中野文庫 国民徴用令

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国民徴用令(昭和14年勅令第451号)

第一条 国家総動員法(昭和十三年勅令第三百十七号ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第四条ノ規定ニ基ク帝国臣民ノ徴用及国家総動員法第六条ノ規定ニ基ク被徴用者ノ使用又ハ賃金、給料其ノ他ノ従業条件ニ関スル命令ハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル

第二条 徴用ハ特別ノ事由アル場合ノ外国民職業指導所ノ職業紹介其ノ他募集ノ方法ニ依リ所要ノ人員ヲ得ラレザル場合ニ限リ之ヲ行フモノトス

第三条 徴用ハ国民職業能力申告令ニ依ル要申告者(以下要申告者ト称ス)ニ限リ之ヲ行フ但シ徴用中要申告者タラザルニ至リタル者ヲ引続キ徴用スル必要アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
2 特別ノ必要アル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ拘ラズ命令ノ定ムル所ニ依リ要申告者以外ノ者ヲ徴用スルコトヲ得

第四条 本令ニ依リ徴用スル者ハ国ノ行フ総動員業務又ハ工場事業場管理令ニ依リ政府ノ管理スル工場事業場其ノ他ノ施設(以下管理工場ト称ス)ニ於テ行フ総動員業務ニ従事セシムルモノトス
2 特別ノ必要アル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ拘ラズ厚生大臣ノ指定スル工場事業場其ノ他ノ施設(以下指定工場ト称ス)ニ於テ行フ総動員業務ニ従事セシムルコトヲ得

第五条 徴用及徴用ノ解除ハ厚生大臣ノ命ニ依リ之ヲ実施ス

第六条 総動員業務ヲ行フ官衙(陸海軍ノ部隊及学校ヲ含ム以下同ジ)ノ所管大臣又ハ管理工場若ハ指定工場ノ事業主徴用ニ依リ人員ノ配置ヲ必要トスルトキハ厚生大臣ニ之ヲ請求又ハ申請スベシ
2 前項ノ規定ニ依リ管理工場ノ事業主ノ為ス申請ハ当該管理工場ヲ管理スル主務大臣ヲ経由スベシ

第七条 厚生大臣前条ノ規定ニ依ル請求又ハ申請アリタル場合ニ於テ徴用ノ必要アリト認ムルトキハ徴用命令ヲ発シ徴用セラルベキ者ノ居住地(国民職業能力申告令第二条第一号ノ職業ニ従事スル者ニ付テハ其ノ者ノ就業地)ヲ管轄スル地方長官ニ之ヲ通達スベシ
2 徴用セラルベキ者其ノ居往ノ場所(国民職業能力申告令第二条第一号ノ職業ニ従事スル場合ニ於テハ就業ノ場所)ニ異動ヲ生ジ国民職業能力申告令第四条第一項後段又ハ第二項ノ規定ニ依ル申告ヲ為サザル場合ニ於テ前後ノ居住地(国民職業能力申告令第二条第一号ノ職業ニ従事スル者ニ付テハ就業地)ヲ管轄スル地方長官ヲ異ニスルトキハ厚生大臣ハ前項ノ規定ニ拘ラズ前ノ居住地(国民職業能力申告令第二条第一号ノ職業ニ従事スル者ニ付テハ就業地)ヲ管轄スル地方長官ニ徴用命令ヲ通達スベシ
3 地方長官徴用命令ノ通達ヲ受ケタルトキハ直ニ徴用令書ヲ発シ徴用セラルベキ者ニ之ヲ交付スベシ

第八条 徴用令書ニハ左ニ掲グル事項ヲ記載スベシ但シ軍機保護上特ニ必要アルトキハ第二号又ハ第三号ニ掲グル事項ノ全部又ハ一部ヲ省略スルコトヲ得
 一 徴用セラルベキ者ノ氏名、出生ノ年月日、本籍、居住ノ場所(国民職業能力申告令第二条第一号ノ職業ニ従事スル者ニ付テハ就業ノ場所)
 二 従事スベキ総動員業務ヲ行フ官衙又ハ管理工場若ハ指定工場ノ名称及所在地
 三 従事スベキ総動員業務、職業及場所
 四 徴用ノ期間
 五 出頭スベキ日時及場所
 六 其ノ他必要ト認ムル事項

