中野文庫 戦時刑事特別法

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戦時刑事特別法(昭和17年法律第64号)

   第一章 罪

第一条 戦時ニ際シ灯火管制中又ハ敵襲ノ危険其ノ他人心ニ動揺ヲ生ゼシムベキ状態アル場合ニ於テ火ヲ放チテ現ニ人ノ住居ニ使用シ又ハ人ノ現在スル建造物、汽車、電車、自動車、艦船、航空機若ハ鉱坑ヲ焼燬シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ十年以上ノ懲役ニ処ス
2 戦時ニ際シ灯火管制中又ハ敵襲ノ危険其ノ他人心ニ動揺ヲ生ゼシムベキ状態アル場合ニ於テ火ヲ放チテ現ニ人ノ住居ニ使用セズ又ハ人ノ現在セザル建造物、汽車、電車、自動車、艦船、航空機若ハ鉱坑ヲ焼燬シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
3 前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス但シ公共ノ危険ヲ生ゼザルトキハ之ヲ罰セズ
4 第一項及第二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
5 第一項又ハ第二項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其ノ予備又ハ通謀ヲ為シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス

第二条 戦時ニ際シ灯火管制中又ハ敵襲ノ危険其ノ他人心ニ動揺ヲ生ゼシムベキ状態アル場合ニ於テ火ヲ放チテ前条第一項及第二項ニ記載シタル以外ノ物ヲ焼燬シ因テ公共ノ危険ヲ生ゼシメタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス
2 前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ十年以下ノ懲役ニ処ス

第三条 第一条第二項及前条第一項ニ記載シタル物自己ノ所有ニ係ルトキト雖モ差押ヲ受ケ、物権ヲ負担シ又ハ賃貸シ若ハ保険ニ付シタルモノヲ焼燬シタルトキハ他人ノ物ヲ焼燬シタル者ノ例ニ同ジ

第四条 戦時ニ際シ灯火管制中又ハ敵襲ノ危険其ノ他人心ニ動揺ヲ生ゼシムベキ状態アル場合ニ於テ刑法第百七十六条若ハ同条ノ例ニ依ル同法第百七十八条ノ罪又ハ此等ニ関スル同法第百七十九条ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以上ノ有期懲役ニ処シ同法第百七十七条若ハ同条ノ例ニ依ル同法第百七十八条ノ罪又ハ此等ニ関スル同法第百七十九条ノ罪ヲ犯シタル者ハ無期又ハ七年以上ノ懲役ニ処ス
2 前項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ傷害ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ十年以上ノ懲役ニ処シ死ニ致シタル者ハ死刑ニ処ス
3 刑法第百八十条ノ規定ハ第一項ノ罪ニ付テハ之ヲ適用セズ

第五条 戦時ニ際シ灯火管制中又ハ敵襲ノ危険其ノ他人心ニ動揺ヲ生ゼシムベキ状態アル場合ニ於テ刑法第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ此等ニ関スル同法第二百四十三条ノ罪ヲ犯シタル者窃盗ヲ以テ論ズベキトキハ無期又ハ三年以上ノ懲役、強盗ヲ以テ論ズベキトキハ死刑又ハ無期若ハ十年以上ノ懲役ニ処ス
2 戦時ニ際シ灯火管制中又ハ敵襲ノ危険其ノ他人心ニ動揺ヲ生ゼシムベキ状態アル場合ニ於テ刑法第二百四十条前段若ハ第二百四十一条前段ノ罪又ハ此等ニ関スル同法第二百四十三条ノ罪ヲ犯シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処シ同法第二百四十条後段若ハ第二百四十一条後段ノ罪又ハ此等ニ関スル同法第二百四十三条ノ罪ヲ犯シタル者ハ死刑ニ処ス
3 第一項ノ強盗ヲ為ス目的ヲ以テ其ノ予備又ハ通諜ヲ為シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス

