中野文庫 勅語(昭和50年)

法令目次法令総索引詔勅目次詔書勅語日本語総目次


ルーマニア社会主義共和国ニコラエ・チャウシェスク大統領歓迎の宮中午餐会のおことば(昭和50年4月4日)

 今日ここに、ルーマニア国大統領閣下御夫妻をお迎えすることができましたことは、わたくしと皇后の喜びに堪えないところであります。
 このたび、大統領閣下が令夫人とともに、遠路はるばる我が国を御訪問になりましたことに対し、わたくしは心から歓迎の意を表するものであります。
 貴国は、ヨーロッパにおいて、古い歴史と文化を有する国柄であります。その詩情豊かな美しい自然は、永年にわたり、民族の統一と独立の精神を養ってきたと思います。
 近年、貴国においては政治、経済、文化の面はもとより、工業生産部門では、とくに目ざましい発展を示し、大統領閣下が全国民とともに、国運の進展に御努力になっていることに対し、深く敬意をはらうものであります。
 一方、貴我両国間の要人の往来は、最近とみに活発になり、貿易と産業技術の面における協力関係は、いちだんと促進されるに至りました。
 今回の大統領閣下の御来訪は、両国間の相互理解を深め、かつ、友好関係の強化に役立つことになり、このことは世界平和と国際親善に寄与するものと信じて疑いません。
 大統領閣下並びに令夫人の我が国御滞在は、極めて短期間ではありますが、各方面の御視察が実り多いものとなりますよう、また、関西地方の御旅行が、よき思い出のよすがとなりますことを期待いたします。
 ここに杯をあげて、閣下並びに令夫人の御健康と御多幸をこいねがうとともに、ルーマニア国民の繁栄を祈りたいと思います。

(参考) ルーマニア社会主義共和国ニコラエ・チャウシェスク大統領の答辞

天皇皇后両陛下並びに御列席の各位
 このたび朝日輝く美しい国日本を訪問し、この機会に天皇皇后両陛下に対し、心から御挨拶を申し上げますことは私と妻にとりこの上ない喜びであります。
 私達は、豊かな歴史と文化を持ち、また才能と勤勉をもって知られ、更に人間文明の進歩に対し著るしい貢献を行ったことをもって知られている伝統ある日本国民を高く評価しております。私達は、また、日本を世界の最も工業的に発達した国の一つとされた貴国民の現在の偉業も承知しております。
 ルーマニアと日本の間の友好のきずなは、はるか遠い昔にさかのぼるものであります。三世紀前に東アジアに旅行したルーマニアの学者ニコラエ・ミレスクは広範囲の事柄について記した著書により、「有名かつ偉大な日本人の住む島々」の住民の生活と慣習をルーマニア人に紹介しました。私達は、日本の学者がルーマニアの国民、文化及び自由と独立のための闘争について関心をもって知ろうとしたことを存じております。
 近年、貴我両国民は、経済、科学及び技術の多くの分野において進展を遂げ、ルーマニアと日本との間の相互理解が深まりかつ強化されてきております。同時に、貴我両国間の相互に有益な協力関係が発展しております。私達の今回の日本訪問は、いま申し述べました関係及びそれを一層発展させたいという貴我両国民に共通する願いを明らかに表わすものであります。
 私達は、人類が支配と抑圧という古い関係の廃止並びに国際関係における戦争の除去、低開発性の清算及び軍備拡張競争の停止の必要に関連する諸問題がますます複雑化しているのに際会している時に貴国に参っております。平等と公平に基づき、かつその国の欲するがごとくに発展すべき各国の主権尊重に基づき、国際間の緊張緩和と協力を保証し、世界に新しい関係を打ち建てるべき意思を、人々は一層決然と表明しております。
 私は、今回の訪問はルーマニアと日本の関係発展における歴史的な瞬間として、更に各国間の理解と平和的協力の目的、新しい国際的経済、政治秩序の回復及び私達の住む地球上によりよく、より正しい世界を形成することに貢献するものとして記録に残るものと確信いたしております。
 ここに皆様とともに杯を挙げて、天皇皇后両陛下の御健康と日本国民の繁栄と幸福を祈りたいと思います。


連合王国エリザベス二世女王歓迎の宮中晩餐会のおことば(昭和50年5月7日)

 風薫る今宵、英国女王エリザベス二世陛下ならびに、エディンバラ公フィリップ殿下をお迎えして、宴席をともにすることができますことは、わたくしと皇后の喜びに堪えないところであります。
 このたび、女王陛下がエディンバラ公殿下とともに、遠路はるばる我が国を御訪問になりましたことは、日英関係の永い歴史の上で特筆すべきことであり、わたくしは、ここに心から歓迎の意を表するとともに、三年半ぶりに再びお会いできましたことを、まことに懐かしく思います。
 わたくしは、五十有余年前、皇太子として、また先年皇后とともに、貴国をお訪ねしましたが、その際貴王室から寄せられた御厚遇と、貴国政府及び国民から受けた歓迎に対し、改めて御礼を申し述べます。
 女王陛下ならびにエディンバラ公殿下には、国の内外において、日々各般にわたる公務に御精励になり、国運の進展と人類の福祉の向上に貢献されていることは、ひろく世に知られているところであり、わたくしは深く敬意をはらうものであります。
 想えば、貴国と我が国は、東西の海洋国家として、永く提携の道を歩んできました。即ち、十九世紀の中葉、我が国の先覚者たちは、科学・技術・産業・文化等あらゆる分野にわたって、貴国から多くのことを学び、我が国は、国を挙げて、近代国家としての発展に努めました。爾来、我が国は貴国と極めて密接な友好関係を保持し、両国間の国民的交流は活発になり、また貴王室と我が皇室との間では、しばしば皇族の相互訪問が行われるなど、年とともに親交が深まりました。
 このような、貴国との友好親善の関係は、その後、時代の変遷に伴い、大きな試練を経ました。しかし、両国国民の絶えざる努力によって、貴我両国の絆が、以前にもまして鞏固なものになりつつあることは、まことに喜ばしいことであります。
 このたびの女王陛下の御来訪を契機として、ともに永い歴史と伝統をもつ日英両国が、流動する現下の国際社会において、世界の平和・文化の進歩・人類の福祉の増進のために、相協力して、一層前進することを、わたくしは切に希望するものであります。
 女王陛下ならびにエディンバラ公殿下の我が国御滞在は、短期間ではありますが、現代日本の実情を親しく御視察願うかたわら、伝統芸能や文化遺産を心おきなく御鑑賞いただきたいと思います。そして新緑に萌える風光をお楽しみになることが、御来訪の思い出のよきよすがとなりますよう、心から希望いたします。
 ここに杯をあげて、女王陛下ならびにエディンバラ公殿下の御健康と御幸福をこいねがうとともに、英国の繁栄を祈りたいと思います。

