中野文庫 記 章 (従軍記章・記念章)

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概 説

 記章は、大きく分けて従軍記章および記念章の2つがあった。わが国最初の記章は明治8年の「明治七年従軍記章」で、翌9年にそれまで従軍牌と称していたのを記章と改めた。このほか、軍人軍属やその遺族の記章など様々な種類があった。

 記章は、すべて左胸に佩用する。なお、女子に賜る場合、綬は宝冠章のような女性用の綬(蝶型のリボン)に替わる。


明治七年従軍記章(台湾討伐)

 制定:明治8年4月10日(明治8年太政官布告第54号)。
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、軍隊の廃止等により既に実効性を失っている。
 図案:章は銀桐条紋、円章径1寸(30ミリ)、中央に「従軍記章」、裏面には「明治七年歳次甲戊」の8字を刻む。鈕は銀、飾版の表面に「台湾」の2字。綬の幅は1寸(30ミリ)、緑と白の織地。

 この従軍記章は、台湾討伐に従軍した者に賜与された。わが国最初の記章で、大きさでは最も小さい記章でもある。


大日本帝国憲法発布記念章

 制定:明治22年8月3日、帝国憲法発布記念章制定ノ件(明治22年勅令第103号)
 図案:章は円章径9分余(30ミリ弱)、金または銀製、表面に菊花御紋章、高御座(たかみくら)および大勲位菊花章頸飾の図、裏面には「明治二十二年二月十一日、大日本帝国憲法発布記念章」と刻む。環は円形、金または銀製。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、勲一等旭日桐花大綬章の大綬と同じ織地。

 この記念章は、明治22年2月11日の大日本帝国憲法発布式の参列者(奏任官以上)に賜与された。金章と銀章の2種がある。


大婚二十五年祝典之章

 制定:明治27年3月6日、大婚二十五年祝典之章制定ノ件(明治27年勅令第23号)
 図案:章は円形径9分余(30ミリ弱)、金または銀製、表面には菊花御紋章と双鶴松を囲み、左右交架藤花の図、裏面には「大婚二十五年祝典之章、大日本帝国明治二十七年三月」と刻む。環は円形、金または銀製。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、紅色の織地に黄線一条。

 この記念章は、明治天皇と昭憲皇太后のご結婚25周年を記念した祝典の参列者に賜与された。金章と銀章の2種がある。


明治二十七八年従軍記章(日清戦争)

 制定:明治28年10月9日、明治二十七八年従軍記章条例(明治28年勅令第143号)。明治29年2月14日、明治二十七八年従軍記章奏請授与規程(明治29年閣令第1号)。
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、軍隊の廃止等により既に実効性を失っている。
 図案:章は銅製、宝珠の形、縦は1寸1分(33ミリ)、横は1寸(30ミリ)、表面には菊花御紋章と陸軍聯隊旗とを交叉、裏面には「明治二十七八年従軍記章」と刻む。鈕は銅、飾版。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、中央は白色で両縁は緑色。

 この従軍記章は、日清戦争に従軍した者に賜与された。この記章は、鹵獲した清国軍の大砲の地金で作成されたものである。


明治三十三年従軍記章(北清事変)

 制定:明治35年4月21日、明治三十三年従軍記章条例(明治35年勅令第142号)。明治35年5月9日、明治三十三年従軍記章ノ奏請及授与手続ノ件(明治35年閣令第1号)。
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、軍隊の廃止等により既に実効性を失っている。
 図案:章は銅製、円形径1寸(30ミリ)、菊花御紋章と鳳凰の図、中央に「従軍記章」と刻み、裏面に「大日本帝国明治三十三年」と刻む。鈕は銅製、飾版に「清国事変」と刻む。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、緑色の織地に白色三条。

 この従軍記章は、北清事変に従軍した者に賜与された。


明治三十七八年従軍記章(日露戦争)

 制定:明治39年3月31日、明治三十七八年従軍記章条例(明治39年勅令第51号)。明治39年4月7日、明治三十七八年従軍記章ノ奏請及授与ノ手続準拠方(明治39年閣令第2号)。明治39年5月12日、明治三十七八年従軍記章授与調査手続(明治39年陸軍省告示第2号)。
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、軍隊の廃止等により既に実効性を失っている。
 図案:章は銅製、円形径1寸(30ミリ)、菊と桐の御紋章、ならびに陸軍聯隊旗と海軍軍艦旗を交差、裏面に月桂樹と戦捷草を交差、中央の楯に「明治三十七八年戦役」と刻む。鈕は銅製、飾版の表面に「従軍記章」と刻む。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、中央は群青色、左右の縁、両縁は白色。

