中野文庫 褒 章

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総 説

 褒章は、特定の社会分野における事跡や徳行の優れた者および団体(紺綬褒章の場合)を表彰するものである。6種があり、褒章条例(明治14年太政官布告第63号)により制定された。基本的に民間人が対象で、対象分野「その道一筋」に業務に精励した者やボランティア活動に尽力した者などに与えられる。概ね55歳以上の者が対象であったが、平成15年秋の栄典大改革で年齢制限は撤廃された。

 戦後、官吏任用叙級令施行に伴ふ官吏に対する叙位及び叙勲並びに貴族院及び衆議院の議長、副議長、議員又は市町村長及び市町村助役に対する叙勲の取扱に関する件(昭和21年5月3日閣議決定)によって叙勲が停止されて以降、昭和38年に再開されるまでの間、叙勲にかえて褒章が授与される例があった。昭和53年から、藍綬褒章・黄綬褒章・紫綬褒章は叙勲と同じく春秋2回授与され、勲章と褒章の垣根が低くなり、事実上「下位勲章」としての役割を果たしているとも言える。

 褒章には、「褒章の記」を併せて賜与される。特漉の縦36.4センチ・横51.5センチの用紙で、紙の中央上部に菊花の御紋章、下部には賜与される褒章の絵が入っている。受章者の氏名、褒章を賜与してその善行を表彰する旨の記述とともに、内閣の印、年月日、内閣総理大臣および内閣府賞勲局長の連署と押印がある。なお、紺綬褒章の受章対象が団体である場合は、「褒章の記」に代えて「褒状」が賜与される。表彰されるべき者が賜与の前に死亡した場合は、遺族に対して褒状もしくは賜杯をもって追賞する。

 また、勲章と同様に褒章についても略綬が賜与される。勲章の略綬と同じく直径7ミリの円形で、褒章の別によってその色をかえている。栄典大改革以前は、縦3分5厘(10.5ミリ)・横6分5厘(19.5ミリ)の蝶形だった。

 褒章の写真は、内閣府ホームページ内にある賞勲局のページ、もしくは造幣局ホームページ内の勲章のページをご参照のこと。


紅綬褒章 Medal with Red Ribbon

 制定:明治14年12月7日、褒章条例(明治14年太政官布告第63号)
 図案:章の地金は銀で、桜花紋で飾り、中心部は金色の円形で囲み「褒章」と刻む。直径は30ミリ。裏面には「賜」の文字の下に受章者の氏名を刻む。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は36ミリ、紅色(赤)の織地。
 旧図案:章は銀桜花紋、円形径9分(27ミリ)、表面には「褒章」、裏面には「賜」の文字の下に受章者の氏名を刻む。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は1寸(30ミリ)、紅色(赤)の織地。

 紅綬褒章(こうじゅほうしょう)は、「自己の危難をかえりみず、人命を救助した者」に与えられる。要件が厳しいせいか、受章者は極めて少ない。

 明治15年5月1日に水難救助の功により工藤仁次郎氏に賜与されたのが最初である。そのほか、プラットホームから線路に転落した児童を身を挺して救った例がある。平成23年秋には、川で溺れていた男児を救助した13歳少年と16歳少年2人の計3人が授与された。


緑綬褒章 Medal with Green Ribbon

 制定:明治14年12月7日、褒章条例(明治14年太政官布告第63号)
 図案:章の地金は銀で、桜花紋で飾り、中心部は金色の円形で囲み「褒章」と刻む。直径は30ミリ。裏面には「賜」の文字の下に受章者の氏名を刻む。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は36ミリ、緑色の織地。
 旧図案:章は銀桜花紋、円形径9分(27ミリ)、表面には「褒章」、裏面には「賜」の文字の下に受章者の氏名を刻む。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は1寸(30ミリ)、緑色の織地。

