中野文庫 宮中席次

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総 説

 わが国の公式な席次として、戦前には宮中席次が皇室儀制令(大正15年皇室令第7号)によって法定されていた。これは従前の宮中席次令(大正4年皇室令第1号)を廃止して定められたもので、皇族以外の華族、高等官や特に優遇を賜る者などについて規定し、高等官については別途、高等官席次(明治25年内閣訓令第1号)を定めていたが、双方とも戦後廃止された。友田二郎『国際儀礼とエチケット』59頁(学生社、新装版、昭和57年)によると、これを受けて、新憲法施行の日(昭和22年5月3日)に宮中席次暫定規程が定められたとされる。

 基本的には下の例示のとおりであるが、転官転職をした場合、後の席次が前と同順位であれば前の席次のとおりとし、転官転職後の官職の席次が前より下のときはその席次のうちで首席を占める(皇室儀制令34条)。

 同じ順位の場合は、その席次に相当する身分や位階・階級を保有するに至った日(例えば国務大臣に就任した日)の先後で決め、同日の場合はその当日の席次の順序で決め、その当日に席次がなかったときは年齢順によった。なお、華族については、同じ爵位を有する者の間では、位階の高低によって席次を定めた(皇室儀制令30条)。

 夫人(妻)の席次は配偶者(夫)の席次に次ぐ位置とした(皇室儀制令37条)。これは現在でも同じであるが、女性大使や議員の配偶者(夫)の場合、少し異なった取り扱いをする場合もある(女性大使の夫の席次は公使に準ずる場合)。なお、女性の席次は既婚者、未亡人、離婚者、未婚者の順とするのが国際慣例である。

 宮中席次に定めがなかった内閣参議(戦前にあった職名)については、国務大臣の待遇を受けるものとして、また文化勲章受章者は勅任官の待遇をもって、儀式のたびに席次を定めた。

 戦後廃止される前に、低かった議員の席次が繰り上げられ、議長は第6に、副議長は第12に、議員は第23となった。現在では、国会議員は公選で選ばれる職として上席を占めるのが通例である。

 以下に掲げる席次は、皇室儀制令29条に定めるものを、現代語に直し、読みやすいよう読点を付したものである。なお、皇族については皇族班位・皇位継承順位の項を、外交官については外交官席次の項を併せて参照されたい。

第一階
第1   大勲位
  1 菊花章頸飾
  2 菊花大綬章
第2   内閣総理大臣
第3   枢密院議長
第4   元勲優遇のため大臣の礼遇を賜った者
第5   元帥、国務大臣、宮内大臣、内大臣
第6   朝鮮総督
第7   内閣総理大臣又は枢密院議長たる前官の礼遇を賜った者
第8   国務大臣、宮内大臣または内大臣たる前官の礼遇を賜った者
第9   枢密院副議長
第10   陸軍大将、海軍大将、枢密顧問官
第11   親任官
第12   貴族院議長、衆議院議長
第13   勲一等旭日桐花大綬章
第14   功一級
第15   親任官の待遇を賜った者
第16   公爵
第17   従一位
第18   勲一等
  1 旭日大綬章
  2 宝冠章
  3 瑞宝章
第二階
第19   高等官一等
第20   貴族院副議長、衆議院副議長
第21   麝香間祗候
第22   侯爵
第23   正二位
第三階
第24   高等官二等
第25   功二級
第26   錦鶏間祗候
第27   勅任待遇
第28   伯爵
第29   従二位
第30   勲二等
  1 旭日重光章
  2 宝冠章
  3 瑞宝章
第31   子爵
第32   正三位
第33   従三位
第34   功三級
第35   勲三等
  1 旭日中綬章
  2 宝冠章
  3 瑞宝章
第36   男爵
第37   正四位
第38   従四位
第四階
第39   貴族院議員、衆議院議員
第40   高等官三等
第41   高等官三等の待遇を享ける者
第42   功四級
第43   勲四等
  1 旭日小綬章
  2 宝冠章
  3 瑞宝章
第44   正五位
第45   従五位
第五階
第46   高等官四等
第47   高等官四等の待遇を享ける者
第48   功五級
第49   勲五等
  1 双光旭日章
  2 宝冠章
  3 瑞宝章
第50   正六位
第六階
第51   高等官五等
第52   高等官五等の待遇を享ける者
第53   従六位
第54   勲六等
  1 単光旭日章
  2 宝冠章
  3 瑞宝章
第七階
第55   高等官六等
第56   高等官六等の待遇を享ける者
第57   正七位
第八階
第58   高等官七等
第59   高等官七等の待遇を享ける者
第60   従七位
第61   功六級
第九階
第62   高等官八等
第63   高等官八等の待遇を享ける者
第十階
第64   高等官九等
第65   奏任待遇
第66   正八位
第67   功七級
第68   勲七等
  1 青色桐葉章
  2 宝冠章
  3 瑞宝章
第69   従八位
第70   勲八等
  1 白色桐葉章
  2 宝冠章
  3 瑞宝章