第九条 地方長官ハ徴用セラルベキ者ノ居住及就業ノ場所、職業、技能程度、身体ノ状態、家庭ノ状況、希望等ヲ斟酌シ徴用ノ適否並ニ従事スベキ総動員業務、職業及場所ヲ決定シ徴用令書ヲ発スベシ

第十条 地方長官ハ徴用ノ適否其ノ他ヲ判定スル為必要アルトキハ徴用セラルベキ者ニ出頭ヲ求ムルコトヲ得

第十一条 徴用令書ノ交付ヲ受ケタル者疾病其ノ他避クベカラザル事故ニ因リ指定ノ日時及場所ニ出頭スルコト能ハザル場合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ニ其ノ旨ヲ届出ヅベシ
2 前項ノ規定ニ依ル届出アリタル場合ニ於テ地方長官必要アリト認ムルトキハ出頭ノ日時若ハ場所ヲ変更シ又ハ其ノ者徴用ニ適セズト認ムルトキハ徴用ヲ取消スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ出頭変更令書又ハ徴用取消令書ヲ発シ其ノ者ニ之ヲ交付スベシ

第十二条 被徴用者ヲ使用スル官衙ノ所管大臣又ハ管理工場若ハ指定工場ノ事業主被徴用者ヲ使用スル官衙、管理工場若ハ指定工場、被徴用者ノ従事スル総動員業務、職業若ハ場所又ハ徴用ノ期間ニ付変更ヲ必要トスルトキハ厚生大臣ニ之ヲ請求又ハ申請スベシ

第十三条 厚生大臣前条ノ規定ニ依ル請求又ハ申請アリタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ被徴用者ヲ使用スル官衙、管理工場若ハ指定工場、被徴用者ノ従事スル総動員業務、職業若ハ場所又ハ徴用ノ期間ヲ変更スルコトヲ得

第十四条 被徴用者ヲ使用スル官衙ノ所管大臣又ハ管理工場若ハ指定工場ノ事業主被徴用者ガ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ総勤員業務ニ従事スルニ適セズト認ムルトキ又ハ其ノ者ヲシテ総動員業務ニ従事セシムル必要ナキニ至リタルトキハ厚生大臣ニ徴用ノ解除ヲ請求又ハ申請スベシ
2 被徴用者疾病其ノ他ノ事由ニ依リ総動員業務ニ従事シ難キ場合ニ於テハ官衙ニ使用セラルル者ニ在リテハ当該官衙ノ所管大臣ニ、管理工場又ハ指定工場ニ使用セラルル者ニ在リテハ厚生大臣ニ其ノ旨ヲ申出ヅルコトヲ得

第十五条 厚生大臣前条第一項ノ規定ニ依ル請求又ハ申請アリタル場合ニ於テハ徴用ヲ解除スルコトヲ得
2 厚生大臣必要アリト認ムルトキハ前条第一項ノ規定ニ依ル請求又ハ申請ナキ場合ト雖モ徴用ヲ解除スルコトヲ得
3 厚生大臣前項ノ規定ニ依リ官衙ニ使用セラルル者ノ徴用ヲ解除セントスルトキハ当該官衙ノ所管大臣ニ協議スベシ

第十六条 厚生大臣徴用ノ変更又ハ解除ヲ為サントスルトキハ徴用変更命令又ハ徴用解除命令ヲ発シ命令ノ定ムル所ニ依リ被徴用者ノ就業地ヲ管轄スル地方長官、徴用令書ヲ発シタル地方長官又ハ第八条第五号ノ出頭ノ場所ヲ管轄スル地方長官ニ之ヲ通達スベシ
2 地方長官徴用変更命令又ハ徴用解除命令ノ通達ヲ受ケタルトキハ直ニ徴用変更令書又ハ徴用解除令書ヲ発シ被徴用者ニ之ヲ交付スベシ
3 被徴用者本令施行地外ノ場所ニ於テ就業スル場合ニ於テ徴用ノ変更又ハ解除ヲ為サントスルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラズ厚生大臣徴用変更令書又ハ徴用解除令書ヲ発シ被徴用者ニ之ヲ交付スベシ

