中野文庫 工場法

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工場法(明治44年法律第46号)

第一条 本法ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル工場ニ之ヲ適用ス
 一 常時十人以上ノ職工ヲ使用スルモノ
 二 事業ノ性質危険ナルモノ又ハ衛生上有害ノ虞アルモノ
2 本法ノ適用ヲ必要トセサル工場ハ勅令ヲ以テ之ヲ除外スルコトヲ得

第二条 削除

第三条 工業主ハ十六歳未満ノ者及女子ヲシテ一日ニ付十一時間ヲ超エテ就業セシムルコトヲ得ス
2 主務大臣ハ業務ノ種類ニ依リ本法施行後十五年間ヲ限リ前項ノ就業時間ヲ二時間以内延長スルコトヲ得
3 就業時間ハ工場ヲ異ニスル場合ト雖前二項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ通算ス

第四条 工業主ハ十六歳未満ノ者及女子ヲシテ午後十時ヨリ午前五時ニ至ル間ニ於テ就業セシムルコトヲ得ス但シ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ午後十一時迄就業セシムルコトヲ得

第五条及第六条 削除

第七条 工業主ハ十六歳未満ノ者及女子ニ対シ毎月少クトモ二回ノ休日ヲ設ケ、一日ノ就業時間カ六時間ヲ超ユルトキハ少クトモ三十分、十時間ヲ超ユルトキハ少クトモ一時間ノ休憩時間ヲ就業時間中ニ於テ設クヘシ
2 前項ノ休憩時間ハ一斉ニ之ヲ与フヘシ但シ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
3 夏季ニ於テ一時間ヲ超ユル休憩時間ヲ設クル場合ニ於テハ工業主ハ行政官庁ノ許可ヲ受ケ其ノ超ユル時間以内就業時間ヲ延長スルコトヲ得但シ其ノ延長時間ハ一時間ヲ超ユルコトヲ得ス

第八条 天災事変ノ為又ハ事変ノ虞アル為必要アル場合ニ於テハ主務大臣ハ事業ノ種類及地域ヲ限リ第三条、第四条及前条ノ規定ノ適用ヲ停止スルコトヲ得
2 避クヘカラサル事由ニ因リ臨時必要アル場合ニ於テハ工業主ハ行政官庁ノ許可ヲ得テ期間ヲ限リ第三条ノ規定ニ拘ラス就業時間ヲ延長シ、第四条ノ規定ニ拘ラス十六歳以上ノ女子ヲ就業セシメ又ハ前条ノ休日ヲ廃スルコトヲ得但シ急速ニ腐敗シ又ハ変質スル虞アル原料又ハ材料ノ損失ヲ防ク為必要ナル場合ニ於テハ継続四日以上ニ亙ラス且一月ニ付七日ヲ超エサル限リ行政官庁ノ許可ヲ受クルコトヲ要セス
3 臨時必要アル場合ニ於テハ工業主ハ其ノ都度予メ行政官庁ニ届出テ一月ニ付七日ヲ超エサル期間就業時間ヲ二時間以内延長スルコトヲ得
4 季節ニ依リ繁忙ナル事業ニ付テハ工業主ハ一定ノ期間ニ付予メ行政官庁ノ認可ヲ受ケ其ノ期間中一年ニ付百二十日ノ割合ヲ超エサル限リ就業時間ヲ一時間以内延長スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ認可ヲ受ケタル期間内ハ前項ノ規定ヲ適用セス

第九条 工業主ハ十六歳未満ノ者及女子ヲシテ運転中ノ機械若ハ動力伝導装置ノ危険ナル部分ノ掃除、注油、検査若ハ修繕ヲ為サシメ又ハ運転中ノ機械若ハ動力伝導装置ニ調帯、調索ノ取附ケ若ハ取外シヲ為サシメ其ノ他危険ナル業務ニ就カシムルコトヲ得ス

第十条 工業主ハ十六歳未満ノ者ヲシテ毒薬、劇薬其ノ他有害料品又ハ爆発性発火性若ハ引火性ノ料品ヲ取扱フ業務及著シク塵埃、粉末ヲ飛散シ又ハ有害瓦斯ヲ発散スル場所ニ於ケル業務其ノ他危険又ハ衛生上有害ナル場所ニ於ケル業務ニ就カシムルコトヲ得ス

第十一条 前二条ニ掲ケタル業務ノ範囲ハ主務大臣之ヲ定ム
2 前条ノ規定ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ十六歳以上ノ女子ニ付之ヲ適用スルコトヲ得

第十二条 主務大臣ハ病者又ハ産前産後、若ハ生児、哺育中ノ女子ノ就業ニ付制限又ハ禁止ノ規定ヲ設クルコトヲ得

第十三条 行政官庁ハ命令ノ定ムル所ニ依リ工場及附属建設物並設備カ危害ヲ生シ又ハ衛生、風紀其ノ他公益ヲ害スル虞アリト認ムルトキハ予防又ハ除害ノ為必要ナル事項ヲ工業主ニ命シ必要ト認ムルトキハ其ノ全部又ハ一部ノ使用ヲ停止スルコトヲ得
2 前項ノ場合ニ於テハ行政官庁ハ工業主ニ命シタル事項ニ付必要ナル事項ヲ職工又ハ徒弟ニ対シ命スルコトヲ得

第十四条 当該官吏ハ工場若ハ其ノ附属建設物ニ臨検シ又ハ就業ノ禁止制限ヲ為スヘキ疾病若ハ伝染ノ虞アル疾病ニ罹レル疑アル職工若ハ徒弟ノ検診ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ証票ヲ携帯スヘシ