 緑綬褒章(りょくじゅほうしょう)は、戦前において、「孝子」、「順孫」、「節婦」、「義僕」のような徳行が卓絶な者、または実業に精励し民衆の模範たるべき人物に与えられた。戦後、業務精励者については黄綬褒章が与えられることになった。ただし、緑綬褒章の示す道徳的な価値が新憲法施行以降の社会とマッチしないためか、昭和27年5月以降は候補者の推薦自体がなくなっていた(昭和29年まで賜与の例はあり)。以後、約半世紀もほぼ停止状態にあったが、平成15年秋より復活し、「ボランティア活動に功績のある者」に授けることとなった。

 明治15年7月22日に北崎専四郎氏に賜与されたのが最初である。そのほか、苦しい家計から20年間貯金して母校に二宮金次郎像を贈って受章した例がある。平成16年秋の緑綬褒章受章者は個人29名(うち女性17名)および14団体が受章した。


藍綬褒章 Medal with Blue Ribbon

 制定:明治14年12月7日、褒章条例(明治14年太政官布告第63号)
 図案:章の地金は銀で、桜花紋で飾り、中心部は金色の円形で囲み「褒章」と刻む。直径は30ミリ。裏面には「賜」の文字の下に受章者の氏名を刻む。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は36ミリ、藍色の織地。
 旧図案:章は銀桜花紋、円形径9分(27ミリ)、表面には「褒章」、裏面には「賜」の文字の下に受章者の氏名を刻む。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は1寸(30ミリ)、藍色の織地。

 藍綬褒章(らんじゅほうしょう)は、「学術技芸上の発明、改良、著述、教育、衛生、慈善、防疫事業、学校・病院の建設、道路・河渠・堤防・橋梁修築、田野開墾、森林栽培、水産の繁殖、農商工業の発達に関して公衆の利益を興し、その成績が著しい者」(例えば各種団体の長や企業経営者)、または公同の事務に勤勉で功績が顕著な者」(例えば消防団長、民生委員、調停委員、人権擁護委員、保護司など)に与えられる。

 明治15年8月15日に僻地開墾の功により石岡長蔵、久保田伊平両氏に賜与されたのが最初である。平成16年秋の藍綬褒章受章者は441名(うち女性104名)である。


黄綬褒章 Medal with Yellow Ribbon

 制定:明治20年5月24日、黄綬褒章臨時制定ノ件(明治20年勅令第16号)、新たに昭和30年1月22日、褒章条例の一部を改正する政令(昭和30年政令第7号)
 図案:章の地金は銀で、桜花紋で飾り、中心部は金色の円形で囲み「褒章」と刻む。直径は30ミリ。裏面には「賜」の文字の下に受章者の氏名を刻む。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は36ミリ、黄色の織地。
 旧図案:章は銀桜花紋、円形径9分(27ミリ)、表面には「褒章」、裏面には「賜」の文字の下に受章者の氏名を刻む。鈕ならびに飾版は銀(金もあり)。綬の幅は1寸(30ミリ)、黄色の織地。戦前のもの(昭和22年廃止分)は、表面は菊花御紋章と「褒章」の文字に大砲の図。裏面は「賛成海防事業」の文字を刻む。

 黄綬褒章(おうじゅほうしょう)は、明治20年に臨時に制定され、昭和22年に廃止されるまで、「私財を献納し、防海の事業に賛同し海防事業費の献納者」に与えられ、金銀2種があった。その後、しばらく受章者がいない状態がつづき、昭和30年から新しく「業務に精励し民衆の模範たるべき者」に与えられることになった。

 黄綬褒章における「業務精励」の対象は、例えば農業や中小企業に従事する者、郵便集配等の受託者、バス・タクシーの運転手、ホームヘルパーなどであり、言わば「この道ひとすじ」に各分野で尽力された方々である。

 明治20年7月20日に中井新右衛門氏が賜与されたのが最初である。そのほか、法隆寺の解体修理工事の大工頭、40年以上も無事故運転のトラック運転手が受章した例がある。平成16年秋の黄綬褒章受章者は301名(うち女性16名)である。


