中野文庫 宝冠章

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概 説

 宝冠章は、勲功ある女性のみに与えられる勲章である。宝冠大綬章をはじめ6種あり、平成15年栄典大改革以前は勲一等宝冠章以下勲八等宝冠章まで8種あった。図案は古代女帝の宝冠に模したもので、鈕はむかし女官が用いた衣紋を配している。明治21年に勲一等から勲五等までが制定されたのち、明治29年に勲六等から勲八等が追加され、他の勲章と同例となった。大改革で旭日章や以前から女性にも与えられていた瑞宝章が男女共通の勲章となったため、事実上、女性皇族あるいは外国の女性王族に贈られる特殊な存在となっている。

 栄典大改革により、等級ではなく正章の形にちなんだ名前が付けられた。同様に等級で表していた瑞宝章が、旭日章に明治時代から付いていた名を旭日章と共通で等級代わりに付けたものとは異なっている。

 宝冠章の写真は、内閣府ホームページ内にある賞勲局のページ、もしくは造幣局ホームページ内の勲章のページをご覧のこと。旧勲一等宝冠章受章者一覧および宝冠大綬章受章者一覧は別のページに掲載。


宝冠大綬章・旧「勲一等宝冠章」 Grand Cordon of the Order of the Precious Crow

 制定:旧勲章は明治21年1月4日(明治21年勅令第1号)、新勲章は平成15年11月3日
 根拠法令:各種勲章及び大勲位菊花章頸飾の制式及び形状を定める内閣府令(平成15年内閣府令第54号)5条
 図案:正章は金楕円直径1寸2分(37ミリ)金地の宝冠と藍色七宝、重廓は真珠でその間は濃紅色七宝、竹枝は緑色七宝、桜花は紅色七宝、葉は緑色七宝。鈕は桐、花は紫色七宝、葉は緑色七宝。綬は幅2寸6分(79ミリ)、黄色の織地に紅色の双線。副章は、金で直径2寸2分(67ミリ)、金地の鳳と藍色七宝、重廓は真珠でその間は濃紅色七宝、竹枝は緑色七宝、五色光線は真珠、桜花は紅色七宝、葉は緑色七宝。

 宝冠大綬章(ほうかんだいじゅしょう)と読む。

 当初叙勲が男性のみであったのを改め、明治21年に瑞宝章とともに女性のための勲章として宝冠章が制定された。綬は黄色で、正章には108個、副章には209個もの真珠をふんだんに用いている。このため、宝冠章は実物としての価値も高く、経費がかさむため、人工真珠にしてはどうかとの意見もあったが、受章者も少なく、佩用される方は高貴な方であるのでそのままとなったと言われている。なお、宝冠章には「勲功旌章」の刻印がない。

 宝冠大綬章(旧勲一等宝冠章)は、大綬を右肩から左脇に垂れ、副章を左胸に佩用する。

 皇族の叙勲の場合、戦前は、皇族身位令(明治43年皇室令第2号)13条により、内親王は満15年に達したのち、勲一等に叙し宝冠章を賜う。皇后・皇太子妃・皇太孫妃は結婚の約が成立したとき(同8条および10条)、または親王妃は結婚の礼を行う当日(同12条)、勲一等に叙し宝冠章を賜うことになっていた。

 初めて勲一等宝冠章が賜与されたのは、明治21年11月1日の有栖川宮薫子妃(熾仁親王妃)。最近では、皇太子妃殿下となられた雅子さまに御成婚時に授与された例がある。臣下では、中山慶子(明治天皇御生母)・柳原愛子(大正天皇御生母)両典侍の例がある。宝冠章はあまり受章者の多くない勲章ではあるが、外国王族へは、連合王国のマーガレット王女やアン王女ほか多数贈られている。平成23年10月23日、秋篠宮文仁親王第一女子の眞子さまが20歳をお迎えになったのにあわせ、皇居宮殿にて天皇陛下より宝冠大綬章が授与された。

【受章者の例】 勲一等宝冠章受章者宝冠大綬章受章者


宝冠牡丹章・旧「勲二等宝冠章」 The Order of the Precious Crown, Peony

 制定:旧勲章は明治21年1月4日(明治21年勅令第1号)、新勲章は平成15年11月3日
 根拠法令:各種勲章及び大勲位菊花章頸飾の制式及び形状を定める内閣府令(平成15年内閣府令第54号)5条
 図案:章は金楕円形、径1寸1分(34ミリ)、金地の宝冠と藍色七宝、重廓は真珠でその間は濃紅色七宝、竹枝は緑色七宝、桜花は紅色七宝、葉は緑色七宝。鈕は牡丹、花は白色七宝、葉は緑色七宝。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、黄色の織地に紅色の双線。