第十七条 被徴用者総動員業務ニ従事スル場合ニ於テハ官衙ニ使用セラルル者ニ在リテハ当該官衙ノ長ノ指揮ヲ受ケ管理工場又ハ指定工場ニ使用セラルル者ニ在リテハ当該管理工場又ハ指定工場ノ事業主ノ指示ニ従フベシ

第十八条 被徴用者ニ対スル給与ハ其ノ者ノ技能程度、従事スル業務及場所等ニ応ジ且従前ノ給与其ノ他之ニ準ズベキ収入ヲ斟酌シテ被徴用者ヲ使用スル官衙ノ長又ハ事業主之ヲ支給スルモノトス
2 被徴用者ニ対スル給与ニ関シ必要ナル事項ハ官衙ニ使用セラルル者ニ関シテハ当該官衙ノ所管大臣厚生大臣ニ協議シテ之ヲ定メ管理工場又ハ指定工場ニ使用セラルル者ニ関シテハ当該管理工場又ハ指定工場ノ事業主厚生大臣ノ認可ヲ受ケテ之ヲ定ムベシ

第十九条 徴用セラルベキ者第十条ノ規定ニ依リ出頭スル場合ノ旅費ハ地方長官之ヲ支給ス
2 管理工場又ハ指定工場ニ配置セラルル為第十条ノ規定ニ依リ出頭シタル者ニ対シ前項ノ規定ニ依リ支給シタル旅費ノ額ハ当該管理工場又ハ指定工場ノ事業主国庫ニ之ヲ納入スベシ被徴用者徴用令書ノ交付ヲ受ケ指定ノ場所ニ出頭スル場合又ハ徴用ヲ解除セラレ帰郷スル場合ノ旅費ハ被徴用者ヲ使用スル官衙ノ長又ハ事業主之ヲ支給スルモノトス
3 第一項及前項ノ場合ニ於テ前金払ヲ為スニ非ザレバ出頭スルコト能ハザル者ノ旅費ハ其ノ者ノ居往地ノ市町村又ハ之ニ準ズベキモノニ於テ一時繰替支弁スベシ
4 徴用セラルベキ者第十条ノ規定ニ依リ出頭スル場合ノ旅費及其ノ一時繰替支払ニ関シ必要ナル事項ハ厚生大臣之ヲ定ム
5 被徴用者徴用令書ノ交付ヲ受ケ指定ノ場所ニ出頭スル場合ノ旅費及其ノ一時繰替支払並ニ徴用ヲ解除セラレ帰郷スル場合ノ旅費ニ関シ必要ナル事項ハ官衙ニ使用セラルル者ニ関シテハ当該官衙ノ所管大臣厚生大臣ニ協議シテ之ヲ定メ管理工場又ハ指定工場ニ使用セラルル者ニ関シテハ厚生大臣之ヲ定ム

第十九条ノ二 厚生大臣必要アリト認ムルトキハ国家総動員法第六条ノ規定ニ基キ被徴用者ヲ使用スル管理工場又ハ指定工場ノ事業主ニ対シ被徴用者ノ使用又ハ賃金、給料其ノ他ノ従業条件ニ関シ命令ヲ為スコトヲ得

第十九条ノ三 被徴用者徴用セラレタルニ因リ其ノ家族ト世帯ヲ異ニスルニ至リタル場合其ノ他特別ノ事由アル場合又ハ被徴用者故意若ハ重大ナル過失ニ因ルニ非ズシテ業務上傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リ之ガ為徴用ヲ解除セラレタル場合ニ於テ本人又ハ家族ガ生活スルコト困難ナルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ニ対シ扶助ヲ為スコトヲ得
2 被徴用者徴用セラレ総動員業務ニ従事中故意又ハ重大ナル過失ニ因ルニ非ズシテ業務上傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ之ガ為死亡シタル場合ニ於テ遺族ガ生活スルコト困難ナルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ニ対シ扶助ヲ為スコトヲ得
3 前二項ノ家族又ハ遺族ノ範囲及扶助ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