戦前のその他の席次

 戦前においては、内規として「内外人主催の集会における席次」を以下のとおり外交団と協議して定めていた。

 日本人主催の場合の席次
  1. 皇族・王公族
  2. 外国大使
  3. 大勲位
  4. 内閣総理大臣
  5. 外務大臣
  6. 外国公使
  7. 枢密院議長
  8. 元勲優遇のため大臣の礼遇を賜った者
  9. 元帥
  10. 国務大臣
 外国人主催の場合の席次
  1. 皇族・王公族
  2. 内閣総理大臣
  3. 外務大臣
  4. 外国大公使
  5. 大勲位
  6. 枢密院議長
  7. 元勲優遇のため大臣の礼遇を賜った者
  8. 元帥
  9. 国務大臣

 席次は国務大臣同士の場合、現在のように官制順によるのではなく、皇室儀制令の規定に従う。すなわち、国務大臣は全員が宮中席次第一階第五の席次を占めるが、国務大臣の就任順によって定める(例えば前内閣に国務大臣となり、新内閣でも留任する者がいる場合)。ただし、総理経験者が国務大臣として入閣した場合は首席を占める(実例としては、百瀬孝『事典昭和戦前期の日本』250頁(吉川弘文館、平成2年)に二・二六事件当時の岡田内閣の事例が詳述されている)。

 戦前の閣僚名簿の発表順(明治期)
  (第一次伊藤内閣;
   官職名は明治18年12月22日現在)
  1. 内閣総理大臣
  2. 外務大臣
  3. 内務大臣
  4. 大蔵大臣
  5. 陸軍大臣
  6. 海軍大臣
  7. 司法大臣
  8. 文部大臣
  9. 農商務大臣
  10. 逓信大臣
 戦前の閣僚名簿の発表順(昭和期)
  (鈴木(貫)内閣;
   官職名は昭和20年4月7日現在)
  1. 内閣総理大臣
  2. 外務大臣
  3. 内務大臣
  4. 大蔵大臣
  5. 陸軍大臣
  6. 海軍大臣
  7. 司法大臣
  8. 文部大臣
  9. 厚生大臣
  10. 大東亜大臣
  11. 農商大臣
  12. 軍需大臣
  13. 運輸通信大臣
  14. 国務大臣(無任所大臣)


現在の席次

 上述のとおり、皇室儀制令の廃止によって現在は公式な法定席次は存在しないが、概ね以下のように、皇族につづいて、三権の長、外国大使、閣僚の順となっている。

  1. 皇族
  2. 内閣総理大臣
  3. 衆議院議長
  4. 参議院議長
  5. 最高裁判所長官
  6. 外国大使
  7. 国務大臣

 国務大臣同士の場合は、閣僚名簿の発表順すなわち官制順による(中央省庁再編後に新設された特命大臣は各省大臣の後のようであるが、国会大臣席の席次等を見ると総理経験者の場合は他の国務大臣に先んずるようである)。

