久慈富士の 急崖は 錦繍に染まり

久しぶりの山頂は景観が一変していた。奥久慈の名峰男体山(通称久慈富士)は,岩崎元郎の新百名山に選定された。

水郡線西金駅から湯沢温泉,古分屋敷を経て山頂に登るコースは屏風岩や鷹取岩など高さ300bにも達する断崖絶壁と新緑や紅葉が見事にマッチして南画風の景観が見所である。最近はJR企画「駅からハイキング」に紹介され,東京圏の日帰りコースとして人気が出ている。

私達は西側から登る男体神社コースを選んだ。この神社は木造平屋建ての簡素な造りで,伊弉諾命(いざなぎのみこと)を祀っている。コースは神社から急坂の険しい登りで始まり,30分で巨大な火山角礫岩が現れる。カエデの赤,ミズナラの黄色が艶やかに手を振りカメラアングルに応えてくれる。2002年の山火事の影響でコースが付け替えられ,大きな立木も消失し,見晴らしが良くなるなどコースの魅力が増したように思う。男体山から袋田への縦走路に出会う主尾根付近は紅葉の真只中にあり,眺望も良い。ここから山頂まで小さなコルを経て10分。大円地からの健脚コースとの出合に四阿があり,休憩する登山客が見える。山頂を臨むとNHKの電波塔は工事中であった。

山頂付近は強い風で幹の途中から折れた倒木が多く,今までの鬱蒼とした樹木の景観は消え失せてしまった。過去の山火事の影響で山頂の風当たりも変わったのであろうか?尾根の風倒木は火事の熱風で樹皮や枝の傷みが今になって現れてきたのか? また,黒く焦げて倒れた丸太が隠れるほど篠の群落が育っている場所もある。自然の危うさ,弱さを感じる一方,植生は変わるものの回復の強さも目の辺りに感じつつ昼食のパンとジュースに舌鼓を打つ。

山頂には1等三角点と切り立った断崖絶壁の頂きに男体神社奥の院が祀られている。眼下に長福や大円地の集落とそれらを結ぶ九十九折りの奥久慈林道,久慈川の流れ,そして鍋足山や月居山,八溝山など奥久慈の錦繍の山並みが360度のパノラマで眺望できる。

 なお,大円地の地名は,修行のあとに会得した「大円鏡智」に由来するとのこと。昔は,男体山周辺も修験道が盛んであったことを物語っている。                (天海敏徳)


<コース記録>1117日(土)晴れ (関谷,長谷川)

男体神社駐車場発(9:30)主尾根出合(10:20)山頂(10:3011:00)神社着(11:50