第六条 戦時ニ際シ灯火管制中又ハ敵襲ノ危険其ノ他人心ニ動揺ヲ生ゼシムベキ状態アル場合ニ於テ刑法第二百四十九条ノ罪又ハ之ニ関スル同法第二百五十条ノ罪ヲ犯シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス

第七条 戦時ニ際シ国政ヲ変乱スルコトヲ目的トシテ人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期ノ懲役若ハ禁錮ニ処ス
2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
3 第一項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其ノ予備又ハ陰謀ヲ為シタル者ハ二年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
4 第一項ノ罪ヲ犯スコトヲ教唆シ又ハ幇助シタル者ハ被教唆者又ハ被幇助者其ノ実行ヲ為スニ至ラザルトキハ二年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
5 第一項ノ罪ヲ犯サシムル為他人ヲ煽動シタル者ノ罰亦前項ニ同ジ

第七条ノ二 戦時ニ際シ国政ヲ変乱スルコトヲ目的トシテ人ヲ傷害シ、逮捕シ又ハ監禁シタル者ハ一年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ十年以上ノ懲役若ハ禁錮ニ処ス
2 戦時ニ際シ国政ヲ変乱スルコトヲ目的トシテ人ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
3 刑法第二百八条第二項ノ規定ハ前項ノ暴行ノ罪ニ付テハ之ヲ適用セズ

第七条ノ三 戦時ニ際シ国政ヲ変乱スルコトヲ目的トシテ騒擾ノ罪其ノ他治安ヲ害スベキ罪ノ実行ニ関シ協議ヲ為シ又ハ其ノ実行ヲ煽動シタル者ハ七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス

第七条ノ四 戦時ニ際シ国政ヲ変乱シ其ノ他安寧秩序ヲ紊乱スルコトヲ目的トシテ著シク治安ヲ害スベキ事項ヲ宣伝シタル者ノ罰亦前条ニ同ジ

第七条ノ五 第七条第三項乃至第五項又ハ前二条ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除ス

第八条 戦時ニ際シ防空ノ実施ニ従事スル公務員ノ当該職務ヲ執行スルニ当リ之ニ対シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ七年以下ノ懲役ニ処ス

第九条 戦時ニ際シ刑法第百六条ノ罪ヲ犯シタル者ハ左ノ区別ニ従テ処断ス
 一 首魁ハ死刑又ハ無期若ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
 二 他人ヲ指揮シ又ハ他人ニ率先シテ勢ヲ助ケタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス
 三 附和随行シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
2 戦時ニ際シ暴行又ハ脅迫ヲ為ス為多衆聚合シ当該公務員ヨリ解散ノ命令ヲ受クルモ仍解散セザルトキハ首魁ハ十年以下ノ懲役ニ処シ其ノ他ノ者ハ三年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス

第十条 戦時ニ際シ公共ノ防空ノ為ノ建造物、工作物其ノ他ノ設備ヲ損壊シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公共ノ防空ノ妨害ヲ生ゼシメタル者ハ死刑又ハ無期若ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
2 戦時ニ際シ気象ノ観測ノ為ノ建造物、工作物其ノ他ノ設備ヲ損壊シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ気象ノ観測ノ妨害ヲ生ゼシメタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス

第十一条 戦時ニ際シ郵便又ハ電気通信ノ用ニ供スル建造物、工作物其ノ他ノ設備ヲ損壊シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公共ノ通信ノ妨害ヲ生ゼシメタル者ハ無期又ハ一年以上ノ懲役ニ処ス

第十二条 戦時ニ際シ瓦斯又ハ電気ノ用ニ供スル建造物、工作物其ノ他ノ設備ヲ損壊シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ瓦斯又ハ電気ノ公共ノ利用ノ妨害ヲ生ゼシメタル者ハ無期又ハ一年以上ノ懲役ニ処ス

