中野文庫 警察法

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警察法(昭和22年法律第196号)

 国民のために人間の自由の理想を保障する日本国憲法の精神に従い、又、地方自治の真義を推進する観点から、国会は、秩序を維持し、法令の執行を強化し、個人と社会の責任の自覚を通じて人間の尊厳を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以て、ここにこの警察法を制定する。

   第一章 総則

第一条 警察は、国民の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び公安の維持に当ることを以てその責務とする。
2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、いやしくも日本国憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等その権能を濫用することとなつてはならない。

第二条 この法律において行政管理とは、警察職員の人事及び警察の組織並びに予算に関する一切の事項に係るものをいう。
2 この法律において運営管理とは、左に掲げる事項に係るものをいう。
 一 公共の秩序の維持
 二 生命及び財産の保護
 三 犯罪の予防及び鎮圧
 四 犯罪の捜査及び被疑者の逮捕
 五 交通の取締
 六 逮捕状、勾留状の執行その他の裁判所、裁判官又は検察官の命ずる事務で法律をもつて定めるもの
3 この法律にいう犯罪とは経済法令に関する違反を含むものであり、且つ、これに限定せられるものではない。

第三条 この法律に従うすべての職員の行う職務の宣誓は、日本国憲法及び法律を擁護し支持する義務に関する事項をその内容に含むべきものとする。

   第二章 国家地方警察

    第一節 国家公安委員会

第四条 内閣総理大臣の所轄の下に、国家公安委員会及び警察官の定員三万人を超えない国家地方警察隊を置く。その経費は、国庫の負担とする。
2 国家公安委員会は、左に掲げる事務を掌る。
 一 警察通信施設(自治体警察の本部から管下の下部組織に通ずるものを除く。)の維持管理に関する事項 但し、国家地方警察及び他の自治体警察との連絡のために、自治体警察はこれを利用することができる。
 二 犯罪鑑識施設の維持管理に関する事項
 三 警察教養施設の維持管理に関する事項
 四 その他国家地方警察の行政管理に関する事項
 五 犯罪鑑識及び犯罪統計に関する事項
 六 国家非常事態に対処するための警察の統合計画の立案及び実施に関する事項
 七 皇宮警察の管理に関する事項並びに当該機関の要求のあつた場合において、東京都内における国会、内閣、各省(総理庁を含む。)、会計検査院及び最高裁判所の使用する建物及び施設の警備に関する事項

第五条 国家公安委員会は、五人の委員を以て、これを組織する。
2 委員は、警察職員又は官公庁における職業的公務員(昭和二十年九月二日以後において公選され又は公選若しくは国会、その両院若しくはその一院又は地方議会の選挙若しくは議決によつて選任された者を除く。)の前歴のない者の中から、両議院の同意を経て、内閣総理大臣が、これを任命する。
3 委員の任命について、衆議院が同意して参議院が同意しない場合においては、日本国憲法第六十七条第二項の場合の例により、衆議院の同意を以て両議院の同意とする。
4 左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
 一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者
 二 禁錮以上の刑に処せられた者
 三 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
5 委員の任命については、その中の三人以上が、同一政党に属する者となることとなつてはならない。

第六条 国家公務員法第三章第七節の規定は、委員に、これを準用する。
2 委員は、政党その他の政治的団体の役員となることができない。

第七条 委員の任期は、五年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
2 委員は、これを再任することができる。

第八条 委員は、第五条第四項各号の一に該当するに至つた場合においては、当然退職するものとする。
2 内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を経て、これを罷免することができる。
3 内閣総理大臣は、両議院の同意を経て、左に掲げる委員を罷免する。
 一 委員中何人も所属していなかつた同一の政党に新に三人以上の委員が所属するに至つた場合、これらの者の中二人を超える員数の委員
 二 委員中一人が既に所属している政党に新に二人以上の委員が所属するに至つた場合、これらの者の中一人を超える員数の委員
4 第五条第三項の規定は、前二項の場合にこれを準用する。
5 内閣総理大臣は、委員中二人が既に所属している政党に新に所属した委員をただちに罷免する。
6 第二項、第三項及び前項の場合を除く外、委員はその意に反して罷免されることがない。

第九条 委員は、法務大臣の俸給に準ずる報酬を受ける。

第十条 国家公安委員会に委員長を置き、委員の互選により、これを選任する。委員長の任期は、一年とする。但し、これを再任することができる。
2 委員長は、国家公安委員会の会務を総理する。

