中野文庫 外交官席次

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外交使節

 一般に大使などの外交使節を指すときは、常駐使節のことを指しており、そのほかに特別な任務を果たすために一時的な使節団として特別使節(special missions)がある。以下においては常駐使節のことを外交使節(Diplomatic Envoy)と呼ぶ

 常駐の使節を外国に派遣することが一般的となった17世紀になると、大使と駐在使節という2つの階級が認められたが、それに付随して席次の紛争が頻発し、18世紀に全権公使がこれに加わったものの、事態の改善にはつながらなかった。そこで1815年のウィーン会議において、大使・全権公使・代理公使の3つの階級が認められ、1818年のエクス・ラ・シャペル会議で弁理公使が追加された。

 その後、様々な規則が国際的な慣習法として積み上げられ、その集大成の形で昭和36年(西暦1961年)に「外交関係に関するウィーン条約」(昭和39年条約14号、わが国での発効は昭和39年7月8日、以下「外交特権条約」という)が採択された。

 外交特権条約14条1項では、弁理公使が廃止され、

の3つとなった。ただし、この3つは席次上の差はあるものの、職務上は全く同等であることに注意されたい。

 外交使節(外交官)は、派遣国を代表し、その国家の威厳を表現する資格を有するから、高い席次を与えられるほか、不可侵特権や治外法権などの外交特権を併せもつ。

 わが国の大使は、対外的には元首たる天皇陛下の御代理としての立場もあり(戦後において元首であるか日本国憲法に名文はないが事実上そのように解されている)、戦前は親任官(天皇陛下が御自ら任命される儀式である親任式を経る)、戦後も認証官(同じく認証官任命式を経る)と優遇されており、認証官任命式(認証式)は皇居宮殿でおこなわれる。大使の場合は、天皇陛下の御前で外務大臣から辞令書を受け、お言葉を賜ったのち、敬礼して退下する。

 現在は外交官試験を合格した者が大使として赴任しているが、戦前は軍人(例えば駐独大使)や企業家が任命されることもあった。それでも高等試験外交科または行政科を突破したエリートがほとんどであった。


領事官

 本来的には、領事(Consul)は外国において自国民に対し、民事・刑事の裁判権を行使するために設けられた制度であったが、領事裁判権の衰退とともに、本国の通商・航海の一般的な監督、ならびに自国民の通商利益の保護が主な役割となった。

 領事については、昭和38年(1963年)に採択された「領事関係に関するウィーン条約」(わが国では昭和58年11月2日発効)によって規律されており、領事官の階級には、総領事・領事・副領事・領事代理(日本にはない)の4つがある。

 領事の種類としては、専任領事と名誉領事があり、専任領事が一般にいう領事である。専任領事は、派遣国の国家機関であるから、派遣国より俸給を受ける。名誉領事は、その多くが派遣先の接受国の国民であり、他の職業をもってもよく、派遣国から若干の報酬を受ける。なお、領事は不可侵特権や治外法権が認められるものの、外交使節のように国家を代表する資格はない。


外交官席次

 派遣国における外交団の席次は、元首に対する信任状(credentials)捧呈の日付順により、その最も古い者が外交団長となる。ただし、国によっては先任順にかかわらず、ローマ法王の大使を常に外交団長とする場合がある。

 国際連合その他の国際機関等の会議においては、国連方式(英語)による国名のアルファベット順による。国連内の役員においては、総会議長、事務総長、安全保障理事会議長、その他の理事会の議長の順とする。

 戦前の宮中席次や現在の内外の事例は宮中席次の項を、国名に関しては国名等の表記についての項を併せて参照されたい。


(参考文献) 友田二郎『国際儀礼とエチケット』52頁以下(学生社、新装版、昭和57年) 外務省外務報道官編集『やさしい国際儀礼 プロトコールQ&A』106頁以下(世界の動き社、昭和60年) 波多野里望・小川芳彦編『国際法講義』108頁以下(有斐閣、新版、平成5年)


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