群青

 この従軍記章は、日露戦争に従軍した者に賜与された。


皇太子渡韓記念章

 制定:明治42年3月29日、皇太子渡韓記念章制定ノ件(明治42年勅令第42号)
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、統治権の喪失等により既に実効性を失っている。
 図案:円形径1寸(30ミリ)、菊花御紋章と壇樹の花枝の交差の図、「大日本帝国皇太子、渡韓記念章、明治四十年十月」と刻む。環は円形。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、中央は群青色、左右は黄色、両縁は薄群青色。

薄群青 群青 薄群青

 この記念章は、明治40年10月の皇太子嘉仁親王(のちの大正天皇)のご渡韓に関係した日韓両国の皇族および奏任官以上の者に賜与された。


韓国併合記念章

 制定:明治45年3月29日、韓国併合記念章制定ノ件(明治45年勅令第56号)
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、統治権の喪失等により既に実効性を失っている。
 図案:章は黄銅製、円形径1寸(30ミリ)、菊花御紋章ならびに桐樹および李樹の花枝の図、裏面には「明治四十三年八月二十九日、韓国併合記念章」と刻む。環は銀円形。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、中央は紅色、左右は黄色、両縁は白色。

 この記念章は、韓国併合の事業に関わった者、朝鮮に在勤した官吏、および韓国政府の官吏のほか、日韓関係に功績があった者に賜与された(待遇官吏も含む)。


大礼記念章(大正)

 制定:大正4年8月13日、大礼記念章制定ノ件(大正4年勅令第154号)
 図案:章は銀製、円形径1寸(30ミリ)、菊花御紋章と桜橘枝と万歳旗交差の図。裏面に「大礼記念章、大正四年十一月」と刻む。環は銀彎形。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、中央は紅色、両縁は白色に紅線。

 この記念章は、大正天皇の即位の大礼・大嘗祭などの式典に参列した者、各地で餐餌を賜った者、および大礼事業の要務に関わった者に賜与された。


大正三、四年従軍記章(青島攻略)改め
大正三年乃至九年戦役従軍記章(青島攻略・シベリア出兵)

 制定:大正4年11月6日、大正三、四年従軍記章令(大正4年勅令第203号)。大正9年勅令第41号による改正により大正三年乃至九年戦役従軍記章令に改題。大正4年12月20日、大正三、四年従軍記章授与規程(大正4年閣令第2号)。大正9年閣令第6号による改正により大正三年乃至九年戦役従軍記章授与規程に改題。
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、軍隊の廃止等により既に実効性を失っている。
 図案:章は銅製、円形径1寸(30ミリ)、菊花御紋章、陸軍聯隊旗と海軍軍艦旗、桐樹の花枝の図。裏面には「大正三四年戦役」と刻む。ただし、大正9年2月以降下賜の記章には「大正三年乃至九年戦役」と刻む。鈕は銅製、飾版に「従軍記章」と刻む。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、左右は紺青色、中央は白色。

紺青 紺青

 第一次世界大戦においてドイツに宣戦布告したわが国は、中国山東半島のドイツ租借地・青島を攻略した。その攻略に従軍した者に大正三、四年従軍記章が賜与されたが、つづいてシベリアに出兵することとなり、同出兵に従軍した者に対応するため、大正三、四年従軍記章を改め大正三年乃至九年戦役従軍記章として賜与された。両者は一括して第一次大戦の従軍記章として扱われたため、併せて佩用することはできない。また、表面の図案は全く同一である。


戦捷記章

 制定:大正9年9月17日、戦捷記章令(大正9年勅令第406号)
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、軍隊の廃止等により既に実効性を失っている。
 図案:章は銅製、円形径1寸2分(36ミリ)、表面に武甍槌神像を表し、裏面に桜花と地球の図、ならびに日本、合衆国、連合王国、フランス、イタリア王国の国旗の図。「文明擁護之戦日米英仏伊其他同盟及連合国自大正三年至大正九年」と刻む。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、両縁白線二個の虹を赤色を中央として配置。

   

 この記念章は、第一次世界大戦に際し、同盟および連合国の戦勝記念の国際表章として、大正3年8月23日から大正9年1月9日までの間の戦役に従事した者、および軍務その他に関し功績顕著な戦闘員に賜与された。