    第二節 国家公安委員会の事務部局

第十一条 国家公安委員会の権限に属する事項に関する事務を処理せしめるため、国家公安委員会に、その事務部局として国家地方警察本部を置く。
2 国家地方警察本部は、前項に規定する事務の外、第六十一条の二の規定による指示に関する事務を処理する。

第十二条 国家地方警察本部に、長官を置く。
2 長官は、国家公務員法の規定に基き、国家公安委員会が、これを任命し、一定の事由により罷免する。
3 前項の場合においては、国家公安委員会は、内閣総理大臣の意見を聴かなければならない。

第十三条 長官は、国家公安委員会の指揮監督を受け、国家地方警察本部の部務を掌理する。

第十四条 国家地方警察本部に総務部、警務部及び刑事部を含む五以内の部を置く。
2 国家地方警察本部に警察大学校を附置する。
3 警察大学校は、国家地方警察の新任及び現任の警察職員及び要求のあつたときは自治体警察の新任及び現任の警察職員を訓練する。

第十五条 国家地方警察本部に、国家公安委員会の定めるところにより、次長一人、部長五人以内、警察官その他所要の所属職員及び機関を置く。
2 前項の職員は、国家公務員法の規定に基き、国家地方警察本部長官がこれを任命し、一定の事由により罷免する。

第十五条の二 国家地方警察の警察官の階級は、長官、次長、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長及び巡査とする。
2 警察官は、上官の指揮監督を受け、警察の事務を掌る。
3 基礎的な警察訓練の過程を経ない者は、これを国家地方警察の警察官として勤務につけることはできない。
4 警察官の宣誓、教育訓練、礼式及び服制について必要な事項は、国家公安委員会がこれを定める。

第十六条 全国を六警察管区に分ち、警察管区ごとに、国家地方警察の地方事務部局として警察管区本部を置き、国家地方警察本部の事務を分掌させる。
2 警察管区の区域及び名称並びに警察管区本部の位置及び名称は、別表による。

第十七条 警察管区本部に、国家公安委員会の定めるところにより、本部長、警察官その他所要の職員及び機関を置く。その組織は、国家地方警察本部の例による。
2 前項の職員は、国家公務員法の規定に基き、国家地方警察本部長官がこれを任命し、一定の事由により罷免する。

第十八条 警察管区本部長は、国家地方警察本部長官の指揮監督を受け警察管区本部の事務を処理し、その管轄区域内の都道府県国家地方警察の行政的調整及びその均斉を図る。
2 警察管区本部長及び都道府県公安委員会は、緊密な連絡を保ち、警察に関する事項について適当に協力する。

第十九条 各警察管区本部に管区警察字校を附置する。
2 管区警察学校は、国家地方警察の新任及び現任の警察職員及び要求のあつたときは自治体警察の新任及現任の警察職員を訓練する。
3 管区警察学佼及び警察大学校は、国家地方警察がこれを維持し運営する。
4 管区警察学校及び警察大学校に在校する警察官は、五千人を限り、これを第四条第一項の定員の外に置くことができる。

    第三節 都道府県公安委員会

第二十条 都府県知事の所轄の下に、一の都府県公安委員会を置く。北海道には、道知事の所轄の下に、下部行政区画により、道知事の意見を聴いて国家公安委員会の定めるところに従い、十四以内の道公安委員会を置く。
2 都道府県公安委員会は、都道府県国家地方警察の運営管理を行う。

第二十条の二 都道府県知事は、治安維持上重大な事案につきやむを得ない事由があると認めるときは、当該都道府県の区域内の市町村警察の管轄区域内における当該事案を国家地方警察に処理させることを当該都道府県公安委員会に要求することができる。
2 都道府県公安委員会は、前項に規定する要求があつたときは、当該都道府県国家地方警察に当該事案を処理させなければならない。この場合においては、国家地方警察は、第二十七条の規定にかかわらず、その管轄区域外において職権を行うことができる。
3 前項の場合において、市町村警察が国家地方警察から事案の処理の通知を受けたときは、当該市町村警察は、当該事案の処理については、当該都道府県公安委員会の運営管理に服するものとする。
4 都道府県公安委員会は、都道府県知事に対して第一項に規定する措置をとることを勧告することができる。
5 都道府県知事は、第一項に規定する要求をしたときは、当該事案の処理が終了した後すみやかにその旨を都道府県の議会に報告しなければならない。