第十三条 戦時ニ際シ国防上重要ナル生産事業ノ設備其ノ他当該生産ノ用ニ供スル物ヲ損壊若ハ隠匿シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ其ノ物ノ効用ヲ害シ当該事業ノ遂行ノ妨害ヲ生ゼシメタル者ハ無期又ハ一年以上ノ懲役ニ処ス

第十四条 前四条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

第十五条 戦時ニ際シ業務上不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ生活必需品ノ買占又ハ売惜ヲ為シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ一万円以下ノ罰金ニ処ス
2 前項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情状ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得

第十六条 戦時ニ際シ刑法第百二十四条第一項ノ罪ヲ犯シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
2 戦時ニ際シ刑法第百二十五条ノ罪ヲ犯シタル者ハ無期又ハ五年以上ノ懲役ニ処ス
3 戦時ニ際シ刑法第百二十六条第一項又ハ第二項ノ罪ヲ犯シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ七年以上ノ懲役ニ処ス因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ死刑ニ処ス
4 第二項ノ罪ヲ犯シ因テ刑法第百二十七条ニ定ムル結果ヲ生ゼシメタル者亦前項ノ例ニ同ジ
5 第一項前段、第二項及第三項前段ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

第十七条 戦時ニ際シ刑法第百三十条ノ罪ヲ犯シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

第十八条 戦時ニ際シ刑法第百四十三条又ハ第百四十四条ノ罪ヲ犯シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
2 戦時ニ際シ刑法第百四十六条前段ノ罪ヲ犯シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ七年以上ノ懲役ニ処ス因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ死刑ニ処ス
3 戦時ニ際シ刑法第百四十七条ノ罪ヲ犯シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
4 第一項前段、第二項前段及前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
5 第二項前段ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其ノ予備又ハ通謀ヲ為シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス

第十八条ノ二 戦時ニ際シ公務員刑法第百九十七条第一項前段、第百九十七条第二項、第百九十七条ノ二又ハ第百九十七条ノ三第三項ノ罪ヲ犯シタルトキハ十年以下ノ懲役ニ処ス
2 戦時ニ際シ公務員刑法第百九十七条第一項後段ノ罪ヲ犯シタルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス
3 戦時ニ際シ公務員刑法第百九十七条ノ三第一項又ハ第二項ノ罪ヲ犯シタルトキハ無期又ハ二年以上ノ懲役ニ処ス

第十八条ノ三 戦時ニ際シ官公署ノ職員其ノ地位ヲ利用シ他ノ官公署ノ職員ノ職務ニ属スル事項ニ関シ斡旋ヲ為スコト又ハ斡旋ヲ為シタルコトニ付不当ノ利益ヲ収受シ、要求シ又ハ約束シタルトキハ収賄ノ罪ト為シ七年以下ノ懲役ニ処ス

第十八条ノ四 犯人又ハ情ヲ知リタル第三者ノ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス

第十八条ノ五 第十八条ノ二及第十八条ノ三ニ規定スル賄賂ヲ供与シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ為シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ一万円以下ノ罰金ニ処ス
2 前項ニ掲グル行為ヲ為サシムル目的ヲ以テ金銭若ハ物品ノ交付ヲ為シ又ハ情ヲ知リテ其ノ交付ヲ受ケタル者ノ罰亦前項ニ同ジ
3 前項ノ場合ニ於テ交付ヲ受ケタル金銭又ハ物品ハ之ヲ没収ス其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス

第十八条ノ六 第十八条ノ二、第十八条ノ四及前条ノ規定ノ適用ニ付テハ公務ニ従事スル職員ハ法令ニ依ラザル者ト雖モ之ヲ公務員ト看做ス

第十八条ノ七 第十八条ノ二ノ規定ハ他ノ法令ニ於テ官吏ト看做サルル者ヲ除クノ外他ノ法令ニ於テ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做サルル者ニ付テハ之ヲ適用セズ