第十五条 工業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ職工カ業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタル場合ニ於テ本人又ハ其ノ遺族若ハ本人ノ死亡当時其ノ収入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ヲ扶助スヘシ
2 職工カ健康保険法又ハ厚生年金保険法ニ依リ前項ノ扶助ニ相当スル保険給付ヲ受クヘキトキハ工業主ハ同項ノ規定ニ拘ラス同項ノ扶助ヲ為スコトヲ要セス

第十五条ノ二 工業主前条ノ規定ニ基キ扶助ヲ為シタルトキハ工業主ハ其ノ扶助ノ価額ノ限度ニ於テ民法ニ依ル損害賠償ノ責ヲ免ル
2 工業主及職工ノ出捐スル共済組合勅令ノ定ムル所ニ依リ工業主ヲシテ扶助ヲ為スヲ要セザラシムル給付ヲ為シタルトキハ工業主ハ其ノ給付ノ価額ノ限度ニ於テ民法ニ依ル損害賠償ノ責ヲ免ル

第十五条ノ三 第十五条ノ規定ニ基キ扶助ヲ受クルノ権利ハ二年間之ヲ行ハザルトキハ時効ニ因リ消滅ス

第十五条ノ四 第十五条ノ規定ニ基キ扶助ヲ受クルノ権利ハ之ヲ譲渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ

第十六条 職工徒弟、職工徒弟タラムトスル者若ハ工業主又ハ其ノ法定代理人若ハ工場管理人ハ職工徒弟又ハ職工徒弟タラムトスル者ノ戸籍ニ関シ戸籍事務ヲ管掌スル者又ハ其ノ代理者ニ対シ無償ニテ証明ヲ求ムルコトヲ得

第十七条 職工ノ雇入、解雇、周旋ノ取締及徒弟ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

第十八条 工業主ハ工場ニ付一切ノ権限ヲ有スル工場管理人ヲ選任スルコトヲ得
2 工業主本法施行区域内ニ居住セサルトキハ工場管理人ヲ選任スルコトヲ要ス
3 工場管理人ノ選任ハ行政官庁ノ認可ヲ受クヘシ但シ法人ノ理事、会社ノ業務ヲ執行スル社員、会社ヲ代表スル社員、取締役、業務担当社員其ノ他法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代表スル者及支配人ノ中ヨリ選任スル場合ハ此ノ限ニ在ラス

第十九条 前条ノ工場管理人ハ本法及本法ニ基キテ発スル命令ノ適用ニ付テハ工業主ニ代ルモノトス但シ第十五条ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
2 工業主営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有セサル未成年者若ハ禁治産者ナル場合又ハ法人ナル場合ニ於テ工場管理人ナキトキハ其ノ法定代理人又ハ理事、業務ヲ執行スル社員、会社ヲ代表スル社員、取締役、業務担当社員其ノ他法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代表スル者ニ付亦前項ニ同シ

第二十条 工業主又ハ前条ニ依リ工業主ニ代ル者本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ千円以下ノ罰金ニ処ス

第二十一条 正当ノ理由ナクシテ当該官吏ノ臨検ヲ拒ミ、妨ケ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ対シ答弁ヲ為サス若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シ又ハ職工若ハ徒弟ノ検診ヲ妨ケタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス

第二十二条 工業主又ハ第十九条ニ依リ工業主ニ代ル者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇入其ノ他ノ従業者ニシテ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ス但シ工場ノ管理ニ付相当ノ注意ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
2 工業主又ハ第十九条ニ依リ工業主ニ代ル者ハ職工ノ年齢ヲ知ラサルノ故ヲ以テ本法ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ス但シ工業主又ハ第十九条ニ依リ工業主ニ代ル者及取扱者ニ過失ナカリシ場合ハ此ノ限ニ在ラス

第二十三条 本法ニ依ル行政官庁ノ処分ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起シ違法ニ権利ヲ傷害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得

第二十四条 主務大臣ハ第一条ニ該当セサル工場ニシテ原動力ヲ用フルモノニ付テハ第三条、第四条、第七条乃至第九条、第十一条、第十三条、第十四条、第十六条及第十八条乃至第二十三条ノ規定ヲ適用スルコトヲ得但シ第三条ノ規定ヲ適用スル場合ニ於テハ其ノ適用後二年以内同条ノ就業時間ヲ一時間以内延長スルコトヲ得

第二十五条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ハ工場管理人ニ関スル規定及罰則ヲ除クノ外官立又ハ公立ノ工場ニ之ヲ適用ス
2 官立工場ニ関シテハ所轄官庁ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ行政官庁ニ属スル職務ヲ行フ

  附 則

本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

  附 則 (大正十二年法律第三十三号)

1 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
2 本法中十六歳トアルハ本法施行後三年間ハ之ヲ十五歳トス
3 職工ヲ二組以上ニ分チ交替ニ就業セシムル場合ニ於テハ本法施行後三年間ハ第四条ノ規定ヲ適用セス
4 前項ノ規定ニ依リ十五歳未満ノ者及女子ヲシテ就業セシムル場合ニ於テハ毎月少クトモ四回ノ休日ヲ設ケ十日ヲ超エサル期間毎ニ其ノ就業時ヲ転換スヘシ

  附 則 (昭和十年法律第十九号)

1 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
2 工場法第十五条ノ規定ニ基キ扶助ヲ受クルノ権利ノ時効ニシテ其ノ進行ガ本法施行前ニ始リタルモノニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル但シ本法施行ノ日ヨリ起算シ其ノ残期ガ二年ヨリ長キトキハ其ノ日ヨリ起算シテ第十五条ノ三ノ規定ヲ適用ス


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