第二十一条 都道府県公安委員会は、三人の委員を以て、これを組織する。
2 委員は、その都道府県の議会の議員の被選挙権を有する者で警察職員、検察職員若しくは旧職業陸海軍軍人の前歴のない者又は任命前十年間に官公庁における職業的公務員(昭和二十年九月二日以後において公選され、又は公選若しくは国会、その両院若しくはその一院又は地方議会の選挙若しくは議決によつて選任せられた者を除く。)の前歴のない者の中から、都道府県知事が、都道府県の議会の同意を経て、これを任命する。
3 左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
 一 破産者で復権を得ない者
 二 禁錮以上の刑に処せられた者
 三 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
4 委員の任命については、その中二人以上が、同一政党に属する者となることとなつてはならない。

第二十二条 委員は、都道府県、特別区若しくは市町村の議会の議員又は常勤の職員を兼ね、又は政党その他の政治的団体の役員となることができない。
2 前項の外、委員の服務に関する事項は、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三章第六節の規定に準じ、都道府県規則で、これを定める。但し、同法第三十八条第一項に規定する制限は、都道府県知事において委員の勤務に支障があると認める場合の外、これを行わないものとし、又委員の勤務については、都道府県公安委員会でこれを定めるものとしなければならない。

第二十三条 委員の任期は、三年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
2 委員は、これを再任することができる。

第二十四条 委員は、左の各号の一に該当する場合においては、当然退職するものとする。但し、委員は、第二号の場合においては、住所を移したために被選挙権を失つても、その住所が同一都道府県の区域内にあるときは、そのためにその職を失うことはない。
 一 第二十一条第三項各号の一に該当するに至つた場合
 二 当該都道府県の議会の議員の被選挙権を有する者でなくなつた場合
2 委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、都道府県知事は、都道府県の議会の同意を経て、これを罷免することができる。
3 委員の中、二人以上が同一政党に属することとなつた場合においては、これらの者の中、一人以外の者は、都道府県知事が、都道府県の議会の同意を経て、これを罷免する。但し、都道府県知事は、委員中一人が既に所属している政党に新に所属するに至つた委員をただちに罷免する。
4 前二項の場合を除く外、委員はその意に反して罷免されることがない。

第二十五条 都道府県は、委員に報酬を支給し、委員が職務を行うために要する費用の弁償をしなければならない。
2 前項の報酬及び費用については、地方自治法第二百三条第三項及び第二百六条の規定による。

第二十六条 都道府県公安委貝会に委員長を置き、委員の互選により、これを選任する。委員長の任期は、一年とする。但し、これを再任することができる。
2 委員長は、都道府県公安委員会の会務を総理する。

    第四節 都道府県国家地方警察

第二十七条 都道府県国家地方警察は、その都道府県の区域(自治体警察の管轄に属する区域を除く。)内において第二条第二項に定める事務を行う。

第二十八条 各都府県に、一の国家地方警察都府県本部をその都府県庁所在地に置く。北海道には、下部行政区画により十四以内の国家地方警察の本部を置く。その本部の一は、北海道庁所在地に置く。
2 都道府県国家地方警察の管轄に属する区域を警察区に分け、警察区毎に警察署を置く。
3 警察区の区域並びに警察署の位置、名称及び管轄区域は、国家地方警察がこれを定める。
4 警察署の下部機構として、派出所又は駐在所を置く。

第二十九条 都道府県国家地方警察と市町村警察との連絡及び国家地方警察の所掌に属する警察通信施設の維持管理に当らしめるため、必要の地に都道府県国家地方警察の支所を置く。

第三十条 都道府県国家地方警察に隊長を置く。
2 隊長は、国家公務員法の規定に基き、警察管区本部長が国家地方警察本部長官の同意を経てこれを任命し、一定の事由により罷免する。
3 隊長は、都道府県国家地方警察本部の事務を処理する。

第三十一条 隊長は、都道府県公安委員会の運営管理に服し、警察管区本部長の行政管理に服するものとする。

第三十二条 隊長は、その都道府県の区域内にある国家地方警察の所掌に属する警察通信施設を管理する。

第三十三条 都道府県国家地方警察本部に所要の部課(犯罪鑑識及び犯罪統計に関する機構を含む。)を置く。

第三十四条 都道府県国家地方警察に都道府県警察学校を附置する。
2 都道府県警察学校は、国家地方警察の新任及び現任の警察職員及び要求のあつたときは自治体警察の新任及び現任の警察職員を訓練する。

第三十五条 都道府県国家地方警察に、隊長の外、警察官その他所要の職員を置く。

第三十六条 前条に規定する職員は、国家公務員法の規定に基き、隊長がこれを任命し、一定の事由により罷免する。

第三十七条 警察署長は、警視又は警部を以てこれにあてる。
2 警察署長は、隊長の指揮監督を受け、その管轄区域内における警察事務を執行し、警察署の職員を指揮監督する。