第一回国勢調査記念章

 制定:大正10年6月17日、第一回国勢調査記念章制定ノ件(大正10年勅令第272号)
 図案:章は青銅製、円形径1寸(30ミリ)、表面に戸籍の巻物を手にした文化年間の国司の立像を表し、裏面に「国勢調査記念章、大正九年十月一日」と刻む。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、中央は白色、左右は紫色、両縁は白色。

 この記念章は、わが国における最初の国勢調査の事業に関わった者、およびその要務に関係した者に賜与された。


大礼記念章(昭和)

 制定:昭和3年8月1日、大礼記念章制定ノ件(昭和3年勅令第188号)
 図案:章は銀製、円形径1寸(30ミリ)、表面に高御座(たかみくら)、金菊花御紋章、桜橘文様、雲文を配し、「万歳」と刻む。裏面に菊花形、旗形雲文を配し、「大礼記念章、昭和三年十一月」と刻む。環は銀円形。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、青黄赤白紫色を等分。

 この記念章は、昭和天皇の即位の大礼・大嘗祭などの式典に参列した者、各地で餐餌を賜った者、および大礼事業の要務に関わった者に賜与された。


帝都復興記念章

 制定:昭和5年8月13日、帝都復興記念章令(昭和5年勅令第148号)
 図案:章は銀製、円形径30ミリ、表面に菊花御紋章、東京市街と旭光に桜模様の図、裏面に「帝都復興記念章」と刻む。環は銀円形。綬の幅は36ミリ、中央は萌黄色、左右は白色、両縁は萌黄色。

萌黄 萌黄 萌黄

 この記念章は、大正12年9月1日に起こった関東大震災の復興事業に直接関わった者、およびその要務に関係した者に賜与された。


軍人遺族記章

 制定:昭和6年8月4日、軍人遺族記章令(昭和6年勅令第204号)。同日、軍人遺族記章令施行規程(昭和6年陸軍、海軍省令第1号)。
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、軍隊の廃止等により既に実効性を失っている。
 図案:章は銀色金属製、桜花は暗黒色燻。直径25ミリ。裏面に「軍人遺族記章」と刻む。環は銀円形。直径は6ミリ。紐は絹製3.5ミリの紫色の組紐で、縦100ミリ・横40ミリ。

 この記章は、戦地と戦地に準ずる事変地において死亡した軍人、傷痍を受け又は疾病に罹り3年以内に死亡した軍人、ならびに陸海軍大臣がこれらの者に相当すると認めた軍人等の遺族に賜与される。


朝鮮昭和五年国勢調査記念章

 制定:昭和7年7月18日、朝鮮昭和五年国勢調査記念章(昭和7年勅令第145号)
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、統治権の喪失等により既に実効性を失っている。
 図案:章は青銅製、円形径30ミリ、表面に戸籍の巻物を手にした大化年間の国司の立像を表し、裏面に「朝鮮昭和五年国勢調査記念章、昭和五年十月一日」と刻む。綬の幅は36ミリ、中央は白色、左右は紫色、両縁は白色。

 この記念章は、朝鮮において初めて国勢調査を行い、これを記念して、調査事業に関わった者、およびその要務に関係した者に賜与された。


昭和六年乃至九年事変従軍記章(満洲、上海事変)

 制定:昭和9年7月23日、昭和六年乃至九年事変従軍記章令(昭和9年勅令第225号)。同日、昭和六年乃至九年事変従軍記章授与規程(昭和9年閣令第2号)。
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、軍隊の廃止等により既に実効性を失っている。
 図案:章は青銅製、円形径30ミリ、表面に菊花御紋章と背光および上代の楯に鵄(とび)の図。裏面に陸海軍の鉄兜および桜花、「昭和六年乃至九年事変」と刻む。鈕は青銅製、表裏面に日蔭蔓の図、飾版に「従軍記章」と刻む。綬の幅は36ミリ、中央は濃紅色、左右内側は各黄色、浅紅色、緋褐色、紅海老茶色。