(参考) 連合王国エリザベス二世女王の答辞

 ただいまは天皇陛下から歓迎の辞と、我が国に対する御好意あふれるお言葉をいただき、心から感謝します。
 エディンバラ公と私は、日本に参りましたことを非常にうれしく思います。私たちは、一九七一年に天皇皇后両陛下をロンドンにお迎えした折の喜びを思い出します。
 このたびの私たちの訪日は、日英両国の長い交流の歴史を象徴的に確認するものであると申せましょう。
 エリザベス一世の時代に、初めて日本を訪れた英国の船乗りや貿易商は、日本の文明に接し、多くの事柄に感嘆いたしました。その後一七二七年に、日本史を翻訳したある英国人は、その本の序文で、日本人は勇敢な国民であると述べ、「日本は、人々が礼儀正しく勤勉、人情に厚く、商業が栄え、天然の美に恵まれた国土をもつ国」であると書いています。
 日本のこのような特質に魅かれ、明治の初期以来、多くの英国人が日本を訪れるようになりました。先頭に立ったのは商人たちでした。彼らは、日本が平和のうちに近代的な工業国へと目ざましく変ぼうしていく様を目のあたりにし、また時には、新しい国造りに力を貸す機会を与えられました。さらに続いて、教師、医者、技師、海軍教官、外交官、学者、陶芸家、詩人なども参りました。そして誰もが心の一部をこの日本に残していきました。王室の者の多くも日本を訪れましたが、国土の美しさに魅せられるとともに、国民一般の心からの手厚い歓迎に深く感動いたしました。
 さてようよう、私も日本を訪れる機会を得ました。しかも時は春です。香りたかい伝統ある文化にじかに触れることはもとより、お国の近代技術、また、古きものと新しいものを調和させる巧みな業を自分の目で見ることのできるこの機会に、私は大きな期待を抱いています。
 日本の国民は、仕事への熱意とともに、現代のこの工業化された世界にまさに適切な社会機構をつくりあげました。
 申すまでもなく、私たちは互いに多くを学び合うことができます。幸いなことに、四年前に天皇陛下がロンドンを訪問されてからこのかた、とくに、科学技術、文化そして学問の分野で、両国のきずなはより一層強化されてきました。私は、今後もこのきずなの強化がさらに進むよう望んでいます。
 同時に、日英両国は、相互貿易の促進に今後も引き続いて努めることが必要です。貿易が常に両国の交流の基盤となってきましたが、今後もこれに変わりはないでしょう。英国には、強力で基盤の広い産業があります。科学技術の研究開発の分野で常に世界の最先端を歩んできた国として、英国は他の国に提供できる多くのものを持っています。世界の主要貿易国である英国と日本が、通商及び金融面での連繋をさらに密なものにするならば、それによって両国は多大の益を得ることができるでしょう。両国は、世界を相手とする貿易国として、全世界に平和と安定が確立されることを共に強く望んでいます。この理由で、今日の主要な国際問題に関して、両国の政府は見解を同じくしています。両国は、相互間の接触また国際舞台における協力関係を近年とみに発展させてきましたが、英国政府はこれを高く評価しています。
 私たちは今日、緊張と錯綜の世界に生きています。平和であることだけでは、貧困や不幸な人々の問題”世代の断絶”失意落胆に根ざす暴力などの問題が解決されるわけではありません。こうした問題また類似の問題は、容易に解決できるものではなく、世界の先進諸国は力をあわせてこれに立ち向かい、解決に努力する必要があります。日英両国が協力してあたるなら、これらの問題の解決により大きな貢献をなし得るものと確信しています。
 技術にすぐれ、新しい知識に対する探求心が旺盛で、伝統を重んじることなど日英両国民は多くの同じ特質を持っています。この類似性は庭を愛し、車を道路の左側に走らせる趣味にまで及んでいます。しかし、そのいずれにもまして両国民に共通する顕著な特質は、相手に対する好意を明確に表現し得ずにいても、深い心情を内に宿している内気な気性であると申せましょう。私は、日本と英国の国民を結ぶ友情のきずなが維持され、さらに鞏固なものになることを希望し、必ずやそうなるものと信じています。
 では、天皇皇后両陛下及び皇室の方々の御健康を祝し、また、日本国民の繁栄を祝して、ここに乾杯させていただきたく、御起立をお願いします。


中野文庫