第三十八条 支所長は、警部又は警部補を以てこれにあてる。
2 支所長は、隊長の指揮監督を受け、第二十九条に規定する事務を執行し、支所の職員を指揮監督する。

第三十九条 都道府県国家地方警察の機関及び職員に関する細目的事項は、国家公安委員会がこれを定める。

   第三章 自治体警察

    第一節 総則

第四十条 市及び人口五千以上の市街的町村は、その区域内において警察を維持し、法律及び秩序の執行の責に任ずる。
2 前項に規定する市街的町村は、官報で最近に公示せられた人口に従い、政令を以てこれを告示する。
3 前項の規定により告示された町村は、第一項の規定にかかわらず、住民投票によつて警察を維持しないことができ、又、警察を維持しないこととした後再び警察を維持することができる。

第四十条の二 前条第二項の規定により告示された町村以外の町村で市に隣接し、公共の秩序の維持の上において当該市と緊密な関係を有するものは、住民投票によつて、当該市と地方自治法の規定による組合を組織して共同で警察を維持することができる。
2 前項の規定により共同で警察を維持することができる町村は、政令を以てこれを告示する。
3 第一項の住民投票については、第四十条の三(第八項及び第十二項を除く。)の規定を準用する。
4 第一項の規定により共同で警察を維持することとした町村は、住民投票によつて警察を維持しないこととすることができる。この場合には、第四十条の三の規定を準用する。

第四十条の三 第四十条第三項に規定する住民投票は、町村議会において警察を維持しないこと若しくは再び警察を維持することを住民投票に付することを議決したとき、又は町村の住民で町村議会の議員の選挙権を有する者が、その総数の三分の一以上の連署をもつて、その代表者によつて当該町村の選挙管理委員会に対してこれを請求したときにおいて行われるものとする。
2 町村議会の議長は、前項の規定による議決があつたときは、その日から三日以内に、その旨を町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
3 選挙管理委員会は、前項に規定する議決の通知を受けた日又は第一項に規定する住民投票の請求を受理した日から六十日以内に、これをその町村の選挙人の投票に付さなければならない。
4 選挙管理委員会は、前項の投票の結果が判明したときは、直ちにこれを当該町村議会の議長又は当該代表者及び町村長に通知し、且つ、これを公表しなければならない。
5 第三項の規定による投票において有効投票の過半数の同意があつたときは、当該町村は、警察を維持しないこと又は再び警察を維持することを決定したものとする。
6 前項の規定による決定があつたときは、当該町村長は、国家公安委員会を経てこれを内閣総理大臣に報告しなければならない。
7 内閣総理大臣は、前項の報告を受けたときは、その旨を官報で公示しなければならない。
8 十月三十一日までに第六項の規定による報告のあつた町村については、翌年四月一日にその警察維持に関する責任の転移が行われる。
9 第一項の規定による議会の議決又は代表者による請求は、第三項の規定による投票のあつた日から二年間は行うことができない。
10 政令で特別の定をするものを除く外、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第七十四条の二から第七十四条の四までの規定は第一項の規定による請求者の署名に、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)中普通地方公共団体の選挙に関する規定は第三項の規定による投票に、地方自治法第二百五十五条の二の規定は第一項の規定による請求者の署名及び第三項の規定による投票に関する争訟に、これを準用する。
11 第三項の規定による投票は、政令の定めるところにより、普通地方公共団体の選挙又は地方自治法第七十六条第三項の規定による解散の投票若しくは同法第八十条第三項及び第八十一条第二項の規定による解職の投票と同時にこれを行うことができる。
12 警察事務を共同で処理する市町村の組合を組織する町村のいずれかが、第三項の規定による投票によつて警察を維持しないことを決定したときは、その町村は、地方自治法第二百八十六条又は第二百八十八条の規定にかかわらず、警察を維持しないものとなる。この場合の措置について必要な事項は、政令で定める。

第四十一条 市町村警察は、第二条第二項に掲げた事項に関するすベての職務を行う。

第四十二条 自治体警察に要する経費は、当該市町村の負担とする。

    第二節 市町村公安委員会

第四十三条 市及び警察を維持する町村(以下「市町村」という。)は、市町村長の所轄の下に市町村公安委員会を置き、その市町村の区域内における警察を管理せしめる。

第四十四条 市町村公安委員会の組織及び運営並びにその委員の資格、任命、兼職禁止、服務、任期、退職、罷免、報酬及び費用弁償については、第二十一条乃至第二十三条、第二十四条、第二十五条及び第二十六条の規定を準用する。但し、地方自治法の規定による解職請求に基いて解職される場合においては、第二十四条第四項の規定にかかわらず、その職を失うものとする。なお、第二十一条乃至第二十六条の規定中都道府県とあるは市町村と、都道府県知事とあるは、市町村長と、都道府県規則とあるは、市町村規則と読み替えるものとする。