第十九条ノ四 前条ノ規定ニ依ル扶助ガ被徴用者ニシテ管理工場若ハ指定工場ニ使用セラレ若ハ使用セラレタル者又ハ其ノ家族若ハ遺族ニ対シ為サレタルモノナルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ当該管理工場又ハ指定工場ノ事業主ヲシテ扶助ニ要シタル費用ヲ国庫ニ納入セシムルコトヲ得

第二十条 厚生大臣又ハ地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ依リ徴用ニ関シ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基ク報告ヲ徴スルコトヲ得
2 厚生大臣又ハ地方長官徴用ニ関シ必要アリト認ムルトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ当該官吏ヲシテ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務ノ状況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ当該官吏ヲシテ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ

第二十一条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ之ヲ徴用セズ
 一 陸海軍軍人ニシテ現役中ノモノ(未ダ入営セザル者ヲ除ク)及召集中ノモノ(召集中ノ身分取扱ヲ受クル者ヲ含ム)
 二 陸海軍学生生徒(海軍予備練習生及海軍予備補習生ヲ含ム)
 三 陸海軍軍属(被徴用者ニシテ之ニ該当スルニ至リタルモノヲ除ク)
 四 医療関係者職業能力申告令ニ依リ申告ヲ為スベキ者
 五 獣医師職業能力申告令ニ依リ申告ヲ為スベキ者
 六 船員法ノ船員、朝鮮船員令ノ船員及関東州船員令ノ船員
 七 法令ニ依リ拘禁中ノ者

第二十二条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ特別ノ必要アル場合ヲ除クノ外之ヲ徴用セズ
 一 余人ヲ以テ代フベカラザル職ニ在ル官吏、待遇官吏又ハ公吏
 二 帝国議会、道府県会、市町村会其ノ他之ニ準ズベキモノノ議員
 三 総動員業務ニ従事スル者ニシテ余人ヲ以テ代フベカラザルモノ

第二十三条 厚生大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ国民職業指導所長ヲシテ徴用ニ関スル事務ノ一部ヲ分掌セシメ又ハ市町村長(東京市、京都市、大阪市、名古屋市、横浜市及神戸市ニ在リテハ区長)若ハ之ニ準ズベキモノヲシテ徴用ニ関スル事務ヲ補助セシムルコトヲ得
2 市町村長(東京市、京都市、大阪市、名古屋市、横浜市及神戸市ニ在リテハ区長)又ハ之ニ準ズベキモノノ前項ノ規定ニ依リ徴用ニ関スル事務ヲ執行スル為要スル費用ハ市町村又ハ之ニ準ズベキモノニ於テ一時繰替支弁スベシ
3 前項ノ費用及其ノ一時繰替支弁ニ関シ必要ナル事項ハ厚生大臣之ヲ定ム

第二十四条 厚生大臣ハ本令ノ施行ニ関スル重要事項ニ付内閣総理大臣ニ協議スベシ

第二十五条 本令中厚生大臣トアルハ朝鮮、台湾、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ各朝鮮総督、台湾総督、樺太庁長官又ハ南洋庁長官トシ総動員業務ヲ行フ官衙ノ所管大臣、被徴用者ヲ使用スル官衙ノ所管大臣若ハ当該官衙ノ所管大臣又ハ当該管理工場ヲ管理スル主務大臣トアルハ官衙ノ所管大臣又ハ主務大臣ガ陸軍大臣又ハ海軍大臣タル場合ヲ除クノ外朝鮮、台湾、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ各朝鮮総督、台湾総督、樺太庁長官又ハ南洋庁長官トス
2 本令中地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、台湾ニ在リテハ州知事又ハ庁長、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トシ国民職業指導所長トアルハ朝鮮ニ在リテハ府尹、郡守又ハ島司、台湾ニ在リテハ市尹又ハ郡守(澎湖庁ニ在リテハ庁長)、樺太ニ在リテハ樺太庁支庁長、南洋群島ニ在リテハ南洋庁支庁長トス

第二十六条 本令ニ規定スルモノノ外徴用ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

  附 則

本令ハ昭和十四年七月十五日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十四年十月一日ヨリ之ヲ施行ス


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