   第二章 刑事手続

第十九条 戦時ニ於ケル刑事手続ニ関スル特例ハ本章ノ定ムル所ニ依ル

第二十条 弁護人ノ数ハ被告人一人ニ付二人ヲ超ユルコトヲ得ズ
2 弁護人ノ選任ハ最初ニ定メタル公判期日ニ係ル召喚状ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ十日ヲ経過シタルトキハ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ裁判所ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ

第二十一条 弁護人ハ訴訟ニ関スル書類ノ謄写ヲ為サントスルトキハ裁判長又ハ予審判事ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
2 弁護人ノ訴訟ニ関スル書類ノ閲覧ハ裁判長又ハ予審判事ノ指定シタル場合ニ於テ之ヲ為スベシ

第二十二条 裁判書又ハ裁判ヲ記載シタル調書ノ謄本又ハ抄本ハ機密ノ保持其ノ他公益上ノ理由ニ依リ裁判所ニ於テ之ヲ被告人其ノ他訴訟関係人ニ交付スルコトヲ相当ナラズト認ムルトキハ之ヲ交付セザルコトヲ得

第二十二条ノ二 刑事訴訟法第六十条第二項第七号ノ規定ニ依リ公判調書ニ被告人、証人、鑑定人、通事又ハ翻訳人ノ訊問及供述ヲ記載スルニハ其ノ供述ノ要領ノミヲ明確ニスルヲ以テ足ル

第二十二条ノ三 裁判所又ハ予審判事相当ト認ムルトキハ証人又ハ鑑定人ノ訊問ニ代ヘ書面ノ提出ヲ為サシムルコトヲ得

第二十三条 予審判事ハ商工会議所其ノ他ノ団体ニ対シ必要ナル事項ノ報告ヲ求ムルコトヲ得
2 裁判所ハ公判期日前前項ノ団体ニ対シ必要ナル事項ノ報告ヲ求ムルコトヲ得
3 刑事訴訟法第三百四十二条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ集取シタルモノニ付之ヲ準用ス

第二十四条 刑事訴訟法第三百三十四条ノ規定ハ第五条第一項並ニ昭和五年法律第九号第二条及第三条ノ窃盗ノ罪ニ関スル事件ニ付テハ之ヲ適用セズ

第二十五条 地方裁判所ノ事件ト雖モ刑事訴訟法第三百四十三条第一項ニ規定スル制限ニ依ルコトヲ要セズ

第二十五条ノ二 検事事案ノ内容ニ照シ相当ト認ムルトキハ区裁判所ノ管轄ニ属スル事件ニ付地方裁判所ニ公判ヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ刑事訴訟法第三百五十六条但書ノ規定ハ之ヲ適用セズ

第二十六条 有罪ノ言渡ヲ為スニ当リ証拠ニ依リテ罪ト為ルベキ事実ヲ認メタル理由ヲ説明シ法令ノ適用ヲ示スニハ証拠ノ標目及法令ヲ掲グルヲ以テ足ル

第二十七条 裁判所構成法戦時特例第四条第二項ノ上告ハ第二審ノ判決ニ対シ上告ヲ為スコトヲ得ル理由アル場合ニ於テ之ヲ為スコトヲ得
2 上告裁判所ハ第二審ノ判決ニ対スル上告事件ニ関スル手続ニ依リ裁判ヲ為スベシ

第二十八条 上告裁判所訴訟記録ノ送付ヲ受ケタルトキハ速ニ其ノ旨ヲ上告申立人及対手人ニ通知スベシ
2 上告申立人ハ前項ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ上告趣意書ヲ上告裁判所ニ差出スベシ
3 上告ノ対手人ハ第一項ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ附帯上告ヲ為スコトヲ得
4 刑事訴訟法第四百二十二条、第四百二十三条及第四百二十四条第一項ノ規定ハ之ヲ適用セズ