    第三節 市町村警察

第四十五条 市町村は、一又は二以上の警察署を置く。
2 二以上の警察署を置く場合には、市町村警察の本部を置く。
3 警察署の位置、名称及び管轄区域並びに市町村警察本部の名称及び組織は、市町村公安委員会の意見を徴して市町村条例でこれを定める。

第四十六条 市町村警察に、警察長及びこの法律の規定に従い、有効に警察事務を行うに必要且つ適当な階級の警察吏員を置く。
2 前項の市町村警察吏員には、第十五条の二第一項及び第二項の規定を準用する。
3 市町村警察職員の定員は、地方的要求に応じてその市町村が条例でこれを決定する。

第四十七条 市町村警察長は、市町村公安委員会がこれを任命し、一定の事由により罷免する。

第四十八条 市町村警察長は、市町村公安委員会の承認を得て、その市町村警察職員を任命し、一定の事由により罷免する。市町村警察長は、これらの職員を指揮監督する。

第四十九条 警察署長は、警部補以上の警察吏員を以てこれに充てる。但し、市町村警察長がこれを兼ねることができる。
2 警察署長は、上司の指揮監督を受けて、管轄区域内における警察事務を執行し、部下の職員を指揮監督する。

第五十条 警察職員の任免、給与、服務その他の事項は、地方公務員法の定めるところによる。但し、臨時的職員の外は基礎的な警察訓練の過程を経ない者は、これを市町村警察の勤務につけることができない。
2 市町村警察職員の教育訓練、礼式及び服制は、第十五条の二第四項の規定により国家公安委員会の定めるところに則り、市町村規則でこれを定める。但し、制服は、国家地方警察の制服と明確に区別されるものとする。

    第四節 特別区に関する特例

第五十一条 特別区の存する区域においては、特別区が連合してその区域内における警察の責に任ずる。

第五十二条 前条の特別区には、都知事の所轄の下に市町村公安委員会に相当する特別区公安委員会を置き、その委員は、都知事が、都の議会の同意を経てこれを任命する。

第五十二条の二 特別区の存する区域における自治体警察の警察長は、特別区公安委員会が、一定の事由により罷免する。
2 前項の場合においては、特別区公安委員会は、内閣総理大臣の意見を聴かなければならない。

第五十二条の三 特別区の存する区域における自治体警察に要する経費は、都の負担とする。但し、国庫は、予算の範囲内においてその一部を負担することができる。

第五十三条 前四条に規定するものの外、特別区の存する区域における自治体警察については、特別区の存する区域を以て一の市とみなし、市町村警察に関する規定を準用する。

   第四章 国家地方警察及び自治体警察並びに自治体警察相互間の関係

第五十四条 市町村警察は、国家地方警察の運営管理又は行政管理に服することはない。これらの警察は、相互に協力する義務を負う。

第五十四条の二 国家地方警察と市町村警察及び市町村警察は、相互に、犯罪に関する情報を交換するものとする。

第五十五条 国家地方警察の警察官は、市町村公安委員会から援助の要求があつた場合は当該市町村の区域において、援助の要求をした市町村公安委員会の運営管理の下に、その職権を行うことができる。市町村警察吏員も、都道府県公安委員会又は他の市町村公安委員会から援助の要求があつた場合は、その援助を要求した公安委員会の管轄区域内で、当該公安委員会の運営管理の下に、その職権を行うことができる。この場合において、市町村公安委員会が他の市町村警察に援助の要求をしようとするときは、あらかじめ必要な事項を国家地方警察に連絡しなければならない。

第五十五条の二 市町村警察の要求によつて国家地方警察の警察職員が援助した場合においては、その援助に要した費用は、国庫の負担とする。
2 国家地方警察の要求によつて市町村警察職員が、その市町村の区域外において、国家地方警察又は市町村警察を援助した場合においては、その援助に直接要した費用は、国庫の負担とする。
3 前項の場合において、市町村警察職員がその職務のため傷いを受け、若しくは疾病にかかり、又はその傷病に因り退職し、若しくは在職中死亡したときは、これを国家地方警察の警察職員としてその職務を行つたものとみなし、国庫は、その者に国家公務員に対する業務災害補償に適用される法律の規定による補償を行う。但し、その災害について、業務災害補償に関する当該市町村の給付が、国家公務員に対する業務災害補償に適用される法律の規定による額を超えるときは、その者又はその遺族がその差額の支給を当該市町村から受けることを妨げない。