 宝冠牡丹章(ほうかんぼたんしょう)と読む。

 皇族の叙勲の場合、戦前は、女王は満15年に達したのち、勲二等に叙し宝冠章を賜う(皇族身位令16条)。王妃は、結婚の礼を行う当日、勲二等に叙し宝冠章を賜うことになっていた(同15条)。

 牡丹章(旧勲二等)以下は、蝶結び状の綬をもって左胸に佩用する。

 平成22年9月15日、同日で20歳におなりの故・高円宮憲仁親王第三女子の絢子女王が宝冠牡丹章を拝受された。

【受章者の例】 国会議員


宝冠白蝶章・旧「勲三等宝冠章」 The Order of the Precious Crown, Butterfly

 制定:旧勲章は明治21年1月4日(明治21年勅令第1号)、新勲章は平成15年11月3日
 根拠法令:各種勲章及び大勲位菊花章頸飾の制式及び形状を定める内閣府令(平成15年内閣府令第54号)5条
 図案:章は金楕円形、径1寸1分(34ミリ)、金地の宝冠と藍色七宝、重廓は真珠でその間は濃紅色七宝、竹枝は緑色七宝、桜花は紅色七宝、葉は緑色七宝。鈕は蝶、羽は白色七宝。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、黄色の織地に紅色の双線。

 宝冠白蝶章(ほうかんはくちょうしょう)と読む。

【受章者の例】 国会議員、国立・私立大学長、私立大教授、家裁判事、専門学校長


宝冠藤花章・旧「勲四等宝冠章」 The Order of the Precious Crown, Wistaria

 制定:旧勲章は明治21年1月4日(明治21年勅令第1号)、新勲章は平成15年11月3日
 根拠法令:各種勲章及び大勲位菊花章頸飾の制式及び形状を定める内閣府令(平成15年内閣府令第54号)5条
 図案:章は金楕円形、径1寸1分(32ミリ)、金地の宝冠と藍色七宝、重廓は真珠でその間は濃紅色七宝、竹枝は緑色七宝、桜花は紅色七宝、葉は緑色七宝。鈕は藤、花は紫色七宝。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、黄色の織地に紅色の双線。

 宝冠藤花章(ほうかんとうかしょう)と読む。

【受章者の例】 専門学校長、日本画家、俳人、女優、歌手、浪曲師


宝冠杏葉章・旧「勲五等宝冠章」 The Order of the Precious Crown, Apricot

 制定:旧勲章は明治21年1月4日(明治21年勅令第1号)、新勲章は平成15年11月3日
 根拠法令:各種勲章及び大勲位菊花章頸飾の制式及び形状を定める内閣府令(平成15年内閣府令第54号)5条
 図案:章は銀楕円形、径1寸1分(32ミリ)、金地の宝冠と藍色七宝、重廓は真珠でその間は濃紅色七宝、竹枝は緑色七宝、桜花は紅色七宝、葉は緑色七宝。鈕は杏、葉は緑色七宝。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、黄色の織地に紅色の双線。

 宝冠杏葉章(ほうかんきょうようしょう)と読む。

【受章者の例】 専門学校長、漫談家、病院看護部長(婦長)


宝冠波光章・旧「勲六等宝冠章」 The Order of the Precious Crown, Ripple

 制定:明治29年4月13日(明治21年閣令第4号)、新勲章は平成15年11月3日
 根拠法令:各種勲章及び大勲位菊花章頸飾の制式及び形状を定める内閣府令(平成15年内閣府令第54号)5条
 図案:章は銀楕円形、径9分(28ミリ)、宝冠は金、重廓内紅色七宝、桜葉は緑色七宝。鈕は波紋、淡藍色七宝。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、黄色の織地に紅色の双線。

 宝冠波光章(ほうかんはこうしょう)と読む。

【受章者の例】 専門学校長、病院看護部長(婦長)、行政相談委員、デザイナー


旧「勲七等宝冠章」 The Order of the Precious Crown, Gold Medal

 制定:明治29年4月13日(明治21年閣令第4号)
 図案:章は銀楕円形、径9分(27ミリ)、宝冠は金、桜葉は金。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、黄色の織地に紅色の双線。

 日清戦争時の従軍看護婦であった日本赤十字病院の高山みつ、新島やゑ両女史が勲七等宝冠章に、そのほか16名が受章したのが臣下では初である。

【受章者の例】 保育園長、保健婦


旧「勲八等宝冠章」 The Order of the Precious Crown, Silver Medal

 制定:明治29年4月13日(明治21年閣令第4号)
 図案:章は銀楕円形、径9分(27ミリ)、宝冠は金。綬の幅は1寸2分(36ミリ)、黄色の織地に紅色の双線。

 戦歿者叙勲では、沖縄戦で戦死した「ひめゆり部隊」ほか女子学徒隊員88名の軍属に対して、勲八等宝冠章が贈られている。そのほか、不時着した航空機から乗客を誘導したスチュワーデスに贈られた例がある。


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