海老茶 緋褐 浅紅 濃紅 浅紅 緋褐 海老茶

 この従軍記章は、満洲、上海事変に従軍した者に賜与された。


軍人傷痍記章

 制定:昭和13年8月3日、軍人傷痍記章令(昭和13年勅令第553号)。昭和13年8月27日、軍人傷痍記章令施行細則(昭和13年陸軍省令第33号および昭和13年海軍省令第20号)。同日、傷痍軍人台帳規則(昭和13年厚生省令第24号)。昭和14年6月7日、軍人傷痍記章授与臨時特例(昭和14年勅令第360号)。同日、軍人傷痍記章授与臨時特例施行規則(昭和14年陸軍省令第25号および昭和14年海軍省令第12号)。同日、臨時傷痍軍人台帳規則(昭和14年厚生省令第16号)。
 失効:特に廃止の措置は採られていないが、軍隊の廃止等により既に実効性を失っている。
 図案:章は純銀製、円形径30ミリ、表面中央に武神像、浮彫金色。盾は赤色七宝。縁は金色磨き仕上げ(乙は銀色)。鏃は金色梨地仕上げ(乙は銀色)。裏面は金色梨地仕上げ(乙は銀色)、甲は「戦傷」、乙は「公傷」と刻む。側面は金色磨き仕上げ(乙は銀色)。

 この記章は、戦闘や戦闘に準ずる公務のために傷痍を受け、又は疾病に罹った者(甲)、ならびに普通公務のために傷痍を受け、又は疾病に罹った者(乙)に賜与された。


支那事変従軍記章

 制定:昭和14年7月27日、支那事変従軍記章令(昭和14年勅令第496号)。同日、支那事変従軍記章授与規程(昭和14年閣令第11号)。
 廃止:昭和21年3月30日、大東亜戦争従軍記章令廃止等ノ件(昭和21年勅令第177号)
 図案:章は青銅製、円形径30ミリ、表面に菊花御紋章と八咫烏(やたがらす)、軍旗、軍艦旗、瑞雲および光の図。裏面に山、雲および波の図、「支那事変」と刻む。鈕は青銅製、表裏面に日蔭蔓の図、飾版に「従軍記章」と刻む。綬の幅は36ミリ、中央は赤色、内側各紅色、香色、納戸色、濃桔梗色。

桔梗 納戸 香色 香色 納戸 桔梗

 この従軍記章は、支那事変(日中戦争)に参加、従軍した者、ならびにその要務に関係した者に賜与された。


紀元二千六百年祝典記念章

 制定:昭和15年7月27日、紀元二千六百年祝典記念章令(昭和15年勅令第488号)
 図案:章はアルミニウム青銅製、円形径36ミリ、表面に菊花御紋章、宮中三殿(賢所・皇霊殿・神殿)および宮城(皇居)の図。裏面に「紀元二千六百年祝典記念章、昭和十五年」と刻む。環はアルミニウム青銅製。綬の幅は36ミリ、空色に八条の紅線。

空色 空色

 この記念章は、昭和15年は、わが国が神話時代から数えて建国2600年目に当たり、神武天皇即位紀元2600年を記念して、同2月21日の紀元節祭の参列者、式典参列者、およびその要務に関係した者に賜与された。


支那事変記念章

 制定:昭和17年9月26日、支那事変記念章令(昭和17年勅令第658号)
 廃止:昭和21年3月30日、大東亜戦争従軍記章令廃止等ノ件(昭和21年勅令第177号)
 図案:章は青銅製、円形径36ミリ、表面に菊花御紋章と桜花の図。裏面に「支那事変記念章」と刻む。環は青銅製、円形。綬の幅は36ミリ、中央は赤色、左右各紅色、香色、納戸色、濃桔梗色。

桔梗 納戸 香色 香色 納戸 桔梗

 この記念章は、支那事変(日中戦争)全般にわたって特別の貢献があった者(同従軍記章受章者を除く)に賜与された。


大東亜戦争従軍記章

 制定:昭和19年6月21日、大東亜戦争従軍記章令(昭和19年勅令第417号)、同日、大東亜戦争従軍記章授与規程(昭和19年閣令第24号)
 廃止:昭和21年3月30日、大東亜戦争従軍記章令廃止等ノ件(昭和21年勅令第177号)
 図案:章は錫製、円形径30ミリ、表面に菊花御紋章と太刀、光線、桜花の図。裏面に楯の図、「大東亜戦争」と刻む。鈕は錫製、表面に勾玉、管玉および丸玉の図、飾版に「従軍記章」と刻む。綬の幅は36ミリ、中央は鶸色、その左右内側から各萌黄色、納戸色、濃桔梗色。

桔梗 納戸 萌黄 萌黄 納戸 桔梗

 この従軍記章は、大東亜戦争(アジア太平洋戦争)に参加、従軍した者、ならびにその要務に関係した者に賜与される予定であった。


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