第五十六条 隊長は、都道府県内の市町村警察長と、緊密な連絡を保たなければならない。

   第五章 管轄区域外における権限行使

第五十七条 国家地方警察及び市町村警察は、その都道府県国家地方警察又は市町村警察の管轄に属する区域の境界外五百米以内の地域における犯罪については、その地域内においても職権を行う。

第五十八条 国家地方警察及び市町村警察は、その管轄区域(その境界外五百米以内の地域を含む。以下本条中これに同じ。)内に行われた犯罪又はその管轄区域内に始まり、若しくはその管轄区域内に及んだ犯罪並びにこれらに関連する犯罪について、その鎮圧、捜査又は被疑者の逮捕のため、その管轄区域外にも職権を及ぼすことができる。
2 前項の場合においては、国家地方警察及び市町村警察は、原則として事前にこれを同項の規定によつて職権を及ぼす区域を管轄する警察に通知し、且つ、その職権の行使について当該警察と緊密な連絡を保持しなければならない。

第五十九条 国家地方警察が市町村の区域内に施設を維持する場合及び市町村がその区域外において施設を維持する場合においては、国家地方警察及び当該市町村警察は、相互にその施設について警察の職権を及ぼすものとする。

   第六章 犯罪統計及び犯罪鑑識

第六十条 市町村警察長は、国家公安委員会の定める形式及び方法により、犯罪統計並びに証拠、写真、指紋、被疑者及び被逮捕者の人相書及び手口からなる犯罪鑑識に関する事項を、隊長を通じて国家地方警察本部長官に報告しなければならない。

第六十一条 国家地方警察本部及び都道府県国家地方警察本部に、犯罪鑑識に関する施設を置く。

   第六章の二 内閣総理大臣の指示

第六十一条の二 内閣総理大臣は、特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の意見を聴いて、都道府県公安委員会又は市町村公安委員会に対し、公安維持上必要な事項について、指示をすることができる。

   第七章 国家非常事態の特別措置

第六十二条 国家非常事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について国家非常事態の布告を発することができる。
2 前項の布告には、その区域、事態の概要及び布告の効力を発する日時を記載しなければならない。

第六十三条 前条に規定する国家非業事態の布告が発せられたときは、この法律の定めるところに基き、内閣総理大臣によつて一時的に全警察の統制が行われる。この場合において国家地方警察本部長官又は警察管区本部長は、布告に記載した区域内の隊長又は市町村警察長に対して必要な命令をなし、又は指揮をなすものとする。

第六十四条 内閣総理大臣は、国家非常事態の布告に記載した区域外の国家地方警察又は市町村警察に対して、警察官又は警察吏員の全部又は一部を、応援のため必要な区域に派遣することを命ずることができる。
2 前項の規定により、派遣された警察官及警察吏員は、派遣の期間中派遣された区域においても職権を行うことができる。
3 前条後段の場合又は前項の場合において、市町村警察職員がその市町村の区域外において職務を行つたときは、その職務の執行のために直接要した費用は、国庫の負担とする。
4 第五十五条の二第三項の規定は、前項の場合において、市町村警察職員がその職務のため傷いを受け、若しくは疾病にかかり、又はその疾病に因り退職し、若しくは在職中死亡したときは、これを準用する。

第六十五条 第六十二条の規定により内閣総理大臣が発した国家非常事態の布告は、これを発した日から二十日以内に国会の承認を得なければならない。もしも衆議院が解散されているときは、日本国憲法第五十四条に規定する緊急集会による参議院の承認を求めなければならない。
2 前項に規定する期間内に、同項の規定により国家非常事態の布告が承認を得られないか、又は不承認の議決があつたときは、国家非業事態の布告は、将来にわたつてその効力を失う。

第六十六条 内閣総理大臣は、国家非常事態の布告を発した場合において、その必要がなくなつたと認めたときは、速かにその廃止の布告を発しなければならない。国会が命ずるときは、内閣総理大臣は、廃止の布告をしなければならない。
2 前項の廃止の布告その他本法に規定する内閣総理大臣の職権の行使については、国家公安委員会は、内閣総理大臣に対し、常に必要な助言をしなければならない。

   第八章 雑則

第六十七条 都道府県公安委員会、市町村公安委員会及び警察官又は警察吏員と検察官との関係は、別に法律の定めるところによる。
2 国家公安委員会は、検事総長と常に緊密な連絡を保つものとする。

