にいたにも関わらず話が聞こえたという逸話の持ち主。
なぜ支店長という立場にありながら、
私たちに”君”づけで呼ばれるのかは、その素行にある。

まず、彼が来て支店が一番変化したのは送金の額である。

送金というのは、毎月本社から経費として振り込まれる30万円のことで、
それは主にお得意様との食事や、社員の出張費として使用される。
だが、H君の解釈はちぃーと違ったようだ。


「だってワシ、人見知りだもん」
そう言ってお得意様との対面をことごとくスッポカシ。
貢物だけ営業マンに持たせて各社に飛ばす。
貢物の内容は決まって九谷焼のツボか金箔の重箱。

ううむ。なぜ金沢の人々に金沢の工芸品を送る?ナゾだ。

ついでにそのツボだのを買う時に乗るタクシーはもちろん経費。
この調子で送金はどんどん増えいつしか80万円に膨れ上がっていた。
そんなにお金を投資してお得意様に名前を覚えてもらえず、
留守番させれば失礼な応対で相手を怒らせ、謝罪で営業マンの半日を奪う。

そんな彼の口癖は「ナミちゃん、仕事くれよう」だった。

昼寝、パチンコ当たり前。時には映画を見に行き、ずっと帰ってこない。
社内で一番役立たず。でも偉そうに部下に檄を飛ばす。
部下の不満は爆発寸前。

ある日とうとう噴火し、社員Aが酒の席を借りて不満をぶちまけた。

のだが、H君の怒りは
「貴様〜ワシのことを貴様と言ったな〜!」

といドリフのオチみたいなことに向けられ、
2人は30分くらい「貴様」を言い合っていた。

うう…頭痛い。

だが、親の頼りない子供はしっかりしてくるという俗説のごとく、
支店の営業成績が急激な伸びを見せたのもまた真実だ。
それがもし、彼の策略とすれば…。

恐るべし!H君!!


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