 中央省庁再編以前の閣僚名簿の発表順
  (第二次橋本改造内閣;
   官職名は平成9年9月11日現在)
  1. 内閣総理大臣
  2. 法務大臣
  3. 外務大臣
  4. 大蔵大臣
  5. 文部大臣
  6. 厚生大臣
  7. 農林水産大臣
  8. 通商産業大臣
  9. 運輸大臣
  10. 郵政大臣
  11. 労働大臣
  12. 建設大臣
  13. 自治大臣兼国家公安委員会委員長
  14. 内閣官房長官
  15. 総務庁長官
  16. 沖縄開発庁長官兼北海道開発庁長官
  17. 防衛庁長官
  18. 経済企画庁長官
  19. 科学技術庁長官
  20. 環境庁長官
  21. 国土庁長官
 中央省庁再編にあわせた内閣改造時の発表順
  (第二次森改造内閣;
   官職名は平成13年1月6日現在の新しい名称)
  1. 内閣総理大臣
  2. 総務大臣
  3. 法務大臣
  4. 外務大臣
  5. 財務大臣
  6. 文部科学大臣
  7. 厚生労働大臣
  8. 農林水産大臣
  9. 経済産業大臣
  10. 国土交通大臣
  11. 環境大臣
  12. 内閣官房長官兼男女共同参画担当大臣
  13. 防災担当大臣兼国家公安委員会委員長
  14. 防衛庁長官
  15. 行政改革担当大臣兼沖縄北方担当大臣
  16. 金融担当大臣
  17. 経済財政担当大臣
  18. 科学技術担当大臣

 国会両院閣僚席(いわゆるヒナ壇)における席次は、官制順でもなければ、いわゆる重要閣僚(官職が重いという意。財務相や外相を指す)が優先されるわけでもなく、閣僚本人の経歴や総理との関係によるところが多いようである。
 総理・閣僚経験者を優遇し、また連立政権の場合は本人の官職履歴よりも連立与党を構成する政党の代表として上席を占める。第二番目の席は演壇に向かって右側の閣僚席の左端であるが、実際には第三番目の総理の左隣、さらに隣の第五番目の席のほうが上位の印象を受ける(テレビ中継や報道写真では右側の閣僚席が映ることは稀で、左側の閣僚席には総理に近い人物を隣に配置する傾向があるように思われる)。

国会閣僚席の席次の例(小泉内閣;官職名は平成13年5月1日現在)

17 15 13 11 9 7 5 3 1


2 4 6 8 10 12 14 16 18

































































































 公式席次(Preseance de droit)では処遇できない民間会社や団体の役員などのために、儀礼上の席次(Preseance de courtoisie)を定める必要がある。このような場合、公職経験者であれば優先する。また、外国人や在外邦人が出席する場合、これらの者を優先する。


外国の席次

 外国においても法定席次を有する国もあるが、法定しない国も含めて、概してわが国の現行の席次に共通している。すなわち、元首(国王または大統領)、王族の次に、外国大使・副大統領・首相・上下両院議長・最高裁長官が占める。つづいて、外国公使・閣僚・最高裁判事・上下両院副議長・公選知事、そして上下両院議員・外国代理大公使・各省次官級となる。

 以下は、上掲『国際儀礼とエチケット』64頁を参考に各国における公式席次の例を簡略化したものである。ただし、本全体に言えることではあるが、1960年代に書かれているため、既にオールド・ルールになっている点に注意されたい。官職名は適宜制作者において変更している。

 合衆国における席次の例
  1. 大統領
  2. 副大統領(上院議長)
  3. 下院議長
  4. 連邦最高裁長官
  5. 外国大使
  6. 国務長官
  7. 国務長官以外の連邦政府閣僚
  8. 外国公使
  9. 各州知事
  10. 上院議員
  11. 下院議員
  12. 国務次官
  13. 外国代理大公使
  14. 国務省以外の各行政省次官
  15. 陸海空軍次官
  16. 統合参謀本部議長
  17. 元帥
  18. 国連事務総長
  19. 各行政省次官代理
  20. 各行政省次官補
 連合王国における席次の例
  1. 国王
  2. 王族
  3. 外国大使
  4. カンタベリー大主教
  5. ヨーク大主教
  6. 内閣総理大臣
  7. 大法官(貴族院議長)
  8. 庶民院議長
  9. 国璽尚書
  10. (自国の)大使・高等弁務官
  11. 侍従長
  12. 紋章院長
  13. 式部長官
  14. 公爵
  15. 外国公使
  16. 侯爵
  17. 伯爵
  18. 子爵
  19. ロンドン主教
  20. 男爵たる国務大臣
  21. 男爵
  22. 侍従次長
  23. 国務大臣
  24. ガーター勲爵士
  25. 枢密顧問官
  26. 准男爵・デーム
  27. 勲爵士(ナイト)


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