第六十七条の二 国家地方警察の管轄に属する区域が市町村警察の管轄区域となつた場合は、当該区域内で、その日においてもつぱら警察の用に供されていた国有の財産(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二条第一項各号に掲げる財産をいう。以下本条中同じ。)及び物品で、国家地方警察に不必要で当該市町村が警察を維持するために必要なものは、国が無償で当該市町村に譲渡するものとする。但し、土地は譲渡しないものとし、当該市町村警察は、無償でこれを使用することができるものとする。
2 市町村が警察を維持しないこととなつた場合には、その日においてもつぱら警察の用に供されていた当該市町村所有の財産及び物品で、当該市町村に不必要で国家地方警察に必要なものは、当該市町村が無償で国に譲渡するものとする。但し、土地は譲渡しないものとし、国家地方警察は、無償でこれを使用することができるものとする。
3 国家地方警察又は市町村警察の責任の転移があつた日において、当該区域内で、国家地方警察又は当該市町村警察が他の機関と共用している国又は地方公共団体の建物は、前二項の例により、それぞれ当該市町村警察又は国家地方警察が無償でこれを使用することができるものとする。
4 第一項又は第二項の規定により市町村又は国が取得する財産に伴う負債があるときは、その処分については、相互の協議により、これを定める。
5 前各項の規定の適用について争があるときは、国家地方警察本部長官又は市町村長の申立に基き、内閣総理大臣がこれを決定する。

第六十七条の三 警察を維持する町村が警察を維持しないこととなつた場合においては、警察を維持しないこととなつた日における当該町村警察吏員の数を、第四条第一項の定員外の国家地方警察の警察官として置くことができる。

第六十八条 都道府県国家地方警察の管轄に属すべき区域と市町村警察の管轄に属すべき区域に変更を生じた場合、又は一若しくは二以上の市町村警察の管轄に属すべき区域が二以上の市町村警察の管轄に属すべき区域に分れ、又は一の市町村警察の区域となつた場合においては、その変更を要することとなつた日から五十日以内に、その管轄の変更による措置が完了されなければならない。
2 前項の措置が完了されるまでの間は、その区域においては従前の警察に関する管轄によるものとする。同項後段の場合においては、二以上の区域の市町村長が協議して又は一の市町村長が従前の市町村長の職務を行う。

第六十九条 第五十五条の二第二項及び第六十四条第三項の規定により国庫が負担する費用の範囲は、次の通りとする。
 一 旅費(国家地方警察の警察職員に対する旅費支給の例によつて計算した額)
 二 交通機関の借料
 三 交通機関の燃料費
 四 借用した建物、器材及び物件の借料(旅費を支給したときは、宿泊に要した施設及び寝具の借料を除いた額)
 五 職務遂行のために消費した各種の消耗品の費用
 六 出動に直接起因した交通機関、建物、器材及び物件の破損部分の修繕費

  附 則 (抄)

第一条 この法律の施行の期日は、その成立の日から九十日を超えない期間内において、各規定について、政令で、これを定める。

第二条 この法律施行後最初に任命する国家公安委員の任期は、五人の内一人は一年、一人は二年、一人は三年、一人は四年、一人は五年とする。
2 前項に規定する各委員の任期は、当該委員会において、くじでこれを定める。

第三条 この法律施行後最初に任命する都道府県公安委員、市町村公安委員の任期は、三人の中一人は一年、他の一人は二年、他の一人は三年とする。
2 前項に規定する各委員の任期は、各当該委員会において、くじでこれを定める。

第四条 国家公務員法は、この法律の適用に必要な範囲内においては、既に施行されたものとみなす。
2 前項の場合においては、国家公務員法による人事委員会の設置に至るまで、その職権は、同法附則第二条の例により、臨時人事委員会がこれを行う。

第五条 この法律施行後一年間は、任用候補者名簿がない場合その他特に必要がある場合においては、国家地方警察又は自治体警察の職員は、現在の法令により、夫々当該職員に相応する官吏又は吏員に必要な資格を有する者の中から、臨時に、これを任命することができる。

第六条 国家地方警察の警察官吏の任免、給与、服務その他必要な事項に関しては、警察官吏に関する人事委員会規則が定められ、若しくは第三十六条第二項の規定による国家公安委員会の定がなされるまでは、当分の間、なお従前の庁府県警察官吏の例による。