紺綬褒章 Medal with Dark Blue Ribbon

 制定:大正7年9月19日(大正7年勅令第349号)
 図案:章の地金は銀で、桜花紋で飾り、中心部は金色の円形で囲み「褒章」と刻む。直径は30ミリ。裏面は刻まない。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は36ミリ、紺色の織地。
 旧図案:章は銀桜花紋、円形径9分(27ミリ)、表面には「褒章」、裏面には授与年月を刻む。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は1寸(30ミリ)、紺色の織地。

 紺綬褒章(こんじゅほうしょう)は、「公益のために寄付し、功績が顕著な個人及び団体」に与えられる。昭和14年10月6日に褒章条例の特例に関する勅令が出され、支那事変以来、軍に対する私財寄付者を賞することとなり、当時10円以上の寄付には褒状を、500円以上1万円未満の寄付には木杯、1万円以上の寄付には紺綬褒章を与えることになった。

 昭和22年からは年間10万円以上、昭和39年7月からは年間100万円以上の寄付者に与えれることになり、タクシー会社の社長が数度も受章した例がある。額は年々引き上げられる傾向にあり、昭和56年1月からは、個人は500万円以上、団体は1000万円以上が選定の基準となっている。1500万円以上の場合、木杯が併賜される。毎年、600程度の個人・団体が受章している。

 大正8年9月7日に恩賜財団済生会に寄付した小野光景氏に賜与されたのが最初である。


紫綬褒章 Medal with Purple Ribbon

 制定:昭和30年1月23日、褒章条例の一部を改正する政令(昭和30年政令第7号)
 図案:章の地金は銀で、桜花紋で飾り、中心部は金色の円形で囲み「褒章」と刻む。直径は30ミリ。裏面には「賜」の文字の下に受章者の氏名を刻む。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は36ミリ、紫色の織地。
 旧図案:章は銀桜花紋、円形径9分(27ミリ)、表面には「褒章」、裏面には「賜」の文字の下に受章者の氏名を刻む。鈕ならびに飾版は銀。綬の幅は1寸(30ミリ)、紫色の織地。

 紫綬褒章(しじゅほうしょう)は、「学術文芸上の発明改良創作に関して業績が顕著な者」に与えられる最も新しい褒章であり、著名なスポーツ選手や芸能人が授与されることが多く、一般には最も馴染み深いものである。

 第一回の受章者は、昭和30年2月の舞踏家・石井漢氏ら7名である。平成15年秋より年齢制限が撤廃されたことにより、言わば芸能界の長老だけに与えられていた章が、世界的に活躍する若い世代をも積極的に評価するものに変わった。スポーツ振興分野で紫綬褒章を受章した年齢を見ると、内閣総理大臣顕彰を受けた柔道の谷(旧姓田村)亮子選手は28歳、世界水泳で金メダルを獲得した北島康介選手は21歳と、それまで50歳以降であった歴代受章者と比べて大幅な若返りと言える。平成16年秋の紫綬褒章受章者は45名(うち女性10名)。この中には、アテネ五輪で金メダルを獲得した20名の選手が含まれており、レスリングの伊調馨選手は20歳と最年少の受章である。先に授与されたことがある谷亮子選手らには銀の飾版が授けられた(初の紫綬褒章の再受章)。平成18年春にはトリノ冬季五輪で金メダルを獲得した荒川静香選手のほか、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で初代優勝を果たした日本代表チームに贈られた。団体の紫綬褒章受章はこれが初めてである。平成23年秋には、FIFAワールドカップで初めて優勝した日本女子代表チーム「なでしこジャパン」にも贈られた。


飾 版 Gold Bar, Silver Bar

 図案:飾版の地金は銀で、表面に授与年月日を刻む。褒章条例3条2項の場合(飾版が5個に達し新たに授与される飾版)は金色で、表面は桜で飾る。

 褒章を何度も受章する例があり、二度以上同様の功績をなしたときは、その都度、銀の飾版(しょくはん)一個を授与し、その綬に付加する。銀の飾版が5個に達したのちは、これを金1個にかえて付加する。


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