第二十九条 上告裁判所上告趣意書其ノ他ノ書類ニ依リ上告ノ理由ナキコト明白ナリト認ムルトキハ検事ノ意見ヲ聴キ弁論ヲ経ズシテ判決ヲ以テ上告ヲ棄却スルコトヲ得

第二十九条ノ二 区裁判所ハ事案ノ内容単純ニシテ犯罪ノ成立明白ナリト認ムル事件ニ付略式命令ヲ以テ一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ拘留ヲ科スルコトヲ得
2 左ニ掲グル罪ニ関スル事件ニ付前項ト同一ノ条件アルトキハ前項ノ規定ニ拘ラズ略式命令ヲ以テ三年以下ノ懲役ヲ科スルコトヲ得
 一 第五条第一項ノ窃盗ノ罪
 二 第十七条ノ罪
 三 刑法第百八十六条ノ罪
 四 刑法第二百三十五条ノ罪及其ノ未遂罪
 五 昭和五年法律第九号第二条及第三条ノ窃盗ノ罪
3 前二項ノ場合ニ於テ刑ノ執行猶予ハ刑ノ言渡ト同時ニ略式命令ヲ以テ其ノ言渡ヲ為スベシ

第二十九条ノ三 略式命令ニ付テハ検事ハ謄本ノ送達アリタル日ヨリ七日内ニ正式裁判ノ請求ヲ為スコトヲ得
2 正式裁判ノ請求ハ略式命令ヲ為シタル裁判所ニ書面ヲ以テ之ヲ為スベシ正式裁判ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ速ニ其ノ旨ヲ被告人ニ通知スベシ

第二十九条ノ四 刑事訴訟法第五百二十三条乃至第五百二十八条ノ規定ハ第二十九条ノ二ノ場合ニ付、同法第五百二十九条乃至第五百三十三条ノ規定ハ前二条ノ場合ニ付之ヲ準用ス

第二十九条ノ五 検事又ハ被告人ハ略式命令ヲ為シタル裁判所ニ書面ヲ以テ正式裁判ノ請求ヲ抛棄スルコトヲ得
2 正式裁判ノ請求ノ抛棄ニ因リ略式命令ハ確定判決ト同一ノ効力ヲ有ス

第三十条 刑事手続ニ付テハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外一般ノ規定ノ適用アルモノトス

第三十一条 第二十一条乃至第二十四条、第二十六条及前条ノ規定ハ軍法会議ノ刑事手続ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テ刑事訴訟法第六十条第二項第七号トアルハ陸軍軍法会議法第百十二条第二項第六号又ハ海軍軍法会議法第百十二条第二項第六号トシ刑事訴訟法第三百四十二条トアルハ陸軍軍法会議法第三百八十八条又ハ海軍軍法会議法第三百九十条トシ刑事訴訟法第三百三十四条トアルハ陸軍軍法会議法第三百六十七条又ハ海軍軍法会議法第三百六十九条トス

  附 則

1 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
2 昭和十六年法律第九十八号ハ之ヲ廃止ス
3 第二十条及第二十四条乃至第二十九条(第二十四条及第二十六条ニ付テハ第三十一条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ハ本法施行前公訴ヲ提起シタル事件ニ付テハ之ヲ適用セズ
4 戦時終了ノ際ニ於テ必要ナル経過規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
5 昭和十六年法律第九十八号ニ違反シタル者ノ処罰ニ付テハ仍旧法ニ依ル

  附 則 (昭和十八年法律第百七号)

1 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
2 第十九条及第二十九条ノ二乃至第二十九条ノ五ノ改正規定ハ本法施行前公訴ヲ提起シタル事件ニ付テハ之ヲ適用セズ
3 第二十七条ノ改正規定ハ本法施行前第一審ノ弁論ノ終結アリタル事件ニ付テハ之ヲ適用セズ
4 改正前ノ戦時刑事特別法第二十七条ノ規定ハ本法施行前第一審ノ弁論ノ終結アリタル事件ニ付テハ本法施行後ト雖モ仍其ノ効力ヲ有ス


制作者註


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