第七条 この法律施行の際現に内事局、中央警察学校、地方警察学校、警視庁又は道府県警察部に勤務する官吏が、引続き市町村警察の職員となつた場合(その官吏が引続き恩給法第十九条第一項に規定する公務員である国家地方警察の職員又は市町村警察の職員として在職し、更に引続き市町村警察の職員となつた場合を含む。)には、これを同法第十九条第一項に規定する公務員として勤続するものとみなし、当分の間、これに同法の規定を準用する。
2 前項の市町村警察の職員とは、市町村警察の職員で左の各号に掲げるものをいう。
 一 巡査部長又は巡査である警察吏員
 二 警部補である警察吏員
 三 警察長又は前二号に掲げる者以外の警察吏員
 四 専門家、技術者又は書記
3 第一項の規定を適用する場合においては、前項第一号及び第二号に掲げる職員は、これを恩給法第二十三条に規定する警察監獄職員とみなし、前項第三号及び第四号に掲げる職員は、これを同法第二十条第一項に規定する文官とみなす。
4 第一項の規定により恩給法第十二条、第十六条、第十八条又は第五十九条の規定を準用する場合においては、第二項第一号に掲げる職員は、現にこれに俸給を給する都又は現にこれに俸給を給する市町村の所在地を管轄する都道府県から俸給を受ける者とみなし、同項第二号及び第三号に掲げる職員は、これを国庫から俸給を受ける者とみなし、同項第四号に掲げる職員については、恩給法の一部を改正する法律(昭和二十二年法律第七十七号)附則第十条第三項の規定を準用する。この場合において、同条同項中「現にこれに俸給を給する都道府県」とあるのは、「現にこれに俸給を給する都又は現にこれに俸給を給する市町村の所在地を管轄する都道府県」と読み替えるものとする。
5 都から俸給を受ける者のうち前項の規定により国庫から俸給を受ける者とみなされる者又は市町村から俸給を受ける者のうち前項の規定により国庫若しくは都道府県から俸給を受ける者とみなされる者の恩給法第五十九条の規定の準用により国庫又は都道府県に納付すべき金額の収入手続については、左の例による。
 一 国庫から俸給を受ける者とみなされる者の国庫に納付すべき金額は、俸給の支払をする際その支払をする吏員がこれを控除し、その計算を明らかにする仕訳書を添附して毎翌月十日までに、これを歳入徴収官に納付しなければならない。
 二 都道府県から俸給を受ける者とみなされる者の都道府県に納付すべき金額は、俸給の支払をする際その支払をする吏員がこれを控除し、当該都道府県の定めるところにより、その納付の手続をしなければならない。
6 この法律施行の際現に警視庁又は道府県警察部に勤務する吏員であつて都道府県の退隠料に関する条例の規定の適用を受ける者が、引続き国家地方警察の職員となつた場合において、その条例の規定による退職給付を受けないときは、恩給法の適用については、その当該都道府県の吏員としての在職期間は、これを同法第十九条に規定する公務員としての在職年に通算する。

第八条 市町村警察に要する費用は、地方自治財政が、確立される時まで、政令の定めるところにより国庫及び都道府県がこれを負担する。
2 国家地方警察に要する費用は、前項のときまで国庫及び都道府県の負担とする。
3 国庫と当該都道府県の警察費の負担区分については、第一項のときまで従前の例による。

第九条 削除

第十条 この法律施行の際警視庁又は道府県警察部の管理に属する犯罪鑑織施設、警察通信施設及び教養施設は、国家地方警察がこれを維持管理する。但し、現在東京都港区愛宕町及び宮城内にある警視庁の訓練学校で将来東京都の特別区の警察へ移管さるべきものを除く。

第十一条 町村の全部事務組合及び役場事務組合でこの法律施行の際現に存するものは、この法律の規定の適用については、これを一の町村とみなす。

第十二条 行政執行法第一条及び第二条の当該行政官庁は、第三十七条又は第四十九条の警察署長とし、同法第三条乃至第五条の当該行政官庁及び同法第六条の行政官庁は、第三十七条及び第四十九条の警察署長を含むものとする。

第十三条 第四十条第一項の規定により市町村がその区域内における警察の責に任ずるのは、各市町村について、この法律中の自治体警察に関する規定の適用により市町村公安委員会が成立し、必要な警察吏員が任命せられた日よりとする。但し、その期日は、この法律の成立後九十日を超えてはならない。

第十四条 前条の規定によりその区域内における警察の責に任ずる市町村ができた場合においては、この法律中の国家地方警察に関する規定が施行されるまでの間、警視庁又は道府県警察部が国家地方警察としてその職務を行うものとする。

第十九条 他の法令中警察官に関する規定は、当該警察官及び警察吏員に関する規定とする。


制作者註


中野文庫